とか「MISTERジパング」界の数少ないエロワードで盛り上がってみたかった(過去形)今日この頃ですが、皆様如何お過ごしでしょうか?
こちらは、未だに体調悪めな私こと深沢が管理運営を行っている、椎名高志ファンホームページ C-WWW です。
先週は、ちょっと胃のモニョモニョ感+肩凝り+耳鳴り+眠気のコンボに祟られ、本気で体調が悪かったです。私はこう見えても実はかなりの虚弱持ちであり、特に胃が弱点なのです。オレに対してのストマッククローは禁止な!(間違い)
本気で胃が悪かった15〜6年前などは、身長175cm・体重 53kg などという耽美系美少年として十分やって行けそうな体型(しかも受けキャラタイプ)をしていた時もありました。今ではもう遠い過去の思い出です。つうか、やっぱこの身長でこの体重は明らかにヤバかったです。あの頃はマジで死にそうであり、「耽美系美少年辞めますか、それとも人間辞めますか」というくらいヤバかったのです。
私はまだ人間辞めたくなかったので、痩せたまま美しく死ぬよりも、身体を治してブクブク太る道を選びました。そして今に至ります。おかげさまで、あれから身長は大して伸びなかったのにも関わらず、体重は当時の約2倍近くにまで快復したのです。
生まれてすみません。
という訳で、とりあえず今はいくらか体調も改善しました。ご心配をお掛けして申し訳ない。
先週はそんな感じだったので、体調を快復させるべく早寝早起きを心がけつつマンガを読みながら布団の中でゴロゴロする生活を送っていたのですが、先週読んだマンガの中で妙に気に入ったのが、あの巨匠・藤子不二雄A先生が現在アルバゴルフコミックで連載しているゴルフ漫画「ホアー! 小池さん」でした。
このマンガ、基本的にはゴルフ好きなサラリーマン・多振さんと、藤子不二雄A氏のマンガにはなんか必ず出てくる謎の人物・ラーメン大好き小池さんが繰り広げる面白おかしいゴルフ三昧の日々を描いたものなのですが、その中身がアンタ!
例えば、小池さんが毎回「コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・ベ・キ・カ
」(←意味が判らない良い子のみんなは、近所の30歳過ぎのお兄さんに聞いてみよう)チックなタッチに化けてゴルフに関する蘊蓄を何の脈絡もなく熱く語り出したり、ゴルフマンガには必須の要素であるショット前に集中するシーンでも小池さんが例のタッチで「コンセントレーション!」と叫び出したり、最初のうちは「脇を締めてショットすることの大切さ」を説いていたエピソードのオチが何故か「キノコを食べたらみんなラリってしまい、力任せなショットを『ギャース!』というオノマトペを発しながら打ちまくって終わり」だったり、更には
「ミスター・コイケ! あのヒト、妨害念波を送っているみたいよ!」
「よーし! それではこっちは、多振さんに集中念波を送りましょう!」
とかいう、どう考えてもゴルフマンガとは思えない台詞が平気で飛び出て来たりと、様々な意味において『藤子不二雄Aじゃないと描けないマンガ』っぷり(話やキャラのキテレツな構成から、藤子不二雄A氏レベルの巨匠じゃないと絶対通らないに違いないネームの数々に至るまで)を発揮しています。
なんか、ここまで破天荒なゴルフマンガを読んでしまうと、サンデー掲載の「ダンドーXi」を読みながら『スコップ一本でゴルフをするな! あと、スコップ一本で勝負に勝つな!』とか、『飛んでる球を打ったら、それもうゴルフじゃないよ!』とかの常識的なツッコミをしていたこれまでの自分が、如何に矮小なものに捕らわれていたのかがよく判ります。藤子不二雄A先生が「超能力で相手のショットを乱す」マンガを描いてウケを取っているってのに、「ダンドーXi」で多少ゴルフの常道を外れた展開が出てきたからって何だって言うの! そんな小さな事に捕らわれていたら、素直にマンガを楽しめないよ! ゴルフマンガってのは、麻雀マンガやエロマンガと一緒で、ゴルフさえやっていれば後は何をやったって許されるモノだったんだ! 「ホアー! 小池さん」は、それを教えてくれているに違いない! バカバカオレのバカ! と、病んだ頭で悟りを開いてしまった自分に気が付きました。我ながらヤベエです。
このマンガのメインターゲットは、おそらく子供の頃に藤子A氏の「プロゴルファー猿」や「魔太郎が来る!」を読んで育った世代だと思うのですが、その世代の方なら楽しめる作品かと思います。逆に言えば、藤子A先生のノリを知らない人が読んでも、「ただのおかしいマンガ」で終わってしまう可能性大。さすがは藤子不二雄A(エース)先生!(←誉めてます)
あと、せっかくゴロゴロしているのだからということで(何が「せっかく」なのか判りませんが気にしない)、前々から観たい観たいと思ってはいたもののなかなかゆっくり観る暇が作れなかった、黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」をビデオ鑑賞することにしました。
「隠し砦の三悪人」という作品は、椎名高志ファンにとっては、「GS美神」の女華姫の『姫も15、この者達も15! 生命に何の違いがあろうぞ!
