サンデー 一覧

桜庭モテ期到来記念 サンデー13号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 週刊少年サンデーに吹き荒れる恋の嵐!(挨拶)

 初手から主人公とヒロインが同棲して婚姻届を書くところから始まる「トニカクカワイイ」の連載開始に湧く最近のサンデーですが、今号では他にも

  • 指宿くんと江火野さんの二大ヒロインが揃ってタロウの自宅に押しかけ、まさに恋の正念場を迎えつつある「初恋ゾンビ
  • 古見さんからもらったバレンタインのお返しができずにヘタれる只野くんが見どころの「古見さんは、コミュ症です。
  • アニメ二期と共に猛プッシュを受けるはじめさんが何故かココノツと密室に閉じ込められ、「いいにおいがしました!」と褒められてるのか単にキモいことを言われたのか判断に困る「だがしかし
  • アクトとなりがクリスマスイブにホテルに一緒に宿泊! 熊の寝床の穴蔵だった前回とは違って、今度は熊はいないぞ! もうヤるしかない! な展開必至の「天使とアクト!
  • むっつりスケベなあくましゅうどうしが、姫への愛を切々と訴えた「魔王城でおやすみ
  • 一人暮らし状態のちひろの家に湯神がやって来て成り行きで二人で料理作った挙句、湯神がちひろの耳たぶをごく自然の中で触ってお互いに照れるという、往年の「BOYS BE…」を彷彿とさせるラブラブ展開を披露した「湯神くんには友達がいない
    (それはそうと今回のちひろ、いくら相手が湯神とは言え始終Tシャツと短パン姿というだらしない部屋着のままで過ごしたところが非常に良かったと思いませんか皆さん)
  • 大恋愛を経て結婚→初夜→出産→育児と人生最良の時期を描きつつも、その数年後には太平洋戦争が始まることを我々読者は知っているので今後クロ達がどのような運命を辿るのか非常にやきもきする「妖怪ギガ

 など、かなりラブにひなった作品が多数掲載されており、かつて「ラブコメのサンデー」と呼ばれた栄光の1980年代を取り戻そうとしているのではないか? という勢いを感じます。
 現在のサンデーの人気作「天野めぐみはスキだらけ!」も「保安官エヴァンスの嘘」も、基本はラブコメですしね。「キングオブアイドル」も、今回の話はラブコメに発展しそうですしね。やっぱり少年誌の基本はラブコメだよなーと再認識させられます。

 そんな恋の嵐が吹き荒れるサンデーの中にあって、何故今回「BE BLUES!」を取り上げるのかと言えば、勿論「BE BLUES!」においてもついに桜庭さんにモテ期が到来したからに他なりません。

 これまでは自分のテクニックに絶対の自信を持ち、天上天下唯我独尊状態で周囲をクソ呼ばわりしていた桜庭さんが! ドリブル突破して華麗にゴールをキメたいばっかりに、パスもしなけりゃ守備もしない、「お前がオレ様のところまでボールを持って来い」と言わんばかりの態度を取る桜庭さんが! そんなアレな態度を取り続けた結果、周囲のギャラリーから「真面目にやれ!」「そんな怠慢許せるわけないでしょ!」「何様だ!」と罵声を浴び続けて来た桜庭さんが! ついに! チームのみんなからモテモテになる日がやって来たんですよ! なんという快挙!

 桜庭が己のサッカーの技術に限界を感じ、ミルコに「もっと上手くなりたい」と直談判した結果、ミルコはチーム全体を巻き込んで桜庭に「ゴールの前でディフェンダーをかわしてボールを受け取り、そのままシュートする」という、フォワードにおけるボールを持っていない時の動き(専門用語で言うところの「オフ・ザ・ボール」)の基本中の基本を叩き込む特訓を開始しました。

 ここで重要なのは、ミルコと一対一でではなく、龍やレノン、阿部といったトップチームのメンバーを巻き込む形で桜庭の特訓を行っているところであり、これによってチームのメンバー達は桜庭が本気でサッカーに向かい合っていることを身をもって知ることができる点だと思われます。

 もともと彼らは、この前の聖和台との決勝戦で、体力の限界にまで追い詰められて「オレ様のところまでボールを持って来い」とチームメイトを挑発するかのような態度を取り続けた桜庭に対して、「何様だよおまえは!」と言いながらも彼が要求するプレイを忠実に行った実績があります。つまり彼らは、勝利のためなら桜庭に協力するだけの度量の広さを持ち合わせていたのです。
 ただ、桜庭の態度があまりにアレでコミュニケーションを拒否されていた状態だったので、それ以上に彼らの好意が桜庭に向けられることはありませんでした。

