とら! 第1節 女子寮へ
薄暗い地下牢に閉じ込められた 悪魔がいた――― | |
( ・・・・・・・・・・・・ ) | |
≪ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・お目覚めかい? 長い眠りだったね。 | |
・・・・・・そう唸るな。 私も退屈してた所なんだ。 | |
そうだ ひとつキミに 1人の男の物語を語ってやろうではないか。 | |
キミのこれからに 深く関わる男かもしれないよ・・・ ≫ | |
■GS資格試験 試験会場■ | |
エミ | 「 いいワケ!今年こそは合格するのよ、タイガー。 |
タイガー | 「 わかっとりますエミさん! 1年前のワシとは違うんジャ! |
今年こそ合格してエミさんのお役に立つケエノ!!! | |
審判 | ≪ タイガー選手、前へ! ≫ |
タイガー | 「 ウッシャ―――ッ!!! |
ゴーストスイーパー資格取得試験2日目。 2次審査第一試合を終え64人に絞られ、あと1回勝てば合格という状態。 タイガー寅吉18歳(高校3年生)の2度目の挑戦が今、始まる! | |
審判 | ≪ 2回戦第3試合、タイガー寅吉 対 峯 仙香(ほうせんか)!! ≫ |
タイガー | 「 お、おなごジャ・・・(汗) |
水樹 | 「 仙香―――!! |
亜美 | 「 仙香がんばれ―――!! |
観客席から応援するのは、同じクラスの神野水樹(じんのみずき)と峰 亜美(みねあみ)。 彼女たち3人は六道女学院2年G組の生徒である。 仙香は1年前に、クラス対抗戦の決勝でおキヌ達と戦って勝利し、 霊体触手で相手の動きを封じることを得意とした黒装束の娘である――― | |
おキヌ | 「 タイガーさん がんばってー! |
一文字 | 「 負けんじゃねーぞタイガー! |
仙香はうちの学年で実技試験トップの奴だ! 霊体触手攻撃に気をつけろ―――! | |
結界の外からタイガーを応援する、六道女学院2年B組の面々、おキヌ・弓・一文字。 仙香は腕を挙げ、戦いの構えをとると――― | |
仙香 | 「 氷室さん達の知り合いとはいえ、手加減しないわよ。 |
タイガー | 「 ワ ワシも負けられんケンノー! |
審判 | ≪ 試合開始!!! ≫ |
仙香 | 「 くらえ! 霊体触手!! ――!?―― |
バチバチッ! | |
タイガー | 「 ぐおおおお―――っ!! |
仙香 | 「 さあ そのまま横になってお眠りっ! |
開始の合図と同時に、仙香の額から2本の霊波の触手が放たれ、タイガーの動きを止める! ・・・だがタイガーは、精神コントロールに逆らい、彼女に向かって1歩ずつ歩き出す。 | |
ピート | 「 タイガー! 得意の精神感応で幻覚攻撃するんだ! |
愛子 | 《 タイガークンがんばってー! |
横島 | 「 ねーちゃんデートしよー! |
女子高生 | 「 キャアアッ! ―バキッ!― |
客席から応援するピートや愛子たちの後ろでは、横島が六女の生徒をナンパしていたり・・・ | |
タイガー | 「「「 幻惑精神感能――――――ッ!!! <カッ!> |
タイガーは精神感応によりトラ男へ姿を変えると同時に、仙香にジャングルの幻覚を魅せる! そして茂みの中から、【ジャングルの邪精霊】が姿を現れると、仙香に攻撃を仕掛けさせた! | |
仙香 | 「 何ッ!? ―――シュバッ!――― |
ジャングルの邪精霊の攻撃に気を取られ、タイガーへの束縛力が弱まる! その隙にタイガーは触手が繋がったまま、仙香を殴りにかかった! | |
タイガー | 「 ガルル―――ッ!! |
仙香 | ( 幻覚か・・・なるほど、一文字さんが自慢するだけの事はあるわね!・・・だけど! |
バッ! ・・・仙香は透明化したタイガーのパンチをジャンプでかわす! そしてそのままタイガーを飛び越えるかのように、彼の後頭部に蹴りをいれた! | |
タイガー | ズガッ! 「 ガルッ!? |
弓 | 「 さすが仙香さんね。 彼女の力は、素手で行う近接戦においても六女トップクラス。 |
タイガーさんのパワーも、仙香のスピードと格闘センスの前にはついていけないようね。 | |
一文字 | 「 ・・・弓、おめえやけに仙香の肩もつなー、嫌いじゃなかったのかよ。 |
弓 | 「 わ、私はただ客観的に述べてるだけですわ! |
微妙にあわてる弓。 弓と仙香―――入試の実技試験の時も同点首位であり、 それ以降クラス対抗や実技など、常に学年NO.1をめぐって争うライバル関係である。 そして何度も模擬戦を行う中、お互いの能力、戦い方については理解を深めていた――― | |
タイガー | 「 邪精霊!! |
邪精霊 | ≪≪ キィ―――ッ!! ≫≫ |
一方で試合は、近接戦をあきらめたタイガーが距離をとり、3体の邪精霊を出現させていた! だが仙香は、3体の邪精霊の攻撃をすばやくかわしつづけている――― | |
ピート | 「 タイガー早く決着をつけるんだ! 時間がないぞ! |
客席で応援するピートの声が聞こえた一文字たちは――― | |
一文字 | 「 時間? ピートさん何言ってるんだ? |
弓 | 「 ひょっとして幻覚攻撃に制限時間でもあるんですの? |
おキヌ | ( あ・・・そうか、一文字さんたち、『暴走』のことしらないんだ・・・ |
タイガー | ( ダメジャ! これ以上は・・・! フッ・・・ |
タイガーがトラ男から人間の姿に戻ると同時に、周囲のジャングルや邪精霊の姿が消えた・・・ すると仙香は すぐさま触手のパワーを上げ、タイガーの動きを完全に封じるよう念じる! | |
仙香 | 「 さあ! そのまま横になってお眠りっ!! |
タイガー | ( くっ・・・! さっきの幻覚攻撃で精神力が・・・! |
がくっ・・・ タイガーはひざをつき、必死に倒れまいとするが・・・ | |
一文字 | 「 タイガー!! |
タイガー | ( 一文字サ・・・・・・・・・ |
