GS美神 無限の中の一度

〜リポート01 君に逢いたくなったら…〜


横島の死から17年…、西暦2031年…。

「蛍香どの、散歩に連れていって欲しいでござるよ〜。」

そう蛍香にせがんでいるのは、シロ、シロは人狼で、32年前、横島の弟子だった女の子だ。
見た目は17歳ぐらいに見える、なぜなら、人狼の老化速度は人間の十分の一、つまり、10年で人間
でいう一歳、年を取るということだ。

「ダメよ、さっき行ったばかりじゃない。
それに部屋に、ウォーキングマシンがあるじゃない!?」

少々シロを突き放すような言い方で、蛍香言った。なんせシロの散歩はものすごくハードだからだ。

「分かったでござるよ…。」

シロはそういうと、しぶしぶ部屋に戻っていく。
シロがドアに手をかけたその時、ひのめが入ってきた。そして、あきれた顔で言う。

「シロ、蛍香、1時間したら、仕事よ。蛍香、今日は念のため、あんたも準備しといてね。」

蛍香は、自分の部屋に戻りうつぶせにベッドの上に横になる。
ちなみに、蛍香の部屋は以前おキヌちゃんが使っていた部屋だ。
そして、写真立てを見ながら何やらささやいている。
「これを見るとなんか、懐かしくて切ない気持ちに…。あっ、もうこんな時間!」
そう言うと、立ちあがりクローゼットを開け、神通棍と破魔札をとりだし、シロの部屋へ…。
シロはあいかわらず、ウォーキングマシンにぼっとうしている。

「そろそろ、時間じゃない?」

「そうでござるな。」

シロはそう言うと、ウォーキングマシンから降り、精霊石のピアスを外し、犬(狼)形態に、
そして、ガレージへ行く。
そこには、ひのめがコブラに乗って待っていた。

「じゃあ行くよ!」そういうと、ひのめはアクセルを、思いっきり踏み込んだ。
美神ほどではないが荒っぽい運転にかわりはない。
そして、高速に乗ったところで、蛍香かに話しかける。

「今日はDランクの仕事だから、蛍香、あんたにまかせるよ!」

「えっっっ!?そんな、あたし無理です…、それにGSの資格まだとってないし。」

「大丈夫、いちよう神通棍と破魔札はつかえるし…、いざとなったら私たちがいるから。」

「分かりました…できるだけやってみます。」

蛍香は小さな声でうなずいた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫、大丈夫!
なんせあんたの父さんは、世界一のGSで、32年前の事件から世界を救った英雄なんだし。」

その後、何分ぐらい走っただろうか?現場に着く、そこは廃工場だ。

「蛍香ついたよ、はじめて!」

「がんばるでござるよ!」

蛍香は車から30メートルぐらいの所で足を止め大きく息をすい、神通棍に念をこめる
キンッ
音を立て神通棍が伸びる。
そして、勢いよく走りこむ、その先には霊の姿、蛍香はそれに思いっきり切り込む。

「この世にどんな未練があって迷っているのかは知らないけど…
                ちょっと悪さがすぎたみたいみたいねェ。
 このゴーストスイーパー(見習)横島蛍香が…
極楽へいかせてあげるわ!!(一度言ってみたかったのよね。)」

「そんな力でオレを除霊…、ふざけるなー小娘ぇ!!」

悪霊はそういうと、蛍香もろとも神通棍をはじく、

「“小娘”だなんて…バカにしないでよねっ!」

はじかれる瞬間、素早くポケットから破魔札を取り出し投げつける。
ダンッ、ゴロゴロゴロ
蛍香がさっきはじかれた勢いで10メートルほどすっとぶ。
(イテテッ、顔に傷でもついたらどうしてくれるのよー、お嫁にいけなくなっちゃうじゃない!!
 あれっっ!?さっきの破魔札…、爆発音がない…。)
おそる、おそる後ろを振り向く、
(あちゃー、やっちゃったよ、破魔札じゃなくて封魔札なげちゃったか…、
――で、こいつどうしよう??しょうがない…。)

「こんどこそ、極楽へ行かせてあげるわ、念!!」

そう言うと、全霊力を神通棍に集中させ、真上から真下に振り下ろす。
霊が消えていく、一瞬霊が苦痛な表情を浮かべたようにも見えた。
(今度こそ、やった…、)そう思った瞬間、膝がガクガク震え、止まらなくなる。
そして、そのまま、座りこむ(わたし、すごく怖かった…、だけど……。)

