GS美神 無限の中の一度
〜リポート00 帰らぬ時の中で〜
アシュタロス事件から15年 時は、西暦2014年…。
東京の一等地の真ん中に建っている西洋風の三階建ての建物…美神除霊事務所である。
「ここは15年前と全然変わらないのねぇ〜」
そう言って入ってくるやけに派手な服装で、話し方にも結構なまりがある女性。
「どなたでしょうか?」
どこからともなく声がする。この事務所の人間には、人工幽霊壱号と呼ばれているものの声だ。俗に言うAI(人工知能)のことだと、考えてくれるといいだろう。
「ヒャクメなのね、美神さんに話があってきたのねぇ〜」
「どうぞ。」という人工幽霊壱号とは別の女性の声と同時にドアが開く。
ちなみに、ヒャクメは神族だ。
「あなたが、ヒャクメさん?」
ドアから出てきた金色の髪を九つにたばねた女性がたずねた。
「そうなのねぇ〜」
とヒャクメが答えると、金色の髪をたばねた女性はつづけた、
「美神さんから聞いてるわ、わたしは、タマモよ、美神さんは留守だけど入って。」
タマモとヒャクメが事務所に入り、ソファーにすわると、まるで計ったかのようなタイミングで「タマモさんお客さん?」と15、6の女の子が入ってくる。
美神 令子の妹のひのめである。
「いいところに来るわね、ひのめ、まあ、座りなよ。
この子、ひのめね、美神さんの妹の。」
ひのめは無言で頭を少し下げてソファーに座ると、タマモも座り直した。
「――で、ヒャクメさん話ってなんですか?」
「べつにたいした事じゃないのね、無事にルシオラさんの魂が三ヵ月後に、横島さんの子どもに転
生できるのね、それを横島さんと美神さんに伝えにきたのね、
だから、留守なら伝えておいてほしいのねぇ〜〜」
ヒャクメがそういうと、少し驚いた顔でタマモが言った。
「たいしたことないって…、たいしたことじゃないですか!?
それより、無事、美神さんの子は生まれるんですね…
だけど、だけど、二年、いや一年早ければ。」
あたりの空気が突然重くなる。
「どうしたのねぇ〜?」
何も知らないヒャクメは軽い口調できいた。タマモは已然黙ったままであある。
そして、一分半ほど経っただろうか、タマモがやっとその重い口を開く。
「横島は…、横島は、もういないんです。
横島は死にました、半年前に。」
〜半年前〜
2013年10月13日・・・・。
ちなみに二年前に美神と横島は結婚した。
「横島くん、今日はルシオラの命日だったわね」
美神はそう言いながら朝食のコーヒーを差し出した。
「あれから14年か…。
もうそんなに経ったのか……。」
ドンッ 横島が机をたたき
コーヒーに、波紋が広がる。
「クソッ!14年前、強ければ、俺が強ければ!ルシオラは死なずにすんだのに!。」
「いまさら、悔やんでもしょうがないでしょ!
それにルシオラの転生先が私たちの子どもになるんだから、
もう、しっかりしてよね横島くん。」
美神はいつもより少し優しい口調でいい、横島の肩をポンッとたたく。
「蛍…、ルシオラは蛍の化身だったよなぁ?」
「よ、横島くん?」
美神は、再び横島の肩をたたく。
「よ・こ・し・ま!」
美神が大声で横島に叫ぶと、横島は美神の声にきずくなり、
「美神さん…、蛍香でいいでしょ、ルシオラいや、子どもの名前。」
美神はホッとした、14年前の事件以来、横島はこの調子なのだ。
そして、少し動揺しながらも答えた。
「ルシオラの生まれ変わりなんだし、あんたに名前付けてもらうのが一番でしょ!」
美神は横島に優しくほほえんだ。
「ありがとう…、美神さん。」
横島は半分涙ぐんでいた。
「そうと決まればさっそく子どもを作りましょう!!」
そういうと、横島は美神に襲いかかる。毎度のパターンながらシリアルな横島から、バカでスケベな横島への場面転換である。当然のことながら…。
バキッ
美神に殴られ横島ダウン。
「バッカ!状況を弁えなさい、状況を!」
美神はそういうと、何事もなかったかのように依頼書を二冊取り出す。
「これが今日入っている依頼ね。Bランクの仕事だから一人で大丈夫でしょ。
好きなほう選んでいいわよ。」
今日は珍しく、依頼が二件しか入っていなかった。
Bランクの依頼だったためか、いつもは二人でまわっていたのを、ひとりでいくことになったのだ。
もちろんこのことが、のちに二人の運命を左右するなど二人は知るよしもなかった。
「じゃあ俺、こっちにします。」
そう言って、横島は片方のファイルを手に取ると、ガレージのポルシェに乗って出かけて行った。
「それじゃあ、わたしも行ってくるわね。」
美神はタマモにそう言うと、コブラに乗って、出かけていった。
ちなみに、おキヌちゃんはネクロマンサーのインストラクター資格をとり独立、シロは一年前に、二、三年人狼の里で過ごすといってそれっきりだ。タマモはバイトという事で事務の一切を任されている。
「今回のターゲットはここね。」
美神は、三十階はあろうかというビルをながめ、コブラのトランクから神通棍を取りだし、ビルにはいり、階段をのぼる。「今回のギャラひくいのよねぇ。」ため息をつきながら。
そうしている間に依頼のあった四階につく、すると、いつものように悪霊が、
「オデはまだ死んじゃいねぇー!!まだ成仏してたまるかー!!」
とか何とか言って美神に襲いかかる。
「死んでからも人に迷惑かけるんじゃないわよ!
