魔王城でおやすみ 一覧

魔王様=この世界のゲームマスター説 サンデー9号 「魔王城でおやすみ」感想

魔王城でおやすみ

 このマンガの魔王様は、典型的なRPGの「姫さまをさらった悪い奴らの親玉」というよりは、「人間の勇者がプレイしている『姫さまをさらった魔王を倒す』ゲームを遂行するため、魔王役をやりながらゲーム進行を管理している(TRPGで言うところの)ゲームマスター」の立場に近い描写がなされているように思えます。
 この世界そのものがゲームであり、魔王様がゲームの進行を司るマスターである以上、彼には自分が用意したシナリオの筋書きに沿ってゲームを進行させつつ、勇者であるプレイヤーを楽しませなければならない義務があります。

 彼が姫様をさらったのは、勿論勇者であるプレイヤーを冒険の旅に出させる目的を作るためだったと思うのですが、彼にとって災難だったのはその姫様がただのおとなしい姫様ではなく、よりによって傍若無人な(略)。彼がゲームマスターとして練り上げた崇高なシナリオは、そのシナリオの冒頭でさらって来た姫様の手により、完膚なきまでに破壊されてしまったのです。

 今回の冒頭で『十傑集であるサンドドラゴンが勇者にやられた』との報告を聞いた魔王様が「勇者め…やられるばかりではないということか…面白い!」と魔王らしいことを言いつつ嬉しそうな表情をしているように見えましたが、あれは多分「姫様に邪魔されてシナリオ進行が滞っていたけど、やっと彼らを前に進めることができた」という、運営側の立場からの安堵から来るものであったに違いありません。おつかれさまです

 今回はその「十傑集」メンバーが初登場した他、魔王様がゲームシナリオ進行の気苦労でぶっ倒れた時に「父上」と叫ぶなど、魔界の側の設定に深みを与える描写が見られました。この作品も、いよいよ本格的な長期連載を睨んだ布陣を敷きつつあると考えて差し支えないのではないのでしょうか。
 連載が長期化するということは、スヤリス姫の乱暴狼藉も長期化するということであり、魔王様の気苦労もまた長期化することを意味しています。はたして魔王様は、スヤリス姫という最大の不確定要素を抱えたまま無事ゲームマスターとしての使命を果たし、「魔王」としての大役を演じきることができるのか。魔王として勇者に倒されるのが先か、スヤリス姫が与えるストレスにやられて過労で倒れるのが先か。
 こんな大変そうな魔王が出てくるファンタジーマンガは、珍しいのではないかと思います。

 でも、スヤリス姫に「いいこいいこ」されて照れてしまう魔王様はちょう可愛かったです(感想)。
 魔王様は彼女をお妃様にすればいいんじゃないかな?

魔王城でおやすみ(2) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-02-03)
売り上げランキング: 74

2巻でも既に魔王様の純情な一面が見られます


少年サンデー電書版公開記念 過去1年間サンデーを読んでいない人向け・電子書籍版無料サンデー作品ガイド(前半)

論旨

 先週号より、ついに週刊少年サンデーが電子書籍化され、Amazon等の各種電子書籍販売サイトで購入できるようになりました。

 ジャンプ・マガジン・チャンピオンのライバル週刊少年マンガ各誌が先行して電子書籍化されてスマートフォンで読めるようになり、また同じくスマートフォンでマンガを読むことに特化したいわゆるマンガアプリがマンガ業界で存在感を伸ばす中、唯一電書化されないサンデーは「電子書籍化に乗り遅れている小学館」を象徴する存在となっていたと言わざるを得ませんでした。
 が、これでサンデーや小学館もようやく競合他社と同じ土俵に立つことができたと言えましょう。

 そしてサンデーの電子書籍化を記念する形で、8/9までの間、先々週号となるサンデー32号を無料で入手することができるキャンペーンが実施中です。せっかくタダでサンデーが読めるんですから、一応サンデーのファンサイトという形態になっている当サイトとしては、この機会にサンデーを読んで欲しいところではあります。

 サンデーは昨年の夏に編集体制に大鉈を振るう大改革を実施したことはまだ記憶に残っている方も多いとは思いますが、この電子書籍版サンデーは、実際に「大鉈が振るわれた後」の新しいサンデーをじっくり読めるチャンスです。しかもタダで。
 という訳で、昨年夏以降に連載が開始された作品の簡単な紹介記事を作成してみました。ご参考になさって下さい(引用文はサンデーのサイトより)。タイトルの順番は32号の掲載順です。