』の台詞の元ネタ、更に遡れば「Dr.椎名の教育的指導!!」に出てきた「てなもんや三悪人」にまで行き着く、ある意味「モンティパイソン」並に椎名氏の作品の源流に根付いていると言っても良い映画と言えます。
ですので、いつかは観なければいけない作品だと思っていたのですが、サンデー49号の「MISTER ジパング」に出てきた『総天然色絵草紙・隠し砦でご乱行♥』を見てこの映画の存在を思い出し、この機会に見てみることにした次第です。人間、何がキッカケになるか判りませんよね(そういう問題だろうか)。
実は私は黒澤明監督の映画をマトモに見るのはこれが初めてだったのですが(私くらいの世代だと、黒澤明=昔は偉大だったが晩年は退屈な映画を作るようになっちゃったヒト、という認識の方が強いよね?>誰ともなく同意を求める)、さすがというか何というか、純粋にエンターテイメントとして面白い映画だなと思いました。主役の三船敏郎のカッコ良さとか、緩急のメリハリを上手く付けている演出とかは勿論素晴らしいんですけど、個人的には事実上の主人公である二人の百姓(千秋実・藤原釜足)の漫才っぷりにグッと来ましたね。
この映画で言うところの「三悪人」は、三船敏郎演じる真壁六郎太と、百姓上がりの太平・又七の三人を指しているのですが、太平と又七の二人は「悪人」というよりはむしろ「小悪人」であり、六郎太が「御家再興」という大儀を賭けて雪姫を連れて敵中突破しようと奮闘しているのを後目に、常に「御家再興の軍用金をできるだけ多くせしめて逃げ出す」ことしか考えていないという格好悪い役割を演じています。この両者のギャップが、ちゃんとコメディとして機能している辺りは興味深かったです。
また、この二人の「金を持って逃げ出そうとする」行動が様々なトラブルを引き起こし、結果として物語を牽引する大きな力となるという話の作り方も、よくできていると思いました。この辺、往年の「GS美神」の横島にも通じるモノがあるのかも。
他にも、唐突に始まる敵方の武将との一騎打ちシーン(でも素晴らしくカッコ良くて燃えるので許せる)とか、これまた唐突に入る「火祭り」での集団ダンスシーン(ダンスシーンの展開の唐突っぷりと人海戦術で迫力を出す手法は、私の中では既にインド映画のソレに匹敵するモノがあると評価)などの見所も多く、2時間以上飽きることなく楽しめました。
「隠し砦の三悪人」は、本来「時代劇」が持っているパワーを感じることができる、誰もが観て楽しめる映画だと思います。こういう映画観てると、「時代劇ってやっぱり面白いじゃん」って思えて来ますよ。
椎名氏が「MISTER ジパング」で表現したい戦国時代の格好良さのエッセンスは「隠し砦の三悪人」から引用された要素もあると思いますし、何より椎名氏が「隠し砦の三悪人」(および、「七人の侍」や「用心棒」などの黒澤明作品)を大好きなのは間違いないと思いますので、機会があれば観てみることをオススメする次第です。
少なくとも、「ホアー! 小池さん」よりは沢山の人に面白さが判っていただけるかと(比較対象誤り)。
お知らせ:
12月中旬頃から、当サイトの年末恒例キャラ活躍投票企画「Conventional Wisdom」の MISTER ジパング版を開催したいと思っています。
ただいま準備していますので、もうしばらくお待ち下さい。
イ エー!(イとエの間に微妙な溜めを作りつつ挨拶)
というか、当サイト的に一番推してる(はずの)椎名高志センセの作品「MISTER ジパング」のコミックス2巻が 11/18 に発売になりましたが、皆様方におかれましてはもう購入致しましたか?
サンデー51号の「MISTER ジパング」の扉絵の煽り文句には、「読まないと信長が君の家に行くよん!
