「お話をきかせておくれ」(挨拶)
プリンセスチュチュ
放送地域限定の話題で大変に申し訳ないのですが、キッズステーションやテレビ神奈川などで現在放送されている「プリンセスチュチュ」というアニメが、もう面白くて面白くて辛抱たまりません。近来希に見るくらいの勢いでハマりそうな予感。
この作品、基本的には「普段はドジな主人公が、不思議なペンダントの力で『プリンセスチュチュ』に変身し、"心"を失っている憧れの先輩=王子様を守るために戦う
」という、いわゆる魔法少女モノのフォーマットに沿ったお話です。が、決してそれだけの話ではありません。
このドラマのどこが面白いのかと言うと、例えば:
- 物語は「ドイツの地方都市をモデルにした街にある、バレエを教える全寮制の学園」が舞台。
童話のイメージを持った魅力的な作品世界を構築 - 物語の中心となるのは、タイトルからも推測できる通り、勿論クラシックバレエ。作品内でのダンスの描写の質の高さは、バレエの経験者を「細かい部分までよく表現してる」と感心させる程
- その一方で、バレエを教える教官が猫だったり、主人公がアヒルに変身してしまったり、主人公に不思議なペンダントを渡して「お話をきかせておくれ」と謎めいた台詞を喋るおかしな老人が出てきたりと、不可思議な要素も数多い。
童話的な世界観に彩られた舞台と相まって、「現実とおとぎ話が入り交じった街での物語」という設定を視聴者に自然な形で提示している - そして、物語世界の奥深さと脚本の巧みさによって、ただ漫然と「観る」だけではなく、作品にちりばめられた謎について色々と考えたくなって来る「能動的な楽しさ」を視聴者に与えることに成功している
など、様々な要素を上げることができます。
単なる「子供向けアニメ」の枠を越えた、作り手の意欲と志の高さを感じさせてくれる作品だと思います。
いやもう、今年の夏に始まったアニメは、ヒロインのロリ少女の頭があまりに足りていないため、見ているうちに「いくらカワイイからって何でも許されると思ったら大間違いだぜ! このガキ風呂に叩き込め!
」と殺伐な心境になって来ること請け合いの「円盤皇女ワるきゅーレ」とか、キャラはカワイイしストーリーもひねくれてて面白いんだけど、でも作品そのものがオタク受け方向に閉塞してしまっているために「こんなものばっかり見てたらダメなオタクになっちゃう!
」と大変にいたたまれない気分になる「陸上防衛隊まおちゃん」など、そんなのばっかりだったのですが、この「プリンセスチュチュ」のおかげでかなり救われた気分になれました。
――とは言え、今はこんなご時世ですので、クラシックバレエの世界に夢とロマンを求める小さなお友達だけではなく、「普通に面白いアニメ」以外の何らかの要素をお求めの大きなお友達に対しても訴求力が要求されるのは、皆様もご存じの通り。
勿論、「チュチュ」はその辺も抜かりはありません。
- 往年の吾妻ひでおが描くロリータ少女をちょっと現代風にしたみたいな、見てると何か妙にムズムズして来るデザインを施されたキャラクター達!
- そんなグッと来るデザインで描かれた少女達が、最高級の作画技術でバンバン動く姿を拝めるぜ!
時々止め絵になったりするけど気にするな! それは演出の一環だ! - 主人公のあこがれの存在であるみゅうと先輩は、屋根から小鳥を助けるために、ワイシャツ一枚はおっただけのフルチン姿で窓からダイブを敢行するような、謎の(頭の中が)美少年! どうかしてるよね!
- そして、彼にそんな格好をさせてベッドに寝かしつけた挙げ句、「おまえは俺のいうことだけ聞いていればいいんだ!」と彼を束縛するような台詞しか言わない美少年・ふぁきあ先輩も登場! 美少年二人のあやしい関係が醸し出すお耽美っぷりに酔いしれろ!
- 更に、主人公がプリンセスチュチュに変身して戦いに挑むクライマックスシーンでは、『花のワルツ』を踊りながら花を辺り一面に大量にまき散らしたり、竜巻を発生させながら『白鳥の湖』を激しく踊ったりと、従来のクラシックバレエのイメージを超越した演出過剰なダンスバトルを大展開! 肉体を駆使して美しく舞い踊る、華麗かつ過激なバレエダンサー達の熱い心を感じろ!
つうか、カワイイだけが取り柄の女の子が魔法の鈍器を振り回した挙げ句に珍妙な光線技を発射して敵を八つ裂きよ☆彡 みたいな、そこらへんの魔法少女モノとは気合いが違うんだよ!
