とら! 第3節 神野神社へ


 
一文字 「 タイガーが神野の実家へ!?
洋子 「 うちらがおらん間にそんなおもしろいことが! 
GS特別研修のため、1週間寮を離れていた一文字たちは、
寮生たちから先週のネズミのネクロマンサー騒動のことを聞いていた。
洋子 「 それで水樹は?
聖羅 「 それが案内とかいって 一緒にいったきり帰ってこないんですのよ。
そこに水樹と同じクラスで、寮でも同じ部屋に住んでいる仙香が―――
仙香 「 ・・・・・・お父様に捕まってるのかしら?
一文字 「 どういうことだ仙香? おめえ水樹のオヤジのこと知ってるのか?
仙香 「 GS試験の後 お父様から電話があったの。 水樹の試合内容とかいろいろ聞かれたわ。
洋子 「 水樹ちゃん 試験2回戦でギブアップしとったからなー。
仙香 「 あの娘のお父様 凄腕の除霊師らしくて
  精神感応者の中でも、心理的操作に関しては世界でもトップクラスといわれてるらしいわ。
一文字 「 そんなにすごい人なのか? 水樹のオヤジって!?
仙香 「 心理攻撃のプロの娘が心理的に弱いんじゃあねー、お父様もさぞ心配してたと思うわ。
  いまごろなにをしているのやら・・・・・・

リポート14 『神野神社』

■神野神社 階段■
時は遡(さかのぼ)り、ネズミの死霊使いとの戦った次の日。
タイガーと神野水樹はそれぞれの学校を休み、電車とバスを乗り継いで水樹の実家のある
須藤町(すどうまち)へとやってきた。
タイガーと水樹は 長い石の階段を登っていた―――
タイガー 「 ゼイ、ゼイ・・・・・・神野サン 神野神社はまだかノー。
水樹 「 ハア、ハア・・・・・・あとちょっとよ。
タイガー 「 ゼイ、ゼイ・・・・・・さ、酸素〜〜。
水樹 「 ハア、ハア・・・・・・高さ1500メートルの所にあるからね。
  私も久しぶりだからちょっときついわ。 少し休みましょ。
タイガーは重い荷物を降ろし、2人は階段に腰掛けた。
タイガー 「 意外と遠い所にあるんじゃノー。
水樹 「 一番近いバス停から1時間も歩かなきゃ着けないからね。
  だから私は中学生の時までふもとの親戚のおじさんの家から学校に通っていたのよ。
  でもまいったわ〜 GS試験に落ちたこと、お父さんかなり怒っていたから。
タイガー 「 スマンノー 神野サンに道案内までしてもらって。
水樹 「 別にいいわよ。 お父さんも 『一度帰って来い!』 って言ってたから。
タイガー 「 お父さんてどんな人なんジャ?
水樹 「 ・・・・・・会えばわかるわ。
タイガー 「 ?
■神野神社■
30分後、2人は神野神社に到着した。
きょろきょろ
タイガー 「 ここかー なかなかりっぱな所ジャノー!
水樹 「 ただいまー。
境内のなかでは巫女の衣装を着た30代前半ぐらいの女性がいた。
水樹 「 お母さん!
神野母 「 水樹! おかえんなさい!
水樹は母親のもとへと飛び込んだ。
タイガー ( 若いおふくろさんジャノー。
神野母 「 あんた ちぃとも帰ってこんからおとうイライラしとったんよ。
水樹 「 ・・・やっぱり。(汗)
神野母 「 おとうー! 水樹が帰ったんよー!
社の中から白装束を着てひげをはやした、タイガーと同じぐらいの大男が現れた。
のそっ
神野父 「 おお水樹、帰ったかー。
水樹 「 お父さんただいま!
神野父 「 お父さん? 昔みたいに『父っちゃ』と呼んだらどうだべ?
水樹 「 い いやよ! 東京じゃそんな呼び方する人はいないわよ!
神野母 「 まーあんたすっかり東京に毒されちゃってー。
神野父 「 わははは! まあ、しゃべり方はええとして・・・・・・・・・水樹。  ――ギラッ――
水樹 「 えっ!?(汗)   ―――ズザッ―――
急にまじめな顔になった父親を前にあとずさる水樹。 
神野父 「 おめー 試験に落ちたんじゃってのう。
水樹 「 は はい・・・・・・(汗)
神野父 「 ・・・・・・水樹。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・(汗)
うが――――――っ
神野父 「「「   バァカモンが――――――!!!!!
水樹 「 ひいいいいいっ!!!(泣)
神野父 「 神の血を引く神野家に生まれながら たかがあの程度の
  試験にも受からんとは、おめえは東京で何をしとったんじゃ―――!!!
水樹 「 ご ごめんなひゃ〜〜い!(泣)
親父は指を2本水樹の口にいれ、左右にひっぱっていた。
神野父 「 おとこでもできたか!! 夜な夜な遊びまわっとったんじゃなかろうの!!
水樹 「 ほんあほほあいあよ〜!(そんなことないわよー!)(泣)
神野母 「 まったくおとう 水樹が帰るといっつもこの調子なんじゃから。
タイガー 「 あはは。(汗)
神野母 「 ところであんた誰?
ここで神野夫婦はようやくタイガーに気づいた。
親父は水樹を離し、タイガーに近づきジロジロ見まわす。
神野父 「 ふう〜む きさま!!
タイガー 「 は はいっ!!
神野父 「 水樹ともうえっちはしたのか?
どたたっ =☆
こける水樹。
タイガー 「 め めっそうもないですジャ!!
神野父 「 じゃあムコにこんか? 歓迎するぞ。
水樹 「 父っちゃー!! 何考えてんだ!!
思わず地がでてしまう水樹。
水樹 「 いきなり初対面のひとにゆーことじゃないわよ!!
神野父 「 なにを言う! これだけのガタイのいい奴、なかなかおらんぞ!
水樹・タイガー ((  からだがでかければ、それでいいのか?(汗)
■神野家自宅■
その日の夕方。
社務所(しゃむしょ:神社の事務、神事を行う為の会議を開いたりするところ)の
奥の自宅の居間、神野父の前にタイガー・水樹が座っていた。
神野父 「 がははは! あんたがタイガーさんじゃったべかー! なまえどうりのからだじゃのー!
水樹 「 体からいい加減に離れてよ! お父さん!
神野父 「 あんたのことは小笠原さんから聞いとった。 なんでも精神修行したいそうだのう。
タイガー 「 はいっ!
神野父 「 よかろう! ちょうど人手が足りんところだったんだべ!
タイガー 「 人手がたりんて・・・
神野父 「 なーに、修行の合間に買出しやここの掃除を手伝ってくれるだけでいい。
タイガー 「 そんぐらいのことじゃったらお安い御用ですジャ。
神野父 「 よし決まりだ! 今日からしばらくここに住むがええ。
タイガー 「 はいっ! 神野師匠!
神野父 「 水樹もな。
水樹 「 ・・・・・・は?
神野父 「 ついでだ。 おめえも修行してけ。
水樹 「 ちょっとまってよ!
  今日はタイガーさんを案内しただけで 修行するつもりなんて私は―――
ギロッ・・・神野父はするどく水樹をにらむと―――
神野父 「 じゃあおめー なにしに東京さいっただ?
  日本一の霊能学校にどーしても行きたいっつってたから、行かしてやってんだ。
  それがなんだ。 
  GS試験に落ちるわ、 <ぐさっ>
  クラス対抗戦でもすぐ落ちこむわ、 <ぐささっ>
  臨海学校ではメロウごときにパニックになるわ・・・・・・ <ぐさささっ>
神野父が発言するたびに、水樹の胸に矢(イメージ)がつきささる。
水樹 「 な、なんで知ってるの?
神野父 「 おめえの同僚のホウってコに聞いただ。
水樹 ( うう〜 仙香〜 帰ったらひどいから!
神野父 「 とにかくおめえは心がなっとらん!
  しばらく学校さ休んでいいからここにいろ! いいな!!
水樹 「 う・・・・・・
今にも泣きそうな水樹。
神野父 「 話は決まった! おいかあちゃん 飯はまだかー!!
神野母 「 すぐ出来ますよ。
じりりりりりりん じりりりりりりん
神野父 「 おい水樹 電話に出ろ。
水樹 「 ・・・・・・はーい。
水樹はしぶしぶ電話をとる。
がちゃっ
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・はい・・・・・・
< 神野さんかのう。 いい加減に掛け金の7万5千円払ってくれんかのー。
水樹 「 ・・・・・・は?
< あんたんとこの嬢ちゃん ごーすとなんたら試験におちたんじゃろ〜。
  おめーさん絶対受かるゆーて大口たたいとったでねーか。
  ひとり5千円 全員分で7万5千円、男なら約束守ってほしいのう。
わなわなと震え出す水樹。
水樹 「 ・・・・・・お父さん。 7万5千円ってどういうこと?
神野父 「 あ? おめえ何を言って・・・・・・はっ!!
どっと汗が流れ出す親父。
水樹 「 八百屋のおじさん 掛け金払えって言ってるわ。
神野父 「 な なんのことかのう。(汗)
キッ
水樹 「 父っちゃ―――!!
  娘を賭けの対象にするなんて いったいどういうことだー!!
  これじゃあわたし明日から地元歩けないじゃない!!
神野父 「 い いやあ話の流れと言うかなんと言うか・・・・・・はっ!?
後ろに母親が仁王立ちで立っている。
神野母 「 おとう! 賭け事あんなにやめてけれっていったのにあんたって人は!!
神野父 「 まて! 話せばわかる! はなせば!
にじりよる娘と母。 あとずさる親父。
このあと親父は夜遅くまでこってりとしぼられることとなる―――
タイガー ( ・・・ワシひょっとして とんでもない所にきたんカイノー。(汗)