「蛍香よくやったでござるよ…、それより、どうかしたでござるか?」

「何ともないわ、もう大丈夫。」

そういうと、蛍香は、立ち上がる。
そこへ、ひのめが、あるいてきた。
「蛍香、あんた初めてにしては……(!)蛍香先に車にもどってて、それからシロ、蛍香をたのむわよ!」
蛍香が車に乗ったのを確認すると、ひのめは、前に二、三歩あるいた

「ほらほら、姿見せなさいよ!」

すると、バカ正直に霊がすがたをみせる。
(何こいつ、ホントに姿出てきた、バカ?)
ひのめは、身構える。

「火の精霊たちよ!すべてを焼き尽し、浄化する聖なる炎となり、
全ての悪しき魂を浄化せよ!!」

そう詠唱をとなえると、パイロキネシスを発動させる。
バシュー、ボンッ
一瞬の内に、霊は炎に包まれる。

「オレはまだ死んでイネぇー!」

その声を最後に辺りは、シーンと静まりかえりる。
やがて、炎と共に霊は消滅した。

「ふゥー、今度こそ終わったわね。」

そう言ってひのめはコブラに乗り込んだ。

「ひのめさん、すごい!今のもパイロキネシストの力?」

「まあね、他にもいろいろ使えるけどね。」

「やっぱ、ひとつひとつに詠唱があるの?」

「まあ、あるよ…、けど、べつに詠唱なしでも念さえこめればパイロキネシスは使えるんだ。 
        あの詠唱はただ、かっこいいと言うか、感じ出るからだけなんだよね。」

そういうとひのめは、コブラのキーをまわし、車を出す。

「蛍香、今回はよくやったほうだと言っておくわ。だけど油断は厳禁よ!」

「わかりました、それで、ひのめさんが倒したやつはなんだったの?」

「んー、簡単にいうと、RPGでゆうラスボスかな。依頼書に載ってないってことは裏で、蛍香が倒し
た霊をあやつっていたと見て間違いなさそうね。あとで、追加料金請求しないとね。」

「……………。」

「ほらもう事務所に着いたよ!」

ひのめにそういわれ、蛍香は車から降り、シロに精霊石のピアスつける。
シロは人間形態にもどる。
「先に、行ってるね。」蛍香がそう言うと、すかさずそれをシロが呼び止めた。

「蛍香どの、拙者の散歩…。」

「いつもどおり、夕方いいでしょ。」

そう言って、蛍香は自分の部屋に行き、ベッドに横になる。
(今日…疲れた…。)
蛍香は眠ってしまう。
その間事務所では…。

「タマモ、蛍香が起きたら、これ、頼んどいて。」

ひのめはポスターをタマモに渡した。タマモは、少し驚いた表情で言う。

「何これ、アルバイト募集のポスターじゃない!?
どうしたの、ひのめ急にアルバイトだなんて?」

「今回の仕事ではっきりしたわ、蛍香もだいぶ使えるようになってきたから、そろそろ、
ライセンス取らそうと思うの、そうなるといろいろ大変でしょ。」

「……わかったわ。」

「じゃあ頼むわ、私、厄珍堂行って来るから。」

ひのめはそう言って部屋を出て行く。
ちょうどそのとき蛍香の部屋では…。

「蛍香どの、起きてほしいでござるよ…、蛍香どの!!」

シロの声で目が覚める。目をこすりながら…。

「おはよう。今、何時?」

「“おはよう”じゃないでござる!!
  せっしゃの散歩はどうなったでござるか!?
     せっかく、せっしゃが蛍香どのが疲れないように、いい物を探してきたのに…。」

「分かったわよ、今行く。」

そして、外へ出ようとして、階段を降りたところでタマモに呼び止められる。

「シロの散歩に行くんでしょ、だったらこれお願い。」

それは、アルバイト募集のポスターである。

「えっっっ!?
助手をやとうんですか?そんなの、ひのめさんの実力なら必要ないんじゃ?」

「そんなことわたしに聞かれても分からないわ、ひのめに聞きなよ。」

タマモは、32年経っても外見も性格もあいかわらずだ。
蛍香は、アルバイト募集のポスターを持って事務所から出る。

「蛍香どの、遅いでござるよ〜
           いったい、なにしていたでござる!」

「ごめん、ごめん、ちょっとタマモさんから頼まれごとがあってさ。」

「そうでござるか…。
   それより、これを見るでござる、これなら蛍香どのは疲れなくて済むでござる。」

それは、以前、横島がシロの散歩に使っていたひもの付いた自転車だった。

「それ、もしかして父さんの?」

「そうでござる。
    それより、早く行きたいでござる!」

シロがそう言うと、蛍香は自転車にのる。

「OK、いいよ。」

蛍香がそう言った瞬間シロは、全力で自転車をひいた。
一応確認しておくが、シロは、シベリアンハスキーではない、人狼だ。
自転車は、とんでもないスピードで走り出す。回りの原付など余裕だ!?

