とら! 第6節 GS資格試験(後編)


   
 
■魔法料理 魔鈴■
 
GS資格試験1日目終了後、タイガー達は魔鈴の店で夕食をとっていた。
 
「 こらうまい! こらうまい!
シロ 「 あ! それは拙者の肉でござる!
魔鈴 「 みなさん どんどん食べてくださいね〜! 明日はもっとすごい料理を作りますからね!
 
エミ 「 あれ? ピートは?
小鳩 「 アンちゃんの身元を引き取りにいったわよ。 唐巣神父さんが寝込んじゃったみたいですから。
西条 「 メゾピアノとヘルシング嬢のダブルショックだったからね。
令子 「 ま ピートも若いコのほうがいいんじゃない?
エミ 「 令子! あんたが言うワケ!?(怒)
 
喧喧とする美神とエミであった・・・
その隣りのテーブルでは早苗・愛子・タイガーが座っており、
店の奥でピアノを弾いているメゾピアノが妙に気になった早苗は―――
 
早苗 「 ・・・で なんでおめさ ここでピアノ弾いてるだ?
メゾピアノ 《 こちらにいる間 魔鈴君にご厄介になってるのさ。
愛子 《 あなた学校妖怪なら学校にいなさいよ!
タイガー 「 それにしても 魔鈴サンとはいつ知り合ったんジャ?
 
タイガーの質問にメゾピーは早苗に問い返す。
 
メゾピアノ 《 知りたいかね? 早苗クン。
早苗 「 んやちっとも。
メゾピアノ 《 そう あれは魔鈴クンが17歳の頃だ・・・
  とある高校の音楽室にやってきた僕は、いつも通りピアノを弾いていたら―――
早苗 「 おキヌちゃ〜ん!
メゾピアノ 《 あ ちょっと・・・・(汗)
 
早苗はおキヌたちの元へといってしまった。 どうやら完全無視を徹底するつもりらしい。
 
愛子 《 ふふふっ 完全に嫌われてるわね。
メゾピアノ 《 ガッテム! なぜだ!? なぜ僕をさけるんだ早苗クン!!
タイガー 「 そりゃあれだけ嫌がらせしたらノー・・・(汗)
愛子 《 ・・・で 魔鈴さんとはどうやって知り合ったの?
メゾピアノ 《 ひょっとして愛子クン。 ジェラシーかい?
愛子 《 誰がジェラシーよ!!///
メゾピアノ 《 いやーははは! もてる男は辛いものだね!
愛子 《 聞いちゃいないし―!(怒) だいたいあなたは人にくだらない迷惑をかけすぎなのよ!
  しかもやることがセコイ! 同じ学校妖怪として恥ずかしい限りだわ!
メゾピアノ 《 愛子クン。 そんなに褒めないでくれたまえ♪
愛子 《 褒めてなーい! 人の言うこと聞け!!
タイガー ( なんか愛子サンがここまで怒るのも珍しいノー。
  つーかメゾピーは人を怒らせる才能があるような・・・ちょっと怖いから席離れよう・・・

リポート30 『神野水樹VS九能市氷雅!』
仙香 「 水樹〜 機嫌直してよ〜
水樹 「 フンだ!
亜美 「 そういえば 水樹の去年の試合は面白かったよな〜
仙香 「 ギブアップしちゃったあれね。
タイガー 「 ? 何があったんジャ?
水樹 「 !!
春華 「 あら? 水樹から聞いてない?
タイガー 「 ああ・・・
春華 「 トラ男は去年 仙香に負けて気絶してたから知らないだろうけど、神野さん2回戦でね―――
水樹 「 ああっ!? ちょっとー!
 
泣きそうな水樹のからだをつかまえる亜美。
 
亜美 「 せっかくだから聞いてもらえ。
水樹 「 そ そんな〜!!
タイガー 「 何かワシ 知らんほうがええことじゃろーか?
仙香 「 いや あなたは聞いとくべきよ。 去年ね・・・・・・
 
 
 
 
■1年前 GS資格試験2回戦 回想■
 
審判 ≪ それでは神野水樹選手 対 九能市氷雅選手 試合開始!! ≫
 
水樹 「 ハッ!!
 
水樹は榊の枝を振り下ろし、ハワイの幻覚を氷雅に魅せるが―――
 
氷雅 「 キレイな景色ですわね♪
水樹 「 効いてない!? そ それじゃあこれはどう!?
 
景色を楽しみ微笑む氷雅。 水樹は別の幻覚・・・ゾンビや骸骨の幻覚を魅せたが―――
 
氷雅 「 あら? ステキなカラダ♪
水樹 「 ゾ ゾンビを撫でてる!?(汗)
 
仙香 「 水樹ー! GSにそんなアンデット系の幻覚は通用しないわよー!
水樹 「 そんなこといったって この人の心理が全く読めないんだもん! わからないのよ!
 
結界の外から応援する仙香と亜美。 それを聞いた氷雅は、鞘から1本の刀を抜き取る―――
 
氷雅 「 あら? もう打ち止めですの? 残念ですわ なかなか面白い映像でしたのに。 <シャキン!>
水樹 「 う!!
氷雅 「 この霊刀“ヒトキリマル”でお相手しますわ!! <ズバッ!>
水樹 「 ひいっ!!
氷雅の斬撃をかろうじてかわす水樹だっだが、すその部分がばっさりと斬れおちた!
 
水樹 「 ちょ、ちょっとこれって・・・(汗)
ぞくぞくっ☆
氷雅 「 実を申しますと私、生きた人間を斬るの初めてなんですの。 ああ・・・楽しみですわ!!
サ―――――ッ
水樹 「 こ この人、本気でアブないっ!? しかも心理攻撃効きそうにないし・・・!
 
血の気が引く水樹。 水樹は反転し、審判のもとに駆け寄るろうとするがその時!
 
水樹 「 審判さーん、ギブア――
氷雅 「 忍法・失言の術!! <ピキッ>
水樹 「 うっ!!
氷雅 「 秘孔を突きました。 もう『ギブアップ』は言えませんことよ。
水樹 「 ・・・・・(ギブアップ)!! あれっ!? 
  なんでっ!? 他の言葉は言えるのに!? ・・・・・(ギブアップ)だけ言えないなんて!!
ちゃきっ
氷雅 「 さあ、お楽しみはこれからですわ★
水樹 「 楽しくないわよっ!! 仙香ー 亜美ー!
  ・・・・(助けて)!? あれ?・・・・(助けて)も言えない!!
氷雅 「 ふふふっ ムダですわ。 逃げのセリフも全て封じ込めましたわ。
水樹 「 そんな! どういう原理よ!
 
