安室透はスキがない! サンデー24〜25号「ゼロの日常」感想

ゼロの日常

 映画を観た人々がもれなく「安室の女」を自称し始めたり、「降谷」姓の印鑑が突然売れ始めたり、作品の略称がいつの間にか「ゼロシコ」になったりと、劇場版「名探偵コナン・ゼロの執行人」の人気はもはや社会現象といっても過言ではないレベルに達していると思われますが、その人気を事前に見越していたとしか思えないタイミングで、サンデー24号より「ゼロの執行人」の最重要人物である安室透を主人公に据えた公式スピンオフ作品・「ゼロの日常」の連載が始まりました。

 実際「ゼロの日常」第一話が掲載されたサンデーは(付録の安室透ポストカード目当てとも言われてますが)あっという間に完売。その「お詫び」と称して小学館が「サンデーうぇぶり」上でサンデー24号を期間限定で無料公開する事態にまで発展しています。
 サンデーがここまで売れたのって、かつて「パズル&ドラゴンズ」の限定モンスターを入手できるシリアルコードが付属したことが原因で売り切れが続出した2016年1号以来なのではないかと思われます。パズドラの時は「ソシャゲ効果じゃん?」って言われていたような気がしますが、今度はちゃんと連載マンガの人気が原因の完売なので、堂々を胸を張って「完売です! 申し訳ない!」って言えますね!(にこやかに)

 また「ゼロの日常」は安室が主人公ということで話題になっていますが、長年のサンデー読者的には、この作品を手がけているのが「ダレン・シャン」や「ARAGO」、そしてついこの間まで「天翔のクアドラプル」を掲載していた新井隆広先生というのも、大きな注目点です。
 これらの作品を読んだことがある方なら御存知の通り、新井先生の作品の特徴の一つは老若を問わず男子を魅力的に描くことであり、そんな先生が全身全霊を込めて青山剛昌先生が生み出した最強クラスのイケメンキャラ・安室透を動かすというんですから、もはや一大事と言っても過言ではありません。サンデー春の新連載の中でも、文字通り最も注目される作品であることは間違いないでしょう。

 そんな「ゼロの日常」を第二話まで読んだ感想なのですが、このマンガは基本的に主人公・安室透を魅力的に描くことに全ての力点が置かれていると理解しました。

 安室透というキャラは探偵・組織・公安と全く異なる3つの世界に属し、それぞれの世界でいくつもの顔を使い分ける複雑な立ち位置のキャラクターなのですが、その辺の彼の複雑な事情はさておいて、この「ゼロの日常」というマンガは安室透という人間の「日常生活」を読者がマンガを通して覗き込み、「やっぱり安室って何をやらせてもステキだわー」とうっとりさせることを主な目的にしているのではないか? と思います。
 第一話での万事気配りが行き届いた安室透、真剣な表情で銃の手入れをする安室透、赤井秀一のことを思いながら袖捲りをして車を走らせる安室透。第二話で「組織」の一員としての顔を見せる安室透、キッチンでフランベをする安室透、うっかり朝ご飯を作りすぎてしまう安室透。いろいろな姿の安室透を提示しつつ、「安室透って、何をやっても様になるいい男だろう?」と読者に見せつけて彼の魅力を納得させることこそが、このマンガの唯一無二の目的であることは間違いありません。

 特定のキャラクターの魅力を余すことなく見せつけることだけを目的としたマンガとしては、現在サンデーで連載されている作品の中では「天野めぐみはスキだらけ!」が筆頭に挙げられます。
 「天野めぐみ」は、健康的で健全な肉体と精神、そしてスキだらけな性格を持つ女子高生・天野めぐみの、スキだらけでちょっとエロスな日常を読者が拝んで「ありがとうございます…」と毎回作者に感謝するマンガなんですけど(決めつけ)、そういった意味においては、「ゼロの日常」も基本的なジャンルとしては「天野めぐみ」と一緒なのではないのでしょうか。
 つまり、健康的で健全な肉体と精神、そして謎だらけな性格を持つ安室透の、スキが全くない完璧でモテモテな日常を読者が拝んで「ありがとうございます…」と毎回作者に感謝するマンガ。それが「ゼロの日常」という作品なのです。多分

 結論としては、「名探偵コナン」のキャラクターのスピンオフとしても、単に「マンガみたいにいい男」を観察する作品としても十分に面白そうなので、今後とも期待していきたいと想いました。

