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現代ファンタジー作品論マンガ爆誕記念 サンデー13〜20号「絶チル」感想

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 原画展開催決定おめでとうございます!(ファンサイト要素)

 サンデー13号辺りから始まった、ティムが作ったなろう系異世界転生ファンタジーっぽい物語の世界に薫が放り込まれる「やかましき玩具」編が決着しました。

 このエピソードの見所は、ティムの能力が大幅にアップグレードし、自分が作った世界を統べるゲームマスターとしての能力を手に入れたことでしょう。
 元々は玩具をキーワードして周囲の人間を催眠で操る能力者だったティムが、(黒い幽霊による洗脳によって)「人間を玩具にして支配する」という方向に自分の能力を伸ばすことに気付いた結果、バーチャルリアリティ的な世界を創造し、催眠によってその世界の中に人間の意識を放り込むことができるようになったという、ティムの能力のグレードアップのアイデアそのものがこのエピソードの根幹を成しているのは間違いありません。

 その能力でティムはゲーム的なファンタジー世界を創造し、そこに異世界転生ファンタジーの導入のお約束的な手法を使って薫を放り込み、(ティムが創造した)「皆本」と冒険の旅をさせ、最終的にはかつての滅びの予言と同じく「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」バッドエンドを再現することで薫を精神的に殺す筋書きを作りました。つまりティムは、自らが作ったゲーム世界のストーリーをプレイヤーである薫に体験させるという、テーブルトークRPGのゲームマスター的なことをやろうとしていたのです。
 「玩具」を操るティムの能力をそういった方向に拡張させるという発想は自分には全くなかったので、この点においてだけでも今回のエピソードは発想が素晴らしいなと素直に感心致しました。

 ティムがゲームマスターを努めた今回のシナリオは、彼が構想していたバッドエンド直前までは上手く行っていたように思われますが、しかし最後の最後でティムは「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」シナリオを実行することに失敗し、彼は敗北を喫してしまいます。
 その理由は、「ティムの作った『皆本』というキャラクターにそぐわない行動をティム自身が行ってしまった結果、作品としてのリアリティを保てなくなって催眠能力が低下し、これまで催眠で抑え込んでいた悠理が催眠を破ってティムの世界を破壊したため」というもの。

 ティムの作った異世界ファンタジー世界は、きわめて陳腐というか考証が欠けているというかツッコミどころに事欠かないアレな感じな世界で、隣の松風君から「ファンタジー世界の住人がメガネをかけているのはおかしい」「地名に英語が混ざっているのはおかしい」「ファンタジー世界の宿屋にシャワーがあるのはおかしい」等の無粋なツッコミを受けてきたのですが、それに対してティムは「この世界では僕が神だ!考証の矛盾など僕はまったく気にしない!考証厨は滅びろ!」と(怒りを込めながらも)言い切って来ました。
 その言い切りと妄想世界への思い込みの強さが、そのまま彼の作った世界の強さに繋がっていたのです。

 しかし、ティムの作った「皆本」が薫を銃で撃つ段階になった時点で、ティムは自分が想像した「皆本」というキャラクターが、(たとえ撃たなければ世界が滅びてしまうような状況でも)薫を簡単に撃てるような人物ではないことに、自分で気がついてしまいました。
 彼の作った「皆本」は勿論現実の皆本のコピーなんですけど、それだからこそ皆本はそういうことが平気でできる人物ではないことを、シナリオの最終局面で理解してしまったのです。

 結局ティムはキャラクターではなくシナリオの都合を優先して、適当な理由付けで「皆本」が薫を銃で撃つ展開を選びました。自分が作ったキャラクターの内面を無視する行動を取ってしまったことで彼の世界のリアリティは崩壊、そこを突いた悠理に世界を一撃で破壊されてしまいます。
 この時の悠理の台詞である「この世界を壊したのは、あなた自身よ、ティム。あなたは自分の心に、自分が信じている幻想に、もっと誠実に敬意を払うべきだった」が、本編におけるメインテーマであると、個人的に思います。

 ただ、最後の最後でティムはゲームマスターとして失敗してシナリオを崩壊させてしまったものの、プレイヤーである薫は彼が作った「皆本」にリアリティを感じ、「とっても楽しかった! あんたの作る世界、あたしもっと見たい!」と賞賛の言葉を送りました。プレイヤーからこんなことを言われたら、ゲームマスター冥利に尽きるというものですよね。良かったねえティム。

 たとえ自分の妄想した世界がツッコミどころだらけのファンタジー世界であろうとも、その世界を作った自分自身こそが、その世界を矛盾を含めて愛し続けることが何よりも大切であることを訴えた今回のエピソード。これはある意味、なろう系異世界転生ファンタジーに対する作品論として読み解くことが可能なのではないのでしょうか。いやそれがテーマに違いないです(きめつけ)。

 椎名高志先生のマンガでここまで判りやすい現代作品論をテーマとしたエピソードを読めるのは、「GS美神 極楽大作戦! !」旧コミックス28巻の『紙の砦!!』以来なのかも知れません。
 『紙の砦!!』の時は出たのが1997年なので少女向けライトノベルが題材だったのが、今回はなろう系ファンタジーが題材になっているところが今っぽいなあと思いました。