仙香 「 ちょっとぐらい斬られても 冥子さんの式神に治してもらえば大丈夫だからー!
亜美 「 骨は拾ってやるぞー!
水樹 「 無責任なこと言うなっ!!(泣)
 
楽しげに応援する仙香と亜美に、泣いて文句を言う水樹。 氷雅は楽しそうな顔をして―――
 
氷雅 「 うふふ・・・いきますわ!
水樹 「 いや―――っ!!
 
この後、氷雅の斬撃から泣きながら必死に逃れる水樹の姿があった。
そして水樹の疲れもピークに達した頃、バランスを崩した水樹は足を滑らして・・・
 
氷雅 「 その首もらった!   ―――!!―――
 
ズガッ!!
倒れた水樹の首のわずか1センチ横には、ヒトキリマルがコートに突き刺さっていた。
 
ガチガチガチガチガチガチ
水樹 「 ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい・・・・・・
 
氷雅 「 ・・・ふふふっ まあいいでしょう。 人斬りはまたの機会にいたしましょう★
 
氷雅はおびえる水樹に再び秘孔をついた。
そして水樹はかろうじてギブアップと言うと、恐怖でそのまま気絶してしまったのである。
(回想終わり)
 
 
 
仙香 「 ・・・ということがあったの。
タイガー 「 災難じゃったノー。(汗)
 
水樹は顔を真っ赤にしている。
 
水樹 「 ホンットひどいんだから!! 仙香たちも私がギブアップしたがってるのわかってたくせに!!
亜美 「 途中でやめるより戦うだけ戦ったほうが勝てるかもしれないじゃないか。
仙香 「 相手の選手も本気で殺す気はなかったわよ。
水樹 「 いーや アノ目はマジよ! 本気で私を殺すつもりだった!
春華 「 神野さん こーんな風に白目向いてたのよ。
亜美 「 あはは! そっくりそっくり!
水樹 「 や やめてよ〜〜〜!
 
「 ・・・神野さん、完全に酒のツマミにされてますわね。 ジュースですけど。
 
水樹を哀れむ弓であった。
こうして一部を除いて、楽しい夕食会が終わったのである―――

リポート31 『タイガーと横島』
魔鈴 「 それじゃあみなさん 明日もがんばってくださいね!
 
魔鈴が店の前でみんなを見送っている。
美神は今晩、タイガー達の泊まるところについて聞いていた。
 
令子 「 早苗ちゃんはうちの事務所に泊まるとして、神野さんは女子寮のほうに泊まるんでしょ?
  タイガーはどうするの? 前住んでたとこ 引き払っちゃったんでしょ?
タイガー 「 そうなんじゃが・・・・
 
そこに洋子が提案する。
 
洋子 「 うち(女子寮)にきたらええやん。 2・3日ぐらいならばれやへんて。
タイガー 「 しかしノー
 
そうなると、ここに黙ってられない男がここに―――
 
ずごごごごごごごごご!
横島 「「「  女子寮にお泊りだアア―――ッ!?
タイガー 「 よ 横島サン!!
 
横島はタイガーの胸元をつかんでゆらしながら―――
 
横島 「 俺たち友達だよな! 親友だよな! 義兄弟だよな! 俺もいっしょに泊まらせてくれ! なっ!なっ!なっ!(血の涙)
 
バキッ =☆
 
令子 「 お友達なら一晩や二晩、自分とこに泊めてあげなさい!
横島 「 しくしく・・・・・・あい。
 
・・・あいかわらず美神にしばかれ、ズタボロの横島であった。
 
 
 
 
■横島のアパート■
 
タイガー・横島・小鳩・貧は自宅のアパートに帰宅していた。
 
タイガー 「 すまんノー横島サン。
横島 「 気にすんな。 どーせこうなると思ってたから。
「 なら何であんさん わざわざどつかれるような事言うんや?
横島 「 だって女子寮だぞ! 男の夢! 女子寮! 禁断の花園! 女子寮―――!!
「 わかったて さもしいやっちゃなー。
小鳩 「 それじゃあタイガーさん、明日も頑張ってくださいね。
タイガー 「 ああ!
小鳩 「 横島さんタイガーさん、おやすみなさい。
 
小鳩と貧が部屋に入ると、横島たちも自分の部屋に入った。
モノが雑然と散らばった状態の部屋を見たタイガーは―――
 
タイガー 「 うわっ! あいかわらず汚いノー。
横島 「 嫌なら外で寝ろ!
 
                   ◆
 
タイガーと横島は部屋を片付けたあと、横島とこれまでのことを話していた。
 
横島 「 へえー そんな修行してたのかー。
タイガー 「 ああ。 神野師匠の修行は地味に厳しかったノー。
横島 「 ・・・・・・おれもそろそろかなあ。
タイガー 「 え?
横島 「 春に高校卒業できたのはいいんだけどさー たまに考えるんだ、これからのこと。
  ピートはオカルトGメン 雪之丞は修行の旅に、
  シロとタマモも来年から六道女学院にはいるみたいだし、小鳩ちゃんも今 就職活動してる。
  しかもおまえはこれに合格したら 事務所をもつそうじゃないか。
タイガー 「 そりゃまあ・・・
横島 「 みんなどんどん先に進んでいるなかで 俺だけそのまま美神さんの所に
  いるわけなんだけど、それじゃあダメなような気がするんだ。
タイガー 「 横島サン・・・
 
 
横島 「 ・・・俺、小竜姫様の所に修行に行こうと思ってる。 それも美神さんの事務所をやめて。
 
 
タイガー 「 ほ 本気ですカイノー 横島さん!!
横島 「 ああ本気だ。 問題は俺が抜けた後の穴埋めだよ。 お前 美神さんのところで働く気はないか?
タイガー 「 ワ ワシは自分の事務所をもつつもりじゃから――
横島 「 そうだよな・・・すまん いまのは忘れてくれ。 みんなにはまだ内緒にしといてくれよ。
タイガー 「 ああ わかった!
横島 「 ・・・明日 絶対勝てよ。
タイガー 「 まかしてクレ! ワシはきっと勝つ!
 