鬼ヲ辿リテ幾星霜/兎中信志

大昔、大陸には国を殺す妖怪「西神鬼」がいた。最強最悪のその妖怪は、一人の道士に一度殺されかけたが、体を千に散らばせ逃げおおせた。その時の道士は転生の術を使って幾度も生まれ変わり、今でも西神鬼を追っている…それが、少年・アキである。
 時は明治、舞台は横浜。道士・アキは西神鬼の体の一部が取り憑いた化け物を追い、ひたすら倒しまくる!! 宿命の妖鬼殲滅活劇!!

 主人公は太古の昔から転生を繰り返しながら「西神鬼」と戦い続けている道士の魂を持った少年、というタイムスケールの大きさが設定上の特徴ですが、個人的には何よりこのマンガを特徴づけているのは、良くも悪くもこれまでのサンデーっぽくない個性的な絵柄や雰囲気だと思っています。このマンガに出てくるのは基本的に男と妖怪だけです。

 作者の兎中信志先生は、以前は講談社の少年ライバルで「弟キャッチャー俺ピッチャーで!」を連載、その後サンデーSでの読み切り掲載を経てサンデー本誌で連載を開始したという経歴を持ちます。
 「生え抜きの新人作家を育成して輩出する」という現編集部の方針の下で、講談社のマンガ雑誌での連載キャリアを持ちながらも小学館のマンガ雑誌での再スタートを選択した作者が、今後どんな作品を描いていくのか? という意味で興味深い作品です。

天野めぐみはスキだらけ!/ねこぐち

これは、中学校で疎遠になるも同じ高校に進学し再び距離を縮めた、凸凹で真逆な幼なじみの二人──東大を目指すガリ勉スリム・学と、剣道に励む体育会系ぷに子・めぐみ──の、微笑ましくもドキドキな日々の物語である。

 端的に言えば、好意を持っている幼馴染の男子の前で油断してうっかりパンチラとかをしてしまう、いろいろな意味で隙が多い少女・天野めぐみの姿を、「尊い…」と呟きながら眺める作品です。
 いわゆる「ちょっとエッチなラブコメマンガ」として面白いという以上に、天野めぐみの健康的なむちぷにな肢体、そして彼女と学の間の青春時代特有の微妙な距離感が醸し出す初々しい雰囲気に対して「ありがとうございます…本当にありがとうございます…」と感謝の念を込めてしまうこと請け合い。私は毎回拝んでます。

 この作品、おそらくそう遠くないうちにアニメ化されるに違いない! と勝手に信じています。ぜひこの作品の名前を覚えてからお帰り下さい。

あおざくら 防衛大学校物語/二階堂ヒカル

勉強好きの近藤勇美は、食堂を営む実家が再開発で潰れることになり、学費無料で給料をもらえる防衛大学校に進学することを決意し、見事合格する。
 幹部自衛官を養成する機関・防衛大学校を舞台に繰り広げられる、疾風怒濤の青春物語!!

 サンデー往年の名作「め組の大吾」や「モンキーターン」と同系統の、独自性のある職業の世界をマンガ化した作品として分類されるであろうこのマンガですが、作品の舞台として「幹部自衛官を養成する防衛大学校」を選んだところが今っぽいです。
 『極限状態で花開く若者たちによる青春群像』と書けば聞こえは良いのですが、まあ舞台が舞台なだけあって基本的な物語の構成は「先輩が何かと押し付けて来る理不尽な問題に主人公たちが翻弄される」という体育会系(というか文字通りの軍隊系)のノリであり、読者層が非体育会のボンクラに偏っていて体育会系に強い嫌悪感を持っているに違いない少年サンデーのイメージ(あくまでイメージです)とは異なっているのが興味深いです。
 そういった意味では、現在のサンデーの「攻めの姿勢」を象徴している作品の一つと言えるのかも知れません。

魔王城でおやすみ/熊之股鍵次

かつて、人と魔が存在していた時代。その安定を乱す魔王が人間の姫をさらい、自らの城に幽閉した。「返してほしくばこの世の支配を全て魔の物に引き渡せ!」と……
 人々は怒り、勇者は姫を救うために旅立った!! 魔が棲まう城で姫は泣き、絶望し、助けを待つ…はずだった。…が!?
 暇を持て余したスヤリス姫が、安眠を求めて魔王城で好き放題! 新感覚、睡眠ショートコメディ―♥

