サンデー 一覧

古見さんの性欲が垣間見えた サンデー27号「古見さんは、コミュ症です。」感想

古見さんは、コミュ症です。

 もう先々週の話になってしまいましたが、サンデー27号の「古見さんは、コミュ症です。」で、古見さんが只野くんの首筋にこっそり触った話はすごく良かったと思いました。

 古見さんは、ハードなコミュ症っぷりがあまりにアレなために普段はあまり強調はされませんが、彼女もああ見えてお年頃の女の子なので、人恋しさから意中の男子に触れてその温もりを感じてみたいという欲求は、当然のことながら持ってるはずなんですよ。
 キレイな言葉で表現すれば「スキンシップ」ということになりますが、要するに「恋人とイチャイチャしたい」というアレです。

 勿論、このマンガは恋人とのイチャイチャを描画することを目的としたサラダデイズかつボーイズビーな作品ではないため、古見さんはそういうことをしたい素振りは基本的に全く見せません。この作品は、あくまでコミュ症な主人公が徐々に周囲の優しい人々と触れ合って心の世界を広げていく様を描いた、美しく尊い作品なのです。

 でもそれだけに、ごくまれに見せる古見さんの「只野くんに触りたい」というエロスな欲求を垣間見せるサンデー27号のようなエピソードは、とても貴重なのです。
 サンデー27号で古見さんがものすごくドキドキしながらもほんのちょっとだけ只野くんの首筋に後ろから触ったあのシーンからは、「あの古見さんが只野くんにイタズラを!」という意外性、イタズラをして触ってしまうくらい彼女が只野くんに対して心を許していること、そして好意を持っている男子に触って温もりを確かめてみたいという秘められた欲望といった、様々なことを感じ取ることができると思います。

 更に言えば、直接古見さんが只野くんに触っている描写そのものがないというところからは、実際に触っていた時間がごく短いという時間的な表現をしていることは勿論のこと、「只野くんに触れている時の古見さんの表情を想像する」という妄想を読者に掻き立てる効果も含まれており、何というかこう非常にソソるものを感じました。
 つまり我々は、この短いエピソードによって、「古見さんの性欲」という禁忌について妄想することを作品から許されたのです。なんと罪深く、そして魅惑的なのでしょう。そんなエロい事を思ったエピソードでした。

古見さんは、コミュ症です。(3) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-03-31)
売り上げランキング: 1,154

コミックス3巻辺りからラブコメ要素が強くなって来た印象


キレる桜庭はとても愛おしい サンデー27号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 個人的に「BE BLUES!」の高校生編とは、桜庭さんが大活躍して「武蒼のメッシ」の異名で呼ばれるようになるまでの物語であると固く信じているのですが、そこに至るまでの道は極めて厳しいものになるであろうことも確かです。

 彼の行路が厳しくなるであろう最大の理由は、桜庭さんが極めてワガママでキレやすい尊大な性格の持ち主であることに起因しているのですが、しかしワガママでキレやすい尊大な性格だからこそ彼は唯我独尊のストライカーとして成功できているとも言える訳で、この二律背反をどう克服するかという点が、桜庭というキャラクターの物語を語る上での大きなポイントであることは間違いありません。

 という前提を踏まえた上でサンデー27号の「BE BLUES!」なのですが、選手権決勝でライバルである龍が決勝ゴールを決める大活躍したことで桜庭の鬱憤が積もって大爆発する様子を一話を通じて丹念に描いた、桜庭さんのキレ芸を堪能するための回だったという感想を持ちました。

 自分が抜けなかった聖和台の真鍋のディフェンスを龍が抜いたのは自分に対するあてつけに違いないと思い込み、自分よりも格下だと思っていた龍が試合で活躍する様子を間近で見て余計に苛立ち、トイレで鏡を殴って「調子に乗るんじゃねえぞ!」と怒りを爆発させる。勿論、試合中に龍にパスは絶対出さない。
 これらの行動は、全て「龍はいつの間にか自分よりも成長していた」という現実を受け入れることを桜庭が全力で拒否していることを表現しているのは明らかです。いいですね! このひねくれた姿こそが、みんなが大好きな桜庭さんなんですよね!(ひねくれた好意)

 実際にはミルコが桜庭に対して言った「人を認めても、君自身を否定することにはならんのだよ」という言葉の通り、龍の今の実力を素直に認めた上で、龍を活かしつつ自分がもっと活躍できる戦術を取れるようになるのがベストなのですが、しかしそれが簡単にできない性格だからこそ、桜庭というキャラクターにはドラマが生まれるのです。
 このマンガの舞台はこれから高校選手権の全国大会に移って行きますが、龍に先に行かれた桜庭がこれからどのような形で龍に追いつこうとするのかというのが、今後の大きな物語のテーマになるのではないか。そんなことを期待させる回だったと思いました。