リポート15 『学校へ行こう!』

タイガーが神野神社に来て1ヶ月がたとうとしていた。
季節は初冬、高地にあるこの付近ではすでに雪が降り積もっている。
タイガーの修行は続いていた。
朝6時に起きて禊ぎ(みそぎ)、座禅、掃除、買出し、読書、その他雑用・・・・・・
同じことが毎日繰り返されていた。
そして外界との接触は極力避けられ、霊力を使うことも禁止されていた。
買出しについても、購入したら速やかに戻ってくるよう言われており、
タイガーも神野の父親の言いつけをまじめにこなしていた。
■須藤町商店街■
タイガー 「 えーと これで買出しは全部カイノー?
水樹 「 あとお米も買わなきゃ 今日は重くなりそうね。
タイガー 「 ワシは体力だけなら自信があるケエ 大丈夫ジャ!
タイガーと水樹はふもとの町に降り、雪の降る中買出しをおこなっている。
水樹も結局ここに残り、タイガーと同じように精神修行を行っていた。
タイガー 「 ・・・・・・・・・・・・はあ。
水樹 「 どうしたの?
タイガー 「 いや なんか毎日毎日おんなじことをやっとるじゃけやから
  本当に力がついてきとるんかノーと思うての。 
  神社や寺の本を読む時なんか つろうて眠くて。
水樹 「 こんなものよ。 私も夏休みのたびに似たようなことをしてきたもの。
  その度に霊力が上がっていったし。
タイガー 「 ほえー。
水樹 「 お父さん 昔は除霊の仕事をやっていたのよ。
  だけどこんな小さな町でそうそう霊の事件なんておこらないし
  たまにあっても隣村の神社のおじさんが祓ってくれるから
  今は除霊のときに使うお札を時々つくってるぐらいだけどね。
話しているうちに米屋に来た。
水樹 「 おじさーん、お米10kgくださーい。
米屋の主人 「 あいよ!
おばさん 「 水樹ちゃん、あんたら最近よく一緒にくるねえ。 あんたのカレシかい?
水樹 「 やめてよおばさん! 前にいったでしょ、うちに修行しにきているひとだって。
おばさん 「 あらそうだったかねえ〜わたしゃてっきりダンナさんを連れて帰ってきたと思っとったんよ。
水樹 「 だから違うって!
2人は米屋を後にした。
水樹は顔を赤くしたまま、ブツブツ文句を言っている―――
水樹 「 まったくも―――!
  どうしてこの町のおじさんおばさんたちって、こういう話がすきなんだろう。
タイガー 「 そ そうジャノー。
ぼそっ
水樹 「 私にだって好みはあるわよ。
がーん 
タイガー 「 !!
水樹 「 あ、ごめん! 別にタイガーさんがどうこういうんじゃなくて―――!
あわてて取り繕う水樹。
タイガー 「 いいんジャ ワシは慣れとるケン・・・・・・慣れとるケン!
泣きながら耐えるタイガー。
とそこに学校帰りの高校生5・6人とすれ違った。
高校生 「 ―――だべー
高校生 「 えーマジでー
高校生 「 そんでこの前―――
水樹・タイガー 「「  ・・・・・・・・・・・・・
水樹 「 ・・・・・・ねえ。
タイガー 「 ・・・・・・ああ。
水樹 「 私たちもう1ヶ月学校に行ってないわよね。
タイガー 「 みんなどうしてるかノー。
水樹 「 もう、期末試験の時期よね。
タイガー 「 出席足りんで留年してしまうノー。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タイガー 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
水樹 「 帰ってお父さんに 東京に帰るよう言いましょ。
タイガー 「 そうジャノ。
                         ◆
■神野神社 神野家自宅■
その日の夜、タイガーと水樹、神野夫妻が夕食をとっていた。
神野父 「 学校?
水樹 「 うん。 だって期末試験もあるし このままじゃ留年しちゃうわ!
タイガー 「 ワシもただでさえエミさんの助手の仕事で休みがちじゃったケンノー。
  これ以上休むとさすがにまずいんジャ・・・・・・
2人がそういうと、神野父は黙って書類を渡した。
タイガー 「 これは?
神野父 「 高校の編入届けだ。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
神野父 「 おめえたち 明日からふもとの学校さいけ。
  もう六道にもタイガーの学校にも手続きは済ませておいた。
水樹 「 ちょっとまってよ! そんな話聞いてないわ!
きっぱり。
神野父 「 今した。
キッ
水樹 「 なによなによ!! いくらなんでもひどいわよ!!
  そんな大事なこと勝手に決めちゃうなんて!!
神野父 「 修行の間だけだ。 ほれ せーらーふくとがくせーふくも用意しとるし
  おめえたちの必要な荷物も寮の人に送ってもらっとる。
親父が見た先に、ダンボール5・6箱が郵便物で届けられている。
タイガー 「 ナント!
神野父 「 わしもおめえらのことちゃんと考えてるべや。
  これで心おきなく学問にも励むがエエ! ガハハハ―――ッ!
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
高々に笑う神野父。 一方で水樹は黙ってうつむいていた―――
神野父 「 がははははっ!! なんだ水樹 父の心意気にかんどーして声もでんかー?
水樹 「「「   父っちゃの バカ――――――!!!
ばたばたばたっ
水樹はそういうと、2階の自分の部屋にかけあがってしまった。
神野父 「 ・・・・・・ふっ 水樹め、あんなに照れなくてもいいのによー。
神野母 「 おとう あれのどこが照れとるんだべ。
タイガー 「 あんノー。
神野父 「 なんだ?
タイガー 「 水樹サンの編入はわかるが、ワシの編入届けいったいどうやって・・・?
神野父 「 小笠原さんに頼んどいた。 あの人あんたの身元引受人みたいなもんじゃろ。
タイガー 「 そうか・・・でもワシらの意見無視して勝手に決められるもんなんかノー?
神野父 「 そう深く突っ込むな。 できたもんは仕方なかろう。
タイガー 「 ・・・・・・・・・・・・
どたどたどた ガチャッ キイイーばたん カチャッ
水樹は2階の自室に入り、鍵をかけてベッドにもぐりこんだ。