・・・・・・ばたっ。 | |
そのまま意識を失い、床に倒れ伏せた。 | |
審判 | ≪ 勝者 峯!! 峯 仙香選手!! GS資格取得!! ≫ |
高々と右腕を挙げ ガッツポーズをする仙香の下に、クラスメイトたちが集まり祝福する。 その一方で気絶したタイガーは、タンカで医務室へと運ばれていった――― | |
一文字 | 「 タイガー・・・ |
弓 | 「 まあ、相手が悪かったとしか言いようがありませんわね。 |
それより一文字さん、次はあなたの試合でしょ。 | |
ショックであなたまで負けてしまうなんてこと、ないようにね。 | |
一文字 | 「 わ、わかってるよ! |
審判 | ≪ 一文字選手! 前へ! ≫ |
一文字 | ( ・・・・・・一緒に合格しようぜって約束したのに・・・・・・! |
一文字の握り拳に力が入る。 | |
審判 | ≪ 試合開始!! ≫ |
大男 | 「 ふっふっふっ・・・女とはツイてるぜ! 11%だ! |
11%の力で勝負してやろう! せめてものハンデだあ―――っ!! | |
一文字に襲い掛かる大男。 うつむいて考え込む一文字に、相手選手の言葉は届いていなかったが――― | |
バキィ―――ッ! | |
一文字はコブシに霊気を込めた霊気拳を、素早く相手の顔面にクリーンヒットさせると、 相手選手はもろくも崩れ去った・・・ | |
大男 | 「 ま・・・待て・・・まだあと89%が・・・それより俺の自己紹介が・・・・・・ ―ばたっ― |
審判 | ≪ 勝者 一文字!! 一文字魔理選手!! GS資格取得!! ≫ |
リポーター | ≪ えーそれでは 今年度首席合格の、伊達雪之丞選手にインタビューしたいと思います。 |
伊達選手、首席合格おめでとうございます。 ≫ | |
雪之丞 | 「 ありがとうございます。 |
リポーター | ≪ 伊達選手は前回も出場されたようですが、資格取得を辞退されたそうですね。 |
その理由(ワケ)は? ≫ | |
雪之丞 | 「 聞くな。 いろいろあんだよ・・・!(泣) |
ひそひそ | |
水樹 | 「 あの伊達って人、B組の弓さんと知りあいらしいわよ。 |
亜美 | 「 すごいよなー、首席合格者と知り合いなんて。 |
水樹 | 「 あー私も紹介してほしいなー。 |
少し離れた場所でその会話を聞いていた弓は、ニヤッと笑い満足そうな顔をしていた。 だが。 | |
クスッ。 | |
仙香 | 「 でも チ ビ じゃあねえ〜。 私たちより背が低いんじゃない? |
ムカッ! | |
弓 | 「 ちょっと仙香さん! 人の身体的特徴をけなすのはよくありませんことよ!! |
おキヌ | 「 ゆ、弓さんおちついて・・・(汗) |
リポーター | ≪ ―――ところで今回対戦された中でいちばん苦戦されたのはどの試合でしたか? やはり決勝の九能市戦? ≫ |
雪之丞 | 「 そうだな・・・3回戦の仮面の娘や4回戦のキョンシー使いもなかなか強かったが、 |
いちばん強いと感じたのは、準決勝で戦った六道女学院の娘だな。 | |
ああいった正統派のGSとの戦いは俺は燃える! なにしろママに似て『白』なのがいい! | |
リポーター | ≪ は? ≫ |
後半は顔を赤らめ、握り拳で力説する雪之丞。 何が『白』だったかはこの際問うまい。 | |
■医務室■ | |
その頃医務室で目を覚ましたタイガーは、一文字達が合格したことを知らされた。 一文字の他に横島、ピート、愛子、そして後方にエミがいる。 ピートや愛子は落ち込むタイガーを励ましていた。 | |
タイガー | 「 ・・・・・・ ―――ず〜〜〜ん――― |
ピート | 「 げ、元気出してくださいよ! 今回はたまたま運が悪かっただけで、 |
タイガーの実力なら充分合格圏内に入っているんですから! | |
愛子 | 《 そ、そうよ! 夢に傷ついても、また夢に向かって走り出せるわ! |
夕日に向かって走りましょう! それが青春よ! | |
そこに、しばらく静観していたエミがタイガーに近づいてくる。 | |
エミ | 「 タイガー おたくにはがっかりだわ。 |
タイガー | 「 エミさん・・・ |
げしげしっ =☆ 足蹴りにするエミ! タイガーは頭を抱えて亀のように丸くなっている。 | |
エミ | 「 ボンクラの横島でさえ1回で試験に受かってるのに、おたくは2回も落ちやがって!! |
タイガー | 「 あだだっ! すまんですエミさ―――ん!! |
横島 | 「 ボンクラって・・・(汗) |
ピート | 「 ああっ、エミさん落ち着いて・・・!(汗) |
げしげしっ | |
エミ | 「 うちの事務所に恥をぬりくさって、このバカ、このバカ!! |
タイガー | 「 すまんですジャ〜!! |
試合で傷ついたタイガーを足蹴りするエミを見た一文字は――― | |
一文字 | 「 ちょっとやめなよ! そんな仕打ちねえだろ! こいつだって頑張ったじゃねーか! |
エミ | 「 うちの問題に部外者は黙っているワケ。 こいつをどうしようと私の勝手なワケ! |
ピシッ! | |
一文字 | 「 なんだと・・・! |
ピート | 「 二人ともおちついて・・・! |
睨みあうエミと一文字をなだめようとするピート。 そしてエミは後ろを振り向くと――― | |
エミ | 「 タイガー おたくは1週間事務所出入り禁止! いいワケ! 」ギロッ! |
タイガー | 「 そんな・・・! |
エミ | 「 ・・・いきましょピート。 |
ピート | 「 エ、エミさん・・・! |
エミはピートの腕を取り、部屋から出て行った。 | |
一文字 | 「 ・・・チッ、なんだいあの女。 偉そうに。 |
タイガー | 「「「 うっ・・・ ぐうおおおおお――――――――ん!!!!! |
タイガーの叫びが部屋中に響き渡る! 耳を抑える横島たち。 | |
タイガー | 「「「 エミさんに、エミさんに見放された―――!! わっしは・・・わっしは―――!! |
