サンデー2012年51号感想【近況:痰が出ます】
終末のラフター
「結界師」の田辺イエロウ先生が、満を持して今この時代の日本に向けて送るダークファンタジー巨編(予定)。それが「終末のラフター」です。
一度破滅を迎えた世界、破滅をもたらしたと伝えられるが故に人々の恐怖と憎悪の対象となっている不死者の存在、何かにすがらないと正気を保てない程に陰鬱な社会など、震災後における現代日本をおそらく意識しているであろう作品世界を舞台に、田辺先生得意の生意気な少年がその陰鬱な世界を形作っているモノを相手に戦う──という趣向の、まさに「意欲作」といって良いマンガだと思います。何かこう、想像以上に大変なマンガが始まったという印象です。
個人的には、田辺先生にはぜひ一度これまでのキャリアを全てかなぐり捨てる勢いで美少女わんさかコメディーを描いて欲しいなーと妄想していたのですが、こんな凄いマンガ見せられたらそんなこと言っていられないですよね(と言われても)。
作品のテーマとしては、田辺先生のデビュー作である「LOST PRINCESS」に似ているものがあるのかなと思いました。
「LOST PRINCESS」は、ドラキュラをイメージさせる魔物にさらわれた幼女を助けるため、同じく魔物的な力を持った生意気な若者が生意気に奮闘するというのが大雑把な筋書きなんですけど、幼女をさらった魔物にもさらわなければならない事情があり、幼女もそれを理解した上であえてさらわれていたという、単純な勧善懲悪の枠に嵌らない構成になっていたのが印象的な作品でした。
おそらく「終末のラフター」の悪魔の力を持った不死者達も、人々から忌み嫌われてもそのように生きなければならない理由があるのではないかと思われます。何にしろ、これからの展開に期待して行きたい所存です。
おすもじっ!
司のターン終了。こちらも前の彩香の寿司と同様、読んでいるうちにどんな味がするのか想像してしまう、たいへんに美味しそうな鰹の寿司でした。このお寿司は瀬戸内海に行けば食べられるんですかね?(半分本気で)
そんな感じで途中までは清々しく爽やかな料理マンガだったのですが、評決のシーンで司に投票したおっさんに向かって牙をむき出しにして悪魔の形相で威嚇した彩香ちゃんで雰囲気は一変。やはり彩香ちゃんすごい。
姉ログ
近衛姉弟に興味津々なミステリアス少女・佐伯風花の存在が、徐々にクローズアップされつつある展開になって来ました。彼女は単に輝のことが好きとかそういう単純な理由ではなく、もっとより大きな愛情を求めているように見えます。それ故に、モヤ姉が輝に向ける歪んだ愛情に興味を示しているのかも知れませんね。
個人的には黒タイツキャラが増えるのは嬉しいです(単純)。
正しいコドモの作り方!
「僕は今日子ちゃんのことが…
」
あの悠が自分からこよみとのフラグをへし折りに行くという衝撃的な展開に。成立したフラグをへし折るというと「神のみぞ知るセカイ」の桂馬×ちひろの一件が思い出されますが、悠の場合は下半身のムラムラが最高潮になってて理性が効かないであろう状態にあるにも関わらず、精神力を振り絞ってフラグをへし折ったところに価値があります。
彼が遺伝子のトラブルに巻き込まれずに普通に生活していたら、普通に付き合って普通に結婚していたはずのこよみとのフラグをへし折る精神力を発揮し、その上自分はムラムラ来てるのにも関わらず、こよみの純粋な気持ちを気遣う紳士な一面も見せるなど、これまでのボンクラっぷりが嘘のような大活躍です。
もう彼のことをボンクラとは呼べませんなあ。本当は彼もヤりたかったに違いないんだけどなあ(ひどい感想)。
最終回:ひめはじけ
「ひめはじけ」まさかの最終回。コミックス3巻で終了ということは、このサイト的な表現では「一番湯のカナタ」と一緒ですよ。残念です。
最終回は、6年経ったら姫さまがすごい太って帰って来たというオチ。ちょっと前のエピソードで姫さまが一時的に大人になった時とのギャップがひどくてあんまりだと思いました(褒め言葉)。
クリスタルな洋介先生の次回作に期待します。いやマジで。
小学館 (2011-08-18)
上述の「LOST PRINCESS」も収録されている、田辺イエロウ先生の貴重な初期短篇集。
「ラフター」のダークファンタジーな世界観はこの頃から既に先生の中に存在していたことが伺えます