水樹 ( 父っちゃのバカー! いきなり転校なんて!
・・・とんとん
しばらくして、部屋の前にきたタイガーが戸をたたいた。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タイガー 「 水樹サン ワシー明日から親父サンの言う高校に行くケン。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
タイガー 「 ワシーここでもうしばらくがんばってみるつもりジャ。
  もともと案内だけじゃったのに 水樹サンまで付き合わせてしもうてスマンと思うとる・・・
  ワシからも親父サンに頼んでみるケエーあんまり落ち込まんといてくれノー。
水樹 「 タイガーさん・・・・・・
タイガー 「 じゃあ おやすみなさい。
タイガーはそういうと、自分が泊まっている客間の部屋へと入っていった。
                         ◆
翌日早朝転校初日の日、神社の鳥居の所で神野夫妻はタイガーを見送っていた。
神野神社からタイガー達の行く神御呂地(かみおろち)高校まで2時間近くかかるため
それだけ早く出発しなくてはならなかった。
神野父 「 気合いれていってこい!
神野母 「 そんじゃあ道中くれぐれも気をつけるんだよ。
タイガー 「 わかったですジャ! ・・・・・・あ!
自宅の方から、黒いセーラーふくを着た水樹が歩いてきた。 神野母が駆け寄る。
神野母 「 水樹! あんたも行くんだね!
水樹 「 2学期の間だけよ。 1月からは六女に戻るからね!
タイガー 「 水樹サン!
喜ぶタイガー。 そこに神野父も近づく。
神野父 「 ・・・水樹。
水樹 「 ・・・なに?
神野父 「 2学期と言わず3学期までいろ。 なんなら次のGS試験までいてもいいんだぞー。
水樹 「 キッ!!(怒) 絶対戻る! 紅白見ておせち食べたら絶対東京に戻ってやる!!
水樹はまだ薄暗い中、足元の雪をドスドス踏みしめながら長い階段を降りていった。
■神野神社 階段■
タイガー 「 う〜、 やっぱり朝の山は寒いノー。
水樹 「 そうね。
2人ともコートとマフラーをはおっているが、それでも冬の山は寒い。
タイガー 「 水樹サンは中学生までこの町にいたんじゃろ? 同級生に会えるかもしれんノー。
水樹 「 そうね、この辺に高校って一つしかないから ほとんどみんなそこにいってると思うわ。
  実はちょっと楽しみでもあったの、みんなに会えるから。
タイガー 「 そうじゃったんかー。
水樹 「 お父さんには内緒にしててよ。 また調子にのっちゃうから。
タイガー 「 わ わかった。
■高校付近■
タイガー達は長い階段を降りてバスに乗り、そこから歩いて神御呂地高校へと向かった。
その頃にはほかの学生の姿も多く見られていた。
女子高生A 「 ねえ水樹? 水樹じゃない!?
水樹 「 あ みんなー!
女子高生B 「 やっだーどうしたのさ! 東京の高校に行ったんでねえべか?
水樹 「 いやーそれがいろいろあって・・・
タイガー ( 水樹サンの同級生ジャローノー。
タイガーが、少し離れてそんなことを考えていた。
ひそひそ
女子高生A 「 ねえ、あの人見かけねえ顔だけど、ひょっとすて水樹の知り合い?
水樹 「 ・・・そうだけど。
女子高生B 「 じゃなに、転校生なわけ?
水樹 「 そうよ、うちの神社で修行中の人よ。
キャー
女子高生A 「 じゃあ同棲ー!?
女子高生B 「 いや〜水樹のすけべ〜!
女子高生C 「 裏切り者ー!
くわっ
水樹 「 あんたたち何でそうなるのよ!
タイガー ( 楽しそうジャノー。
自分のこととは露知らず、水樹と友人の再会を喜ぶタイガーであった。

リポート16 『続・高校生日記!!』

■神御呂地高校 3年B組■
タイガーと水樹はまず職員室に行った後、
担任の先生と共に水樹は2年A組、タイガーは3年B組の教室へと向かった。
担任の先生 「 ―――というわけでみんなー 顔に怖がらず仲良うするべや。
ホームルームが終わり、担任の先生は教室を出た。
女子生徒A 「 なあ 東京ってどんな所だ!?
男子生徒A 「 でかいガタイしとるべー!
男子生徒B 「 何しにこんな山奥の学校にきたん!?
タイガーの元に一気につめよってきた同級生達。
こんないなかの学校に転校生は珍しいらしい。
男子生徒A 「 へえー 神野神社にいるんだべかー。 えらい遠いとこから来とるんやのう。
ぴくっ ―――離れた席でタイガーの話を聞いていた、1人の女子生徒が反応した。
女子生徒S ( 神野? あの子も来てるんだべか?
その女子生徒は人だかりになってるタイガーの所へ近づいた。
女子生徒S 「 なあ ひょっとすて水樹ちゃんも来とるんだべか?
タイガー 「 あ ああ 2年A組におるはずじゃが――
女子生徒S 「 そっ。
そういうと彼女は教室を出て行った。
タイガー 「 知り合いなんかノー。
女子生徒A 「 ええ 彼女のうち神社やってるからね。
  隣町、須藤町の神野神社とは昔から付き合いがあったみたいよ。
■2年A組の教室■
水樹は、今朝再会した中学時代の友達と教室で話していた。
すると先ほどタイガーに声をかけてきた女子生徒が、教室の前で水樹を呼んだ。
女子生徒S 「 水樹ちゃんいるー?
水樹 「 あっ! 早苗姉ちゃん!?
水樹は廊下に出た。
早苗 「 水樹ちゃん元気そーだな。 くるならもっと早く教えてほしかったべ。
水樹 「 うん それが昨日急にきまっちゃってさー。 連絡する間もなかったのよ。
早苗 「 ん? 水樹ちゃんしゃべり方かわったな。 すっかり東京さの言葉になってるべ。
水樹 「 うん あっちの生活長かったから。
早苗 「 そういえばなんで 六女(六道女学院)やめて戻ってきたんだ?
水樹 「 それは・・・話すとながくなるからまた今度にね。
早苗 「 ふーん・・・
き〜んこ〜んか〜んこ〜ん
早苗 「 おっといけねえ、次の授業が始まっちまうだ!
  あ それと水樹ちゃん、放課後に手伝ってほしいことがあるんだけど。
水樹 「 え?
■3年B組■
その日の放課後。
タイガー ( 水樹サンも友達との付き合いもあることじゃし、先に帰るかノー。
 
