連載継続決定記念 サンデー7号までの「シノビノ」感想

シノビノ

 前回はペリー提督がアメリカ国旗が胸に刺さった血まみれの状態で副官のメガネに発見されるというヒロイックな終わり方をしたため、「本当に殺っちまったんか甚三郎!」と思ってしまったりしたのですが、今回は「甚三郎がペリーを気絶させる→ペリーが何者かに殺されたように偽造し、副官のメガネを騙して江戸襲撃作戦を中止させる→今回の黒幕である老中にペリーを連れて行き、ペリーに江戸襲撃をさせる密約があったことを認めさせる」と甚三郎が見事な手腕を見せ、「ペリーによる江戸襲撃作戦を辞めさせた上、老中による倒幕の陰謀も防ぐ」ことに成功。
 本来の任務である「ペリー暗殺」以上のことを、甚三郎は結果的に成し遂げてしまいました。

 というか、甚三郎は最初から「ペリー暗殺」という任務そのものが老中が仕組んだ陰謀であることを見抜いており、日本とアメリカが戦争を起こすことなく秘密裏に事態を収拾するには、この手段を取るしかないことを理解していたのでしょう。
 あとついにで言えば、ペリーと拳を交えて戦った結果、おそらくペリーは甚三郎のことを武人として尊敬の念を抱くようになったに違いありません。もうペリーは甚三郎にメロメロですよきっと。後に日米和親条約が無事締結されたのも、ペリーが甚三郎にメロメロになったからに違いないですよきっと(決めつけ)。すごいなじいちゃん。

 そして、次回で「黒船編」が終了するとアナウンスされた「シノビノ」ですが、その後も幕末を舞台に物語が続くことが決まった模様です。
 実際このマンガはものすごい面白いので、今後も続いてくれることが素直に嬉しく思えます。

 このマンガで個人的に魅力的だと思っているところは、主人公の甚三郎がカッコよくてカワイイのは勿論なのですが、何より毎回インパクト重視な展開で「毎週読んでいる読者を驚かせて楽しませよう」とする作り手側のスタンスが垣間見えるところです。

 例えば、サスケハナ号の中に巨大な狼がいて突然甚三郎に襲い掛かってくるエピソード(サンデー47号)が象徴的で、ここでは「狼の習性を利用して狡猾に戦いつつも、突然変異した孤独な狼に『最期の忍者』である己を投影して憐れむ」甚三郎が印象的な回ではあったのですが、「いくら江戸を襲撃する計画があったとはいえ、アメリカから日本までこんな化物を連れてくるのは割に合わないのでは」とか、「狼にトドメを刺す前に藤堂平助が空から降ってきて彼とのバトルが始まってしまったが、結局あの狼はどうなったのか」とか、「藤堂平助とのバトルが始まった後は、同じ部屋にいるはずの狼の存在が無視されている」とか、細かいところを突っ込み始めると色々とアラが出て来る回でもあります。

 しかし実際に読んでいる最中は、甚三郎が狼を翻弄する姿や、ヤンチャな戦闘バカである平助とのバトル、そして更にはそこに乱入してくる謎の中国拳法使いの老人、そして刻一刻と迫りくるサスケハナ号が江戸に到着するタイムリミットと、毎回毎回矢継ぎ早に繰り出されるおもしろ要素があまりに魅力的で、細かい整合性などは全く気になりませんでした。自分の場合はむしろ「甚三郎おじいちゃん、こんな夜更かししてしまって眠くならないのかしら…」とか、そういう余計なことを心配してしまう始末です。

 毎回何かしらの想定外な出来事が起こり、かつそれに甚三郎は忍びらしく的確に立ち向かって対処していき、そしてまた新たな展開が巻き起こる──という話の作り方は、極めて真っ当な少年マンガと言えます。「シノビノ」は、主人公が齢58歳のおじいちゃんという特異性を売りにしてはいるものの、その内実は正統派の少年マンガになっていると、個人的には思っています。
 「シノビノ」は多分、世間的にも2018年に来るマンガの一つになるんじゃないかと期待してます。

 あと、椎名高志先生ファンサイト的な視点では、サンデー2018年2号で甚三郎がペリーの眼に勲章を突き刺した際に「NOOOO!」と叫んで血をブッシャアアアと大げさに吹き出す姿が、ちょっと椎名高志先生のマンガっぽいテイストを感じて嬉しかったです。判ってもらえるでしょうか

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平助はこれからの幕末編で出てくること必至なので期待

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サンデー2号くらいまでの「絶対可憐チルドレン」感想

絶対可憐チルドレン

 「けものフレンズ」のアニメ2期に関するお知らせについては、本当に残念でしたね…(挨拶)。

 もうかなり前のことになってしまいますが、サンデー2018年2号で「黒い幽霊」に操られた明・初音コンビとの戦いを描いた「けものパークへようこそ」編が終了しました。

 前の対ナオミ戦もそうでしたが、「黒い幽霊」に操られたかつてのバベルのメンバー達との戦いは、そのキャラが持つ根源的なテーマに再びスポットライトを当てることを主題にしているように思えます。
 ナオミの場合は彼女にとっての「運命の男」である谷崎主任とのSM関係の再構築がテーマでしたが、今回の明と初音の場合は動物に変身したり憑依したりする一族の能力故に社会から阻害されて来たという「一族の宿命」を如何に乗り越えるのかという点がテーマだったと言えましょう。

 結論としては「社会への怒りに身を任せるのではなく、まず隣人を愛して身近な幸福を手に入れなさい」という、まあ当たり前ではあるけど大切なことに二人が気付き、先々代の力もあって「黒い幽霊」の誘惑を撃退することに成功します。
 「まず隣人を愛せ」とか書くと極めて説教臭いというか宗教っぽくなってしまいがちなんですけど、こんなテーマをちゃんとコメディの範疇に収めて描くことができたのは、特に初音というキャラが持つバカっぽさ(良い意味で)に救われているところが大きいのではないのでしょうか。やっぱりいいキャラですよね彼女。良い意味でバカだけど(良い意味で)。

 あと、先々代の二人が初音と明に対して「家に帰ったら子作りでも始めろ!」と言ってましたけど、自分も以前親戚の戦前生まれで年代的にはあの先々代と同年代であろう叔父の一人から、「結婚したかったら、まず女の子を孕ませろ」とド直球なことを言われた経験があるので、あの年代の男性ならこういうことを本気で言いかねないのでは? と妙に納得してしまいました。
 多分「絶チル」の最終回では、この二人の子供がわんさか出てくるに違いないと思ってます。お幸せに。

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絶チルが50巻に到達。連載開始の頃を思い出すと感慨深い

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