Developers Summit 2011で「コミPo!開発秘話」を聴いて来た日記

 こんにちは。
 本職では主にWebサイトの開発・保守を担当している深沢です(挨拶)。

 いきなりですが、先週開催されたソフトウェア開発者向けのイベントDevelopers Summit 2011において、コミックシーケンサー「コミPo!」の開発に関するセッションが開催されていたので聴講して来ました。
 その時のメモをまとめてみたので公開します。

開演前

 講演開始の十分くらい前から、会場に上記のムービーのBGM(初音ミクがひたすら「コミPo〜コミPo〜コミPo〜」と連呼する謎ソング)が流れ、ビジネス向けの講演とは全く違う、妙な雰囲気に。
 自分はむしろ居心地が良かったですが。

「コミPo!」とは

 そして講演開始。まず、株式会社ウェブテクノロジ取締役企画営業グループ部長であり、漫画家でもある田中圭一氏が登場。最近では手塚治虫の絵柄をパロディにした「神罰」などで有名な方ですが、個人的にはやっぱり「ドクター秩父山」が大好きです(私情)。

  • 「コミPo!」=まったく絵を描かなくても、誰でもマンガを完成させられる、ソフトウェアシーケンサー。
     上記のPVを会場で流し、「コミPo!」を紹介。
  • 唐沢なをき先生などの作例も紹介。
株式会社ウェブテクノロジとは
  • グラフィック系ソリューションの会社。
  • 独自の減色エンジンを開発、その技術を活かしてコンシューマ向けゲーム開発ツール(OPTPix imesta)、携帯電話向け画像変換ツール(OPTPicture)などを販売。
    • しかし現在はゲーム開発の主流はソーシャルゲームに移行、携帯電話におけるスマートフォンの台頭など、時代が動いて来ている。
    • 画像処理という自社の優位性を活かしつつ、時代のニーズにあった新規事業へ挑戦する必要に迫られていた。
コミPo!の基本構想
  • 3Dデータでマンガを作るという「コミPo!」の構想は、田中氏がゲーム会社に在籍していた頃から考えていた。
  • 3Dなら少ないデータ量でマンガを作成することができる。
    • しかし3Dでマンガを作るためには国語辞典の全ての単語を3D化するような膨大なデータが必要となり、それを作成するのは現実的ではない。何らかの制約が必要。
      • その結果、「学園モノ」のマンガを作れるものに絞ることに決定。学園モノは誰もが親しみがあるテーマなので。
  • 学園モノに絞るという決断は、自身の漫画家としての視点が役に立った。
プロトタイプの作成

  • アイデアを形にするため、まずプロトタイプ(コミックシーケンサー)を作成。
  • 自分で動くものを作って、周囲に「自分が何をしたいのか」をアピールした。(←これがおそらくこのセッションで一番重要なところ。誰も見たことがないソフトなので、まず自分で作ってアピールすることが大事)
  • 2009年1月に社内公開→これが認められ、本格的な開発がスタート。
試行錯誤の連続

 ここで講演者が、株式会社ウェブテクノロジR&D1部部長の小野知之氏に交代。
 ここからはより技術的な話に。

  • コミPo!」は前例のないソフトウェアなので、まずはユーザーのターゲットを決める必要があった。
     ターゲットが定まらなければ、ユーザーインターフェースや使い方が定まらない。

    • ターゲットは「絵を描けない人」、ユーザーのスキルは「Webやメールくらいなら使える人/マニュアルは見ない人」、コミPo!で作った作品の発表場所は「Webやブログ」と決定。
  • ターゲットを決定することで「使い方」が決定され、インターフェースも決まった。
  • 仕様が確定したのは2010年6月。
使いやすい7つの理由

 講演で挙げられていた、対象ターゲットにとって使いやすいインターフェース設計についての話。
 ユーザーインターフェースの設計には、これまでのソフトウェアの開発実績が活かされたとのこと。

  • よくあるソフトを手本にする
     エクスプローラーやOfficeなど、誰もが使っているソフトにインターフェースを似せる。メニューやアクセラレータキーは一般的なものを使う。
  • カーソルに喋らせる
     何らかの操作ができるところでは、マウスカーソルを変化させる。
  • 左クリックと左ドラッグ
     この二つに機能を集約させる。ユーザーは主にその操作を行うため。
  • コンテキストメニュー
     右クリックすると出てくるメニューのこと。ユーザーは判らなくなったら右クリックするので、今できる機能は全てコンテキストメニューに出す。
  • 配置を考える
     実際に使いながら、全体を把握しやすくするようパーツなどの配置を考える。
  • アクセラレータキーへの対応
     いわゆる「Ctrl+c」でコピー、「Ctrl+z」でやり直しなど。中級者向けとして、アクセラレータキーにも気を配る。
  • 高度な機能は小さく
     いわゆる「高度な機能」は、その存在を自己主張させない。(コミPoではコンテキストメニューに集約している模様)
     とっつきやすく奥が深いソフトにするための基本。

 その後、コミPo!の実演。
 動かせるオブジェクトにはガイドが表示されることを説明する場面で、さりげなく「こいつ、動くぞ…!」と言ったところが流石(何)。

発売後の反響
  • 実際に発売したところ、いわゆるオタク以外の層から反響が。普通の人から「日常的なマンガを描くために使いたい」、「ビジネスの場でプレゼンとして使いたい」といったニーズが寄せられた。
  • 実装の優先順位にも、この反響を反映。開発現場は今も修羅場
  • 今はTwitterなどにより、ユーザーが思ったことが直接開発の現場に伝わる。
  • これまでになかったタイプのソフトウェアなので、この先どう進化するのかは、作っている側にも判らない。(楽しそう)
コミPo!で「つくる」楽しみ
  • マンガを作る喜びの提供
  • 新しい表現方法の提供
     「初音ミク」が音楽創作に与えた影響を引き合いに出し、これまでマンガとは違った「コミPo!」的表現が出てくることを期待。
  • 世界に向けて日本文化を発信
     英語版を開発中。
  • Vector プロレジ大賞FINAL 2010年最優秀作品賞受賞

 Developers Summit という、ビジネス寄りのソフトウェア開発者向けのイベントとでは「コミPo!」の存在は異色といえば異色なのでしょうが、「これまでにないソフトを作る」気概を持つ大切さと、それを実現するための困難さおよび面白さを知るという意味で、開発の現場に携わるエンジニアにとっても有益なセッションだったと思います。
 それにエンジニアの人って、萌えマンガとか好きなオタクも多いですからね(決めつけ)。

 あと講演の中で「プレゼン用として使いたいニーズがある」話が出てましたが、実際このセッションに使われた全てのスライドには「コミPo!」のキャラが描かれており、確かにこういうのもアリかも知れないなと思いました。Microsoft Officeのクリップアートよりも「コミPo!」キャラの方が遥かに可愛いですし、何より日本人なら慣れ親しんでいるマンガ的な表現手法を使うことによって、よりわかりやすいプレゼンができるようになるのかも知れません。可能性を感じます。
 スゥツで眼鏡な鬼畜攻めっぽいリーマンやロマンスグレイの渋いおじ様などを表現できる、リーマンBLオフィス向け拡張セットの発売が待たれますね(待つの?)。

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