――何というか、このアニメの大半は前述したようにとても素敵なもので出来ているのですが、残った部分はこんな変なのばっかりで出来ている、と思ってくださって構いません。ここまでヘンな要素を全面に意図的に押し出すTVアニメは、「少女革命ウテナ」以来かも。
私などは、こんなシーンが出てくる度にTVの前でガッツポーズをしてしまう始末(末期)。
そういう方面でも十分に楽しめる作品なので、そういうのが大好きな人ならオススメだと思いました。
(*・◇・*)
ワネットちゃん祭り
あとここはアニメの評論サイトではなく椎名高志マンガのファンサイトなので、そういう話題も取り上げないといけません。
幸いにして今週はネタが多くてありがたいですが、時間がないのでとりあえず「一番湯のカナタ」の連載の方の感想を。
先週発売のサンデー38号より、ワネット姫という新キャラクターが登場しました。 「カナタのフィアンセ」というベッタベタな設定のキャラではありますが、性格や行動に相当クセがあって面白そうなキャラだなぁ、というのが第一印象です。
このワネットというキャラ、38号が発売される2週間前に椎名氏のサイトでその存在が明らかになってからというもの、「ロリっ娘版美神令子」とも言うべきフォルムを持ち、そのくせ男に自分から迫る大胆さを持ち合わせた彼女の存在はファンの間で一気に話題に上がり、彼女に対する期待感は雑誌発売前から急上昇。セイリュートに続く新たな美少女(というか幼女)キャラの登場か?! との期待を受けながら、満を持しての登場と相成りました。
そんな感じで、ファンからは萌えキャラとしての活躍が期待されるワネットなのですけど、このマンガにおける彼女の「役割」として期待されているのは、萌えとかいうことよりは、むしろ作品内の人間関係に新しい変化を起こし、作品そのものを活性化させるところにあるのではないかと思われます。
特にカナタとユウリの二人にとっては、彼女の参入は大きな力になるはずです。
皆さんも感じていると思いますが、カナタとユウリの二人は、本来ならば主人公格であるにも関わらず、「事実上の主人公」の立場にいるリョウに色々な意味で依存しっぱなしな関係が確定してしまった為、今ひとつ目立てていない印象があります。
カナタの場合は、日常生活から「ロイヤルガード」に至るまで、色々と面倒を見てくれるリョウに頼りっきりな描写がなされている場面が多いですし、ユウリに至ってはそのリョウとも人間関係的な接点があまりないため、ストーリーの中での出番が少ない印象が強いです(本来なら彼女をいじる役回りのリョウの親父があまり出てこないのも、彼女が目立てない原因の一つのような気がしますが、それはさておき)。
そして、そんな中で登場したのがワネットです。
基本的に事なかれ主義っぽい性格のカナタにとって、存在そのものがトラブルメーカーであるワネットは明らかにいること自体が迷惑であるのは間違いないのですが、でもカナタにとってワネットは幼なじみであり、また「親が決めた婚約者」でもあるので、来てしまった以上は放っておく訳にも行きません。また、普段なら頼りになるリョウも、ワネットに対してはカナタと同じトラブルを被る側に立ってしまっているので、彼に頼る訳にも行きません。
なので、カナタは今後ワネットが引き起こすであろうトラブルに苛まれるようになり、そのトラブルに対して自分で対応しなければならないようになるはずです。
実際、今回のエピソードの大筋はそんな話でした。今回のエピソードでは、カナタはワネットが引き起こしたトラブルを自分の力で解決しようとして能動的に動くという、これまではあまり見られなかった行動を自発的に取った点に注目するべきです。ある意味、このエピソードでカナタは「成長」したと言えるでしょう。
またユウリにしても、今回のエピソードでは恋に恋するおませなワネットちゃん♥を同性の先輩として諫めたり、ワネットとカナタやリョウの間に立ってワネットの立場をフォローしたりと、これまでに比べるとこちらも能動的な行動を取る場面が見られました。これもまた、ワネットという新キャラの投入のおかげと言えましょう。
ワネットの参入によって、これからカナタとユウリのキャラクター性に新しい側面が生まれていくことを期待したいです。
――という訳で、ワネットちゃんはマンガ内においてとても重要なキャラになりそうなのですが、でも実際問題として「彼女が王国の王妃として相応しいかどうか?」という点を考えると、今のところは激しく疑問です。