」という、なんか戦国の覇王・信長様を、秋田の民俗行事・なまはげと同列に扱う、信長にとってもなまはげにとってもどっちも不敬極まりない宣言文句が書かれており、更にはそれを受けて『コミックスを買わなければ家に椎名バージョンのラブリーな殿が来るのか! じゃあ買わない!』というツッコミがサンデー系サイトの掲示板を駆けめぐったりした模様ですが、その甘い誘惑にめげずにちゃんとコミックスを買いましたか? 買いましたよね?
で、私もコミックス2巻を買って読みましたが、やっぱこのマンガ面白いですね(今更)。
コミックス2巻が収録されているエピソードをリアルタイムで読んでいた頃は、どうもこのマンガの面白がり方のコツが掴めなかったというか、作者が意図しているところがイマイチ不明確で先行きが読めなかった(日吉が侍になりたがる理由が不明瞭なままとか、信長が日吉を気に入る過程の描写が弱いとか、安易に歴史ファンタジー路線に走ると「戦国時代」を舞台にした意味がなくなるのではないのか、など)こともあって、作品のツボを把握するのに苦労していた覚えがあります。この頃にここに書いた「戦国とんち番長説」とか「信長ヒロイン説」とか「日吉ストックホルム症候群説」とか「萌え女子キャラ待望論」などを読めば、当時の私のこの作品に対する戸惑いが現れているのがおわかり頂けると思います。
いや、ウソですウソ。別に戸惑ってなかったです。ただこのマンガをネタにして面白がってただけだったです。生まれてすみません(自己完結)。
もっとも、この当時に抱いていたこの作品に対する疑問点は、コミックス3巻以降の展開(特に「戦争の猿たち」〜「傷だらけの天使たち」辺り)、および椎名先生のホームページ上での「完成原稿紹介速報」でのコメント等によってほぼ(私の中では)解消されており、その辺を踏まえた上で改めてコミックス2巻を読んでみると、当時とはまた違った感想を持つことができました。
例えば、当時私が最も疑問視していた「日吉が侍になりたがる理由の描写」については、その後の展開で「自分にできないことをできる力を持つ信長を助けたい」という明確な理由付けが作られたことにより、「まだこの段階では、日吉は自分の欲求に明確な『名前』を付けることができていなかったのかも知れない」という形で解釈することも可能ですし、それより何より作者のサイトでも、当時の日吉については「信長と秀吉の関係はカリスマロックスターとそのファン上がりのジャーマネみたいにならんかなと思ってたんですが、なかなか思うように動かせなくて
」と白状して下さっているので、「ああ、やっぱりこの時期は作者も日吉の扱いに悩んでいたのだな」と納得することができました。
「トガリ」や「ナズミ@」もそうでしたけど、やっぱ作者のサイトで作品に対する所感を作者自身が述べて下さっていると、こちらとしても「どういう意図でこの話を作ったのか」が把握しやすくなるので、作品の理解に大いに役立ちますね。
ですので、この世にあまねく全てのマンガ家は、さっさと自分のサイトを作って世にアピールするべきだと思いました(わがまま)。
あとこの時期で印象的だった出来事は、私のような「GS美神」の頃からの古参男性椎名ファンが「MISTER ジパング」に対する評価を決めかねているその一方で、女性読者――特に、少年マンガを題材にした女性向け同人界隈で活動している、ホンモノな方々――のファン層の存在が顕在化したことでしょうか。
「GS美神」の頃にも女性向け同人サークルはいくつか存在していましたけど、「MISTER ジパング」の場合は女性向け同人サークルの方が明らかに数が多くなりそうな勢いです。
今度出たコミックス2巻においても、「表紙の折り返しに載っていた4コママンガの3コマ目で『あ、あのー』と言ってる殿に萌え!」とか「殿の太股の露出っぷりが! 露出っぷりがモウ!」とか叫んでいる同人系女子読者が急増中との噂もあり、この調子で行けば来年の春以降の同人誌即売会界隈でのジパングの大躍進も期待できるかも知れません。やおい限定で(結局)。
かつてながいけん氏は「神聖モテモテ王国」の中で、三国志ジャンルが同人少女の格好の餌食になっていることをネタにして『うっかり歴史に名を残すと恐ろしいにゃー
』と語っておりましたが、信長や日吉もついにその毒牙にかかる時が! ああ、椎名バージョンの信長があんなにカワイイばっかりに! 「女みたいな顔してやがるクセに」とか! 「でも、体はイヤがってないぜ」とか! 「これからはオレがオマエを守ってやるよ」とか! 言われてしまうハメに!(←妄想しすぎ)
あと、「MISTER ジパング」2巻と一緒に発売されたコミックスの中で、サンデー連載中のバレーマンガ「リベロ革命!」の4巻が異様に面白かったので、この場を借りて個人的にオススメしておきます。
「リベロ革命!」4巻には、かつてサンデーで連載されている時に大盛況を巻き起こし、このマンガのサンデー内でのポジションを「新人マンガ家がサンデーの編集方針に沿って作ってるスポーツマンガ」から「サンデーの中堅を担う新進気鋭の作家が描くスポーツマンガ」に押し上げた(オレの中で)、ママさんバレー監督編が掲載されています。チームの中に萌え新妻・紀子さん(24)を配するなどのキャラ造形・配置の巧みさもさることながら、何よりも「行く手に次々と立ちふさがる強敵に対し、一見奇抜ながらも筋の通った理論に基づいた戦略、そして溢れるガッツとド根性を武器に、要(主人公)とママさん達が果敢に立ち向かっていく」という、スポーツマンガとして極めて正しく美しいストーリー展開を繰り広げており、読んでいて素直に楽しめます。
特に、対戦相手の元中国ナショナルチーム所属のアタッカーが繰り出す凄まじい威力の攻撃を、「レシーブでなら世界のエースのボールも上げてみせるわ!