 チームが元々そういう状態だったところに、ここに来て桜庭がサッカーに対して真面目に取り込み始めてコミュニケーションを取る姿勢を見せた訳ですから、そりゃーもうみんな歓迎するに決まってます。
 特に龍なんかはもう非常に嬉しそうで、教室でオフ・ザ・ボールの動きについて桜庭に一方的に話かけてニヤニヤしているところを見ると、ンもう君はどれだけ桜庭のことが好きだったの! みたいな気持ちにならざるを得ません。龍にとっては、やっと桜庭と(ライバルではなく)チームメイトとしてサッカーの話ができることが嬉しくてしょうがないんでしょうね。仕方ないですね。

 そしてレノンも桜庭相手にガチで体を張って一線級のディフェンスを叩き込んでましたが、レノンは面倒見が良いお母さんキャラであることが以前の遠征合宿編で明らかになっていますので、龍に続いて桜庭も彼の母性本能をくすぐる存在になったという解釈で良いのではないかと思います(決めつけ)。

 あと面白かったのが、矢沢が桜庭を廊下でオフ・ザ・ボールの動きでからかってるシーンでした。これもまた、矢沢なりの桜庭への愛情表現ですね(決めつけ)。彼はこういうことするのが本当に似合ってますね。

 何か妙に長くなりましたが、要するに武蒼のみんなは桜庭への好意を臆さずに表現するようになったのね! 良かったわね! ということが言いたかったのです。判っていただけたでしょうか。

BE BLUES!~青になれ~ 30 (少年サンデーコミックス)
田中 モトユキ
小学館 (2018-02-16)
売り上げランキング: 1,006

3年生とのお別れ巻は2/16に刊行


畑健二郎先生が主人公のリアリティーショーの開幕を告げるサンデー12号「トニカクカワイイ」感想

トニカクカワイイ

 「結婚」をテーマにした新連載を開始する直前に声優の浅野真澄さんと結婚したことをTwitterにて発表し、「自身の結婚を新連載の宣伝として使う」という全く新しいプロモーションをぶち込んできた畑先生は、芸人としてのスキルが本気でスゴいなと思いました(本稿の要約)。

 それでこの新連載、第一話は『主人公の少年と謎に包まれた美少女が、命の危機が迫る中で偶然の邂逅を果たす』というドラマチックな展開だったものの、作者の畑先生はバックステージで『このマンガは「かわいい妻との結婚生活」そのものをテーマとしたお話になる』という趣旨のことを仰っているので、おそらく今後は初回のようなドラマチックなことはそうそう起こらず、主人公が「とにかくかわいい妻」と生活する日常の様子を延々と描いていくという、言うなれば「ハヤテ」の日常パートだけで構成された系統のマンガになるのではないか? と個人的には予想しています。

 謎の美少女との日常生活を描いたサンデーのマンガというと、最近では「柊様は自分を探している。」が連想されるとは思うのですが、「柊様」は最初から彼女の謎めいた素性そのものに読者の興味を惹かせる、一種のミステリードラマ的な構成になっていました。
 しかし今度の「トニカクカワイイ」の場合は、作者が「少年と少女が出逢い結婚するという、ただそれだけの話です。」「【恋愛】という過程はありません。これは夫婦の愛情についての話なので。」と明言してしまっている以上、謎の美少女である司の謎を解くとか、司の謎めいた思惑を解くべく主人公が挑むといったミステリー要素は一切なく、主人公と美少女がお互いに好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしらとときめいたりする恋愛要素もない、ただひたすら平和で穏やかな夫婦生活だけを描く作品になりそうな予感がひしひしとします。
 そういった意味でも、仮にも「王族の庭城」を巡る謎がストーリーの中核に存在していた「ハヤテのごとく!」とは方向性がかなり異る作品になるのではないかと思われます。

 また、先生ご自身が新婚ホヤホヤであることをわざわざ公言したことを加味すると、「マンガで描かれた内容は、畑先生ご自身が経験されたことそのものが元ネタなのでは?」というリアリティーショー的な側面を読者が期待するのもある意味当然であり、芸人である畑先生ならそういった期待も作品内にネタとして織り込んでくるに違いないと確信してます(勝手に)。