「シロ…、もっとゆっくり走って!」

シロは、スピードを落とす。それでも、まだ早い。

「何か、こうしていると、昔を思い出すでござるな…。」

そういうと、また、シロはスピードを出し始める…。

「シロ!何度言ったら分かるのよ!もっとゆっくり走れ!」

さすがのシロも、驚いて、足を止める。

「もう、何度言ったら分かるのよ!
停まれと言ったら停まれ!スピードを落とせと言ったら、落とせ!
もう、あんたのおかげで車にひかれそうにはなるし、こけそうにはなるし、
バカ犬みたいにロープをグイグイ引っ張って行くんじゃない!!
帰りもそうなら安楽死させるからね!!
それに…、帰りはこれ、貼っていかなくちゃいけないんだからね。」

そういうと、蛍香はさっき事務所でタマモに渡されたポスターを、取り出す。
およそ、10枚ってとこだろう。

「蛍香どの、これ、落ちたでござるよ。」

そういって、シロは、手紙らしき物をてわたす。
さっき蛍香が、ポスターを取り出したときに落ちたものだ。

「シロ、ありがとね。」

蛍香は手紙を読む。

「じゃあ、行くよ!」

蛍香は手紙を、後ろのポケットに、突っ込むと自転車にのった。

「蛍香どの、手紙…何だったでござる?」

「“バイト料、時給300円以下でもいいって人がいたら即採用しといて”だってさ。」

「せっしゃには関係ないことでござるな…、
いくでござるよ!まずは、事務所の近くの喫茶店でござるな。」

「そうね、あんまり遠いところに貼ってもしょうがないからね。
  けど、シロあんたどういう距離感してるの?“事務所から近い”っていっても2qはあるわよ。」

「そうでござるか?べつにせっしゃはそんなこと気にしないでござる。
                         そんなことよりもう行くでござるよ。」

またシロが自転車を引く。さっきよりはゆっくりだがまだ早い。

「ついたでござるよ。」

シロにそういわれ、自転車から降り、窓にポスターをはったそのときだった。

「おねえさま〜、一生ついていきますぅ〜!!」

その声と同時に、蛍香は背後からワックスで髪をオールバックに固めた男にセクハラをかまされる。
シロは、ボーゼンと立ち尽くしている。
そして、振り払おうとしたときにオールバックセクハラ男と目が会った。

「ヨ・コ・シ・マ…。」

蛍香は、無意識の内に口にしていた。

だが…。

「なにするのよ〜!!この変態!」

蛍香に殴られオールバックセクハラ男ダウン。

「す、すいません、つい無意識のうちに体が引き寄せられてしまって。
              本当は雇ってくださいと言おうとしてたんです…。」

「あんた、どういう脳の構造してるのよ!」

「いや、本当です。 オレ、今マジで、バイトさがしてるんです。」

そういうと、オールバックセクハラ男は求人情報誌を、取り出した。

「しょうがない、セクハラの件は多めに見るわ。
    採用決まったら、連絡するから。それじゃあね。」

「ちょっと待ってください!連絡先もきかずにですか!?」

「あたりまえじゃない。いきなりセクハラかますやつが採用になるはずないじゃない。」

「給料はいくらでもかまいません。
  おそばに…、いえ、採用にしてください、たのみます。」

「じゃあ、時給300円でどう?」

「やります!」

「(ひのめさんの手紙にも書いてあったしまあいいか。)よし、採用にしてあげる。」

でも、採用にしたのは、ひのめの手紙のためだけではなかった。
なにかが、ささやいたような気がしたからだ「やっと、あえたな。」と。

(もう、採用決まったことだし、このポスターはいらないわね。)

そして、蛍香はさっき貼ったポスターをはがしながら、つづける。

「で、あなた名前は?」

オールバックセクハラ男は、改まった態度で答える。

「横須賀…、横須賀 祐悟、17歳高校2年です。」

「私は、蛍香ね、横島 蛍香、私も高校2年の17歳。
     それと、この子はシロね、いちよう高校生ね。
         あと、詳しい話と、手続きは事務所でするからついてきて。」

