感想 一覧

「カナタ」と「絶チル」を結ぶミッシングリンク「パンドラ」~『椎名大百貨店』感想

 「椎名大百貨店」を購入することに成功しました。

 この「椎名大百貨店」に収録されているエピソードですが、これらは全て「一番湯のカナタ」の連載が終了というか打ち切られてから「絶対可憐チルドレン」の連載が始まるまでの間に発表され、かつ既に発売されている「GSホームズ極楽大作戦!」や「絶対可憐チルドレンガイドブック」に掲載されていない作品が収録されているのが特徴です(→この時期に椎名先生が発表した作品のまとめ)。

 また、これらが描かれた時期はサンデー本誌以外の様々な雑誌に転々と発表していた時期でもあり、世間的な評価では「不遇を託っていた」印象をどうしても拭いきれないっていうか、むしろズブズブであったような気がしてなりません。
 どうやら椎名先生も、この時期には色々と思い悩むことがあったみたいです。

 当時、「漫画が一生の仕事ってどうよ」と迷ってました。もういい歳なのに生活の大部分が「超能力を持った少女が」とか妄想する毎日。まともな社会経験まったく積んでません。

「椎名大百貨店」のあとがきより

 しかし、その迷いの中から生まれた奇跡の作品があります。それが「パンドラ」です。
 「パンドラ」のどこが奇跡だったのかと言えば、それは椎名高志という作家が自分本来のキャラクターと作風を、作品を描いている中で再び見つけ出すことに成功したこと。それに尽きます。

 そしてそれは、この作品の第三話の以下の台詞に集約されています:

 「空から降ってきた人間じゃない女のコ、最高ッ!!

 大事なことなのでもう一度書きます。空から降ってきた人間じゃない女のコ最高。これです。こんな台詞を自分のマンガのキャラクターに正々堂々と喋らせる境地に作者が達したことこそが、「パンドラ」という作品の最大の価値なのです。

 この台詞は、自分が本来のホームグラウンドと自負していたであろうSFコメディ路線の「一番湯のカナタ」が打ち切られ、「自分はいつまでもマンガを描いてていいのか?」と漫画家としてのキャリアに疑問を持ち始めていた当時の椎名先生が、「それでも空から降ってきた人間じゃない女のコが好きだ! 大好きだ! そして、そういうマンガを描くことも大好きなのだ! ならそれを描くしかない!」と、己の本質を取り戻した象徴なのです。
 いやその別に本物の椎名先生がそういうこと言ったかどうかは判りませんが、でも真実はきっとそうに違いありません

 自己分析するに、この話は「低俗で幼稚で不毛な現実逃避なのはわかってるが、それでも俺は漫画が好き」というダメ人間の血の叫びなのではないかと(笑)。

「椎名大百貨店」のあとがきより

 「パンドラ」第三話を描くことで、空から降ってきた人間じゃない女のコとかそういうのが大好きな自分自身を取り戻した椎名先生は、その直後にサンデー超増刊で「絶対可憐チルドレン」(コミックス1巻の巻末に収録されている版)を発表。超能力を持った幼女三人組に大の男がメロメロにされるSFコメディーという直球ど真ん中な内容が大当たりし、サンデー本誌で再び連載を開始することとなります。
 その後の破竹の快進撃は、皆様ご存知の通りですね。

 現在の「絶チル」路線に繋がる原点とも言える「パンドラ」は、そういった意味で椎名ファンにとっても極めて重要な作品です。椎名先生のファンを自負しているまだ未読の方は、ぜひこの機会に読んでみることをオススメします。
 齢四十にしてついに「空から降ってきた人間じゃない女のコ最高」の境地に達した椎名先生の心意気を汲み取ってこその椎名ファンだと思いました。


ここ最近のサンデーまとめ感想

 お久しぶりです(枕詞)。
 最近書いてなかったサンデー感想のまとめみたいなものを淡々と書いてみます。

MiXiM♀12

 「MAR」が終了した頃は色々大変だったらしい安西先生が奇跡の復活を遂げ、再びサンデーで新連載を開始。
 薔薇を背負った美少年三人組がサンデーの表紙を飾っているところからして「ああ、これはそういう人気を狙ったマンガ?」とか思っていたのですが、最期にラムちゃん(=いわゆる「オレだけを好きになってくれる空から降ってきた人間じゃない女の子」キャラの、サンデーにおける総称)がいきなり出て来てビビりました。そういう人気を狙っているのかと思わせておいて、実はそっちの人気を狙いに来ていたとは。中々あなどれません。

 個人的には往年の「ロケットプリンセス」みたいな脳天気ラブコメマンガになって欲しいところなのですが、「銀河系青春ストーリー」という壮大なスケールのアオリが入っているところからすると、それだけでは済まないような気がしてなりません。このマンガはどこへ向かおうというのか。そういう方なのかそっちの方なのか。

結界師

 時音さん強化エピソードと解釈。「短パン履いてるから見られても大丈夫!」とハキハキ言えるところから推測できるように、時音さんは元々少年マンガのヒロインとしての立場を超越したところに立っている人であり、そこが彼女の魅力でもあります。「神殺し」をやってしまってからも彼女は全くブレることなく、「己は己の成すべきことを成すだけだ」みたいなサバサバした行動理念で動いているように思えます。なので、生足見られた程度では彼女の感情は揺らがないのです。
 この辺、「時音のいない世界なんて俺は知らない!」と初々しい台詞を堂々と言ってのける、良くも悪くも感情で動く良守とは対照的ですね。果たして良守は無事時音を救い出し、時音の生足を間近で見ることができるのか否か。良守が時音の短パン姿を見た時の反応が今から楽しみです。