早苗 「 タイガークン。 ちょっと頼みがあるんやけど。
タイガー 「 えっ?
話しかけたのは朝、水樹のことを聞いてきた女生徒だった。
早苗 「 おめえGSの助手さやってたんだべ。 ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど。
タイガー 「 そりゃかまわんがー。
早苗 「 それじゃあちょっときてけろ。 水樹ちゃんにはもう言っとるから。
タイガー 「 水樹サンも? 除霊の仕事なんかノー?
早苗 「 うーん ま、そんなとこだ。
タイガー 「 わかった。 ワシでお役に立つのなら何でも手伝うケン!
早苗 「 よしきまりだ。 わたすは氷室早苗! よろしくな!
                          ◆
■音楽室■
そのあとタイガーと早苗は、音楽室の前へとやってきた。
そこにはすでに、水樹と音楽の先生が待っていた。
タイガー 「 ――それで手伝うことってなんなんジャ?
早苗 「 なかを見てけれ。
早苗はそういうと扉を開けた。
するとだれもいないはずの音楽室の中から、ピアノの音が聞こえてきた。
ちゃりらりらんっ♪ちゃりらりらんっ♪ぱらぴれぴれぽらぽろんっぽっぽん♪
水樹 「 誰もいない・・・
タイガー ( どっかで聞いた音ジャノー
早苗 「 アレを見てけろ。
早苗の指差す先にはピアノがあり、人がいないのにピアノは勝手に動いていた。
水樹 「 あ あのピアノ誰もいないのに勝手に動いてる!?
早苗 「 いやいるべ。 姿は見えんけどな。
タイガー ( なんか前にもこんなことがあったような・・・どこじゃったかノー?
音楽の先生 「 先週からずっとこうなのよ。 これじゃ授業もできやしない!
  じゃ 先生は用があるから、頼んだわよ除霊委員!
早苗 「 勝手に妙な役職ふらんでけろ!
タイガー ( これもなつかしい! ・・・あ そうジャ!
早苗 「 わたすのちからでずっと説得しとるんだども、こいつちっともどかねえだ!
  おいおめさ! いい加減にどっかいってけろ!
誰もいないピアノに向かって叫びだす早苗。
早苗 「 ・・・なんだと! こったらかわいいコの言うことがきけねえのか! このナルシス男!
水樹 「 あの〜早苗姉ちゃん、私には全然見えないんだけど・・・
早苗 「 わたすにもほとんど見えねえ。 テレパシーで直接話しかけてるだ。
  “霊視ゴーグル”があれば見えるだども あれ高いからなー。
タイガー 「 あのーワシこの妖怪知っとるケン。 とりあえず姿を見えるようにするケンノー。
早苗 「 えっ!?
タイガー 「「「   メゾピアノ!! 出てきんシャイ!!  <ボッ>
キイイイ―――――ンッ ピシパシッ
タイガーはそういうと、瞬間的に精神感応を使い 霊を目視できるようにすると、
ピアノのイスに座る男が浮かんできた。
その男はタキシードを着てバラをくわえており、ウェーブのかかった紫色の髪をしていた―――
水樹 「 見えた!
タイガー 「 ウッ!?
立ちくらみをしたかのように、ひざをつきしゃがみこむタイガー。
早苗 「 どうしただ!? まさかこいつがなんかしただか!?
タイガー 「 い いやなんでもないケン。 それより・・・
3人はピアノに座る男に注目する。
メゾピアノ 《 なんだい君は。 びっくりするじゃないか。
  僕の曲を聴きたいのならもっと静かにしてくれたまえ。
 
水樹 「 なんなのこのひと・・・
タイガー 「 こいつは【メゾピアノ】っていう学校妖怪で
  学校に入ってピアノを弾く、ただそれだけのはた迷惑な妖怪ジャ。
  前にワシの学校にもでたんじゃが、まさかこんな所にきてたとはノー。
 
ぱらぽれぱらぽれりん♪
メゾピアノ 《 ほうー 君は僕を知っているのか?
タイガー 「 前に愛子さんのおった学校で会ったじゃろ。
メゾピアノ 《 ふっ 僕は醜い顔は覚えないことにしているんだ。
タイガー 「 そげんことお前に言われるまでもないわ―――!!
水樹 「 まあまあ。(汗)
タイガーをなだめる水樹。 そこで早苗がお札を取りだすと―――
早苗 「 思ったとおりのキザな男だな! わたすのお札でやっつけてくれる!
メゾピアノ 《 あっはっは。 いくら早苗クンの能力がすごかろうと僕には勝てない。
にゅるりんっ
メゾピアノはそう言うと、ピアノの中に入ってしまった。
早苗 「 あっ卑怯だぞおめえ! 男ならきっちり出てきて勝負しろー!!
水樹 「 ねえ、前はどうやって退治したの?
タイガー 「 いや それがのう、ピアノを弾いて勝負したんじゃが
  ピートさんの天才的なオンチによって学校を出て行ってくれたんジャ。
水樹 「 どういうこと?
タイガー 「 つまりメゾピアノを認めさせるぐらいにピアノを上手に弾くか
  おもいっきり下手に弾くかのどっちかしかないんジャ。
早苗 「 なるほど。 そんじゃテキトーに下手に弾いてみるべ!
ぼん!ばん!びん!ぼん!ばん!びん!びびん!ぼぼぼん!
そういうと早苗はイスに座り、力任せにピアノを弾きだした。 しかし・・・
メゾピアノ 《 あはははは これは傑作!
  そんなに力任せに叩いて壊してしまえば元もこもないよ、早苗クン。
ピアノの中から声だけが聞こえた。
メゾピアノ 《 それに音楽の成績がの君なら、わざわざ下手に弾く必要もないんだよ。
 