そう言って蛍香は自転車に乗った。

〜20分後、美神除霊事務所〜

「タマモさん、ちょうどバイトしたいって人みつかりましたよ。」

「ちょうどいいわ、ひのめも帰って来てるし、まあ、入ってもらって。」

蛍香に手招きされ、恐る、恐る、横須賀は入る。

「横島!?」

タマモは一瞬、自分の目をうたがった、そして、目をこすって再び横須賀をみる。

「タマモ…、
  おぬし、事務所に男の客人が来るたびにそう言ってるでござるよ…。」

「………。」

シロに指摘され返す言葉が無いタマモ…。
いつも、そう17年前横島が死んだ時もポーカーフェイスで、顔色ひとつ変えなかったタマモだったが、
横島の死に、一番ショックを受けていたのはタマモだったのかも知れない…。

そこに、横須賀が口をはさむ。

「あの〜、横島って誰なんですか?」

「横島先生は、32年前の事件の英雄であり、せっしゃの命の恩人でござる。」

シロが横須賀に、横島の武勇伝を語ろうとしたその時。
ひのめが入ってくる。

「お帰り、早かったわねぇー
        それより誰?その子、蛍香の彼氏?」

「違います(汗)この人はアルバイト希望者です。」

「横須賀です。」

「――で時給いくらが、希望?」

「いちよう、蛍香さんには300円って言ってあるんですけど…。」

「そう…。よし、採用!ここに必要事項記入してね。」

そう言うと、ひのめは契約書を取り出す。
そして、横須賀が書き終わったのを確認する。

「時給300円、基本的には、土日、平日あるときは電話するから。
 あと、他に分からないことがあったら蛍香に聞いてね。」

それだけ言うと、蛍香はシロとタマモを、つれて出て行く。
そして、タクシーを捕まえ、喫茶店へ。

「ねえ、タマモ横須賀クンってどう?
         GSの素質ありそう?」

「“どう?”って会ったばかりなのにいくら私でも分かるわけ…。」

「性格なら、横島先生とほぼ同じと分かるのでござるが…。」

タマモが話し終わるのを待っていたかのようにシロがすかさず言った。

「“性格”って、どうしてそんなこと分かるのよ?」

「さっき、蛍香どのがせっしゃと、散歩してたとき、アルバイトのチラシを貼ったでござろう。
  その時のことでござる。横須賀どのは、「おねえさま〜一生ついていきますぅ〜!!      
とか言って蛍香どのにセクハラをかましたのでござる。
 どうでござる、横島先生とそっくりでござろう。
でも、外見はぜーんぜん似てないでござるよ、横島先生はあんな髪型してないでござるもん。」

辺りに、いような静けさがただよう。
そして、タマモがその沈黙をやぶる。

「そういえば、美神さんも同じように、バイトのチラシ貼っていて、横島にセクハラかまされたらしい
わよ、結局、それが横島を雇ったきっかけみたいらしいけど。」

「そういえば、姉さんそんな事言ってたような気がする…。」

ひのめがそういうと、再び辺りに異様な静けさがただよう。
再び、タマモが沈黙をやぶる。

「ひのめ、私、思ったんだけど、今の話でわかったのは、
         横須賀は、横島と、性格はうりふたつって言ってもいいって事。
    そこから、美神さんと蛍香を置き換えたのが今の状況、けど美神さんと違って、蛍香は気が弱い…。
               とすると、セクハラ男と、純情で気が弱いかわいい子が事務所で二人きり!?」

またまた、辺りに静けさがただよう。

「急いで、事務所にかえるよ!?」

タマモとひのめは、声をそろえて言った。
そして、血相かえて事務所に向かう。
ガターン
ひのめが事務所のドアを蹴り開けた。
そこには、蛍香と横須賀が………、のんきにコーヒーを飲んでいた。

「あっ、すいませんコーヒーいただいています。」

「まあ、横島よりは理性があるみたいね。」

「何の話っスか?」

「いや、こっちの話…。」

「そんな事より、横須賀クン、もし蛍香に変な事したら焼き殺すからね…。」

そうタマモとひのめが声をそろえて言った。

「私は、パイロキネシスで。」
「私は、狐火で。」

二人の表情は普通じゃなかった。

「わ、わかりました。(汗)」

「わかれば、いいわ、じゃあ、明日8時に事務所ね。」

「じゃあ、オレ帰るッス。」そう言って横須賀は帰って行った。「あの二人、帰ってきた時点で、オレを
焼き殺すつもりだったよなぁ?」などと、独り言をつぶやきながら。

TO BE CONTINUED


※この作品は、赤のバンダナさんによる C-WWW への投稿作品です。
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