」という台詞と共にことごとくレシーブして行く薫さん(48)の姿は、もはやカッコイイという次元を通り越した神の領域にまで達しており、読んでて血が滾(たぎ)ること請け合いです。
更に、巻末に付いてるオマケの4コママンガも秀逸で、作者のユーモアセンスの高さを感じさせてくれます。
萌え新妻な紀子さん(24)が「最近ちょっと夜が激しくて……」とかいう台詞をポロッと言ったりする4コマを読んでいると、なんかこう「ああ、こんなロリっぽい顔したかわいい新妻さんが、本編に出てきたあのメガネのダンナに夜泣きさせられているとは! あのダンナ、子煩悩でおとなしそうなマイホームパパみたいな淡泊な顔しやがって、裏ではそんなことを! やる時はやる奴なのか! 頑張れ大将! やる気マンマン!」とか妄想が浮かんじゃってもう大変! 血が滾りますよ!(←妄想しすぎな上に発想がオヤジ的)
お知らせ:
現在体調不良気味なので、もしかしたら来週も更新が遅れるかも知れません。
カラダは大切にな!(言うのは簡単です)
ラブひな!(挨拶)
というか、先週のマガジンの「ラブひな」は、誰がなんと言おうがありゃ絶対最終回だぜ最終回! 80年代から脈々と受け継がれる『世間から隔絶された世界の中で永遠に続くモラトリアムを賛美するダメ青春ハーレムマンガ』の王道を歩んでいた「ラブひな」の主人公が、「オレにはやりたいことがあるんだ!」と叫びつつ並みいる美少女=主人公がモラトリアムであり続けられる世界をやさしく守り続ける守護天使達の制止を振り切って海外に旅立つという展開は、エデンの園の如き永遠の楽園での生活から脱却して外の世界へ向かうということであり、これ即ちモラトリアムからの脱出を意味するのであります! 世の中のあまねく全てのモラトリアム賛美マンガの主人公が目指すべき究極の目標が「モラトリアムの否定→主人公の社会性の回復」である以上、主人公がドタバタエロコメディチックな楽しい毎日を過ごすことが出来る「約束の地」・ひなた荘を、ようやく相思相愛の関係になることができたかわいい彼女を置いてきぼりにしてまで脱出したってことは、これ即ちモラトリアムの否定! 「このままずっとこの楽しい時間が続いたらいいのに」と囁き続ける守護天使達の誘惑を、主人公は意志の力で断ち切ることに成功したのです! これぞまさしく「世界を革命するチカラ」であり、例え女が泣いてすがっても、男には旅立たなければならない時があるのだ! ってことに、ついに主人公は気付いたんですよ! キャーイカスー! シビレルヨネー!
これを最終回と言わずとして、何を最終回と呼べばいいのか!
とか、毎日毎日マンガの話題で盛り上がってますか?