 何にしろ「トニカクカワイイ」は、畑先生にとって冒険的な作品になることは間違いないと思われます。現在は「結婚の発表と同時に結婚をテーマにした新連載を開始!」「直後に師匠の久米田康治先生にマンガでイジられた!」という話題性のみで語られがちなこのマンガですが、もしかしたら畑先生の人生そのものを我々に垣間見させてくれる一大リアリティー巨編となるやも知れません。ならないかも知れませんが。
 単なる新婚イチャラブコメディーとゆめゆめ侮ることなく、今後も注意深く読んで行きたいマンガだなと思いました。

新しい恥図

 そして久米田康治先生の突発読み切り「新しい恥図」については、「畑健二郎が『新婚』がテーマの新連載を開始という事態をネタに、畑先生の師匠である久米田康治先生が痛快なギャグマンガを描く」という構図そのものが面白いですし、何よりも「こういう場に久米田康治が呼ばれてマンガを作る」とは、どういうことなのか? どんなマンガを作ることが、この局面において望まれているのか? という自身の置かれた状況を把握した上で、その「望まれていること」を完璧な形で仕上げて来た久米田康治先生の底力が、何よりも素晴らしいと思いました。
 「新しい恥図」はホントに心底面白いマンガなので、まだ未読の方はネタが新鮮なうちに読んでいくことを強くオススメします。

 思えば久米田先生も、自分自身の苦境を自虐的にマンガのネタにすることを厭わないリアリティーショー気質の作家と言えますが、畑先生も自身の結婚をネタにしたマンガを初めたところからすると、そんな師匠の作風というか、漫画家としてのを引き継いでいるとも言えるのではないのでしょうか。
 師匠から弟子に受け継がれていく魂の絆! 美しいですね!(おわり)

週刊少年サンデー 2018年12号(2018年2月14日発売) [雑誌]

サンデー12号は掲載作品が軒並み面白いという奇跡の号(贔屓目)


只野くんは、凡人です。 サンデー11号「古見さんは、コミュ症です。」感想

古見さんは、コミュ症です。

 今回、加藤さんが古見さんと只野くんに出した詰将棋の問題、今回の話の中では何手詰めなのか語られていませんでしたが、あれはサンデー2017年52号に出て来て加藤さんが佐々木さんの正体がヨーヨー持った般若であることを問い詰めるシーンの理詰めのメタファーとして使われた、九手詰めのものだということが判明しました。

 全くの将棋の素人に九手詰めの問題(だいたい初段レベルの難易度)をカジュアルに勧めてくる加藤さんからは、将棋に対するガチっぷりというか、将棋が好き過ぎてつい難易度の高いものを勧めてしまう、オタクっぽい気質が伺えます。褒めてます

 古見さんが実はちゃんと祖母から将棋の仕込みを受けていた将棋の有識者で、最終的に正解を出してハッピーエンドに持っていける実力があったので救われた格好ですね。

 あと今回面白かったのが、只野くんが今回は極めて普通な凡人っぽいところを見せていた点です。

 最近の只野くんは、修学旅行にトラウマを持っていた古見さんをさり気なく元気付けたり、ガチムチな片井くんやナルシストな成瀬くんと馴染んで彼らが楽しく修学旅行を過ごせるようにしたりと、何かこう「もしかして只野くんって、孤独なクラスメートをさりげなく救えるコミュニケーション強者に成長したのでは?」と思わせる雰囲気を漂わせていたのですが、今回の只野くんは(本当は将棋有識者の)古見さん相手に、得意げに(ホントは間違ってる)解法を語って古見さんとの空気を悪くするという、如何にも「自分は相手よりも将棋が判っている」という勘違いをしている凡人がやりそうなことをキチンとやっており、非常に好感が持てました。褒めてます

 そしてコミュニケーション強者と言えば、古見さんと只野くんの間の雰囲気が悪くなっていることを察したなじみが「いつの間にケンカするほど仲良くなったの?」と、からかうような口調ながらもちゃんと二人の空気を改善することをさり気なく言っているところに、真のコミュニケーション王者としての貫禄を感じました。

 最期にドヤ顔で只野くんに勝ち誇る古見さんがカワイイです(感想)。

古見さんは、コミュ症です。(7) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-12-29)
売り上げランキング: 1,061

8巻は3/16発売とのこと


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