早苗 「 あんたなんで知ってるのさー!! こいつ絶対おいだしてやる!(怒)
水樹 「 早苗姉ちゃん冷静に・・・!
タイガー 「 水樹サンはピアノは上手なんかノー?
水樹 「 私にふらないでよ。 ピアノなんてほとんど弾いたことないんだから。
 
タイガー ( うーむ 害はないんじゃから退治の必要もないし
  こんなことでわざわざピートさんを呼ぶのもなんだしノー・・・そうか! 「 メゾピアノ!
メゾピアノ 《 なんだね。 汚い声で私を呼ばないでくえたまえ。
むかっ(怒)
タイガー 「 いい加減にせんと ピートさんを呼ぶケンノー。
ぴくっ
メゾピアノ 《 なに・・・?
ピアノを弾く音が止まり、メゾピアノは口に咥(くわ)えていた薔薇を落とした。
メゾピアノ 《 ・・・・・・ピートクンを呼ぶだと?
タイガー 「 これはもう一度ピートさんに ピアノを弾いてもらうしかないノー。
メゾピアノ 《 ま まってくれ! それだけはやめてほしい。 あいつの弾く音は聞くに耐えかねん!
タイガー 「 それじゃあ授業中はピアノを弾かないと約束するんジャ!
メゾピアノ 《 むう。
悩むメゾピアノ。 かつて彼はピートの弾くピアノの音により、苦しんだことがあった。
メゾピアノにとってピートは天敵なのである―――
水樹 「 ねえ、そのピートって人の音そんなにひどいの?
タイガー 「 あれは一種の才能じゃな。
  どのくらいすごいかっていうと 校舎の窓ガラスが全部割れるぐらい破壊的な音なんジャ。
水樹 「 ・・・それはすごいわね。(汗)
早苗 ( ピートってどこかで聞いたべな・・・・・・どこだっけ?
メゾピアノ 《 し しかしそれでは僕の“弾きたい”という衝動が!
水樹 「 そんなに弾きたいのなら ここの音楽の先生になるっていうのは?
早苗 「 なにいってるだ水樹ちゃん! わたすこいつに習うのだけはいやだ!
メゾピアノ 《 悪い話ではないが普通の人間に僕の姿は見えない。
  霊力を持つ君たちでさえ、テレパシーを使わなければ僕の姿を目視出来なかったんだろ?
水樹 「 うーん 要は霊力が低いから見えないんでしょ。
  なんらかの方法で霊力を流しこんで増幅させればいいんじゃない?
ぴくっ
水樹の提案に早苗が反応する。
早苗 「 それー わたすできるべ。
水樹 「 えっ!?
早苗 「 1年ぐらい前かな。 わたすの体を通してなら 霊力を増幅できるようになったんだ。
  人の目に見えるくらいになら簡単だけんど・・・
水樹 「 それじゃあー!
早苗 「 でもわたす そいつが教師になるのは我慢ならねー!
  どーすてもって言うんなら今までの無礼の数々 土下座して謝れ!!
メゾピアノ 《 僕にもプライドがある。 そこまでして教師になるつもりはないね。
そっぽを向いてしまう2人。 困るタイガーと水樹。
水樹 「 う〜ん いいアイディアと思ったんだけどな。
タイガー 「 早苗サンなんとかならんかノー。
早苗に懇願する水樹とタイガー。
早苗 「 ・・・はあー 仕方ねえべな。 このままじゃあ授業にならんし。
タイガー 「 早苗サン!
早苗 「 さあ、さっさとわたすの身体にのり移ってけろ。
するとメゾピアノは水樹の肩に手を置いて―――
ぽんっ
メゾピアノ 《 僕はどちらかというと、こちらのお嬢サンのほうがいいのだが。 
早苗 ぴしっ! ―――!―――
メゾピアノ 《 早苗クンの魂は騒がしすぎる。
早苗 「 なんやとコラ―――! ほんまに成仏させちゃる―――!!
水樹 「 早苗姉ちゃん落ち着いてー!!
タイガー 「 メゾピアノさんもこれ以上早苗さんを刺激せんでクレー!!
爆発寸前の早苗をなだめる水樹とタイガー。
メゾピアノ 《 ふう、しょうがない。 水樹クンに免じて、100歩ゆずってのり移ってやろうではないか。
早苗 「 わたすは1000歩ゆずってのり移らしてやるべ!
早苗は口元をヒクヒクさせながら了解した。
そしてメゾピアノは早苗の身体にのり移り、早苗の肉体を通して大量の霊力エネルギーを
流しこんでもらったあと、再び早苗の身体を離れた。
メゾピアノ 《 ほう これはすごい。 まるで300年妖怪をやってきたかのような力だ。
メゾピアノは自分の両手を見て、力がみなぎる感覚を感じている。
水樹 「 すごい! 私にもはっきりみえる! これなら霊力をもたない人でも見ることができるわ!
メゾピアノ 《 ふっ 早苗クン。 ちょっとだけ君に敬意をはらうよ。
早苗 「 たっぷりと敬意をはらってけれ。
メゾピアノ 《 しかし早苗クンの霊力を流しこまれたということは、
  僕と早苗クンは血のつながった兄妹より深い関係となったわけだ。
  まーいしすたー! これからは僕のことを 『お兄さま』 と呼ぶがいい!
早苗 「 気色悪いこと言ってんでねえ!!
  なにが 『まいしすたー』 で 『お兄さま』 だあー!!
  成仏させてやる! いますぐ祓ってやる―――!!
タイガー 「 落ちついてクレ早苗サン! 水樹サンは先生を!
水樹 「 あ はい!
                            ◆
その後水樹は、校長先生や音楽の先生を含む教師達数人を呼んできた。
校長 「 よろしい! 採用決定!
早苗 「 ちょっと校長先生! そんな簡単に決めていいんだべか!?
校長 「 妖怪の教師なんてレアではないか。
  これを期にもっと妖怪を雇ってうちの高校をアピールするんだ!
  そうすれば生徒も増え、資金もがっぽがっぽ・・・・・・グフフフフ。
早苗 「 妖怪学校にするつもりだべか?
タイガー 「 大丈夫カノこの校長。(汗)
水樹 「 っていうかここ私立なの?
とそこに、音楽の先生がメゾピアノに訪ねた。
音楽の先生 「 それでメゾピアノさん、あなたのおなまえは?
タイガー 「 だから【メゾピアノ】じゃろ? 」
メゾピアノ 《 失敬な! 僕にもちゃんとしたなまえがある!
水樹 「 どんな?
メゾピアノ 《 僕は【ピエール・ザ・フランソワーズ・ラズベリーエッセンシャル・
   シャイニング・エレガントフェィス・ブリリアント・アレクサンドロス・
   ビューティフルスマイル・13世・エクセレント・ネバーセイ・ネバー――
さらっ
早苗 「 それじゃあ 【メゾピー】 に決定な!
メゾピアノのセリフを聞かなかったかのように、勝手に決める早苗。
メゾピアノ 《 ちょ、ちょっとまってくれ早苗クン! 僕はまだ自己紹介の途中だぞ!
早苗 「 そったら長いのにつきあってられるか! なにが【びゅーてふるすまいる】だ!!
メゾピアノ 《 しかしそれではあまりにも教師としての威厳が!
校長 「 それでは【メゾピー先生】 後を頼みましたよ。
音楽の先生 「 【メゾピー先生】 鍵はきちんと閉めてくださいね。
校長先生と音楽の先生はそう言うと、音楽室を出ていった。
メゾピアノ 《 いや あの 僕はピエール・・・・・・
早苗 「 ふふふ 【メゾピー】に決まりだな。
先ほどまで散々からかわれていたため、立場が逆転して嬉しそうな早苗であった。
水樹 「 いいじゃない。 【メゾピー先生】って親しみやすくて。 私は好きよ。
メゾピアノ 《 うむ・・・・・・まあ 水樹クンがそういうのなら仕方ない。
水樹 「 じゃ決まりね。
早苗 「 へえ〜 水樹ちゃんの言うことならきくんだべなー。
ぼそっ
タイガー 「 早苗サンヤキモチカイノー。
早苗 「 !!
タイガーの呟きに反応する早苗。
早苗 「 だれがだれにヤキモチをやいただと〜〜〜!!(怒)
タイガー 「 す すまんですジャ―――!!(泣)
タイガーに詰めよる早苗。
そして本日この神御呂地高校に、2人の転校生と1人の妖怪教師が誕生したのである。
そしてそのあとタイガーは、早苗がおキヌの姉であることを知り、
早苗もまたタイガーが横島の友人であることを知ったわけである―――

