今朝の六道女学院は、久方ぶりに活気があった。
原因不明の地脈の暴走から一週間。ようやく、学校が運営を再開したのだった。
「お久しぶり」「うわあ、ぼろぼろ」「一体なにがあったのかしら」「なんでも、地脈がどうとか」「ふ〜ん、怖いのね」
地脈の事故について話したり、この一週間にあったことを報告しあったり、陽気な生徒たちが通学してくる。
が。
その中に幾人か、活気、陽気とは程遠い空気をまとった生徒がいた。
彼女たちの顔に浮かぶもの。それは恐れ。恐怖。
彼女たちは知っている。地脈の事故などではないことを。
霊能科に籍を置く彼女たちにはわかっている。とてつもない化け物の存在を。
普通科に通う連中と違い、彼女たちは恐怖する。
おはようと挨拶されても、返事をする余裕はない。それはまるで、13階段を登る死刑囚のよう。学校――――死刑台――――が近付くほどに、その足取りは重く、表情は暗くなる。
もちろん、この一週間は平穏無事ではあった。あの恐ろしいまでの霊波も、あの晩以来感じられない。学校が再開されたのだって、もう安全という判断からだろう。わかってはいる。わかってはいるのだ。
だが、頭では理解しても、感情は納得してくれない。一度覚えた恐怖は拭えない。あの晩の記憶は薄れない。
彼女たちの歩みは鈍り、やがて、止まる。
この日。
一週間ぶりに授業が再開された六道女学院。
霊能科の生徒は、クラス学年を問わず、出席した者は居なかった。