月光条例

 「月打」される対象は「おとぎはなし」ということになっていますが、「おとぎはなし」の具体的な定義がどのようになっているのか、ちょっと気になっています。
 「月打」されたキャラクターは行動がおかしくなってしまうということは、即ち月打されたキャラは元のキャラをベースにした新しいキャラになってしまうということであり、これは要するに「キャラクターの二次創作を行う」ことに等しいのではないかと思われます。つまり「月打」は、二次創作を行っても著作権的に問題が生じない作品であれば、「おとぎはなし」に限らずどの作品でも対象になり得るのではないのでしょうか。より具体的に言えば、青空文庫に掲載されている小説であれば「月打」され得る可能性があると考えられます。
 「よだかの星」で社会に絶望した夜鷹が月打されちゃったおかげで星にならずに社会に復讐するテロリストになったり、「小公女」ではセーラが月打されちゃって巨大化してミンチン先生に襲いかかって(以下略)みたいな。そんなことばかり考えている今日この頃です。

 主人公の月光は口で言ってることとやってることが相反する、極端なツンデレキャラだよなあという印象です。「あやかし堂のホウライ」のホウライを彷彿とさせます。

金剛番長

 少し前にやっていたさそり番長のエピソードは、さすがの私も「こんな60年代のヤクザ映画的なノリで付いてこれる読者がどのくらいいるの?」と不安になったりしましたが、でも読者を置いてきぼりにしてこその「金剛番長」なので、まあこれはこれでいいんじゃね? と自分を納得させることにしました。

 そして今回の暗契五連槍編ですが、爆熱番長以外はもはやどんな戦闘方法を使うのか想像もつかない奴らばかりです。道化番長なんか、ハシラで「なんでこんなヤツが爆熱番長と手を組むことになったんだろう」と編集者から突っ込まれている始末です。更に粘着番長に至っては多分人間ですらないです。でも、全く非論理的な展開が許される自由さがあるからこそ、「金剛番長」は面白いのです。困ったマンガですね(ニヤニヤしながら)。

神のみぞ知るセカイ

 第二話で、主人公の桂馬が「早く契約を終わらせるためには、エルシィを妹として一緒に住むのが最善の策だ」と論理的に結論付けて同居を認めた展開に感心しました。決して感情にほだされる訳ではなく、あくまであらゆることに感情よりも理性を優先させて対処するタイプの主人公って、少年マンガでは実は案外珍しいのかも知れません。

 第三話では、ギャルゲーの攻略法がそのまま「現実」でも通用することを理解した桂馬が、これまた理知的に淡々と現実女子を攻略しにかかる姿が妙に格好いいです。オレがこのマンガ内の女子なら絶対惚れてるね! と断言して行きたい。


絶対可憐チルドレンアニメ視聴日記

 お久しぶりです。
 「絶チル」のアニメの話ですが(いきなり)、2話→3話→4話と回を追うごとに面白くなってきているように思います。

 特に第四話は「パンツを見せることまかりならぬ」というテレ東規制を逆手に取り、「どうせ見せられないものなら、最初からはいてない設定にすればいいじゃない?」という逆転の発想に基づいた斬新な演出が光る極めてエポックメイキングな意欲的内容であり、とても面白かったです。色々な意味で。
 さらに今回出てきた犯罪者エスパーが「念力で女性の動きを止め、透視能力で下着を視姦する」という中学二年生男子が一度は夢みるようなコンボ攻撃を仕掛けるところ、および「はいてないと透視する意味ねえじゃん!」みたいな台詞を吐いたところも、正直凄いと思いました。こんな能力や台詞は、本物の下着フェティシストでなければ到底発想できないものと思います。原作者がドン引きするのも納得のアレっぷりです。

 ただ、アニメ版のストーリーに対しては、原作ファンの視点からすると「このエピソードはもうちょっとじっくりやって欲しかった」とか「この台詞を外すなんて勿体ない」という箇所がどうしても出てくる訳なのですが、原作者の椎名先生が監修に参加しているとのことですし、何より放送は(打ち切られなければ)1年は続く訳ですので、今までのエピソードでカットされた部分もいずれはフォローされるんじゃないのかな-、と長い目で期待してます。
 がんばれアニメ版制作スタッフの皆さんと椎名先生。

 そして、6/25に発売されるアニメ版OP主題歌CDが待ち遠しいです。
 ジャケットが椎名先生書き下ろしなのは勿論、チルドレン達をイメージした Catastrophe/Light Speed/Untouchable の各リミックスが収録されてるとか、初回特典は可憐Girl’sのPVが付くとか、何か妙に凝ってるというか、「これで一発当てたるぜ!」という作り手側の本気っぷりを感じさせる一枚になってるような気がします。売れるといいですね

 勿論私は買います

Over The Future(初回限定盤 DVD付)
可憐Girl’s
Geneon =music= (2008-06-25)
売り上げランキング: 365

スポンサーリンク
1 72 73 74 75 76 77 78 85