 
 
 
 
■翌日 GS資格試験2日目 試験会場■
 
水樹・聖羅の六道女学院の面々、
おキヌ・早苗のいる美神除霊事務所の面々、
タイガーの泊まったアパート住民たち、そのほか数名が集まった。
 
令子 「 みんなー、何が何でもあと1回は勝ちなさい。 そうすれば資格はほぼ取ったも当然よ!
早苗 「 美神さん ほぼってどういうことだべ?
 
早苗の質問におキヌと美神が答える。
 
おキヌ 「 3回戦からはギブアップしたら GS資格を剥奪されちゃうんです。
令子 「 除霊退治にまったはできないからね。 それだけ危険な仕事だってことよ。
 
水樹 「 仙香 今度はちゃんと私の試合を見ててよね!
仙香 「 わかったって水樹。
タイガー 「 水樹サン ここがふんばりどころですジャ!
  神野師匠の下での1年間の修行、その成果を今こそ発揮する時ですジャ!!
水樹 「 タイガーさん・・・・・・うん そうよね!
洋子 「 おんや〜 お2人さん仲がよろしいようで。
一文字 「 そりゃそうだよなー 1年も同じ屋根の下にいたんだからよー。
 
タイガーと水樹が励ましあってるところに、洋子と一文字が水樹とタイガーにからみついてきた。
 
水樹 「 な なによなによ! なんにもなかったって言ってるでしょ!
洋子 「 ムキになって否定するとこが怪しいねえ。
一文字 「 お前はどうなんだ?
タイガー 「 ワ ワシは別に―――!
令子 「 ほらほらしゃべってないで 2回戦の組合せを見に行くわよ。
 
美神の合図と共に、タイガー達は2回戦の組合せを見に向かった。
 
 
 
 
     [ GS資格試験2日目 トーナメント組合せ表 ]
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
     [ 2回戦 3番コート第1試合――― ]
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

リポート32 『辛戦 タイガーVS神野水樹!』
■試験会場 休憩室前■
 
ヒラカタ ≪ いよいよ合格ラインを決める第2試合です! 選手たちの顔も 心なしか緊張ぎみです。 ≫
 
タイガーは1人で長椅子に座り、うつむいていた。 そこに横島が近づいて―――
 
横島 「 おい 試合始まるぞ。
タイガー 「 ・・・・・・・・・
横島 「 おい! でねえつもりかよ!!
タイガー 「 ・・・・・・・・・
横島 「 聞いてんのかよタイガー!!
 
横島、タイガーの胸元をつかむ。
 
タイガー 「 ・・・・・・・・・横島サン・・・・ワシ・・・ウッ
 
横島は静かに泣いてるタイガーの胸元をはなす。
 
横島 「 ・・・泣くなよ。 決まったもんは仕方ないだろ。
タイガー 「 ジャケど・・・・・・ジャケンど・・・・
横島 「 水樹ちゃんだっけか 一緒に修行したってのは。
タイガー 「 ウッ・・・ウッ・・・
横島 「 かわいいコじゃねーか。 きっと勝っても 笑って許してくれるよ。
 
タイガー 「「「  ウッ・・・・ よごじまさ―――ん!!  グワアァァァァァァァン!!!!!
 
横島 「 こ こら 泣きつくな!! 人が見とるだろうが!!
 
タイガー 「「「  グワアァアアアアアアン!!!!!
 
 
                    ◆
 
 
客席には一文字たちが座っている。 だがさっきまでの活気はない。
 
一文字 「 ・・・あんまりだよなこんなのって。 唐巣神父なんて組合せするんだよ!!
ピート 「 唐巣神父は今日きてませんよ。 2回戦からはまた別の人が組合せ抽選をしますしね。
 
いらだつ一文字にフォローするピート。 後ろの席に座ってる小鳩も目が潤んでいた・・・
 
グズッ
小鳩 「 タイガーさんも水樹さんも可哀相・・・
「 小鳩! 泣いたらあかん!! 銭の花は白い…!! せやけど、その根は血のようにッ!!
ぼかっ☆
一文字 「 訳わからん なぐさめはやめんか!!
「 仮にも神のどたまを殴るとはなんちゅう女じゃ!
一文字 「 うっせー!!
「 一文字さん 落ちつきなさいよ。 少なくても1人は合格するんだし。
一文字 「 そんな問題じゃねーだろ弓!!
  だってよ・・・・・・だってあいつら この日の為に一緒に頑張ってきたんだぜ。 なのに・・・!
「 一文字さん・・・・
洋子 「 あ 水樹ちゃん出てきた―――
 
洋子が指差す先に、結界内に向かう水樹の姿があった。
彼女はもと六女G組の心理攻撃を得意とした少女であり、また気の弱い少女でもあった。
タイガーとは1年近く実家で修行した仲であり、その共有時間は一文字やエミよりも長い・・・
結界内にて水樹、タイガーを待つ。
 
審判 ≪ ・・・・? タイガー選手・・・・!? タイガー寅吉選手!! いないのかね!? ≫
 
試合会場につながる扉の前に、タイガーをひっぱる横島がいた。
 
ずるずるずるーっ
横島 「 ほら呼んでるぞ! いい加減諦めろ!
タイガー 「 イ イヤジャ〜〜〜〜〜!!
 
審判 ≪ え―― やむをえません。 タイガー選手は試合放棄とみなし、この試合―― ≫
 
横島 「 遅れてすんまへーん!
おキヌ 「 横島さん!?
 
おキヌは横島がタイガーをひきずる姿を見つけた。
 
横島 「 ほらいけ!! <どんっ>
 
横島につきとばされたタイガーは、水樹と目が合った。
 
水樹 ( ・・・・・・タイガーさん。
タイガー ( ・・・・・・水樹サン。
 
 
審判 ≪ それでは2回戦第1試合 試合開始!! ≫
 
 
 『『  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・  』』
 
タイガーと水樹、お互い困った表情で見つめあったまま、2人とも戦おうとしない。
 
審判 ≪ どうしたね君達! 試合は始まっているぞ!! ≫
ハッ!
水樹 「 い いくわよタイガーさん!!
タイガー 「 !!
 
水樹がもつ榊の枝が光だす・・・!
 
水樹 「 神霊よ宿れ! 御霊代(みたましろ)!!
タイガー 「 グオオ―――ッ!!!
 
≪ タイガー選手、神野選手の光の波動をもろにくらい ひざをついたー! ≫
 
仙香 「 あれは水樹が実家の修行で身に着けた新技!
洋子 「 すごい! 以前よりずっと霊力があがっている!!
一文字 「 タイガーぼけっとしてんじゃねえ! ちゃんと戦え!! ちゃんと!!
 