こちらは、椎名高志ファンホームページ C-WWW ですが。
相変わらず更新情報ページがサイトの趣旨とは全然関係ない内容ばかりで、大変に申し訳ない。
まぁ実際問題として、「ラブひな」は、もはや主人公の景太郎が閉塞的な作品世界の環境内に納まれきれないレベルにまで成長しちゃった以上、連載を今後も継続していく為にはこういう展開(=作品世界からの主人公の放逐)になってしまうのもやむを得ないでしょう。個人的には、無理にラブコメ的な展開を続けず、一度物語を終結させて物語を再構築するという選択をした作者とマガジン編集部の判断は妥当なものだと思います。私個人としても、もう「このマンガでオレが見たいものは、これまでの展開で全て見せてもらった」と言って良いほど、このマンガには満足させて頂きました。率直に今の気分を申し上げると、「後は野となれ山となれ」という感じです。(←本当に満足しているのか)
ああ、かつて週刊少年マガジンに載っていた「AIが止まらない!」の第一話を読んだ時、『絵が下手な「ああっ女神さまっ」の下位互換マンガだよなぁコレ』としか読後の感想を表現しようがなかった程のアレでナニなマンガを描いていた人が、まさかここまでやりおるようになろうとは!(誉めてるつもり)
「ラブひな」は、80年代のラブコメの定型である「一般社会から隔絶された『何も変わらない』世界でドタバタコメディを繰り広げる」をベースとして、90年代の(「ときめきメモリアル」ブームの辺りから起こった)消費者のキャラ萌え指向に見られる「キャラクターの徹底的な形式化」、およびそのキャラが持つ特性から連想される『読者が持つ既存の物語の記憶』を利用した「物語の徹底的な形式化」(早い話が『勝ち気な女の子が泣くとかわいい』パターンみたいなものですが)を押し進めたという点で、90年代後半を代表するラブコメマンガとなったことは間違いないでしょう。
ただこのマンガ、次回からは黒猫を連れた謎の美少女がひなた荘にやってくるところから話を始めるらしいのですが、モラトリアムなダメ主人公を守護する聖域としての機能を既に失ってしまった「ラブひな」は、果たしてラブコメマンガとして中心的なポジションを担い続ける存在であり続けることができるのでしょうか。「日常生活を舞台にしたドタバタコメディの繰り返し」をテーマにした純粋キャラ萌えコミック「あずまんが大王」がスマッシュヒットを飛ばし、その一方で「読者のトラウマを深く掘り下げて泣かせる」手法を開拓したデジタルノベル「Kanon」「Air」が台頭するなど、キャラ萌え業界界隈もポスト90年代を担う新しい波が押し寄せている感がありますが、果たして「ラブひな」はそれに対抗することができるのでしょうか?
「主人公がモテ続けるために作られた、閉塞したモラトリアム世界」を舞台にエピソードを積み重ねてきたが故に、登場人物のほとんどが主人公以外の男性キャラと接触することすらままならない(=この手のマンガにありがちな、「余った男女を適当にくっつける」テクニックが使えない)作品世界になってしまったこのマンガを、今後どう立て直して行くつもりなのか? それとも、アシュタロス編が終わった後の「GS美神」のように、まだ無垢でいられたモラトリアム時代を回想しながら、残った伏線を消化してこのまま静かに幕を引くつもりなのか? この手のマンガの愛好家としては、もうちょっとだけ注目していきたい次第であります。
でもまぁ、個人的には、「ラブひな」は来年の講談社漫画賞を受賞→そのまま連載終了という、以前マガジンに連載されていた『カメレオン』(加瀬あつし氏)と同様の道を辿る公算が強いような気がしますけどね。
赤松健先生の次回作にご期待下さい(ドクロ)。
あとラブコメマンガ絡みでは、サンデーに掲載されていた「ナズミ@」が、サンデー50号で一応完結となりました。
世間的な(というか、ネット上での)評価では、どうも「パソコンから美少女が出てくるマンガ」に対する批判的な視点を最後まで覆すことができず、あまり評価は芳しくないような気がしますけど、このマンガの本質は「パソコンから美少女が出てくるマンガ」ではなく、あくまで「ボクシングをテーマにした青春ラブコメマンガ」であり、そう捉えてみることさえできれば、割と普通に面白いマンガだったのではないか、と思います。
「ナズミ@」が、前述の「AIが止まらない!」(や、最近ジャンプで連載が始まった「りりむキッス」、更にはこの手の作品の源流とも言える「ああっ女神さまっ」など、いきなり美少女が振って沸いて出てきて居候するタイプの話)と決定的に違う点は、「突然出てきたヒロインが、主人公に恋愛感情を持っているかどうか」という部分だと思われます。