タイガーは両手で頭を抱えてブンブンと左右に頭を振る! | |
横島 | 「 お、落ち着け! お前はとっくに見放されとる! |
愛子 | 《 横島クン、フォローになってないわよ! |
ぐっ ―――!?――― 一文字がタイガーの胸元をつかむと――― | |
一文字 | 「 みっともなく泣くんじゃねえ!! それでも男か!! |
タイガー | 「 ・・・・・! |
一文字 | 「 試験なんてまた来年受けりゃいいだろ! |
今回はちょっと運が悪かっただけさ・・・あんな女の言うことなんか気にする必要ないぜ。 | |
タイガー | 「 一文字さん・・・ |
ぱっ 一文字はタイガーをを放した。 | |
一文字 | 「 でも惜しいよな。 もう少し幻覚攻撃続けられたら勝ててたかもしれねえのによ。 |
タイガー | 「 ・・・だめなんジャ、ワシはエミさんの笛がないと長時間精神波は送れんのジャ。 |
一文字 | 「 えっ、なんで? |
タイガー | 「 そ、それはじゃノ・・・ |
タイガーはその理由を説明した――― | |
一文字 | 「 理性がぶっとぶ!? セクハラの虎!? |
タイガー | 「 そ、そうなんジャ・・・ |
一文字 | 「 ・・・つまり、横島になるってことか? |
横島 | 「 失敬な! 俺をこいつと一緒にするんじゃねえ! 俺は理性を持ってセクハラしてるんだ! |
愛子 | 《 横島クン、威張って言うことじゃないわよ! |
一文字 | 「 っていうか、それって余計にタチが悪いじゃねーか。(汗) |
タイガー | 「 ・・・確かに昔に比べれば、笛なしでも少しはコントロール出来るようになったんじゃがノー |
それでも短時間しか使えんし、まともに力を出せんのジャ。 | |
一文字 | 「 つまり、笛なしで理性をたもてるようになれば |
精神攻撃が大幅にパワーアップ出来るってことか? | |
横島 | 「 あ、そういえば船数十隻に乗ってる人たちを一度に幻覚をみせたことがあったよなー。 |
あの時も確か、エミさんが笛を吹いてたと思うけど。 | |
一文字 | 「 じゃあ笛がなくても能力が使えるように、特訓すればいいじゃねーか! 私も付き合うぜ! |
タイガー | 「 む、無理ですケエー! エミさんの笛がないとワシ・・! |
バンッ | |
一文字 | 「 なーに弱気になってんだよ! やってみなきゃわかんねえだろ? |
一文字、タイガーの背中をたたく。 | |
一文字 | 「 よし、決まりだ。 そしたらさっそく明日放課後から特訓だな! |
タイガー | 「 一文字サン・・・ |
ウルウルッ | |
愛子 | 《 そう、これよ! 私はこれが見たかったのよ――!! |
努力・友情・青春! ク〜〜〜ッ! 燃えるわ――!! | |
―――ひとり燃える愛子であった。 | |
■魔法料理 魔鈴 本日貸切■ | |
GS資格試験の夜、魔鈴の店で弓、一文字、雪之丞の合格パーティーが行われていた。 | |
令子 | 「 ・・・・・とまあ、おキヌちゃんとタイガーは残念だったけど、弓さん一文字さん、 |
それから首席の雪之丞、GS資格試験おめでとう!! 乾杯―――!! | |
一同 | 『『『『『 かんぱ―――――い !!!!! 』』』』』 |
Aテーブル。 | |
がつがつっ | |
貧 | 「 こらうまい!こらうまい! |
シロ | 「 あ、それは拙者の肉でござる! |
魔鈴 | 「 みなさん、どんどん食べてくださいね〜! |
Bテーブル | |
もぐもぐ | |
カオス | 「 ワシも来年こそは資格をとってやるわい! |
マリア | 「 イエス・ドクター・カオス! |
ピート | 「 前回の銃刀法違反で今回は出場停止でしたからね。 |
Cテーブルのおキヌの周りには、近所の浮遊霊たちが集まっていた。 | |
浮遊霊W | 《 おキヌちゃんは残念だったねえ。 |
おキヌ | 「 私なんてまだまだですからー。 |
ジェームス伝次郎 | 《 でもおキヌちゃんの場合、死霊使いとして特別に許可をもらえるんじゃなかったのか? |
おキヌ | 「 それだとなんだか私だけズルしてるような気がして・・・ |
やっぱりみんなと同じように試験で合格したいですし・・・ | |
浮遊霊W | 《 まったく、ワシのひ孫にもおキヌちゃんの優しさを見習ってもらいたいもんじゃ。 |
おキヌ | 「 あはは・・・(汗) |
Dテーブル | |
ひのめ | 「 んぐんぐっ |
美智恵 | 「 お母さん喜んでいたでしょう。 |
冥子 | 「 はい〜今年は2年生が頑張りましたから〜。 全部で12人もごーかくしたんですよ〜。 |
小鳩 | 「 わあ、すごいんですねえー。 |
Eテーブル | |
がやがや | |
令子 | 「 おしかったわね弓さん。もう少しでベスト4入りだったのに。 |
弓 | 「 美神お姉さま! |
一文字 | 「 そうだぜ、仙香と戦ってダブルKOだったもんな! |
Fテーブル | |
雪之丞 | 「 ふっ、俺のときと同じか・・・ ライバルがいるっていうのはいいもんだぜ。 な 横島。 |
横島 | 「 誰がライバルだ、誰が。 |
だいたいお前、去年の試験であんな事件起こしといて、よくまた試験を受けれたな。 | |
雪之丞 | 「 香港の元始風水盤の件で、小竜姫がGS協会のブラックリストから外してくれたおかげだ。 |
ぐおっ | |
カオス | 「 雪之丞! それは本当なのか!? |
雪之丞 | 「 カ、カオス!! そ、そうだが・・・ |
カオス | 「 くそーっ! わしも小竜姫に頼んどきゃよかったー!! |
マリア | 「 イエス・ドクター・カオス! |
横島 | 「 まったく、おまけに優勝までしやがって! |
女の子にキャーキャー言われやがってくそ〜! | |
俺なんか1人もナンパに成功せんかったのに!(血の涙) | |
雪之丞 | 「 ・・・・・・。(汗) |
泣く横島。 にぎやかなパーティーの中、店内をウロウロして辺りを見回すタイガーは・・・ | |