リポート17 『人骨温泉の地鎮祭』

■神御呂地高校 3年B組■
タイガーが転校して2週間。 期末試験も終わり 冬休みも近いある日の放課後、
タイガーと早苗の教室で 水樹も含めた3人が話し合っていた。
水樹 「 地鎮祭?
早苗 「 んだ、去年の死津喪比女(しずもひめ)事件で、
  御呂地村の人骨温泉ホテルが壊されちまったんだ。
  んでようやくホテルの再建工事がはじまるだよ。
水樹 「 あー知ってる! 東京中を花粉だらけにしたこの辺りの地霊よね?
  おキヌさんがその事件で生き返ったんでしょ。
早苗 「 そっ あのときは西条さんやエミさんからテレパシーをうけて
  銃を持った冥子さんの式神を探すのに苦労しただ。
  式神を見つけたとたんにホテルが壊れたから危なかっただ。
タイガー 「 わ ワシもその場におったケン!
早苗 「 えっ?
タイガー 「 いやだからワシもエミさん達とここにこようと ヘリコプターに乗っとったんジャ!
ぱらぱらっ
水樹 「 どこにもいないわよ。
水樹は単行本(旧)の19,20巻を見ている。(早苗が学校に持ってきています)
タイガー 「 よく見てくれ! 20巻の99ページと109ページ!!
  ワイド版でもほら! ワシが表紙の10巻の331ページと341ページに!!
タイガーはワイド版を広げて2人に見せた。 確かにタイガーの頭だけ見えているのだが・・・
早苗・水樹 「「  ・・・・・・・・・(汗)
タイガー 「 なっ、ワシもあんときは戦かっとったんジャ!
水樹と早苗はセリフもなく、なんの役にも立ってないタイガーが哀れで何も言えなかった。
早苗 「 とにかくだなー 明日父っちゃが地鎮祭を行うだ。 水樹ちゃんたちも見にこねえか?
水樹 「 うーん、お父さんの了解がとれたらいいけど。
タイガー 「 わしもこの前えらい怒られたからノー。
水樹 「 怒られたっていつ?
タイガー 「 その転校初日の夜にな―――
■タイガーの回想■
神野父 「 なに、力を使っただと?
タイガー 「 は、はい・・・・・・
転校初日の夜、タイガーと神野父が神社本殿の中で、正座して向かい合っている。
タイガー 「 その、【メゾピアノ】の姿を確認するために 一瞬だけ精神感応を。
神野父 「 バカモン! わしは霊力を使うことを禁じておったはずだぞ。
タイガー 「 少しだけならと思いつい・・・!
神野父 「 ・・・・・・わしがおめえに霊力使用を禁じておったのは
  霊力を溜めることで一種の過負荷状態にするため。
  数ヶ月溜めたところで一気に霊力を開放し 潜在能力をひきださせ
  強靭な精神力を会得させるためだ。 
  霊力は日頃から使用し 鍛えていかねば衰えてしまうものだが、
  霊力を使わずに精神修行を行えば 最大霊力値は少しずつだが増していく。
  霊力を開放させた時点で、なにも潜在能力をひきださせなければ、
  おめえのこの1ヶ月がすべて無駄になるとこじゃったんだぞ! 」
タイガー 「 師匠がそんな考えをお持ちだったとは知らずワシは・・・!
神野父 「 まあ今回は妖怪を具現化させる程度じゃったから
  さほど霊力は消費せんかったはずじゃが、明日からは気をつけい、いいな!
タイガー 「 は、ははっ!!
(回想終わり)
タイガー 「 ・・・という訳なんジャ。
水樹 「 そっかー 私あの程度なら大丈夫だと思っていたから。
メゾピアノ 《 うんうん。 それはすまない事をしてしまったね。
「「「   !!??
いつのまにか、学校妖怪の【メゾピアノ】こと、【メゾピー】先生が教室にいた。
あいかわらずタキシードを着て、口に薔薇をくわえている。
早苗 「 メゾピー!! あんたなんでここにいるだ!?
メゾピアノ 《 教師が教室にいても不思議ではなかろう。
  それに僕は【ピエール・ザ・フランソワーズ・カトリーヌボンボワージュ・
  ブルゴーニュ・ゼルテーニョ・クッキングマスター・ファッチューチョンメルシー・
  ストレートフラッシュ・13世・サンシャイン・ガブリヨリ・・・・・・じゃない、ガブリエール―――
スパコン  =☆
早苗がどこから取り出したのか ハリセンでメゾピーを叩く!
メゾピアノ 《 な なにをするのだ!? 仮にも教師を!
早苗 「 やかましいメゾピー! この前と違がっとるべや!
タイガー 「 でも“13世”はかわらんのジャノー。
水樹 「 なにか意味があるのかしら?
早苗がふとあることに気づく。
早苗 「 そういやおめさ ピアノのそばにいなくていいのか!?
タイガー 「 そ そうジャ。 愛子サンはいつも机を持ち運んでおったしノー。
メゾピアノ 《 早苗クンのおかげでパワーアップしてしまってね。
  楽器のそばにいれば、愛子クンみたいに自由に移動できるんだ。
早苗 「 楽器っておめさ、なんももっとらんではねえか。
メゾピアノ 《 これさ。
メゾピーはポケットからハーモニカをとりだした。
メゾピアノ 《 いまはいろんな楽器に興味があってね。 携帯にはこれが一番さ。
ぷあぱらぱらぱらら〜♪
そういうとメゾピーはハーモニカを吹きだした。 早苗はかばんを手にすると―――
早苗 「 ・・・バカはほっといて帰るべ。
メゾピアノ 《 待ちたまえ早苗クン!
早苗 「 なんだべ?
メゾピアノ 《 僕も地鎮祭に出席させてもらうよ。
早苗 「 はあ? なしておめえが?
メゾピアノ 《 僕が除霊委員の顧問で君たちが委員だからさ。
早苗 「 なっ!? そげんことだれが決めただ!?
メゾピアノ 《 僕がいま決めた。
早苗 「 ・・・・・・<ぷちっ>! ひとりでやってけろ! タイガークン水樹ちゃん帰るべ!
教室から出ようとする早苗。
メゾピアノ 《 水樹クン、地鎮祭とはなにか知っているかね?
早苗 「 水樹ちゃん、相手にする必要ないべ。(怒)
ずいっ
メゾピアノ 《 水樹クン! 地鎮祭とは!?
水樹 「 え、ええ・・・(汗)
水樹に顔を近づけて意地でも答えさそうとするメゾピアノ。 水樹は観念して―――
水樹 「 地鎮祭(じちんさい)は建物を建てる前に 土地の神さまをお招きし、
