告白。おまけ
「なんか、美神さんに抱きついてもど突き倒されないなんて変な感じですね……」
と美神の身体の感触を確かめながら横島。
「たしかに、私が横島くんなんかに抱きしめられて大人しいなんて天変地異の前触れみたい」
そういってぎこちなく身体を離す美神。
その顔は未だ赤い。
……どうにか晴れて両思いというものになったが、お互い今までの関係に慣れすぎているためかどおゆう態度がいいのかとつい考えてしまう。
「恋人」というものの距離感がいまいちつかめていないのだ。
現に今だって、二人とも心臓がばくばくとうるさくてどんなことを話せばいいのか、分からない。
横島に至っては、まさかこんな事態になるとは予想すらしてなかったので(振られた後の事しか考えてなかった)、いつもの煩悩が出る隙も無い。
………あ。
「あ、やべええっ」
といきなりがたんとソファから立ち上がり横島。
「え?」
と何事かと美神。
「関さんに仕事ことわらねーと!」
うわっすっかり忘れてたと横島。
「……どーゆう事かしら?」
と美神。
どこかしらその顔が強張ったのは気のせいではないだろう。
横島はここにくるまでの経緯を簡単に話す。
「……あのくそじじいいいいいいいい」
と真っ赤になり頭を抑え美神。
「くそじじいって美神さん……」
というなり、美神は横島の身体を触り始める。
「な?」
と横島。
「いいからちょっとじっとしてて!」
と美神。
「……ぜったいあの人ならこの辺にー」
ぺたぺたと、横島の身体を探る。
いつもの横島ならそのまま襲うところなのだが、美神の真剣な口調と様子になすがままになる。
と、しばらくして横島の頭部から美神は小さいーピンくらいの機械を取り出した。
「やっぱし……」
と憎々しげにその機械を眺めながら美神。
「なんすかそれ?」
と物珍しそうに横島。
「盗聴器にきまってるでしょ?」
と美神。
「とうちょうき?」
と横島。
なんでそんなもんが…と横島が問うと美神はあのくそじじいが仕掛けたにきまってるでしょ?という。
美神はすうと息をすうと
「ったくさっさときなさいっこおんのばかおやじっいいいい!」
と大音量での賜った。
と、いう声とともにきいとドアが開く
「こんな時間に、そんな大声じゃあ近所迷惑だろ?」
そして苦笑交じりの柔らかい声とともに、関が現れた。
「……こんな大声ださせてんのは何処のどなたさまかしらあ?」
と腕組みをして、美神。
「さあねえ?令子のせいじゃないかい…どーやら一人でかなり飲んでたみたいだし」
のほほんと関。
「…そーいやそーですねえ」
と空き瓶をながめつつ横島。
「………うるさいわねっ!そんな事はいいの!」
と美神。
「まったくさっきはあんなに可愛かったのになあ」
とため息をつき関。かちゃんとすいっちが入る音と共にさっき二人でかわされた言葉が流れる……
…なんでこんなー
……おれもですよ…
かあああああああああ。
「うわうわうあああああっ。け、けしてくれっ!」
と両手で頭を抑え真っ赤になり横島。恥ずかしすぎるううううと叫んでいる。
「……なにが目的?」
と同じく真っ赤になりつつ美神。
「横島くんを相場の半額で貸して欲しいなあと思って」
スイッチを止めにっこりと関。
もちろんたまにでいいよ。と付け加える。
「…半額…」
「いいじゃないかせっかく、恋のキュウピットまでしたんだから…あ、それとも横島くんに今日なんで僕と一緒にいたか教えてほしいかい?」
「年取ると人間陰険になるって本当なのね…」
「それは誤解だよ。生まれた時から性格ゆがんでる人間はいるし。ほら僕の目の前にも」
「そうね、年齢のせいにして悪かったわ私の目の前に四六時中盗聴器を持ってあるくっていう生きた実例がいるもんねー、おじさん?」
とおじさんを強調しにっこりと美神。
「まだ三十五歳なんだけどなあ」
と苦笑する関。
「さんじゅうごお?」
と横島。
「あ・自己紹介が遅れたね。関俊介35歳。いちおう令子のハトコになるんだ」
で日本GS協会の理事でもあるんだけどねーと言って笑った。
関の見た目はどうみても20代である……
「で、どうだい?」
と関。
手には録音したMDがある
それに手伝ってもらったというのも嘘ではない。
「わかったわよっ!……相場の半分ね。その代わりほかの人材を借りるときは相場の四倍だからね」
ぐっと唇をかみ締め美神
「おっけいおっけい」
と手をひらひらと振り関。
呆然と横島。
「まあこれで、たまに君と仕事もすることに思うけどよろしく」
その時も存分に口説かせてもらうから
と極上の笑顔つきで関
「は…はあ」
なにやら正体不明の脂汗を流し横島。
「さてと、僕はそろそろ愛するはにーの所へと帰るかな…」
今日は大阪からわざわざ来てくれているんだ
と柔らかく笑う。
ちゃりと胸元のロケットが光を放った。
それはハートマークで中に恋人の写真が入っているという、いわゆる一昔前に全滅したと思われるアレである。
「それって・・・」
目ざとく気付いた横島がおそるおそる問う。
「ああ・・ハニーとおそろいで持っているんだよ」
とだけ言うと関はすたすたと何事も無かったように部屋から出ていった。
「・・・はにーって」
と横島。
「・・・いい年こいてなにいってんのよあのくそじじいは・・・」
おわり