「あなたと同じ女の子だよ」の深さに迫る サンデー36号「初恋ゾンビ」感想

初恋ゾンビ

 先週も「初恋ゾンビ」の感想(だけ)を書きましたが、引き続き今週も「初恋ゾンビ」のことを書きます。
 何故なら、今まさにこのマンガは大きなターニングポイントの真っ只中にあり、ものすごく面白くなって来ているからに他なりません。

 今回は、ついに指宿が本当は「指宿くん」ではなく「指宿ちゃん」であることが江火野にバレてしまう話でしたが、今回の一番のポイントは最後の方でなされた江火野と指宿のこのやり取りでしょう。

「じゃあ、あなたは正真正銘の女の子なんだね。あたしと同じ<」 「…うん。江火野さんと同じ、…女の子だよ」

 ここで言う「女の子」とは、ちんこの有無を表す生物学的な性差としての女であるのを指しているのは勿論なのですが、それ以外にも指宿はジェンダー的にも江火野と同じであり、男性を恋愛対象とする性的嗜好も江火野と同じであり、さらに言えば今好きな人そのものも江火野と同じであることを、指宿は「江火野さんと同じ女の子だよ」という台詞に込めていることは明らかです。

 つまりこのシーンは、江火野は指宿に対して「あなたもタロウのことが好きなんだね?」と問いかけ、指宿はそれに対して逃げることなく「ワタシもタロウのことが好き」と告げたに等しい意味を持ちます。自分の性別を江火野に知られた指宿は、ついに江火野に対してこれまで隠していた性別のことだけでなく、自分の秘めていたタロウへの気持ちも江火野に知らせたのです。

 より判りやすく言えば、恋のライバル宣言です! 恋のライバル宣言なんですよ奥さん! もしこのドラマが「ママレード・ボーイ」のアニメ版だったら、指宿が「江火野さんと同じ、女の子だよ」って言う台詞と同時に國府田マリ子が歌う「MOMENT」がオーバーラップすること必至なくらい、ここは重要なシーンなんですよ!(例えが古くて申し訳ない)

 前回までは、江火野がこれまでの「恋愛には興味がない」「タロウとは単なる幼馴染」だったこれまでの自分を、「ロミオとジュリエット」の演劇を通じてかなぐり捨ててタロウへの想いを強く自覚するに至る、言うなれば江火野覚醒の回だったと言えますが、今回は自分の秘密を知られたことをきっかけにこれまで誰にも言えなかったタロウへの想いを江火野に伝え、彼女と「恋敵」の関係となる覚悟を決めた指宿の心理的な変化を描いた回だったと言えるのではないのでしょうか。
 「指宿が自分の性別を偽っている」ことはこのマンガの根幹を支えていた設定の一つなのですが、それが(相手が江火野限定であるとは言え)崩れてしまった以上、このマンガはいよいよ新しい局面に入ってきたと思われます。この二人の恋の行方がどうなるのか、ますます目が離せなくなって来た感がありますね。いやもうホントにこのマンガ面白いです。

 あと今回個人的に面白かったのは、指宿くんを探すクラスメートの目を誤魔化すために指宿が江火野のスカートの中に隠れた後、江火野から「とにかく劇はちゃんとしよう」と叱られて「…わかった」としゅんとして言うシーンです。多分、指宿くんはこれから江火野に頭が上がらないんじゃないかなと思いました。江火野×指宿というカップリング妄想もアリなのでは。いやマジで。

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今の展開は、コミックスのこの辺の展開からの積み重ねの集大成的な感じがする

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