  施主や工事関係者が 工事の無事を祈りながら神々に奉告することで、
 (とこしずめのまつり)とも 地祭り(ちまつり)などとも呼ばれてるわ。
ビシッ!
メゾピアノ 《 えーくせれんと! さすが水樹クン!
メゾピーは人差し指を水樹にむかって指さした。
タイガー 「 ほえ〜 水樹サンすごいノー。
水樹 「 えへへっ♪
早苗 「 そったらこと神社の者なら誰でも知ってるだよ。
メゾピアノ 《 早苗クン この地の神は誰だか知ってるかい?
早苗 「 知ってるべ。 わたす会ったことがあるし。
水樹 「 えっ!?
驚く水樹。
早苗 「 直接わたすが話したことはないけど、その神様のおかげでメゾピーみたいに
  おキヌちゃんに霊力を流しこんで、反魂の術で生き返らせることができたんだ。
メゾピアノ 《 たしかこの地には死津喪比女という 土地神より強力な地霊が存在し
  ここを支配していたはずだ。 ところが1年前―――
早苗 「 おキヌちゃんが地脈から切り離されたことで復活。
  んでかわりに地脈と結びついた霊が今の神だ。
メゾピアノ 《 してその神様は?
早苗 「 【ワンダーホーゲル】だ。
《「「   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沈黙するメゾピー・タイガー・水樹。
メゾピアノ 《 ・・・すまないがもう一度言ってくれたまえ。
早苗 「 だから【ワンダーホーゲル】だ! 美神さんたちはそう呼んでただ。
タイガー 「 これはまた 新しいなまえをつけんといかんノー。
水樹 「 さすがに神様にまで変なのをつけるわけにはいかないでしょ。
  【山の神】ってことでいいんじゃない?
メゾピアノ 《 水樹クン・・・それでは僕の【メゾピー】というのはやっぱり・・・・(暗)
水樹 「 ああっ! 深く考えないで深く!!
落ち込むメゾピー。 しかしすぐに立ち直る。
メゾピアノ 《 とにかくその【山の神】に会っておきたい。 この地に住む学校妖怪としてね!
早苗 「 ・・・わかっただ。 ただし邪魔はすんでねえぞ。
メゾピアノ 《 おお さすが早苗クン! わが除霊委員の委員長!
早苗 「 ちょっと! かってにへんな役職つけんでけろ!
メゾピーは両手いっぱいにひろげてみせていた。
                      ◆
■人骨温泉ホテル跡地■
翌日、神野父の許可をもらったタイガーと水樹は、早苗の父が行う地鎮祭の見学にむかった。
場所は御呂地村の南東部、昨年まで存在した人骨温泉ホテル跡地。
新しく建設するために、安全祈願を願って土地の神様に奉告する(=神に告げる)儀式である。
とはいえここは、地霊:死津喪比女によって壊された建物であり、人的被害ではなく
霊的被害を防ぐ意味合いのほうが強かった。
タイガーと水樹が現地にかけつけると、巫女姿の早苗とメゾピアノがいた。
すでに祭壇の準備も終わり、工事関係者も集まりだしていた―――
水樹 「 氷室おじさま お久しぶりです。
氷室父 「 おお水樹君か 久しいね。 ここの学校には慣れたかい?
水樹 「 はいおかげさまで。
氷室父 「 ほうー きみがタイガー君か。 噂は娘たちから聞いてるよ。 よろしくな。
タイガー 「 い いえこちらこそ!
早苗 「 父っちゃ オーナーが呼んでるべ。
氷室父 「 お もう時間か。 これが終わったらうちに来なさい。 ご馳走するよ。
水樹・タイガー 「「  はい!
早苗の父は、工事関係者との打ち合わせに行き、早苗も父の仕事を手伝っていた。
タイガー 「 急がしそうジャノー。
水樹 「 ええ とくにこの辺りでは地の霊や神に対しては敏感だからね。
  去年あんなことがあったんですもの。 慎重になるのもしかたないわ。
そしてまもなくして、地鎮祭がとりおこなわれた。
地鎮祭の流れはざっとこんな感じ。
1、≪修祓(しゅばつ)≫ お供え物と参列者を祓い清める祭儀。
2、≪降神(こうじん)の儀≫ 神を迎える儀式。
3、 ≪祝詞奏上(のりとそうじょう)の儀≫ 神様に奉告、安全祈願。
4、敷地をお神酒等で清める。
5、≪鍬入れ(くわいれ)≫ 鍬を入れる。
6、≪玉串拝礼(たまぐしはいれい)≫ 
7、≪昇神(しょうじん)の儀≫
・・・で、今は3番。
早苗 「 ・・・・・・なんか変な感じだな。
  ひょっとすたら、いま奉告している神様がおキヌちゃんだったかもしれねえなんて。
タイガー 「 ほんとジャノー。 ・・・でも降神の儀が行われたのに
  神様の気配がまったく感じられんのも気になるがー。
メゾピアノ 《 土地神というものは その地すべてに存在するものだから、
  その地域の祭事は耳に届いているはずさ。
  大安の日など、多いところで1日何十件もの祭事が行われたりするからね。
  実際すべての儀式に出席しようとする神様は そうそういないものだよ。
山の神 《 へえ〜そーなんスかー。
「 メゾピー物知りジャノー。
メゾピアノ 《 ふっ 僕は天才だからね。
早苗 「 んなこと関係ねえべ。 ん?
山の神 《 お久しぶりッス 早苗ちゃん。
早苗 「 ・・・・・・   ――― えっ!? ―――
早苗達が話している後ろで、いつの間にか会話に参加していた山の神がいた。
早苗 「 や 山の神様!!
タイガー 「 こいつが!?
ざわっ
工事関係者たちの注目をあびる早苗達。 山の神の姿は普通の人にはみえない。
早苗の父は儀式に集中しており、声は聞こえていたが後ろを振りかえらなかった。
早苗達は儀式の邪魔にならない程度に、山の神とその場を離れた。
早苗 「 山の神様! おめさ来てたんだか!?
山の神 《 自分はまだまだ新人の神様っスから、儀式にはなるべく出席するようにしてるっス。
早苗 「 でも全然気配を感じなかったべ。
山の神 《 これも山の厳しい修行のおかげっスよ。
自分の鼻をつまむタイガー。 
タイガー 「 なんか酒くさいノー。
山の神 《 いやーははっ さっき御神酒(おみき)をいただいたっスから。
メゾピアノ 《 これが【山の神】・・・・・・・・・・・・醜い。