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ダレン・シャンのコミックってもう12年前なのね…

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サッカー日本代表監督電撃解任が「BE BLUES!」に与える影響を考える サンデー22+23号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 最近のサッカーといえば(いきなり)、サッカー日本代表監督だったハリルホジッチ氏が突如として日本サッカー協会から解任されたという大きなニュースがありました。
 監督交代の是非や理由はともかくとして、ワールドカップ開催まであと2ヶ月というこのタイミングでの代表監督の解任は一般的には異常事態と言う他なく、チームへの影響は勿論のこと、サッカー日本代表チームに対するファンの信頼感や、チームの人気そのものへの悪影響も懸念されています。

 そして、もし今回の件がきっかけでサッカー日本代表チームの人気が低下するようなことがあったりすると、みんな大好き「BE BLUES!」にも影響を及ぼしてしまうのではないか? と個人的に危惧しています。

 そもそも「BE BLUES!」というマンガは、主人公である一条龍が「幼少の頃から本気で日本代表になることを夢みているサッカー少年」という設定であり、「日本人に生まれたら、サッカーをやっているなら…日本代表のユニフォームを手に入れたい!誰だってそうだろ!」という彼の気持ちが、彼と同じサッカー少年達のコモンセンスとして通用するからこそ成り立っている作品です。
 彼はこの夢を実現するために幼少期から綿密なライフプランを立てており、事故にあって再起不能レベルの大怪我をした時も、この夢があったからこそ諦めずにリハビリに励むことができたのです。
 つまり「サッカー日本代表」という存在に魅力がなければ、「サッカー日本代表になる」龍の夢に読者が共感することも、彼の夢が読者の中でリアリティを持つこともなくなってしまう訳であり、それだけに現実のサッカー日本代表には常に魅力的でいてもらわなければ困るのです。

 「BE BLUES!」はまだ高校生編の途中ではありますが、主人公の龍がユースチームの日本代表選抜合宿に招聘されるエピソードも登場し、将来龍と共に日本代表として戦うことになるであろうキャラクター達が作品内に顔を出し始めているところを考えると、徐々に龍の夢である「サッカー日本代表入り」も作品構想の視野に入りつつあることを感じさせます。
 「BE BLUES!」のためにも、現実のサッカー日本代表には、サッカー少年達にとってキラキラした憧れであり、そして具体的な将来の目標でもあるという素敵な存在で居続けてもらいたいものです。そのために頑張ってほしいなと思います。

 そして本題であるサンデー22+23号の「BE BLUES!」の感想ですが、今回のテーマの一つである「オフ・ザ・ボール」の動きでレノンと龍が相手ディフェンダーのマークを逃れて空いたスペースに入り込んで縦に早いパスを繋いでサイドから突破、ゴール前で待ち構える桜庭にまでボールを繋いだ! という、マンマークディフェンスの崩し方のお手本のような展開だったと言えます。
 前の桜庭へ「楔のパス」を出すことに成功した時の回もそうだったんですが、このマンガってサッカーの現実的な戦術をきっちりと描いているんだよなと改めて思いました。

 普通のサッカーマンガだったら、ここまでお膳立てされたら主役であるエースストライカーがきっちりとゴールを決めて読者のハートを鷲掴み! きゃーステキー! となること請け合いなんですけど、でも今回の試合のエースストライカー役はあの桜庭さんなので、まだまだ油断はできません。
 龍からの愛がこもったボールを、桜庭は受け取ることができるのか否か。続きはゴールデンウィークの後で! 5月病に負けずに5/9まで生き延びようぜみんな! がんばれサッカー日本代表!(フォロー)

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現代ファンタジー作品論マンガ爆誕記念 サンデー13〜20号「絶チル」感想

絶対可憐チルドレン

 原画展開催決定おめでとうございます!(ファンサイト要素)

 サンデー13号辺りから始まった、ティムが作ったなろう系異世界転生ファンタジーっぽい物語の世界に薫が放り込まれる「やかましき玩具」編が決着しました。

 このエピソードの見所は、ティムの能力が大幅にアップグレードし、自分が作った世界を統べるゲームマスターとしての能力を手に入れたことでしょう。
 元々は玩具をキーワードして周囲の人間を催眠で操る能力者だったティムが、(黒い幽霊による洗脳によって)「人間を玩具にして支配する」という方向に自分の能力を伸ばすことに気付いた結果、バーチャルリアリティ的な世界を創造し、催眠によってその世界の中に人間の意識を放り込むことができるようになったという、ティムの能力のグレードアップのアイデアそのものがこのエピソードの根幹を成しているのは間違いありません。