「AIが止まらない!」の場合、パソコンから出てくるのは主人公が『理想の恋人』としてプログラミングしたキャラクターであり、それ故に主人公はパソコンから出てきた美少女と最初から相思相愛になれる訳なのですが、「ナズミ@」の場合はパソコンから出てきた美少女は主人公にとってはまったくの他人であり、別に理想の恋人でも何でもないという大きな違いがあります。
まぁ、パソコンから出てきたナズミがいきなり主人公にチューをするという描写はあるものの、このチューはあくまで頭が足りてないナズミが「情報収集」の名目で行うためのチューであり、「いきなりラブ! ああんもう好き好き! 大好きよ!」系のチューとはタイプが異なります。同じ「チュー」でも、「りりむキッス」第一話で描写されたような「男女の間で交わされる、気持ちの良いキス」とは性質が全然異なるのです。
更にサンデー50号の暫定最終話では、ナズミが「情報収集のためのチュー」と「男女の間で交わされるキス」との違いを認識し、そしてその違いに気付いた自分に対して戸惑いを覚えるシーンが出てきますが、実はこの違いの認識(=ナズミに恋愛感情というモノが芽生える)がこのマンガの大きなテーマになっていたりする辺り、上手い話の作り方をするなぁと感心しました。
「チュー」を単なるキャッチーな萌え要素として使うのみならず、作品のテーマに密接に結びつけていたとは! やるなぁ岸センセ!(←面識ないのになれなれしいです)
まぁ、このマンガの欠点は、「パソコンから美少女が出て来ていきなりチューして来るマンガ=美少女キャラ萌えマンガ」という認識を我々読者が持っているにも関わらず、その萌え要素に対する期待に答えることができなかった、という所にあったのかも知れませんね。
ジャンプの「りりむキッス」とかヤンマガの「ちょびっツ」は、キャラ萌え要素に関しては申し分ないポテンシャルをブリブリ発揮しており、オレみたいな読者をメロメロにしていますが、「ナズミ@」はどうもこの辺が弱い感じがします。ラブコメマンガとしては堅実な作りをしているとは思いますが、現代キャラ萌えマンガやアニメなどと比較すると、話やキャラの造りが古い印象を持ってしまいます。「こんなんじゃ萌えねぇ!
」という意見が出るのも、まぁ判らなくはありません。
もし本当にキャラ萌えマンガとして一旗揚げたいと思うのであれば、やはりナズミを幼女にしてみるとか、お姉さん風・妹風・幼なじみ風の三パターンのAI美少女を用意するとかくらいはやらないといけないのでしょうか。キャラ萌え要素を満たさなければ評価されないとは、世知辛い世の中ですわい。
作者の岸みきお氏のサイトによれば、「ナズミ@」はサンデー増刊に籍を移して連載が継続されることが決定したそうです。短期連載→週刊で正式連載の道を辿った同期の「トガリ」「タケル道」と比べるとやや寂しい気もしますけど、「ナズミ@」という作品そのものの出来はそれほど悪いものではないと私は思いますので、増刊の方でも頑張っていただきたい所存です。
そして、これで終わってはファンサイトの名折れっぽいので、ちょっとだけ「MISTER ジパング」の話題を。
サンデー50号における「MISTER ジパング」の最大のみどころ:
籐吉郎の平手打ちが、信長さまのアゴの先端にヒット!(おわり)
更新情報:
- 「煩悩の部屋」の創作文集コーナーに、うめさんの作品「T2」「T2完結編」を掲載しました。前回のうめさんの作品「Tの悲劇」の続編に当たるお話です。
以下、作者のうめさんからのメールの転載です:
掲示板のレスに舞い上がり、思わず広げてしまった風呂敷をたたむのに苦労しましたが、ルシオラファンの私は、ここでも性懲りもなく彼女を復活させています。
今となっては、それが良かったのか自分でも分かりません。
話としては今回で完結ですが、ルシオラが復活したという設定は、許されるのならば今後につなげたいと思ってます。
エピローグにある空白の一週間のことなのですが。
という訳なので、この作品への感想を、感想掲示板までお寄せ頂けるとありがたいです。
お知らせ:
「MISTER ジパングベストカップルコンテスト」の第2ステージは、コミックス2巻が 11/18 に発売されるのを区切りとして、11/17 頃に締め切る予定です。
11/18 頃より、新たに第3ステージをスタートさせます。
(サンデー49号の読者アンケートより)
質問:
今後の「トガリ」に、どんなストーリー展開を望みますか?
選択肢1:
いつきとのほんわかラブコメ
ほんわかラブコメ! ほんわかラブコメ! 「トガリ」でほんわかラブコメ!
第一話のラストで、全裸の主人公をヒロインの前に平気で立たせる「トガリ」でほんわかラブコメを!
ヒロインがシャワーを浴びているところにウッカリ主人公が迷い込んでしまって「いやーんエッチー!」と悲鳴を上げられる展開でなければならないようなところで、逆に主人公の全裸をヒロインの前に惜しげもなく晒すような「トガリ」で、よりによってほんわかラブコメを!