水樹 「 ・・・いくわよ! 御霊代(みたましろ)・連打!!
 
ビュウン ビュウン ビュウンッ!
 
タイガー 「「「  グオオオオオオオオッ!!! <ドサッ>
 
ヒラカタ ≪ 榊を振り回す神野選手!! タイガー選手 その光の波動を連続でくらってダウン!! ≫
 
おキヌ 「 タイガーさん!!
横島 「 なにしとんじゃお前ー!! 本気で戦えー!!
 
結界の外からおキヌと横島が応援する。
 
ヒラカタ ≪ タイガー選手 立ち上がれない!! 審判が様子を見にいっています! ≫
洋子 「 寅吉まさか わざと負けるつもりか!?
一文字 「 あのバカ・・・・・・!
タタタッ
「 一文字さん!? あ! ちょっと待ちなさい!
 
一文字は弓の言葉が届いてないかのように、2階の客席から1階の舞台に飛び降り、
タイガーのいる結界へ走った。 そして結界ラインギリギリの所まで入ってくると―――
 
一文字 「 タイガーたて―――!! 今までの苦労を無駄にする気か―――!!
  この日の為につらい修行に耐えてきたんだろ!! それがこんな終わり方でいいのかよ!!
 
タイガー ( 一文字さん・・・・・・
 
横島 「 そうだタイガー!! お前資格取ったら事務所もつんだろ!!
  こんなことでくじけていたらお前一生後悔するぞ! 絶対に!!
 
タイガー ( 横島さん・・・・・・
 
洋子 「 寅吉!
ピート 「 タイガー!!
愛子 「 タイガークン!!
 
タイガー ( 洋子サン・・・みんな・・・・・・
 
・・・・・・・・・・・・のそっ
 
ヒラカタ ≪ タイガー選手 起き上がったー!! ≫
 
タイガー 「 ・・・水樹サン。
水樹 「 ・・・なによ。
タイガー 「 ワシ 勝ちたい。
水樹 「 私もよ。
タイガー 「 じゃから水樹サン・・・・本気をだしてクレ。
水樹 「 ・・・え?
タイガー 「 何日一緒に修行したと思っとるんジャ。
  水樹サンが紙一重で急所をはずしてくれとることぐらいわかっとる。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・
タイガー 「 ワシも迷うとったが、水樹サンはもっと迷っとる。
  ワシに勝ちをゆずる気なのは、最初からわかっとった。
  自分が本気で戦っているように見せて、ワシを本気にさせてわざと負けようと・・・
  水樹サンは優しいおなごじゃからノー。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だって―――
 
水樹の目から涙があふれる。
 
水樹 「 だって資格がないと除霊事務所作れないでしょう・・・・・・また1年待たないといけないのよ。
  出場辞退したり手を抜いたりして勝っても、タイガーさんは絶対に喜ばない人だし・・・
  だから私が本気をだしてるように見せないと、タイガーさんも本気で攻撃しないじゃない・・・
タイガー 「 すまんかったノー。
水樹 「 私のほうこそ・・・
タイガー 「 じゃから修行の成果 みなさんにみせよう。
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・うん。
タイガー 「 どうせなら 事実上の決勝戦と言われるぐらいの試合をしようノ!!
水樹 「 ・・・・・・うん!
 
水樹は涙を拭い、笑顔を見せた。 そしてタイガーはトラ男への変化する・・・!
 
タイガー 「「「  いくぞ 水樹サン!!
水樹 「「「  いつでもいいわ タイガーさん!!
 
カッ!
タイガー 「「「  精神感応最大放射!!!
パアァーッ
水樹 「「「  心理攻撃最大汚染!!!
 
榊の枝を高く上げる水樹。 お互いの精神波が衝突し――――
 
 
 
 
 カッ・・・   ズオオオオオオオオオオ―――――――――ッ!!!!!
 
 
 
 
バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチバチ
 
ヒラカタ ≪ これはすごい! 両者の強力な精神波が衝突し 念波で放電がおこっています!! ≫
令子 ≪ タイガーもすごいけど 水樹ってコもすごいわ! 2人共この1年で著しく成長してる! ≫
西条 ≪ 驚いた・・・・日本でもこれほどの精神感応者はそうはいませんよ! ≫
 
美神と西条が解説する。
 
一文字 「 ・・・・なんだよ やればできるじゃんかよ。
横島 「 ったくハラハラさせやがってー
 
ホッとする一文字と横島。
 
「 2人ともここまで霊力が上がってるなんて・・・!
洋子 「 1年前とはえらい違いやな・・・
仙香 「 ・・・がんばったからね。 水樹も タイガーも。
エミ 「 ・・・・・・
 
六道女学院3強の弓・洋子・仙香は、2人の力を認めていた。
その後ろでは、エミが黙って2人の戦いを見ている。
 
 
バチバチバチバチバチバチバチ
 
タイガー 「「「 グオオオオ『 水樹サン 』―――ッ!!!
 
水樹 「「「 ハアアアア『 タイガーさん 』―――ッ!!!
 
 
バシュウゥゥゥッ
 
ヒラカタ ≪ おっと!? 突然両者 霊波の放出をやめた!? ≫
 
タイガー 「 このまま念波の放出だけじゃあつまらんからノー!
水樹 「 そうよね! もっと私達の強さを見せつけてやりましょう!!
バシュッ
タイガー 「 虎の爪!!
水樹 「 榊のナギナタ!!
 
タイガーは両指から霊気の爪(タイガー版“栄光の手”)を、
水樹は榊に霊波をこめ、霊気の長刀を創り出した!(水樹がその後の修行で習得した新技)
 
タイガー 「 いくぞ水樹サン!!
水樹 「 負けないわよ!!
 
ガキィ―――ン!!
霊気の爪と長刀がぶつかり合う!
お互いの霊気で作り出した武器で戦う2人。 その戦いは長時間に及ぶい そして―――
 
 
 
 
ズカッ  バサッ  キィイイイイン!
 
ヒラカタ ≪ なんという凄まじい戦いでしょう!
  資格試験1試合あたりの平均時間は約5分! すでに両者20分以上戦っております! ≫
 
ゴオオオオッ!
タイガー 「「「  咆哮波(ほうこうは)!!!!
 
タイガー、口から霊気の弾丸を放つ!
 