人格にかなり問題があるのは勿論なのですけど、それ以上に王妃となるべき人間としては名前の縁起がとても悪いんじゃないのだろうか? とか思うのですがどうか。
彼女の名前の由来は「ベルサイユのばら」のマリー・アントワネットからなのは作者のサイトでも公言していますが、性格的な面においてもアントワネットをモデルにしていると推測されます。権力欲が強くて人の迷惑を顧みないで浮気性な辺りが特に。
もしこんな女性が王妃の座に就いたりしたら、治世のことよりも宮殿内の女同士の権力争いの方に血道を上げるようになり、民衆の事などまったく省みないで贅沢の限りをつくし、ダンナをほったらかして外国の貴族の色男と浮気を繰り返し、「パンがなければ(以下略)」みたいな貧乏人は麦を食え的発言を行って王家への信頼感を失墜、それをきっかけに民衆の怒りが爆発して革命が勃発、最期は怒れる群衆の手によって投獄されてしまい、王族の人間もろとも断頭台の露と消えてしまいかねません。
私が思うに、カナタの両親は、ワネット姫を許嫁にする前にまず「ベルサイユのばら」を鑑賞し、『こんな名前の女性を王子の嫁にしたら国がダメになる』という歴史的な事実を学ぶべきだったと思われます。
特にカナタの母親なんかは、地方の民放ローカル局の再放送か何かで『ベルばら』を観てるはずなんですよ。ユウリくらいの年頃の子供を持ってる年代の女性だったら、『ベルばら』は絶対観てるはずです。カナタの星で「ベルばら」が放送されていたかどうかは判りませんが、テレビ神奈川でも再放送されていたくらいなので、多分そっちでも放送されていたと思いますよ?(されてません)
私にとって「ベルサイユのばら」というアニメは、「時代に翻弄されながらも自分の愛や信念を貫いたオスカルやアントワネット達の人生ドラマ」というよりも、むしろ「ベルサイユ宮殿で繰り広げられる、アントワネットと貴婦人達の口汚い罵り合いを楽しむアニメ、という印象が強いのです。なので、ぜひワネット姫におかれましても、そういう方面での活躍を期待したい所存。
リョウを巡ってワネットとサヤカが猛烈な口喧嘩をするような展開になったら面白そうだと思いません?(無責任)
更新情報:
- 「煩悩の部屋」の創作文集のページに、狐の尾さんの作品「GS美神 ひかり」の第5話を掲載しました。
以下、狐の尾さんの作品解説です;
脇役、小役とわいえ、数多くの人間が出てくると話がややこしくなります。
でもやはりある程度のりありてぃを保つため、レギュラー陣を安っぽく使いたくない、と思ったりしています。今回ちらっと出てくるなつかしのあの人、まだ本編合流までは時間がかかりますが、
ひと回りもふた回りも成長した彼女をいつか書きたいと思っております。そしてアリマトを持ったテノマールと再開するヒカリ、このあたりの絡みがキーとなる・・・? といいなあ、なんて思ってます。
- 「GS美神・極楽大作戦!!」関連リンク集に、井汲景太さんが公開した Cna-BBS 過去ログサイトへのリンクを追加しました。
まだ「2ちゃんねる」がなかった頃、「GS美神」に関する議論や感想を専門的に扱っていた最もメジャーな掲示板が、この Cna-BBS でした。当時の読者の生の意見をいつでも読める環境を提供することは、歴史的に見ても価値があることだと、私は思います。
井汲景太さん、およびFROMさんのご尽力に感謝。
椎名作品トピックス
「一番湯のカナタ」コミックス1巻が 9/18 に発売
いよいよ「カナタ」の第一巻が発売されます。収録される話は、おそらく第1〜9話くらいまでになるのではないかと思われます。
とりあえず買え。
「GS美神・極楽大作戦!」ワイド版の発売が決定
椎名氏のサイトの情報によれば、我らが「GS美神」が分厚いワイド版として再販されるそうです。
前に出た「椎名百貨店」のワイド版と同じボリュームで発売されると仮定すると、全部で13巻くらい出る計算になります。サンデーコミックス全39巻の物量は伊達じゃないってことですか?
君の部屋の本棚の残りスペースに挑戦だ! オレは負けそう(ヘボ)
「椎名百貨店」の新刊も出す気はあるらしい
ただし、こちらの方はまだ当分出ないっぽいですね。
「カナタ」がアニメ化されるタイミングを見計らって一緒に出そう、とか狙っているのでしょうか?(妄想)