アンタ達は、このマンガを本気で「トガリデイズ」にするつもりなのですか!?(挨拶)
というか、お久しぶりです。
こちらは、椎名高志先生の作品に登場するキャラ達を、もはやラブコメを通り越して常に性対象として見ているような人達が集う、椎名高志ファンホームページ・C-WWW です。
ウソ(どこかが)。
それはそうと、以前サンデー36号〜42号に渡って短期連載され、一部読者(オレ含む)に高い評価を受けていた「トガリ」(作者:夏目義徳氏)が、ついにサンデー誌上に帰って来てくれました。
再開後の第一話となるサンデー49号では、これまでのあらすじをダイジェストで紹介しながらも、「正義」「邪悪」「力」といったこの作品のテーマとなり得るであろう要素もエピソード内部に組み入れて展開させており、「このマンガはこれから何をテーマとして話を作ろうとしているのか」を判りやすく提示している点は見事だと思います。
更に今回は、「幼い頃に刑事の父を殺されるという過去を持った、正義感は強いがそれ故に無茶をしがち」という設定の女子キャラ(多分本編のヒロイン)・いつきが、全裸で自宅の庭に突っ立っている統兵衛といきなり再会するというシーンをラストに持ってくることにより、これから週刊連載ペースでも継続してエピソードを紡ぎ出せるようにする為の布石まで打つという徹底っぷり。ここまで申し分のない「第一話」は、なんか凄い久しぶりに読んだような気がします。
「MISTERジパング」の第一話は「読み切りとして読んでもそれだけで成り立つ程面白い」タイプでしたが、「トガリ」再開第一話はそれとは違った意味で完成度が高く、「早く続きを読みたい」という気持ちにさせてくれますね(注:今週の更新日記で「MISTERジパング」について触れているのはここだけです。ファンの皆様お疲れさまでした)。
と、期待に違わない「トガリ」再開第一話を読んでいい気分になったところで、巻末の読者アンケートの設問に「いつきとのほんわかラブコメ」とかスゴイことがさりげなく書かれていたので、当方としてはかなり驚きましたよ。
最初のうちは、「トガリ」のテーマ性と明らかに食い違っている(としか思えない)「ほんわかラブコメ」というタームを見ながら、「『ほんわかラブコメ』っていうと、やっぱ統兵衛がなつきに『お前の罪をよこせ!
』とか言ってチューする『トガリ@』なマンガになったり、いつきとエマ様が統兵衛を取り合う『トガリデイズ』なマンガになったりするのか? そりゃスゲエよ! 笑わせてくれるゼ!」とか妄想して一人でゲヘゲヘ笑っていたのですけど(←最低)、その後にふと「以前サンデーに短期連載されていた時に、作者の夏目氏がサイト上で『人気が出なかったので、路線変更を余儀なくされそう
』と愚痴をこぼしていた」のを思い出し、「これはもしかしたら笑い話じゃ済まなくなるのではないか? 今後のサンデーの読者アンケートによる人気次第では、ヘタすると『トガリ@』(あるいは『トガリデイズ』)が現実になってしまう日が来るのではないのだろうか?」と思い直し、一人で妄想してゲヘゲヘ笑いながら恐怖することにしました(←最低)。
読者アンケートで(今回の「トガリ」に対するアンケートのように)マンガの具体的な今後の展開を募集する手法は、現在では主に少年マガジンが積極的に採用しています。
マガジンの読者アンケートの特徴としては、その選択肢の異常なまでの細かさが上げられます。サンデーなどの読者アンケートでは「この連載は面白かったかどうか」を5段階で評価する程度なのですが、マガジンの場合は「この連載に今後どのような展開を期待しますか?」という設問を設け、その選択肢もかなり具体的なストーリー展開が提示されているのが普通です。更に、時には「主人公や敵のキャラクターに使って欲しい武器は何ですか?
」とか「主人公に乗って欲しい乗り物は何ですか?