きょろきょろっ | |
タイガー | 「 ピートサン、あんノー エミさんは? |
ピート | 「 あの後パーティに誘ったんだけど、用事があるからってどこかへ・・・ |
タイガー | 「 そ、そっかー、まだ怒ってるんですカイノー・・・ |
唐巣 | 「 そう心配することはないよ。 エミくんはそう根にもつ性格ではないからね。 |
一同 | 『『『 そうかあー???(汗) 』』』 |
唐巣 | 「 ま、あせることもないさ。 高校卒業してからじっくり修行すればいい。 |
タイガー | 「 ・・・・・・。 |
◆ | |
■魔鈴の店の前■ | |
冥子 | 「 それじゃあ、お休みなさ〜〜い。 |
おキヌ | 「 おつかれさま〜。 |
夜も更け、それぞれ帰宅していく中、雪之丞は――― | |
雪之丞 | 「 弓 うちまで送るぜ。 |
弓 | 「 あ、ありがとう。 |
弓は顔を赤らめ、戸惑っていた。 すると後ろから横島が――― | |
横島 | 「 雪之丞、俺の弓さんになにするつもりだ!! 送り狼にでもなるつもりかコラ―――!! |
雪之丞 | 「 う、家まで送るだけだ! おまえは花戸を送ってやればいいだろ! お隣りさんだろ! |
横島 | 「 イヤじゃ―――っ! どっちも俺のもんじゃ〜〜〜!! |
がんっ =☆ | |
令子 | 「 あんたはまっすぐ家へ帰れ! いいわね! |
横島 | 「 ・・・・・あい。 |
美神にしばかれ、ズタボロの横島。 | |
一方で一文字がタイガーを探していたりしたのだが、彼の姿は見当たらなかったようだ。 | |
■翌日 小笠原エミGS事務所前■ | |
バイクに乗って、エミがやってくる。 | |
BURO――――N | |
エミ | 「 ふうー、意外と時間がかかったわね。 ・・・ん? |
事務所の入口を見ると、タイガーが事務所前で正座していた。 エミはタイガーの前でバイクを止め、ヘルメットを取って声をかけた。 | |
エミ | 「 ・・・おたく何してるワケ? |
タイガー | 「 エミさん! ワ、ワシ、1週間事務所出入り禁止ジャケエーこうして・・・ |
エミ | 「 おバカ!! 恥ずかしいことするんじゃない!! |
町を歩く人達が、道の真ん中で大男が正座している様子をじろじろ見ていた。 | |
エミ | 「 ったく、いいから事務所に入りなさい。 |
タイガー | 「 え、エミさん・・・ |
エミ | 「 ? |
タイガー | 「 あ、足がしびれて立てんのジャ〜〜〜!!(泣) |
どたっ =☆ こけるエミ。 | |
■同事務所内 所長室■ | |
エミは自分のイスに座ると、腕を組んでタイガーを軽く睨む。 | |
エミ | 「 で、今日はいったい何しにきたワケ? |
タイガー | 「 いや、その〜・・・ |
タイガーはその巨体に似合わず、両手の指をもじもじさせていた。 エミはため息をつくと・・・ | |
エミ | 「 ・・・まあ、いいわ。 |
たとえ試験に受かったとしても、今のあんたじゃあピンで仕事はさせられないしね。 | |
タイガー | 「 えっ? |
エミ | 「 つまり今のあんたは、精神感応しか特技がない。 |
それなのに得意のテレパス能力も短時間しか使えない上、 | |
すぐにケダモノになるんじゃあ、私はあんたを一人前と認めることができないワケ。 | |
しかもあんたの場合、神通棍やお札なんかのアイテムを使った攻撃もイマイチだしね。 | |
タイガー | 「 じゃあワシは合格してもGS見習いのままってことですカイノー。 |
タイガーの顔が青くなる。 するとエミはかばんの中から書類を取りだした。 | |
ばさっ | |
エミ | 「 あんた、明日からここで働きなさい。 |
タイガー | 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え? |
長い沈黙。 | |
エミ | 「 だからここで働きなさい。 |
タイガー | 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・い・・・ |
イヤジャアアア――――――ッ!!!!! | |
エミさんワシを捨てんでクレ―――ッ!!!!! | |
なんでもするケン! なんでもするケ―――ン!!!!! 」」」 | |
うおんうおんうお―――んっ! | |
げしげしっ | |
エミ | 「 は、放しなさいこのバカ! |
エミの足に抱きついて 大声で泣き叫ぶタイガー。 | |
エミ | 「 なに勘違いしているのよ! 精神感応がまともに使えるようになるために、修行してこいってことよ! |
タイガー | 「 ワ、ワシを見放したんじゃないのカイノー。 |
エミ | 「 おたくのようなデクノボウを雇う除霊事務所なんてないでしょ! わかったら放すワケ! |
じ〜〜ん | |
タイガー | 「 エミさん・・・ いっしょう! 一生ついて行きますケエエ―――ッ!!! |
エミ | 「 だからはなせっつってんだろこのバカ!! <がんっ>=☆ |
泣き叫ぶタイガー。まとわりつかれて迷惑がるエミ。 だが頼りにされて、エミの顔は心なしか嬉しそうにも見えた。 | |
◆ | |
しばらくして、タイガーとエミはワゴン車に乗り、修行の場所へと向かった。 | |
タイガー | 「 修行の場所って、もしかして妙神山ってとこですカイノー。 |
エミ | 「 あそこはあんたにはまだ早いワケ。 それに修行の目的はあくまで精神の修行。 |
昔みたいに極度の女性恐怖症が消えたとしても、あんたの内なる野獣を抑える | |
強靭な精神を持たない限り、あんたはゴーストスイーパーになれないワケ。 | |
タイガー | 「 お寺で座禅組んだり、滝にうたれたりってやつですカイノー。 |
エミ | 「 フフッ、もっとすごい所よ。 |
■六道女学院 校庭 全校集会■ | |