 その能力でティムはゲーム的なファンタジー世界を創造し、そこに異世界転生ファンタジーの導入のお約束的な手法を使って薫を放り込み、(ティムが創造した)「皆本」と冒険の旅をさせ、最終的にはかつての滅びの予言と同じく「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」バッドエンドを再現することで薫を精神的に殺す筋書きを作りました。つまりティムは、自らが作ったゲーム世界のストーリーをプレイヤーである薫に体験させるという、テーブルトークRPGのゲームマスター的なことをやろうとしていたのです。
 「玩具」を操るティムの能力をそういった方向に拡張させるという発想は自分には全くなかったので、この点においてだけでも今回のエピソードは発想が素晴らしいなと素直に感心致しました。

 ティムがゲームマスターを努めた今回のシナリオは、彼が構想していたバッドエンド直前までは上手く行っていたように思われますが、しかし最後の最後でティムは「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」シナリオを実行することに失敗し、彼は敗北を喫してしまいます。
 その理由は、「ティムの作った『皆本』というキャラクターにそぐわない行動をティム自身が行ってしまった結果、作品としてのリアリティを保てなくなって催眠能力が低下し、これまで催眠で抑え込んでいた悠理が催眠を破ってティムの世界を破壊したため」というもの。

 ティムの作った異世界ファンタジー世界は、きわめて陳腐というか考証が欠けているというかツッコミどころに事欠かないアレな感じな世界で、隣の松風君から「ファンタジー世界の住人がメガネをかけているのはおかしい」「地名に英語が混ざっているのはおかしい」「ファンタジー世界の宿屋にシャワーがあるのはおかしい」等の無粋なツッコミを受けてきたのですが、それに対してティムは「この世界では僕が神だ!考証の矛盾など僕はまったく気にしない!考証厨は滅びろ!」と(怒りを込めながらも)言い切って来ました。
 その言い切りと妄想世界への思い込みの強さが、そのまま彼の作った世界の強さに繋がっていたのです。

 しかし、ティムの作った「皆本」が薫を銃で撃つ段階になった時点で、ティムは自分が想像した「皆本」というキャラクターが、(たとえ撃たなければ世界が滅びてしまうような状況でも)薫を簡単に撃てるような人物ではないことに、自分で気がついてしまいました。
 彼の作った「皆本」は勿論現実の皆本のコピーなんですけど、それだからこそ皆本はそういうことが平気でできる人物ではないことを、シナリオの最終局面で理解してしまったのです。

 結局ティムはキャラクターではなくシナリオの都合を優先して、適当な理由付けで「皆本」が薫を銃で撃つ展開を選びました。自分が作ったキャラクターの内面を無視する行動を取ってしまったことで彼の世界のリアリティは崩壊、そこを突いた悠理に世界を一撃で破壊されてしまいます。
 この時の悠理の台詞である「この世界を壊したのは、あなた自身よ、ティム。あなたは自分の心に、自分が信じている幻想に、もっと誠実に敬意を払うべきだった」が、本編におけるメインテーマであると、個人的に思います。

 ただ、最後の最後でティムはゲームマスターとして失敗してシナリオを崩壊させてしまったものの、プレイヤーである薫は彼が作った「皆本」にリアリティを感じ、「とっても楽しかった! あんたの作る世界、あたしもっと見たい!」と賞賛の言葉を送りました。プレイヤーからこんなことを言われたら、ゲームマスター冥利に尽きるというものですよね。良かったねえティム。

 たとえ自分の妄想した世界がツッコミどころだらけのファンタジー世界であろうとも、その世界を作った自分自身こそが、その世界を矛盾を含めて愛し続けることが何よりも大切であることを訴えた今回のエピソード。これはある意味、なろう系異世界転生ファンタジーに対する作品論として読み解くことが可能なのではないのでしょうか。いやそれがテーマに違いないです(きめつけ)。

 椎名高志先生のマンガでここまで判りやすい現代作品論をテーマとしたエピソードを読めるのは、「GS美神 極楽大作戦! !」旧コミックス28巻の『紙の砦!!』以来なのかも知れません。
 『紙の砦!!』の時は出たのが1997年なので少女向けライトノベルが題材だったのが、今回はなろう系ファンタジーが題材になっているところが今っぽいなあと思いました。

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コミックス28巻には、一瞬だけ新レギュラーキャラになりそうだった鈴女も登場。アシュタロス編が始まらなかった別の歴史では彼女にも出番はあったのかも

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