」など、いくら何でもそこまで読者にアンケートを採らなくてもいいんじゃないか、と思ってしまうような設問まで見受けられます。
雑誌にとって「読者アンケート」は読者の意見を拝聴できる数少ない手段の一つなのですが、マガジンは読者アンケートを「読者の趣向をリサーチする道具」として位置付け、それを紙面作りに徹底活用しているように思えます。
そして、このような細部に渡った徹底した読者の嗜好に対するアンケートの積み重ねが、90年代後半から現在に続くマガジンの快進撃の原動力の一つとなっているのは間違いないでしょう。90年代後半に発生したジャンプとマガジンのトップ交代劇の一因には、「読者アンケート」に代表される読者の趣向を汲み出す手法の違いがあったのは確かだと思います。
で、その一方、我らがサンデーは、「サンデーは、他誌に見られる『掲載位置=人気』の図式は当てはまらない」とか「サンデーは作家本位で、他誌よりも比較的描きたいものを描かせてくれる」とかいう伝説が広く知れ渡っていることを見ても判るように、これまで「読者アンケート」がどこまで活用されているのかはかなり謎な部分が多かったと言えます(掲載位置に付いては、かつてサンデーの巻末を長い間飾っていた不朽の名作「拳児」(松田隆智/藤原芳秀)の影響により、「巻末=不人気」というよりはむしろ「巻末=名誉職」という意味合いが強くなったのが大きいと思いますけど)。
しかし、今週連載が開始された「トガリ」(および、先週から始まった「タケル道」)においては、サンデー49号のアンケートで具体的な「今後の展開」を投票させていることからも判るように、かなりアンケート主導でストーリーを作っていくという意味合いが強いように思えます。
これまでのサンデーではあまり行われていなかった「最初に短期連載をさせて読者の様子を見る」という手法と併せて、今回の「トガリ」「タケル道」(および、「ナズミ@」)は、サンデー編集部としても従来とは違った新しい作品作りのテストケースと位置付けているのかも知れませんね。
と、まぁ、サンデーがアンケート結果を重視しつつある姿勢は何となく伝わってくるのですが、でもそれと「アンケート内容に従えば、本当に作品が読者にとって面白くなるのか」というのは、また別の問題だと思います。
上記のアンケート手法で見事にトップを取ったマガジンも、なんか今年に入ってからは、ついに「人気作品の連載が長期化して疲弊・終了して行く一方、それに変わる新人がなかなか育たない」という、まるで90年代中盤のジャンプみたいな状態に入ってしまった模様であり、ネットでは既に「発行部数はまだマガジンがリードしているが、実売部数では既にジャンプに抜かれているのではないか
」という噂まで飛ぶ始末です。この辺、リサーチだけではままならない雑誌作りの難しさが伺えますね。
結局、マンガ描くのは最終的には読者でも編集者でもなくマンガ家であり、作品が面白くなるかどうかはマンガ家次第なのだ、という事になるのでしょう。
そして問題の「トガリ」のアンケートなのですが、設問そのものについては、前述の「いつきとのほんわかラブコメ」以外は極端におかしい(設問者の頭が)ものはなく、また「トガリ」に対してアンケートを出すようなコアなファンが「ほんわかラブコメ」を選択するとはあまり思えないので、多分「トガリ」そのものがラブコメマンガ化することはないと思われます。
まぁ、話の展開上、「正義」「力」というものに対する認識がまったく異なる統兵衛といつきの間で何らかの意識の接近が起こり、そこからラブにひなるような展開になる可能性はあると思いますけど、だからと言ってもそれが「ほんわかラブコメ」につながるかと申せば、そんなことはまず絶対にないでしょう。
如何に私が日頃から「ラブひな! ラブひな!」と呟きながら道を歩いているようなラブコメファンと言えども、いつきのシャワーシーンを見てドギマギするような統兵衛なんか見たくないッスよ! そういうシーンは、作者じゃなくてむしろファンが作った同人誌がやるべき仕事ですぜ! エロ同人! エロ同人!(←病気)
しかし、こういう選択肢を用意したということは、「今、ラブコメマンガに対してどのくらいニーズがあるのか」という事象に対して探りを入れている意向があるのは、まぁ間違いないような気がします。「タケル道」に対する質問にも「チイちゃんとのラブコメ」という、なんかこれも「タケル道」というマンガの本題からすると的を外していると思しき選択肢がありましたし(「タケル道」のカップルの基本は、どう考えても華山×有沢です)、更にはラブコメ一直線な短期連載マンガ「ナズミ@」なんてマンガを繰り出して来る辺りからして、サンデーが再びラブコメジャンルに対して興味を示している様が伺えます。
「読者アンケート」は、雑誌にとっては読者の意識を調査するリサーチを行う道具という意味合いがありますが、逆に我々のような一般読者にとっては「雑誌が何を知りたがっているのか」を推理する楽しみがあります。
「些細な情報から無限に妄想を働かせて『真実』を推理する」遊びが大好きな方には、週刊少年マンガ各誌の読者アンケートは良いネタとなること請け合いですので、毎週読者アンケート欄を読みながら、「ほほう! つまり、サンデーは掲載マンガの更なるラブコメ化を模索しているのですな!
」と一人で勝手に妄想してゲヘゲヘ笑ってみることをオススメする次第です(←最低)。
参考資料:
と学会会誌6「少年マガジンアンケート大研究」(大沢 南氏)
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