パアアアアッ!
水樹 「「「  神の結界(かみのけっかい)!!
 
水樹は榊に霊気をこめて、防御結界を張る!
どちらの技も、その後の神野神社の修行で習得した技である―――
 
ヒラカタ ≪ いったい誰が予想したでしょうか!?
  前回共に2回戦敗退の彼らが今 まさに決勝戦並の好試合を繰り広げております!! ≫
 
一文字 「 ・・・あいつらあんなにいろんな技持ってたっけ?
横島 「 霊気の過負荷状態だよ。
一文字 「 えっ!?
 
一文字の問いに横島が答える。
 
横島 「 昨日タイガーに聞いたんだ修行のこと。 2月に女子寮でやったエミさんの試験を除けば、
  あいつら今年になって 修行のための霊力は3回しか使ってないんだ。
一文字 「 3回!?
横島 「 2月と6月と2日前。
一文字 「 たったそれだけで どうやってあんなに霊力が上がるんだよ!!
 
横島 「 俺も前に妙神山で 猿神に似たような修行をさせられたことがある。
  修行をしつつ霊力を使わず ある時力を解放すると、霊力は一時的に増大するんだ。
  その間は潜在能力を引き出しやすくなり、爆発的な霊力の上昇・新しい技や能力の習得ができるらしい。
  まあ俺たちGSが霊力を何ヶ月も使わないなんてこと 普通ありえんし、精神感応者は
  それ専門の修行のやり方があるから、俺達が同じ修行をまねすることはできないだろうな。
 
早苗・一文字 「「 ・・・・・・・・・
 
黙って横島を見ている早苗と一文字。
 
一文字 「 ・・・・・・・・へえー
横島 「 な なんだよ。
一文字 「 おまえがまともなこと言ったの 初めて聞いたぜ。
早苗 「 んだ 雪でも降るんでねえべか?
ぐおおっ!
横島 「「「  おまえらな―――!!!
 
失礼な物言いだったが、日頃の横島の行動からして無理もない所か・・・
 
水樹 「 ハアハアハアッ・・・
 
一方、先ほどまで攻防が続いていた舞台上では、水樹が息をきらしてタイガーを牽制していた。
すでに水樹は、霊力をほとんど消耗していたのである―――
 
 
水樹 ( ・・・ここまでね。 やっぱりタイガーさんのほうが強い!
  あなたに資格を取ってほしいからわざと負けるなんて言ってたけど・・・違う!
 
  私は優しい女なんかじゃない! 優しくない 優しくなんか・・・・・・だって・・・・だって!
 
  私だってこの1年 あなたと同じ厳しい修行をしてきたのよ!!
  私も心のどこかで資格がほしいという気持ちがある! 勝ちたい! 勝って資格ほしいもん!
 
  だから私は全力であなたと戦う! タイガーさん これが私の最後の攻撃・・・・・・・・・・・!!
 
 
グオオオオオオオオオオッ!!!!!
 
水樹 「「「   ――――我が全霊力を神に捧げる!!
     神霊よ宿れ!! 御霊代・塊(みたましろ・かたまり)!!!!!
 
 
パアアア――――――――――――――――ッ!!!!!
 
 
ヒラカタ ≪ 神野選手! 榊を高くかざして光の玉を創り出した―――! ≫
西条 ≪ 霊気を凝縮させたんだ! ≫ 
令子 ≪ あのコ最後の賭けにでたわ!! ≫
 
 
タイガー ―――水樹サン!―――
 
ドンッ!
水樹 「「「  いけえ―――――――――っ!!!!!
 
ヒラカタ ≪ 光の玉を放った――――――!!!!! ≫
 
直径1メートルに及ぶ大きな霊力の玉が、タイガーにまっすぐ襲いかかる!
それに対しタイガーは、10本の指先から霊気を放出させたまま両手を広げ、そのままクロスに振り下ろす!!
 
タイガー 「 虎の爪・・・・・・・・・飛び爪!! <シュバッ>
 
10本の爪から飛散した霊気の爪が、水樹の霊気の玉を切り裂いた!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   『 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・タイガーさん  』
 
   『 なんジャ? 』
 
   『 私ね この1年間けっこう楽しかったよ 』
 
   『 不思議ジャノー あんなにつらい修行じゃったのに 』
 
   『 ホント 1人じゃきっと逃げ出してたよね 』
 
   『 水樹さん・・・・・・ 』
 
   『 ・・・・・・・・・・・・がんばってね 』
 
   『 ああ 』
 
   『 応援するから 』
 
   『 ・・・・・・ああ 』
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・バタッ
 
 
気力をふりしぼり、全力で戦った水樹はその場に倒れた。
審判はタイガーの手をあげる。
 
 
審判      ≪  勝者タイガー!!  タイガー選手 GS資格取得!!  ≫
 
 
ワアアアアアアアアアア―――――――――ッ!!!!!!!!
 
 
ヒラカタ ≪ 長い激闘の末、勝利したのはタイガー寅吉選手!
  しかし 神野選手もすばらしい戦いを見せてくれました!
  組合せさえ悪くなければ 確実に資格は取れてたでしょう! ≫
 
一文字・早苗 「 タイガー!!  「 水樹ちゃん!!
 
近くにいた一文字と早苗が、真っ先にタイガーと水樹の所に駆け寄った。
 
一文字 「 やったなタイガー! これでお前もGSだぜ!
早苗 「 すごかったべ! 2人とも!
タイガー 「 ・・・・・・・・・・
一文字 「 ・・・タイガー?
 
一文字の声が届いていないかのように、タイガーはふらつきながら、何も言わずに会場を出ていった。
 
一文字 「 タイガー・・・
審判 ≪ む こりゃいかん! 救護班! ≫
冥子 「 は〜〜〜い!
 
式神ショウトラを連れた六道冥子がきて、水樹を治療する―――
 
 
 
―――そしてタイガーは、廊下で1人たたずんでいた。
 
タイガー 「 ・・・ウッ・・・・・・・・・ウオッ・・・・・グオオオオオオ――――――ン!!!!!
 
 
 
 
 

リポート33 『タイガー快進撃!』
―――そして試合は続けられた。
 
バシッ
審判 ≪  勝者氷室!! 氷室早苗選手!! GS資格取得!!  ≫
ぐっ
早苗 「 よっすぁーっ!
 
