dream in the midnight-summer
うぎゃあああああああああああああああああ
ガバッ
飛び跳ねるように体を起こして、蒲団が吹き飛んだ。
「え?ここは、どこ?」
周囲を見渡すものの、そこはいつもの自分の部屋。つけたままのテレビに砂嵐を写し出していた。
「という夢を見た」
朝の学校。ホームルーム前の喧噪に包まれた教室。そこで二人に昨夜の悪夢を聞かせる横島であった。
心底恐かったらしく、脱力して机に突っ伏した横島。脇には話を聞いて苦笑しているピートとタイガーがいた。
「また凄い夢を見ましたね」
タイガーも呆れていた。
「きのうワシの貸したマンガ読みながら寝入ったのが原因ですかいのう?」
「そうかもしれん。もう返すわ。又あんな夢見たらたまらん」
鞄から出した数冊のコミックを返す。
内容は男の子が悪い精霊に騙されて女の子に変えられ、心は男なのに、凄い美少女なので男に言い寄られて困る話をコミカルに描いた話であった。
「あんがい感化されやすいんですね。読んだマンガの主人公と同化するなんて」
「うるさいよピート。えれえ現実感のある夢だったんだから、今でも本当に夢だったのかどうかすらわからんぐらいなんだから」
心底疲れて突っ伏したままの横島に肩をすくめて見せる。
「夢に決まってますよ」
「そうですだよ、横島さん」
「あ ああ」
ピートとタイガーに諭され、しなだれつつも何とか頷く。
「そうだぞ横島」
二人以外の声がしたので振り向く。
「ん?」
見るとクラスの男共もピートらと同じく、横島を慰めようとしてくれていた。
「あんがと、お前らのような奴が友達でよかったぜ」
気弱な時なので素直に人の心がありがたい。しかし、横島の言った友達のくだりに皆が気を悪くしていた、何故か?。
「そうですよ。横島さんが女になるわけないじゃないですか、なあ皆!!」
「?」
何やら目配せをする仕種が怪訝、そのままピートらはガクランのボタンを外し始めた。そしてイッセイにガクランの前を開いた。
「・・・・・」
横島が言葉を失う。どうみてもガクランから出てくるには意外な膨らみがあった、それは夢の中で横島自身も持っていた物であったから。
「だって、女になったのは僕達の方ですから」
「・・・」
ピートの言葉に周りの男・・・・少なくともガクランを見る限りでは男子生徒らも同意している。悪夢に目を反らすと、逆に記憶では女子であった筈のセーラー服からは一切の膨らみまでも消滅していた。前回は自分だけ、今回は自分以外の全員が変わってしまっている・・・・・・・。
「じゃあ、俺はこれで」
真っ青な顔で立ち上がった横島の腕を ガシッと掴む手が・・・・恐る恐る振り向くと涙に濡れた瞳が・・・・・。
「横島さん!好きでした、でも横島さんは他の女にばかりチョッカイをかけてばっかりでしたけど、さあ!これで心おきなく」
「ああ、ずるいですだピートさん。おいどんもずっと横島さんのことを」
「ええい、それは俺達も同じだ。さあ横島、俺達と共に愛の旅立ちを」
ガクランに大きな乳房の、見た目男子学生が横島に群がってきたのであった。
うぎゃああああああああああああああああああああ
ガバッ
跳ね起きるように飛び起きる。
「え?ここは、どこ?」
周囲を見渡すものの、そこはいつもの自分の部屋。つけたままのテレビに砂嵐を写し出していた。
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