ゴーストスイーパー美神が極楽へ行かせてあげるわ!!」
美神は、そう言いつつ念をこめた神通棍で悪霊を切り裂く。
今の一撃で悪霊は黒い影となってきえた。
「いっちょあがりっと、まあこれで2000万なら悪くないかもね。」
そう言いながらコブラに戻ったそのときだった
ピルルルル
ダッシュボードに入れてあった携帯がなる。
「美神さん!美神さん!」
「タマモどうしたのよ?そんなにあわてて、何かあったの?」
「それがさっき病院から電話があって、横島が…、重症みたいなんです。」
「わかったわ、すぐ行く!(あの、ばかッ。)」
美神は携帯を切る。
ギアをいきなりドライブに入れ、アクセルを踏み込み加速そのまま病院へ向かう。
「大丈夫よね…、横島くん。」
キキッーキー
スピンターンで駐車場へ乗り付け、病院内へ駆け込むと、そこには横島が!?
「横島くん!?」
美神が呼ぶと、横島はえがおで
「ハハハッ、美神さんヘマやっちゃいましたよ、すいません迷惑かけちゃって。」
とほほえんだ。美神は横島の両手をにぎる。
「血圧、脈拍低下、危険な状態です。」
一人の看護婦がそう言うと、横島は集中治療室へはこばれていった…。
「横島くん大丈夫よね!?」
先に来ていたタマモに話しかけるが、タマモは黙っていたままである。
タマモはなんと返していいか分からないのである。
一方集中治療室
「血圧・心拍さらに低下、危険な状態です。」
(……、俺はこんなところで死ぬのか…?ルシオラにも会えないまま?
俺が死んだらルシオラは、どうなるんだ?もう永遠に転生できないんじゃ?
誰か教えてくれないか?俺はどうなるんだ?…目が・かす・む……。
ダメ・だ・ルシオラのためにも…。俺・死ね・・な・い・。)
ピィ―――――
「心停止!」
「電気ショック。早くしろ!!」
バチッ
電気ショックが放たれる、しかし、一向に横島の心臓の動く気配はない。
「もう一度!」
バチッ
再び電気ショックが放たれる、だが結果は同じである。そして、ドクターは静かに電気ショックを置き、
ペンライトで瞳孔を見、まぶたを閉じさせ、時計を見言った「午後5時35分ご臨終です」と。
美神たちは、集中治療室から出てきた横島、いや横島の亡骸に駆け寄る。
そこに、集中治療室から出てきたドクターが言った。
「残念ながら…。」
その言葉に、言葉を失う美神たち、そこには、美神、タマモの他に、雪之丞、タイガー、ピートもかけつけていた。
「ウソ、ウソに決まってるじゃない、悪い冗談は…、やめてよ…。」
美神が、涙を流したのは初めてだろうか?
泣きながら、横島にうったえかけた。
「殺しても死なないようなやつだったのに……。」
〜翌朝〜
霊安室に一人の女性が駆け込んできた。
「横島さん!?」
彼女の名は氷室キヌ、彼女もまた横島を愛した女性の一人である。
「み、美神さん!!」
おキヌが涙をながし、美神に泣きついた。
美神は恐ろしく落ち着いた様子で、語りかける。
「きれいな顔してるでしょ、不思議ね、目立った傷も、霊傷もないのに、ちょっと打ちどころが悪かっただけで…、それだけでもう動かないのよ……。」
かくして、14年前の英雄、横島忠夫は、その33年の短すぎる人生に幕を下ろしたのだった。
脾肉にも、彼の愛した女性と同じ日、同じ時間に…。
「へぇ〜、そんなことがあったのねぇ〜。」
「もしかして、あんた知らなかったの?」
「そうなのね、千里眼は神通力の消費が激しいから使えないのねぇ〜。」
「そうだったんですか…。」
「じゃあ、美神さんの子どもは誰なのねぇ〜?」
「美神さんは、横島が死んでから子どもにきづいたんでしょ。
ほら、時期も一致するじゃない!
だいいち、横島の子じゃなかったら、霊体が不足して、ルシオラって人の転生じゃなく、
全くの別人になるか、死産になるんでしょ?(この人、本当に神族かな?)」
タマモはなかばあきれ顔でいった。
「そっ、そうなのねぇ〜(汗)」
ヒャクメはその後4、5分経つと、急ぎ足で帰っていった。
「そこまではっきり言われると辛かったのねぇー」などと独り言をいいながら…。
その三ヶ月後、2014年7月10日
ふたつの命が生まれる。ひとつは、ルシオラの生まれ変わり、蛍香、
もうひとつは………。
TO BE CONTINUED