 古典的なドラクエタイプのコンピュータRPGのパロディ的な雰囲気の世界を舞台にしたファンタジーといった趣きのある作品ですが、本来であれば「勇者に助けられるのを待っている姫君」役であるスヤリス姫が「魔王城で安眠したい」以外のこと(例:魔王の城から脱出する)を全く考えておらず、自分の安眠のためなら魔物相手にあらゆる乱暴狼藉を何も考えずに実行してしまう姫さまのアレな様子を楽しむのがこの作品の基本コンセプトです。姫様に萌えられれば勝ち。

 最近始まったサンデーうぇぶりでも掲載されるなど、着実に人気が出てきているように思われます。本編を読んで面白いと思ったらぜひサンデーうぇぶりでチェックを。多分そのうちアニメ化されます(願望)。

双亡亭壊すべし/藤田和日郎

東京・沼半井町に佇む屋敷「双亡亭」は大正時代より存在し、有名な幽霊屋敷として噂されていた。近隣に住む凧葉 務は、「双亡亭」に引っ越してきた少年・緑朗と仲良くなるが、緑朗はその家で父を亡くしてしまう。そんな時総理が、因縁深い[双亡亭」へ異例の空爆を指示。しかし屋敷は自衛隊の空爆を受けても傷一つ負わなかった… その直後、45年前の行方不明機が突如飛来し、中には一人の生存者・凧葉青一が乗っていた。務の親戚と思われる名の不思議な少年は、緑朗同様に双亡亭を憎んでいるが…
 謎に満ちた奇妙な屋敷「双亡亭」… 叫ぶ声も亡失する、戦慄のスペクタクル・モダン・ホラー!!

 現少年サンデー編集長がサンデー復帰を強く願い出たと言われる、藤田和日郎先生の最新作。コミックス1巻が7/12に発売され、COMIC JINにおける週刊コミックランキングで首位になるなど、既に人気を博している模様です。

 既にメジャーな作品なので特にここで述べる必要もないと思うのですが、連載の方はいよいよ主人公たちを含めた変な能力者達が集まって双亡亭に乗り込む展開になって来ており、かなり盛り上がって来ている感があります。
 能力者達はみんな個性的でキャラが立ってるので彼らが喋るだけで楽しいんですけど、何か最終的には主人公チーム以外みんな死んじゃいそうな予感がヒシヒシとするところが特に良いです(良いのか)。

週刊少年サンデー【期間限定無料配信】 2016年32号(2016年7月6日発売) [雑誌]

この機関限定版、期間が過ぎたら読めなくなっちゃう仕掛けが付いてるのかしら


人間じゃない美少年登場記念 サンデー31号「魔王城でおやすみ」感想

魔王城でおやすみ

 スヤリス姫様の相方になれそうな美少年キャラ・アラージフが登場して喜んでます。魔導書の精霊という「絶チル」の宇津美みたいな立ち位置のキャラなのにも関わらず、あえてアラビアン風なヘソ出し半裸な格好をしているのが素晴らしいですね。あと顔がちょうカワイイ(ハキハキと)。

 彼は元々は人類の作った魔導書の化身という設定なので、この世界における人類を統べる王族であるところの姫様には無条件で従うようになっているっぽい性格も良いです。
 本来、彼には主の意のままに魔法を操って魔族を滅ぼせる力が備わっているはずなのですが、彼の現在の主となったスヤリス姫は魔族と戦って脱出するという発想そのものがなくて単に魔王城で安眠することしか考えていないため、結果的にその力を振るうこともなく、単に姫様のボケっぷりに振り回されるばかり。平和でいいと思います。

 なお「魔王城でおやすみ」の作者の熊之股鍵次先生は、前作「ぬいぐるみクラッシュ」で見目麗しい美少年やモフモフな熊のぬいぐるみが出てくるマンガを描いてますので、おそらく秋口になるであろう「魔王城でおやすみ」のコミックス発売が今から待ちきれない方にはオススメしておきます(嘘は言ってない)。

ぬいぐるみクラッシュ(2) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2015-05-29)
売り上げランキング: 93,015

すみませんまだ1巻までしか読んでません


スポンサーリンク
1 2