 
バシュバシュバシーッ
審判 ≪  勝者聖(ひじり)!! 聖 聖羅選手!! GS資格取得!!  ≫
うるっ
聖羅 「 ・・・・やりましたわ、唐巣神父!
 
 
ピョロロロ――――――ッ
審判 ≪  勝者氷室!! 氷室キヌ選手!! GS資格取得!!  ≫
ぐずっ
おキヌ 「 やった・・・・・・わたし・・・・!
 
令子 ≪ いいわよ!! よくやった おキヌちゃーん!! ≫
ヒラカタ ≪ だから美神さん! マイクで応援しないでください!! ≫
 
 
                     ◆
 
 
■医務室■
眠っている水樹の周りに仙香と亜美、そして救護班の冥子がいた。
そこに小鳩が走ってやってきて―――
 
小鳩 「 早苗さんと聖羅さんに続いておキヌちゃんも合格しました!
仙香 「 そう・・・・・・じゃあ結局落ちたのは 水樹だけなのね。
 
仙香がつぶやく。 そこで亜美が、水樹の目元が動いたことに気づいた。
 
亜美 「 水樹大丈夫か?
水樹 「 ん・・・・・・・・・
仙香 「 水樹!
 
水樹は目をさます。
 
水樹 「 仙香 亜美・・・? ここは?
仙香 「 医務室よ。
水樹 「 ・・・・・・そうかー 私 負けちゃったんだ。
仙香 「 でもさ水樹 すごかったわよ! 会場のみんなもビックリしてたんだから!!
水樹 「 ・・・・・・・・・・・・
 
しばらく黙っていた水樹は、上半身を起こして―――
 
水樹 「 仙香 私 本気で戦ったよ。
仙香 「 うん。
水樹 「 でも・・・・・・・・・・・・勝てなかった!
仙香 「 水樹・・・
 
―――彼女は本気で勝ちたいと思った。
気が弱く、すぐにパニックになる少女。 彼女もまた、この1年厳しい修行をこなしたのである。
彼女はいま、その辛さ 厳しさ 悔しさが、慟哭となってこみ上げてきていた。
両手でふとんを強く握りしめ、うつむき、長く黒い髪の毛で顔を隠すと、自分の思いを一気に友人たちにぶちまけた―――
 
水樹 「 だってタイガーさん強いんだもん! 
  だって私 あの人のことずっとみてきたから 最初から敵(かな)わない事ぐらいわかってた!
  でも私だってタイガーさんに負けないぐらい 一生懸命修行してきたもん!
  勝ちたかった! 資格ほしかった! 悔しいよ!
  悔しいけど・・・・・・
  苦しかったけど タイガーさんの攻撃は全部・・・・・・優しかった・・・・・・戦いたくなかった・・・
 
水樹が涙をボロボロ流しながらそう言うと、仙香は水樹の頭をよせて優しく抱きしめた。
 
仙香 「 わかってるわ あなたが頑張ってたこと あなたの気持ちも。 タイガーもきっと同じ気持ちよ。
 
水樹 「 ・・・・仙香 これでよかったんだよね。 これでタイガーさんの夢が叶うんだから・・・
  嬉しいんだよ 本当によかったって思ってる。 おめでとうって伝えたい。
  でも・・・・・・でも今は!!
 
  ウッ ウッ・・・・・・・ウワアァアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!!!
 
仙香 「 水樹・・・・・・
 
水樹は仙香の胸の中で泣いていた。
そして医務室の前の廊下には、水樹の様子を見にきていたタイガーの姿が―――
 
グズッ・・・
タイガー ( 水樹サン・・・・!
 
医務室の扉の近くにいた小鳩が、タイガーの存在に気づき―――
 
小鳩 「 タイガーさん!?    ―――!―――
 
ずどどどどどっ!
小鳩に声をかけられたタイガーは走ってその場から逃げ出したのである―――
 
 
水樹 ―――タイガーさん・・・―――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・・・そして3回戦。
 
審判 ≪ 勝者 タイガー!! ≫
 
 
4回戦―――
 
審判 ≪ タイガー選手、勝利!! ≫
 
タイガーは水樹との戦いで あれだけの霊力を消費したにもかかわらず、鬼神のごとく勝利していった。
 
 
そして 準々決勝――― 
 
 
     [ タイガー寅吉 VS 聖 聖羅 ]
 
 
聖羅 ( ハアハア・・・・・・な・・・なんて強さなんですの?
  神野さん 本当にこの男と互角に近い戦いをしたというんですの!?
 
ゴオオオオッ!
タイガー 「「「  咆哮波!!
ドゴオッ!!
聖羅 「「 キャアアアア――――――ッ!!
 
ヒラカタ ≪ タイガー選手の霊気弾が、聖選手の非武装結界を打ち破った―――! ≫
 
審判 ≪ 勝者 タイガー寅吉!! 準決勝進出!! ≫
 
 
春華 「 すごい・・・あれだけ成長した聖羅が ほとんど相手にならないなんて。
  ・・・でもトラ男これで 前回準決勝までコマをすすめた洋子と並んだわね。
洋子 「 いーや もう1人準決勝進出者でてきそうよ。 ほら。
 
洋子の指差す先には氷室姉妹がいた。
 
 
審判 ≪ 準々決勝!  氷室キヌ 対 氷室早苗 !! ≫
 
おキヌは辛そうに早苗の顔を見ていたが・・・
 
おキヌ 「 おねえちゃん・・・
早苗 「 おキヌちゃん 勝っても負けても文句なしだ! 全力で戦うべ!!
おキヌ 「 ・・・・うん!
 
西条 「 義理とはいえ姉妹対決か・・・・辛いな。
令子 「 仕方ないわ。 ここまで勝ち上がったんだもの。 いずれは戦うことにもなるわ。
 
解説の西条と美神は、複雑な気持ちでおキヌたちを見ていた。
 
 
審判 ≪ 試合開始!! ≫
 
 
 
■廊下■
 
タイガーと横島が自販機の前でジュースを飲んでいると、そこにピートが走ってやってきた。
 
ピート 「 横島さん! おキヌちゃんと早苗ちゃんの試合が始まりましたよ!
横島 「 あ 行く行くー!
ピート 「 タイガーも・・・・
タイガー 「 あーワシは少し休みたいケン・・・
ピート 「 そうですか・・・・じゃあ横島さん行きましょう!
 
