絶対可憐チルドレン THE NOVELS感想
小学館
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「絶対可憐チルドレン THE NOVELS」を読み終わりました。
全体の感想としては、原作の持つフレーバーやテーマを上手く活かした上で小説オリジナルの要素を組み込むことに成功した、「絶チル」のノベライズとしての完成度が極めて高い小説だと思いました。要するに面白かったです。
この小説が「絶チル」世界に持ち込んだ新しい概念は、基本的には以下の二点のみと言えます:
- 気流を自在に操ることに特化したサイコキネシス能力を持つ謎の少女
- 複数の予知能力者を集めて予知精度を上昇させるバベルの未来予知システムの概念を拡張した、複数の超能力者を集めることで超能力を増幅することができるシステム
- (本当はもう一点あるのですが、終盤にならないと明らかにされない事なのでここでは割愛)
今回の物語は、エスパーをノーマルの支配から独立させるという野望を持った男が、この二つを使って日本政府に対してテロを起こし、自分の野望を実現しようと画策する――というのが大まかな粗筋です。彼はこれらのリソースを使い、如何なる手段で政府と戦おうとするのか。そしてその脅威に対し、バベルは、そして皆本と「ザ・チルドレン」は如何に立ち向かうのか?
登場人物や能力、装備などは、上記の要素以外はこれまで「絶チル」に出てきたものばかりです。皆本は限られた時間の中で、事件を解決するべく奮闘することとなります。
この物語は、現実世界(この場合は「絶チル」の世界だけど)に最小限の「if」を持ち込み、それをギミックとして最大限に利用することでリアリティのあるストーリーを展開させる――という、実にハードSFチックな作品だなという印象を受けました。
作者の三雲岳斗先生は後書きで『「絶対可憐チルドレン」という作品が本来持っている骨太な世界観や、その他の多様な魅力が感じられるような作品を目指してみました
』と書かれていますが、読んでいても「絶チル」本来の世界観を極力活かしたリアルな物語を作ろうといることが伝わって来ます。
実際、チルドレンと皆本のエロトークを含んだ会話も読んでいても、全く不自然さや違和感はありません。如何にも彼らならこういうやり取りするよなあ、と読みながら感心させられること請け合いです。
あとこの話、後半になるとチルドレン達と対超能力装備を固めた謎の敵との戦闘シーンがメインになるのですが、これがかなり激しいというか容赦ないというか、敵が本気でチルドレン達を殺しにかかって来るのも特徴の一つかと思われます。物語に登場する対超能力装備は、基本的にはやはり全てマンガの中で出てきたものの応用であり、これもまた作品のリアリティを高める効果を生んでいます。
このおかげで、かなり物語に緊迫感が出てます。一つ間違えればホントにチルドレン死んじゃう! みたいな危機感を、年甲斐もなく味わうことができました。
そして物語の鍵を握る謎のサイコキネシス少女についてですが、(椎名先生のイラストから想像できるとは思いますが)端的に言えばそういうのが大好きなお兄さん達のハートを鷲づかみにする系の口調と性格を兼ね備えた期待通りの薄幸の美少女ですので、みんな大喜びして読むがいいです。
総じて「絶対可憐チルドレン」のノベライズとして極めてよくできた小説だと思いますので、原作ファンの方ならぜひご一読を。
アニメから入った人は、コミックスを(できれば11巻まで)読んでから読んだ方がより楽しめると思います。