目をそらすメゾピー。
山の神 《 ・・・・・・神様に対して失礼な妖怪っスねー。(汗)
  おっと 自分はそろそろ儀式に戻るッス。 それでは早苗ちゃんまたあとでー。
姿を消す山の神。
タイガー 「 なかなかキサクな神ジャノー。
早苗 「 もともと人間だったからな。 さ わたすらも戻るべ。
―――その後、無事地鎮祭は終了した。
                        ◆
■氷室家自宅■
地鎮祭が終了した後、タイガーたちは早苗の父の車に乗り、早苗の神社へとやってきた。
早苗の自宅で、タイガーたちは早苗の母の用意した昼食をいただいており、
氷室母 「 水樹ちゃん たんと食べてけろ。
水樹 「 ありがとう おばさん。
一方でメゾピーは縁側で、携帯していたハーモニカを吹いていた。
ぱひゃらひらぴら〜♪ ぱぱらぱ〜♪
タイガー 「 メゾピーは食べんのかノー。
メゾピアノ 《 ふっ 僕は楽器の音さえ聞ければいいのさ。
氷室父 「 それにしても早苗 式の途中で大声をだすんじゃない。
早苗 「 ごめんだ父っちゃ。 
  いきなり山の神様がでてくるもんだから びっくりしちまってつい―――
氷室父 「 山の神って・・・・・・会ったのか!?
早苗 「 んだ キサクなひと・・・いや神様だったべ。 『またあとでー』って言ってたからたぶん――― 
山の神 《 ごめんくださいっスー
早苗 「 あ きただ。
早苗達が玄関に行くと、そこには山の神がいた。
山の神 《 はじめましてっス氷室サン! 山の神っス!
氷室父 「 ・・・・・・・・・・・・ハッ! ど どうぞ! せまい所ですが!
しばらく呆然としていた氷室夫妻は、居間に山の神を迎えた。
山の神 《 死津喪比女のときはお世話になったっス。
  あの時は自分も新人の神で未熟者だったばかりに、みなさんにご迷惑をかけてしまって!
氷室父 「 と とんでもない! どうか頭をあげられてください!
山の神 《 自分も精一杯山の神としてこの地を守るっスから、これからもよろしくお願いしまっス!
氷室父 「 い いえ こちらこそ!!
あわてて頭を下げる氷室父。
早苗 「 神様が土下座・・・・とことん体育会系だべ。
タイガー 「 あんのー 神様の修行ってどんなことをしとるんですカイノー。
きっぱり
山の神 《 山と一体化になる修行っス!
  山と一つになるため 自分は山を愛し続けるんっス! これぞ男のロマン!!
タイガー 「 ・・・・・・・・・(汗)
涙を流し、熱く語る山の神。
山の神 《 タイガー君の修行の様子も知ってるっスよ。
  神野さんの修行にあきらめずついていくことっス。 そうすれば必ず強くなれるっス。
タイガー 「 あ はい!!
早苗 「 来年こそは 3度目の正直だべ。
メゾピアノ 《 2度あることは3度あるともいうが。
早苗 「 おめさ黙ってろ!
メゾピーに冷たくつっこむ早苗。
メゾピアノ 《 つれないな早苗君。 山田君のようにもっとやさしく――
早苗 「「「   わ―――わ―――わ―――!!!
突然うろたえる早苗。 そして、メゾピーの所に詰めよる。
ひそひそひそ
早苗 『 父っちゃと母っちゃの前で、山田君の話をすんでねえ!!
メゾピアノ 《 なぜだい? 愛する者がいるということは、すばらしいことではないか。
早苗 『 父っちゃは男関係には厳しいんだべ!
  男の子と付き合ってると思われたら 大騒ぎになるべ!!
メゾピアノ 《 ・・・意外と古風なんだね。
早苗 『 うるさい!!
顔を真っ赤にしながら、皆に聞こえないように話す早苗とメゾピー。
後ろでは早苗の両親が何事かと早苗を見ている。
氷室父 「 どうしたんだ早苗?
早苗 「 あははははっ! な 何でもないだ父っちゃ!
  そ そうだタイガークンは高校卒業したらどうするだ!?
タイガー 「 ワシは・・・・・・まだわからん。 とりあえずエミさんに認めてもらわんと。
そこに山の神が早苗に訪ねた。
山の神 《 早苗ちゃんはGSにならないんっスか?
早苗 「 え わたす?
水樹 「 そういえば 去年も今年もまだ一度も試験受けたことないんじゃない?
山の神 《 早苗ちゃんの力なら受かるんじゃないっスか?
早苗 「 ムリだ。 わたすの能力じゃあ試験に通じねえだ。
「 なんでジャ?
早苗 「 だってわたすの力は霊媒能力で 実戦向きじゃねえべ。 あんたらもそうだ。
  精神感応の幻覚・心理攻撃は 遠距離戦で力を発揮しても
  1対1の近接戦じゃ明らかにハンデ負ってるようなものだべ。
  現に今年の試験も、合格したのは近接戦の得意な人ばっかでなかったか?
タイガー 「 そりゃまあ そうじゃが・・・
早苗の話を聞いてたメゾピーが発言した。
メゾピアノ 《 負け惜しみだね。
早苗 「 なに!?
メゾピアノ 《 違うのかい?
  戦ってもいないのにそんなことをいってるようじゃあ、そう思われても仕方ないだろ?
  それに今、来年の試験に向けてがんばっているタイガークンたちに失礼じゃないのかい?
早苗 「 うっ!
珍しくまともなことをいうメゾピーに反論できない早苗。
山の神 《 どうやら早苗ちゃんは自分の能力を使いこなしていないようっスね。
早苗 「 え!?
山の神 《 早苗ちゃんの霊媒力はすごく強いんス。
  呼び込んだ霊を制御できれば、その力を自分のものとして使うことが出来るっス。
  その気になれば、魔王や神すらも呼ぶことができるかもしれないっス!
早苗 「 魔王ってのはちょっと怖いけど・・・
  まあ神様がそう言うんなら、わたすも来年受けてみるかな。
氷室父 「 となると早苗も修行せんといかんな。
早苗 「 父っちゃ 厳しいのは勘弁してけれ。
タイガー 「 こりゃワシらもうかうかしておられんノー。
水樹 「 フフッ そうね。
この日氷室家の昼食は、久しぶりににぎやかなものとなった。
第3節・完

※この作品は、ヴァージニアさんによる C-WWW への投稿作品です。
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