六道理事長 | < 〜というわけで、今年はこの2年生8人、3年生4人が |
GS資格試験に合格しました〜 みなさん、拍手〜。 > | |
ぱちぱちぱちぱちぱち | |
六道理事長の挨拶のあと、試験に合格した生徒を紹介し、1人1人にコメントを述べさせた。 そして全校集会終了後――― | |
一文字 | 「 はあーっ、緊張した――っ! |
弓 | 「 あなたが表彰台に上るなんて滅多にないことですからね。 |
一文字と弓の周りに、2年B組の生徒が集まりだしていた。 | |
女生徒 | 「 おめでとー 弓さん 一文字さん! |
女生徒 | 「 すごいわ2人とも! 2年生のうちのクラスから2人も合格者がでるなんて! |
合格者の周りには、それぞれ同じクラスの生徒達が集まり、彼女らを祝福していた。 そんな中、タイガーに勝利した2年G組の仙香たちの周りでは――― | |
女生徒 | 「 おしかったわ仙香! 弓さえいなければベスト4には残っていたのに! |
仙香 | 「 ま、1日で4試合も戦かったからね。 霊力の消耗も大きかったし。 |
対戦相手に恵まれたかおりとは状況が違うからね。 | |
その声がB組の弓にもきこえたらしい。 弓は仙香に近づくと――― | |
弓 | 「 ちょっと仙香さん。 それではまるで 私が弱い奴としか戦ってないみたいじゃない。 |
仙香 | 「 あら違ったかしら? 私は4回戦で首席候補といわれた修験者と戦っているのよ。 |
霊力も消耗されて当然じゃない。 | |
弓 | 「 私は3回戦であなたと同じクラスの峰(みね)さんに勝っているのよ。 |
それにここの3年生を2人も倒しているわ。 | |
仙香 | 「 フッ、今年の3年生を倒したぐらいじゃ自慢にならないわよ。 |
弓 | 「 なんですって〜!(怒) |
ずごごごごご! | |
女生徒 | 「 すごい霊気だわ・・・ |
女生徒 | 「 さすが2年生の首席を争う2人ね。 |
2人の殺気とも思える霊力の波動に怯える女生徒たち。 そこにやってくる3年生のおねーさま方。 | |
上級生 | 「 ちょっと聞き捨てならないわね。 下級生のくせに生意気なこと言ってくれるじゃない。 |
仙香 | 「 あら、3年生はたった4人しか受からなかったじゃない。 |
それだけで今年の3年生の実力がしれてるわ。 | |
上級生 | 「 な、何ですってー! |
仙香はやれやれといった感じで上級生を挑発し、空気が更に悪化する中、 2年D組の女生徒たち3人が加わってきた。 その中の1人、鼻先まで前髪を伸ばした少女が上級生たちに向かい――― | |
洋子 | 「 まーまー、ねーさんたち落ち着きーや。 下級生相手にムキになっても仕方ないやろ。 |
上級生 | 「 あんたは資格試験3位の御剣洋子(みつるぎようこ)! |
洋子 | 「 ここは穏便にいこ。 組合わせの悪さってのもあるんやから。 |
洋子は特徴ある口調で言いながら仲裁に入る。 だが洋子の後ろにいた2人の女生徒が前に出てきて――― | |
聖羅 | 「 そう、幸運も実力のうちですわ。 |
良くも悪くも、幸運はその人の霊力が呼び込むものですからね。 | |
春華 | 「 GSは実力世界。 敗者がいくら吠えても、負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ。 |
洋子 | 「 ・・・聖羅 春華、それフォローになってないよ。(汗) |
洋子と同じクラスのこの2人は、聖 聖羅(ひじりせいら)と桂木春華(かつらぎはるか)。 首に十字架のペンダントを身につけた、ショートカットの娘が結界能力者、聖羅。 そしてメガネをかけて性格きつそうな娘が、複数の鬼を操るキョンシー使い、春華。 この3人は昨年クラス対抗戦2回戦で、おキヌや弓たちと戦ったあの3人である。 | |
春華 | 「 それに両者KOで自滅したあなたたちより、うちのクラスの洋子のほうが上なんだから! |
自慢気に言う春華。 すると弓が――― | |
弓 | 「 あら、4回戦どまりのあなたが威張るものではなくてよ。 |
春華 | 「 な、なんですってー! |
私だって首席の伊達さんとさえ対戦しなかったら、もっと上にいけてたわよ! | |
フフンッ | |
弓 | 「 幸運がどうこう言ってたのはあなた方ではなくて? |
敗者がいくら吠えても、負け犬の遠吠えにしか聞こえないわ。 | |
プルプルプル・・・! | |
春華 | 「 こ、この女 やっぱり気にくわない・・・!(怒) |
一触即発の女生徒たち。 彼女達から離れたところで、女の抗争を見物していたおキヌと一文字は――― | |
おキヌ | 「 なんでこの学校って、こんなに対抗心が強いのかしら? |
一文字 | 「 なんだかんだでエリートお嬢様の学校だからな。 |
鬼道 | 「 こらーお前たちー なにしとるんやー!! さっさと教室に戻れ―――!! |
鬼道教諭らの声によりその場は静められた・・・・・・がしかし、 女たちの抗争は、今も水面下で激しい戦いを繰り広げられてるという――― | |
その日の放課後、一文字は学校の電話でピートと話していた。 | |
一文字 | 「 え? タイガー今日学校休んでるのか!? ・・・ああ・・・ああ じゃあな。 ―がちゃんっ― |
エミさんの事務所かけても連絡つかないし、どこにいきやがったんだあいつ? | |
一緒に特訓しようって言ったのによ。 昨日も勝手に帰りやがるし・・・ | |
ぶつぶつ文句を言いながら、一文字は下校していった。 | |
■夕方 六道女学院女子寮の食堂■ | |
寮生 | 「 ヤッホー、一番乗り! おばちゃーん、ご飯大盛り! 味噌汁もね! |
「 ・・・・・・・。 | |
寮生 | 「 ・・・おばちゃん? |
もそっ「 !? 女生徒はおそるおそる厨房の中を覗きこむと、奥に黒い大きな物体ががさごそと動いていた! | |
寮生 | 「「「 きゃあああ―――――っ!!!!! |