横島とピートは試験会場に向かった。 そしてそこに、水樹がやってくる。
 
タイガー 「 ・・・・・・・・・・水樹サン。
 
 
 
 
 
 

リポート34 『トラ為に鐘は鳴る!!』
おキヌ対早苗の試合―――
 
ピョロロロ――――――ッ
ヒラカタ ≪ 氷室キヌ選手 ネクロマンサーの笛で氷室早苗選手の動きを封じるー!! ≫
早苗 「 うぐぐ・・・!
おキヌ ( 倒れて! おねえちゃん!!
 
西条 ≪ この勝負 あきらかにキヌ選手のほうが有利ですね。 ≫
ヒラカタ ≪ 解説の西条さん。 と 言いますと? ≫
西条 ≪ 早苗選手の能力は霊を感受しやすい 霊媒体質です。
  僕も以前彼女にテレパシーを送ったことがありましたが、
  彼女はとてもそういった念波にとても影響されやすいんです。 ≫
令子 ≪ おキヌちゃんは 何度も早苗ちゃんにのり移ってたりしてたからね。
  お互いの霊質もよく知っているのよ。
  早苗ちゃんがどこまで念波に抵抗する力を身につけたのかが、勝負の分かれ目ね。 ≫
 
早苗 ( さすがおキヌちゃんだべ・・・ こうなったらやってやるべ! <キッ>
 
早苗は右手を天にかざすと―――
 
早苗 「「「  わたすに宿れ!! 神の魂!!
 
カッ―‐‐  パアアアアアア――――――‐ッ
 
ヒラカタ ≪ 氷室早苗選手、光を放ったかと思えば 体中に妙な紋様が浮き出てます! ≫
西条 ≪ なんて魔力だ! この霊力はいったい!? ≫
令子 ≪ この霊気前に感じたことがあるわ! でもまさか・・・! ≫
 
早苗の顔や手など、体中に朱色の紋様が浮かびだした! すると早苗の口調が変わる・・・!
 
早苗(ヒミコ) 《 ・・・・・・こやつ わらわを眠りからさますとは・・・・・・
 
 
令子     ≪≪  やっぱり ヒミコ!!  ≫≫
 
 
早苗(ヒミコ) 《 ふむ 一度だけ力を貸そう。 <ドンッ!>
おキヌ 「 キャッ!!
 
早苗(ヒミコ憑依)がおキヌに手をかざした瞬間、おキヌは気絶し、眠りに落ちた。
審判はおキヌの状態を見ると―――
 
審判 ≪ 勝者 氷室早苗!! ≫
 
そのあと早苗の体の紋様が、スーッと消えていった。 実教のヒラカタは、解説の美神にたずねた。
 
ヒラカタ ≪ ・・・解説の美神さん。 これはいったいどういうなのでしょう? ≫
令子 ≪ ヤマタイ国の女王ヒミコ―――日本史上の最大の力を持った魔女を憑依させたのよ。
  本来3つのアイテムがなければ降霊は無理だと言われてるけど、
  いくら飛びぬけた霊媒体質としても よく降霊できたわね・・・ ≫
 
 
 
 
■試合会場の外■
 
タイガーと水樹は外に出た。 みな試合のほうを見物しているらしく、周囲の人の数は少ない。
2人共黙ったまま敷地内を歩いていると、しばらくしてタイガーは歩くのをやめた。
 
タイガー 「 ・・・・・・すまんノー。
水樹 「 ・・・謝る必要なんてないわ。 正々堂々戦って負けたんだもの。 悔いはないわ。
タイガー 「 ジャケンどワシ 水樹サンに恩を仇でかえすような―――!
水樹 「 ストーップ! それ以上言うとホントに怒るわよ!
 
水樹はタイガーの口に手を向けて言葉を止めた。
 
タイガー 「 う・・・・・・
水樹 「 タイガーさんも2浪してようやく合格できたんだもん。
  私も来年もう一度うけて 今度こそ合格してみせるわ!
タイガー 「 水樹サン・・・
水樹 「 そしたらさ・・・・・・その・・・
 
ガッツポーズを見せたあと、水樹は急に口をモゴモゴさせだして―――
 
水樹 「 その・・・タイガーさんの除霊事務所で雇ってくれないかな?
 
顔を赤らめながら水樹は言った。
 
タイガー 「 えっ!? で でも水樹サンは神野神社の跡取り娘じゃし―――
水樹 「 んもうーそれでも雇ってって言ってるの! わかんないの!?
タイガー 「 水樹サン・・・
 
タイガーは少し考えると―――
 
タイガー 「 ・・・そうじゃの。 あそこじゃと除霊仕事なんてないからノー。
水樹 「 うんうん!
タイガー 「 水樹サンほどの力を持っとったら、もっと都会でバリバリ除霊仕事をやるべきじゃからノー。
水樹 「 そうでしょ そうでしょ!
タイガー 「 もし水樹サンさえよければワシが―――
 
水樹       「 雇ってくれるの!? 
 
タイガー            ―――どっか知り合いの除霊事務所を紹介しようかノ!
 
 
ずどしゃーっ  =☆
期待に満ちて前に出てきた水樹は、そのまま盛大にこけた。
 
タイガー 「 そうジャ 唐巣神父サンの所なんかどうかノー。
  いやあそこは宗教的に違うかー 魔鈴さんとこも合わんじゃろし・・・
  あ そうジャ! 美神サンとこはどうジャ!? いまちょうど横島サンが―――!
水樹 「 あ あのねー!!(汗)
 
必死に起き上がる水樹。 怒りながら困った顔をした水樹は、ひとつため息をついた後―――
 
水樹 「 んもう ホントに・・・・・・とにかく頑張ってよ! まだ試合残っているんだから!
タイガー 「 も もちろんですジャ! 水樹サンの分まで必ず!
水樹 「 ・・・・・・うん!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■試合会場 結界内■
 
ヒラカタ ≪ さあ準決勝です。 すでに1人は決勝進出が決まり 残るもう1試合、
  タイガー寅吉選手 対 氷室早苗選手の戦いが今 繰り広げられております! ≫
 
トラ男と化したタイガーは、結界内を自由に飛び回る早苗の動きを必死で捕えようとしている。
しかし早苗の動きが早く、なかなか捕まえられずにいた―――
 
ヒラカタ ≪ ハーピーを憑依させ鳥人と化した氷室選手!
  霊気で形作られた翼を広げ 結界内を飛び回っております! ≫
 
ビュッ!
早苗(ハーピー) 《《《  羽根の弾丸(フェザー・ブレッド)!!
ゴオオオオッ
タイガー 「「「  咆哮波(ほうこうは)!!
 