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コミックス28巻には、一瞬だけ新レギュラーキャラになりそうだった鈴女も登場。アシュタロス編が始まらなかった別の歴史では彼女にも出番はあったのかも


サンデー2号くらいまでの「絶対可憐チルドレン」感想

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 「けものフレンズ」のアニメ2期に関するお知らせについては、本当に残念でしたね…(挨拶)。

 もうかなり前のことになってしまいますが、サンデー2018年2号で「黒い幽霊」に操られた明・初音コンビとの戦いを描いた「けものパークへようこそ」編が終了しました。

 前の対ナオミ戦もそうでしたが、「黒い幽霊」に操られたかつてのバベルのメンバー達との戦いは、そのキャラが持つ根源的なテーマに再びスポットライトを当てることを主題にしているように思えます。
 ナオミの場合は彼女にとっての「運命の男」である谷崎主任とのSM関係の再構築がテーマでしたが、今回の明と初音の場合は動物に変身したり憑依したりする一族の能力故に社会から阻害されて来たという「一族の宿命」を如何に乗り越えるのかという点がテーマだったと言えましょう。

 結論としては「社会への怒りに身を任せるのではなく、まず隣人を愛して身近な幸福を手に入れなさい」という、まあ当たり前ではあるけど大切なことに二人が気付き、先々代の力もあって「黒い幽霊」の誘惑を撃退することに成功します。
 「まず隣人を愛せ」とか書くと極めて説教臭いというか宗教っぽくなってしまいがちなんですけど、こんなテーマをちゃんとコメディの範疇に収めて描くことができたのは、特に初音というキャラが持つバカっぽさ(良い意味で)に救われているところが大きいのではないのでしょうか。やっぱりいいキャラですよね彼女。良い意味でバカだけど(良い意味で)。

 あと、先々代の二人が初音と明に対して「家に帰ったら子作りでも始めろ!」と言ってましたけど、自分も以前親戚の戦前生まれで年代的にはあの先々代と同年代であろう叔父の一人から、「結婚したかったら、まず女の子を孕ませろ」とド直球なことを言われた経験があるので、あの年代の男性ならこういうことを本気で言いかねないのでは? と妙に納得してしまいました。
 多分「絶チル」の最終回では、この二人の子供がわんさか出てくるに違いないと思ってます。お幸せに。

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絶チルが50巻に到達。連載開始の頃を思い出すと感慨深い


谷崎主任、すごくいい事言ってるはずなのに(略) サンデー40~43号「絶対可憐チルドレン」感想

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 既に先々週のことになってしまいましたが、対闇落ちナオミちゃん戦が完結しました。

 闇落ちエスパーとの対戦においては、「かつての仲間が洗脳され、強力なライバルとなって立ちはだかる! 如何にして仲間を傷つけずに救い出すのか!」という少年マンガのお約束的なバトル展開を読む面白さは勿論ですが、このマンガにおいては更に「何故かつての仲間は『黒い幽霊』の洗脳に屈して闇落ちしてしまったのか」という点についても注目が必要だと思いました。闇落ちした理由が判れば、そこから洗脳を解いてその仲間を救い出すことも可能となるからですね。

 ナオミの場合は闇落ちした心理は極めて単純で、良くも悪くも常日頃から谷崎というエロオヤジを相手にし続ける人生を歩んで来た彼女は「『黒い幽霊』の力で世界を支配して、エロオヤジのいない乙女の理想郷を創る」という極めて判りやすい現実逃避的なものでした。
 しかし彼女は、谷崎と対峙して彼の「SM関係は信頼あってこそ成立するのだ!」「人の不完全さを受け入れろ!オヤジもセクハラも存在するのがこの世界だということを…私を認めるのだ!」といった、説得力はあるけど極めて自分勝手極まりない言葉の数々を聞くことで、己がこの世界から排除したいのは「エロオヤジ」という抽象的な概念ではなく谷崎主任という具体的な人物であることを強烈に自覚、谷崎への怒りがナオミの人格をエミュレートしていた「黒い幽霊」のクローン達の暴走を引き起こし、結果として戦いに勝利してナオミの本体を確保することに成功したのです。

 闇落ちエスパーとの対決編は、基本的にはこの対ナオミ編のように、個々のバベルのエスパー達の抱える心の闇を解決していく形を取るのではないかと思われます。
 まあ、ナオミの心の闇がこれで本当に解決したのかどうかは正直疑問ですが、自分の心の闇の原因が谷崎であることが把握できたので、後は谷崎を肉体的にも精神的にもいたぶってサディスト的な快感に目覚め、谷崎と本当の意味でのSM関係になるとかの方法でカウンセリングは可能だと思います。谷崎と末永くお幸せに(終わってない)。

 あと45号の冒頭で皆本と賢木がギリアムの館の一室に幽閉される描写がありましたが、個人的には「もし自分がギリアムだったら、この部屋をいわゆる『セックスしないと出られない部屋』仕様にするに違いない!」と思いました。何故そうしなかったのかギリアム(掲載誌が少年誌だからではという気がする)。

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高校生編前半クライマックス巻。次はいよいよ50巻


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