 そして今回の結論としては、ラストで「認めて…たまるか」と呟きながら茹で卵を食べる桜庭はものすごく可愛かったです。

BE BLUES!~青になれ~(27) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-06-02)
売り上げランキング: 96

選手権決勝序盤の桜庭の勇姿が拝める27巻


サンデー25号 新連載陣感想まとめ

隕石少女 ―メテオガール―

 「空から人間じゃない女の子が降って来る」という全人類男子憧れのシチュエーションを、「空から人間じゃない女の子がひっきりなしに降って来る。でも、その女の子に当たると死ぬ」という捻った形にアレンジした、終末感あふれる社会を舞台にした作品。

 当たると死ぬような物体(以下「MG」)が日常的に落ちてくる異常な世界が舞台なのにも関わらず、そこで暮らす人々はみんなそんな日常に慣れてしまって危機感が薄れ、逆にMG対策グッズを持ち歩いていることがダサいとみなされてしまっているところが、「まあでも、そういうもんだよなあ」という気持ちにさせられます。
 作品内に出てくるMG接近の警告を知らせるスマートフォンのアラーム音は、かつて東日本大震災の時に頻繁に携帯電話から鳴り響いていた緊急地震速報を連想させるに十分ですが、それに対して既に我々の感覚が鈍ってしまっている点も含め、この作品は現代日本に住む我々のメタファーとして描く社会派なマンガとなる素質は十分あると思いました。

 そういえばまだ頻繁に地震が起こっていた当時、うどん屋に入った直後に緊急地震速報が鳴り響いて震度3クラスの地震に襲われたにも関わらず、揺れが収まった後に普通にうどんを店員に注文し、店員も普通に応じてうどんがすぐに出てきたってことがありました。店にいた他の客も、特に騒ぐこともなく淡々としてましたよ。
 あの時は「非日常が日常になるってのはこういうことなのかなあー」とぼんやり思いながらうどん食ってましたね。それを思い起こさせる第一話でした(感想?)。

第九の波濤

 「ファンタジスタ」の草場先生の新連載。
 「東京生まれ東京育ちの都会っ子の男子が、長崎で出会った釣り好きの女子に一目惚れしてしまう」という、これまでの草場先生の作品とは明らかにノリが違う話だったのでどうなることが心配だったのですが、サンデー25号において主人公が長崎の大学の水産学部に進学した結果舞台が長崎になったことで、やっぱり草場先生のマンガは九州が舞台になるんだよな! と安心しました。
 主人公はまだ「東京生まれのシティボーイ」の状態ですが、いずれは「ファンタジスタ」の轍平みたいな立派な九州男児に変化していくこと請け合いですよ。楽しみですね(そういうマンガ?)。

 舞台が水産大学ということは、このマンガは「銀の匙」や「あおさくら」と同様の、『日常とはノリが違う異常な法則が支配する大学』が舞台の職業訓練モノということになると思われます。
 現実の日本の水産業は、資源の減少や漁業従事者の減少など色々と問題を抱えていると言われる業界なのですが、「第九の波濤」はそれに対する光明を示すことを究極の目標とした社会派のマンガとなれるのでしょうか(そういうマンガ?)。

妖怪ギガ

 みんな大好き日本妖怪を題材に、これまでのソレ系の話とはちょっと違う解釈を加えた小話集として連載が始まった「妖怪ギガ」。
 テーマが妖怪であることに加えて、絵柄がクラシカルというか(今っぽい「妖怪ウォッチ」とかと比べて)やや劇画チックな正統派の妖怪絵巻なので、内容的にはちょっと少年誌っぽくないというか、むしろビックコミック系に載っていても不思議じゃないように思えるのですが、今の懐の広さをアピールして行きたい少年サンデーならこういうマンガも許容範囲ですよ! ということなのでしょう。

 作品の雰囲気は、基本的に妖怪が人間のアレっぷりに困ってしまうようなユーモアな方向に振られていて楽しく読めるのですが、時々サンデー25号の「絡新婦(女郎蜘蛛)」のような、妖怪を通じて人間の本性をさらけ出すような怖い話を振って来るので、ゆめゆめ油断はできない作品だなと思ってます。やっぱり1番怖いのは人間ッスよねー

週刊少年サンデー 2017年25号(2017年5月17日発売) [雑誌]

個人的に今のサンデーの看板マンガは「舞妓さんちのまかないさん」なのではと思い始めている


スポンサーリンク
1 15 16 17 18 19 20 21 192