 
ドグオオオ―――――――――ン!!!!!
 
 
ヒラカタ ≪ 両者の技が相殺し、結界内で霊気爆発をおこしています! ≫
 
タイガー ( はあっはあっ・・・・・・早苗サン さすがに強いノー!
早苗(ハーピー) ( はあっはあっ・・・・・・このままじゃダメだべ!
  タイガークンは本当に強い! こうなったらヒミコを憑依させるしかねえ!
 
早苗(ハーピー) 「「「  わたすに宿れ!! 神の魂!!
 
早苗の体に再び紋様が浮かびだす!
 
ヒラカタ ≪ 体中に紋様が! 氷室選手、2たびヒミコを宿した―――! ≫
ビシュウウ―――ッ
早苗(ヒミコ) 《 ・・・・・・・・・・・・またか。
タイガー 「 何ジャ!? 霊力が爆発的に上がった!?
 
ヒミコを憑依させた早苗をこの時初めて見るタイガーは、早苗の霊力に驚いた。
早苗は憑依したヒミコに念じる。
 
早苗 『 さあ おめさの力貸してけれ!
ヒミコ 《 ・・・いやだ。
早苗 『 へ?
ヒミコ 《 ふあああっ・・・・・・1日に2度も呼ぶな。 わらわは眠いのじゃ。
パアアッ
早苗 『 あ ちょっとー!
シュウ―――ッ
ヒミコ 《 今度呼ぶ時は1000年後に呼んでくれ・・・
 
そう言うと、ヒミコの魂は何処へと消えてしまった。
 
ヒラカタ ≪ 氷室選手の体から紋様が消えたー! ≫
 
バシュッ
タイガー 「 もらった! 幻惑精神感応・ナイトメア!!
早苗 「 しまっ・・・!
 
ナイトメアの幻覚を生みだし、眠りの波動を早苗に放つ!
油断した早苗はモロにタイガーの幻覚にはまり、そのまま倒れて眠ってしまう。 審判確認したあと―――
 
審判 ≪ 氷室選手が眠ってしまったため、タイガー選手決勝進出!! ≫
 
令子 ≪ さすがの早苗ちゃんも あれだけ神に近い霊を呼び出すのは至難のワザだったようね。 ≫
 
タイガーの元に、一文字たちが集まる。
 
一文字 「 やったなタイガー!! あと1回勝てば首席合格だぜ!!
タイガー 「 あと1回か・・・・・・よし!
 
 
                      ◆
 
 
―――30分後、タイガーと草薙は対峙していた。
 
ヒラカタ ≪ 本年度の試験もいよいよ決勝です! 激戦を繰り広げてきた精神感応者・タイガー寅吉選手!
  対するは 神通棍1本でここまで勝ち上がってきた修験者・草薙 剣(くさなぎけん)!! ≫
 
一文字 「 タイガー ガッツで行け―――!!
洋子 「 負けんなや―――!!
メゾピアノ 《 頑張りたまえ タイガークン!
愛子 《 青春ねー!!
 
応援する友人たち。
 
水樹 「 タイガーさん・・・・・・
 
手を組んで祈る水樹。
 
エミ 「 ・・・・・・・・・・・・
 
壁を背にして見守るエミ。
 
 
審判 ≪ それでは決勝戦、試合開始!! ≫
 
 
バシュッ キィィィンッ
 
タイガー 「「「  ウオオオオオオッ!!!!!
草薙 「「「  はああああああっ!!!!!
 
ガキィ―――――――――――ン!!!!!
 
タイガーは虎(霊気)の爪、草薙は神通棍を武器に戦った。
 
ヒラカタ ≪ 両者激しい剣さばきです! どうですか 解説の西条さん! ≫
西条 ≪ 霊力はほぼ互角ですが 草薙選手のほうが戦い慣れしてますね。 ≫
 
洋子 「 あの男強い! さすがに決勝まで勝ち上がってきとるだけのことはある!!
一文字 「 タイガー精神攻撃だ!! 得意の精神攻撃で奴を負かせー!!
 
ばちばちばちばちっ!
タイガー 「 一文字サン了解ですケン!! 精神感応―――ッ!!!!!
草薙 「 ムッ!! グオッ!!
 
草薙はトラの人獣に変化したタイガーの念波に、必死に耐えている―――
 
 
ばちばばちばちちばち・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  ・・・・・・・わっしは2年前まで1人じゃった・・・・・・
 
  暴走しやすいこの能力とからだのせいで、人は皆、わっしを避けていた・・・・・・
 
  一時期、女性恐怖症にもなった・・・・・・
 
  ジャケンど エミさんのおかげで世界が変わった・・・・・・
 
  友達にも 戦友にも恵まれ 師匠にも恵まれた・・・・・・
 
  横島サン ピートサン 愛子サン
 
  一文字サン 洋子サン メゾピー 早苗サン 水樹サン エミさん・・・・・・みんな・・・・・・
 
  今ではこんなにもわっしのことを応援してくれとる・・・・・・
 
  わっしは幸せ者ジャ・・・・・・
 
 
  じゃから・・・・・・じゃから・・・・・・一度くらい 皆サンのご期待にそえねばノー!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ガオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!
 
 
タイガー 「「「「「   これで 最後ジャアアア――――ッ!!!!!!!!
 
 
ばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばちばち
 
 
草薙 「「「「「   グアアアア――――――ッ!!!!!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・・・・ドサッ
 
草薙は倒れ、タイガーはふらつきながらも気力で立ちとどまった。
 
 
タイガー ( や・・・・・・やった・・・・・・初めて・・・・・・初めてみんなの期待に応えられた・・・・・・
 
エミ ( ・・・・・・おめでとうタイガー。 これで正式にあんたはゴーストスイーパーよ。
 
 
エミはタイガーに背を向け、会場を退出した。
草薙の意識を確認していた審判はしばらくしてタイガーに近づき、彼の右手をあげる・・・・・・
 
 
 
 
審判 ≪ 勝者 タイガー!!
  本年度のGS資格取得試験首席は タイガー寅吉選手に決定!! ≫
 
 
 
 
その瞬間、タイガーは2000人の受験者の頂点に立ち、
今年度の最優秀新人ゴーストスイーパーとなったのである―――
 
 
第6節・完
 

※この作品は、ヴァージニアさんによる C-WWW への投稿作品です。
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