なのは洋菓子店のいい仕事
第一話を読んだ段階では、『「なのは洋菓子店のいい仕事」とは、洋菓子店の持つハートウォーミングなイメージをぶち壊し、盲目的に甘いモノが大好きな全てのケーキ大好き人間共に対して暗に喧嘩をふっかける、ストロングスタイルな社会批評作品である』という結論に達せざるを得なかったこのマンガですが、サンデー20号に掲載された第二話は、それでも多少はハートウォーミングな要素が入って来ていたのではないかと思いました。
今回の話は、ファッティかつ多汗症気味の洋菓子大好きなバレーボール部女子・川端かすみが、洋菓子が好きな自分の心を偽ることを止め、これからも部活を頑張りつつお菓子食って生きていこう! と己を見つめなおす(というか開き直る)物語です。
特に「マドレーヌ20個分のカロリーを消費するためにはフルマラソン一回分の運動が必要」とタイムから言われても、「ですよね!
」とハキハキと応える開き直りっぷりが印象的でした。自分の心に素直になった彼女を見ていると心が暖まります。ハートウォーミングです。多分。
ただこのマンガ、第一話のケーキで孤独を癒やそうとした(結果、全然癒やされずに終わった)苺にしろ、第二話の部活のために洋菓子好きを克服しようとした(結果、再び洋菓子に屈服した)かすみにしろ、自身の抱えた問題を根本的には何も解決できていないところが気になります。
彼女たちは、洋菓子が好き過ぎるあまりに性格や行動が極端に歪んでいるのですが、なのは洋菓子店を訪れた彼女たちは、その問題を結局は克服できていません。
前作の「神のみぞ知るセカイ」では、登場する女子達はみんな登場時は自身の抱えた問題につけ込んだ「駆け魂」のせいで行動や性格が極端に歪んでいたんですけど、桂馬に攻略されて「駆け魂」を除外し、心の隙間を埋めたことで、最後にはその問題を克服することができていました。
しかし「なのは洋菓子店のいい仕事」の場合は、今のところそういう話にはなっていません。苺はこれからも孤独を癒やすために暴力的な美味しさのケーキを求め続けるでしょうし、かすみもあの後ダイエットに成功してバレー部のレギュラーになれるかどうかはかなり疑わしそうです。なのは洋菓子店は、問題を抱えた女子達の前に現れはしますが、ただ彼女たちが求める菓子を提供するだけで、決してお菓子を通じて彼女たちの問題を解決するようなことはしないのです。
いつか彼女たちも、なのは洋菓子店をキッカケに己の心の隙間をなんとか出来る日が来るのでしょうか。
この点だけを見ても、このマンガがいわゆる「洋菓子店を舞台にしたハートウォーミングなストーリー」を狙っていないというか、むしろそれを逆手に取っている構造になっている、と言えるのではないのでしょうか。
さすが「神のみ」を経て成長した若木民喜先生の最新作、色々とひねくれてますよね(褒めてます)。
それはそうと、汗を異常にかいてこの年頃の女子特有の甘い匂いを振りまくかすみの姿は、セージ君ならずとも非常にグッと来るものがありました。結論としては、今後もそういったフェチズムを刺激する描写にも期待したいところです。
一迅社 (2013-02-08)
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全然関係ないですが、個人的に「マドレーヌ」という単語から連想されるマンガがこれ。面白いです