女の悲鳴は、ちょうど寮の近くまで帰ってきていた一文字にまで声が届いていた。 | |
一文字 | 「 な、なんだ!? |
一文字は走り出して寮内へと駆け込み、1階の食堂へと向かった。 | |
一文字 | 「 どうした!! |
悲鳴を聞いて集まっていた女生徒達の視線の先に、割烹着(かっぽうぎ)を着た大男がいた。 その大男は、数十人の女生徒に取り囲まれ・・・・・・怯えていた。 | |
一文字 | 「 た・・・・・タイガー!? |
タイガー | 「 い、一文字サン・・・ |
◆ | |
―――10分後、ほとんどの寮生が食堂に集まり、タイガーを囲むようにして取調べを行っていた。 | |
春華 | 「 ここ(女子寮)で住み込みで働くですって〜! |
タイガー | 「 はあ、家賃の換わりにここ(食堂)で・・・ |
聖羅 | 「 冗談じゃありませんわ! 男性と一緒に住むなんて! |
女生徒一同が頷き、同意する。 だがその中で、腕を後ろに組んでいた洋子が――― | |
洋子 | 「 うちは別にかまわないよ。 |
春華 | 「 なに言っているのよ、洋子! |
こんな野獣みたいな男と一緒に住んで、なにされるかわかったもんじゃないわ! | |
タイガー | 「 あ〜それなら心配ないケン・・・ |
春華 | 「 どうしてよ! |
タイガー | 「 そ、それは・・・ |
とそこに、G組の獣化能力者、亜美が、バスタオル1枚の状態でやってきた。 右手にはコーヒー牛乳を持っている。 どうやら風呂上りらしい。 | |
亜美 | 「 何の騒ぎだ? |
タイガー | 「 !? |
水樹 | 「 亜美! |
どっくんっ どっくんっ どっくんっ | |
タイガー | 『 ! ・・・お、おなごのはだか!! /// |
びりびりびりびりびりびりびりびり | |
タイガー | 「「「 グワァアアア―――――ッ!!! |
突然タイガーに電気が流れた! 寮生たちは驚いている! | |
亜美 | 「 な、なにこいつ? |
水樹 | 「 いいからあなたはなんか着てきなさい! |
騒然とする寮生たちのところに、冥子の母である六道理事長とエミがやってきた。 | |
六道理事長 | 「 あらあら、もう皆さんそろっちゃってるみたいね〜。 |
エミ | 「 おたくもうやっちゃったワケ? |
春華 | 「 六道理事長! |
仙香 | 「 ・・・それに、小笠原エミおねーさま!! |
( おねーさま・・・! 強くて美しい私のあこがれ――― 私たちよりほんの少し年上なのに、 呪術使いで最高のGS・・・・・ すてき――――!! | |
弓が美神を憧れの目で見ているように、彼女はエミを崇拝していた。 弓のようにキラキラさせたその視線を感じたエミが、彼女に気づく。 | |
エミ | 「 あら、おたく昨日うちのタイガーを倒したコじゃない。 |
仙香 | 「 えっ? あっ? |
エミ | 「 へえ〜 ・・・ここに住んでるワケね。 |
エミは仙香を軽く睨むと、すっと目線をそらした。 | |
仙香 | 「 あ、あのー・・・。(汗) |
六道理事長 | 「 え〜と、みなさんにご紹介しないといけませんね〜。 |
彼はタイガー寅吉くん、エミちゃんのところで助手をやっています〜。 | |
修行をかねてここの食堂で働いてもらうことになりました〜。 | |
寮生 | 「 エミ様の助手!? |
寮生 | 「 このおとこが!? |
エミはGS界において 最高の女呪術師として知られており、 この六道女学院では美神に次ぐ人気を誇っていた。 | |
春華 | 「 なんでここなんですか!? |
エミ | 「 私が説明するワケ。 タイガーの特技は精神感応、相手に幻覚をみせること。 |
ただそれには強靭な精神力が必要で、力を使いすぎると自分自身もコントロール出来ず | |
内なる野獣が目覚めてしまうのよ。 | |
精神を鍛えるためには、常に理性を保たなければならない。 | |
とくにあなた達のような霊能力が高いコがいるこの場所は霊的にいい刺激になるワケ。 | |
聖羅 | 「 でも、もしこの男が何かしたらどうするんですの? |
エミ | 「 心配にないわ。 タイガーの頭を見てみなさい。 |
タイガーの頭には、鉄のバンドが巻かれていた。 | |
エミ | 「 それは“ゴクウの輪”。 煩悩、つまり邪(ヨコシマ)なことを考えると電気が流れるワケ。 |
それも1回流れるたびにどんどん電圧が増していくワケ。 | |
原作者が59というキャラを登場させた時は、微妙な繋がりを喜んだりしたけどね。(遠い目) | |
一文字 | 「 ・・・なんの話だよ。(汗) |
エミ | 「 まあ、本当はこいつも女好きには違いないけど、いきなりセクハラしたりナンパしたり、 着替えを覗いたりするどこかの事務所のGSとは違うから、安心してほしいワケ。 |
一文字 | ( あいつか・・・ |
一文字は邪な男を想像した。 | |
六道理事長 | 「 それともうひとつ、エミちゃんはうちで呪術の講師をやってくれることになりました〜。 |
みんな〜、よろしくね〜。 | |
寮生 | 「 すごいわ! 呪術界トップクラスのエミ様の授業がうけられるなんて! |
寮生 | 「 呪術の講師なんてレアよレア! |
寮生 | 「 腕は美神お姉さまに匹敵するってうわさよ! |
ざわめく寮生達。 | |
仙香 | ( おねーさまが講師! /// どきどきっ |
ときめく仙香。 | |
六道理事長 | 「 反対の子はいないわね〜 それじゃあみんな〜 仲良くね〜。 |
エミ | 「 ・・・あ、それともうひとつ。 その“ゴクウの輪”、10回電圧がかかったら |
そこで自動的に解除されるけど、その瞬間あんたはうちの事務所“クビ”だから。 | |
タイガー | 「 え? |
エミ | 「 そのときは代わりの助手を、おたく達の中から雇おうかしら? |
ざわざわっ | |
仙香 | 「 エミ様の事務所に!? |
タイガー | 「 ちょ、ちょっとエミさーん! |
寮生たちがざわめく中、エミと理事長は部屋から出ていった。 | |
一文字 | 「 ・・・おいタイガー、マジでここに住むのか? |
タイガー | 「 一文字さん・・・ はっ! |
ごごごごごご! | |
寮生 | (( この男がエミ様の助手ー!? )) |
寮生 | (( ゆるせなーい! )) |
寮生 | (( こいつをクビにして私達がエミ様の助手になってやるわ! )) |
ふつふつと怒りにもえる寮生達。 その殺気におびえるタイガーであった。 | |
六道女学院は霊能科があることで広く知られており、 全国各地から霊能の才をもつ少女達がここに入学している。 そして必然的に、そのほとんどが寮生活をおくることとなる。 | |
■六道女学院第二女子寮■ | |
ここでは2年生を中心に、80人の生徒が生活している。 4階建てで1階は食堂、浴室などの共同の場。 寮生たちは2階から4階の各階15部屋、各室2人ずつ住んでいた。 | |
タイガー | 「「 ぐが――― ぐご――― |
タイガーは1階の6畳ほどの空き部屋(・・・というよりは物置)に住むこととなった。 物が雑然と置かれており、体の大きい彼はその間をぬうようにして寝ていると――― | |
ぴぴぴっぴぴぴっ・・・がちゃっ | |
タイガー | 「 んん・・・まだ5時50分か・・・・・はっ! そうジャ、メシメシ! |
目覚まし時計を止めたタイガーは、着替えた後ぼーっとしたまま食堂へと向かっていた。 | |
どしっどしっどしっ | |
タイガー | 「 ふあああっ・・・・・・ねむいノー。 |
少女 | 「 おはよ。 |
タイガー | 「 おはよう。 |
少女 | 「 朝ごはんがんばれよ。 |
タイガー | 「 ああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?・・・・・・ええっ!? |
タイガーは驚いた。 昨日までの様子からして、一文字以外に声をかけてくれる女子がいるとは思わなかったから。 すれ違いざまあいさつをした娘は、そのまま玄関で運動靴を履いて走り出ていく。 ジャージを着たその娘は、2年D組の御剣洋子。 昨年のクラス対抗戦であの美神に強いと言わせ、資格試験で雪之丞を最も苦しめた娘である。 | |
■食堂■ | |
タイガーがここにきて3日が経った。 仕事の内容は、食堂での調理手伝い。 すでに調理のおばさんが2人 朝食の準備をしており、タイガーもすぐさま手伝いにかかる。 そして7時。 タイガーはちらほらとやってくる寮生たちに、みそ汁をついでいた。 | |
タイガー | 「 お、おはようですジャ。 |
寮生A | 「 ・・・・・・。 |
寮生B | 「 ・・・・・・フン! |
無視する寮生たち。 泣くタイガー。 タイガーは必要以上にきつくあたられ、挨拶をしてもほとんどまともにかえしてくれなかった。 | |
春華 | 「 ふふふっ、いい気味ね。 |
聖羅 | 「 どうやらあの男、もう何度も電流を流してるみたいですわ。 |
その様子を離れた席からみているD組の2人の寮生、春華と聖羅。 実は彼女達がタイガーを追い出そうと、彼を毛嫌うほかの寮生達に必要以上にけしかけていた。 | |
春華 | 「 この調子ならあのトラ男(オトコ)、すぐでていきそうね。 |
聖羅 | 「 そうですわね。 ああ、同じ屋根に男がいると思うだけで、鳥肌がたちますわ!! |
バックにあやしいオーラを放つ聖羅。 | |
春華 | 「 あんたの男嫌いは普通じゃないからね。(汗) |
でも・・・フフフッ もうすぐよ。 もうすぐトラ男はクビになるわ! | |
そしたら私がエミ様の助手になってやるわ! GS試験に合格したこの私が! | |
箸でナットウを混ぜながら、燃える春華。 一方で聖羅はワナワナと震えると――― | |
聖羅 | 「 ・・・よかったですわね。 どうせ私は1回戦で負けたわよ・・・! |
春華 | 「 ゴ、ゴメン! もう、泣かないでよ! さんざん泣いたじゃない、来年またあるから・・・! |
泣きながら怒る聖羅を、あわてて慰める春華であった。 その一方で朝食をくばるタイガーの前に、仙香がやってきた。 | |
仙香 | 「 おはよう。 |
タイガー | 「 お、おはよう・・・ あ、確かホウさんじゃったかノー。 |
仙香 | 「 ・・・その呼び方やめてくれない? 苗字で呼ばれるの、好きじゃないの。 |
タイガー | 「 え? なんでジャ? |
仙香 | 「 ・・・(イライラ)いいから早くよこしなさいよ! |
タイガー | 「 あ、はい! |
仙香はご飯やみそ汁をのせたおぼんを持って、空いてる席に座った。 | |
タイガー | ( うう・・なんかきまずいノー。 |
数日前、GS資格試験2回戦で仙香と戦い、負けてしまったタイガー。 けっして彼女を恨んでいるわけではないが、気まずさにあふれていた。 それは仙香も同じで・・・ | |
仙香 | 『 なんか私のせいで働かされてるみたいでヤだわ。 |
しかもエミおねーさまの助手だったなんて・・・ | |
―――ちなみに仙香が苗字で呼ばれるのを嫌った理由は、 ホウさん→ホウ酸→ホウ酸団子→ゴキブリ 黒装束を着て霊体触手を使ったときの姿がゴキブリに似ていることから、 連想される苗字は知り合いにはなるべく使わせないようにしていたのである。(これは余談) | |
結局、まともにあいさつを交わしてくれた寮生はほとんどいなかった。 そして7時50分、ほとんどの寮生は学校にむかった頃、食堂に一文字がやってきた。 | |
どたどたどたっ | |
一文字 | 「 やっべえー 寝坊した! タイガー、メシメシ! |
寮生K | 「 あの男ならもう学校へ行ったわよ。 |
一文字 | 「 そうかあいつのほうが学校遠いもんなー、ちぇっ、途中まで一緒にいこうと思ったのによ。 |
◆ | |
■横島、タイガー達の学校の教室■ | |
愛子 | 《 えっ!? |
ピート | 「 女子寮に・・・ですか!? |
休み時間、愛子の机の周りにタイガーとピートが集まり、タイガーは今回の事情を話していた。 | |
タイガー | 「 そうなんジャ。 ワシも最初はちょっとラッキーかなと思うとったんジャが、 |
ちょっとでも邪(よこしま)なことを考えるとすぐビリビリくるしノー。 | |
おなごたちもワシに冷たいし、せまい所に寝かされるし・・・もうたいへんなんジャ。 | |
ピート | 「 それで、今何回電気が流れたんです? |
タイガー | 「 ・・・・・・7回。 |
ピート | 「 7回って、3日で7回ですか!? それじゃああと3回で・・・! |
グオオオ! | |
タイガー | 「 だって仕方ないんジャアー!! |
ネマキ姿でろーかを歩きまわるし! 床にぱんつがおちとるし! | |
レズっ子がなんか怪しいことしとるしー!! | |
ワシ、自分からヤラシイコト なんもしとらんのに女子寮が・・・ | |
まわりの環境が―――!!! ピートサンも男ならわかるジャロー、ワシの気持ち!! | |
ピート | 「 え、ええ、まあ・・・(汗) |
ピートの両肩をがっしり掴み、同意を求めた。 | |
タイガー | 「 ワシ、やめたい・・・ でもやめたらクビ・・・ ワシどうすればいいんジャ―――!! |
机にふせて大泣きするタイガーに、困るピートと愛子。 | |
愛子 | 《 で、でも今日横島君が休みでよかったわね。 |
ピート | 「 あ、そうですよ。 もし横島さんがこのことを知ったら・・・ |
(横島) | すごごごご! ((( じぃょし〜ぃりょ〜〜だあとオオ! ・・・いく・・・おれもいく!! ))) |
タイガーたちは想像した。 血の涙を流した後、女子寮内で嬉しそうに寮生を追いかけまわす横島の姿を。 | |
愛子 | 《 と、とにかく、一文字さんやおキヌちゃん達にも口止めしないと! |
タイガー | 「 そ、そうジャノ! |
その心配は無用だった。 おキヌと弓は一文字からタイガーのことを聞いていたが、 もちろん横島には黙っておくことを約束していた。 | |
◆ | |
■六道女学院第二女子寮 玄関■ | |
放課後、春華と聖羅は ほかの寮生数人と一緒に寮へ帰ってきた。 | |
春華 | 「 ・・・ってなかんじでさー、退寮する前にあのトラ男に寮全部の掃除をやらせましょうよ! |
寮生A | 「 それ、ひど〜い。 |
ずごごごごっ | |
聖羅 | 「 いいんですわ。 それぐらいのこと やってしかるべきですわ・・・。(闇笑) |
寮生B | ( こ、怖い・・・! |
寮生C | ( 聖羅さん、なにかあったのかしら・・・? |
寮生A | 「 でも春華はなんで、そんなにあの男を追い出したいの? |
ぴたっ・・・ 春華の足が止まる。 | |
寮生B | 「 ば、ばかっ! 春華さんはこの前男に振られたのよ! |
寮生A | 「 えっ!? うそっ!? |
寮生C | 「 春華さん好きな人いたんだー。 |
キ―――ッ!! | |
春華 | 「 お、オトコなんて―――!!(泣) |
聖羅 | 「 あら・・・・・・!? |
泣いている春華の前で、聖羅は寮内の廊下をぞうきんがけしているタイガーに気がついた。 春華も気づくと、彼女はタイガーにつかつかと近づいた。 | |
タイガー | 「 あ、おかえりですジャ。 |
春華 | 「 ・・・あんた、何してんの? |
タイガー | 「 そうじじゃが。 |
春華 | 「 見ればわかるわ! なんでしてるかってことよ! |
タイガー | 「 い、いやのう、ワシ、このままじゃあ近いうちに退寮しそうジャケンど、 |
嫌われたまま出てくのもなんか忍びなくてノー。 | |
春華 | 「 ・・・で、そうじしてるの? |
タイガー | 「 そうじゃ。 |
「「 ・・・・・・・・・・・・ ―――止まる空間。 | |
すたすたすた | |
春華 | 「 くだんないわ!さっさとやめれば! |
タイガー | 「 い、いまのはわざとじゃないケン・・・! |
聖羅 | 「 なんなの? |
寮生A | 「 そうじとそうじゃをかけたシャレじゃない? |
春華 | 「 とにかく、出てくつもりならさっさとでていったら!? どうせやるだけ無駄なんだから! |
一文字 | 「 ? |
とそこに一文字が帰ってきた。 春華たちはまだ気づいていない。 | |
春華 | 「 どうせ女子寮に住めてラッキーとか思ってたんでしょ。 |
そんなんでまともな修行なんか出来るわけないじゃない! | |
タイガー | 「 ウッ!! |
春華 | 「 まったく・・・エミ様もなんでこんな男を助手になんかしてるのかしら? |
試験で2度も落ちたような男より、 | |
1度で受かったこの私を助手にした方がよっぽどマシじゃない。 | |
タイガー | 「 ・・・・・・! |
ザッ・・・ | |
一文字 | 「 そんな言い方ねえだろ。 |
春華 | 「 魔理! |
一文字 | 「 タイガーだって頑張ってるんだ。 あんまり私の友達を悪く言うと、私も怒るぞ。 |
一文字は声をおさえながら言い、現役時代を思わせるような鋭い目つきで春華を睨んだ。 さすがに気の強い春華も、一文字の静かな威圧感に一歩たじろぐ。 | |
春華 | 「 くっ・・・・・・ ま、せいぜい残りの寮生活を楽しむことね。 行きましょみんな。 |
春華がそう言いながら寮内に入ると、他の寮生たちも後に続いた。 そして残ったタイガーと一文字は――― | |
タイガー | 「 ・・・ありがとう、一文字サン。 |
一文字 | 「 あ・・・いいってことよ。 それより今日学校でさー・・・ |
一転して、明るい話題を持ちかける一文字であった。 | |
彼の物語は まだ始まったばかりである―――――― | |
第1節・完 |
※この作品は、ヴァージニアさんによる C-WWW への投稿作品です。
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