2017年09月一覧

「ムシブギョー」ハーレムエンド記念 サンデー43号感想

保安官エヴァンスの嘘

 巻頭カラー。すっかりこの作品はサンデーの新しい顔になりましたね。
 そろそろアニメ化とかしないんでしょうか(気が早い)。

 顔と言えば、「ファンの夢を壊さないために、わざと空撃ちしてうやむやにしたんでしょ?」って頬を紅潮させながら言ってるフィービーの表情がすっかりできがってるというか、完全にエヴァンスに惚れてるような感じに見えるんですが、これは自分の思い込みに過ぎないのでしょうか(過ぎないのでは)。

 フィービーって、エヴァンスのことが好きとかそういうところとは別に、エヴァンスのガンマンとしての腕をプロフェッショナルとして信用しているところは好感持てます。今回はそれがいい方向に転がった格好ですね。

キングオブアイドル

 ちんこ回(要約)。いわゆる「アイドルマンガ」の見せ場であるまほろのライブが終わった後は、このマンガ独自の見せ場であるところのちんこ回をキッチリ入れてくれるところは、ホント素晴らしいと思ってます。

 前回のライブでは瀬奈さんとの共同作業の結果生まれた愛の結晶であるところの「オブジェクト」を盛大に撒き散らかしたので、もしかしたらオブジェクトを沢山出したからスッキリしてちんこが勃起しなくなるのかな? とか勝手に予想していたんですが、そうではなかった様です。
 これにより、オブジェクトは性的エネルギーとは違うってことが明らかになりました。良かったです(良かったね)。

 あと今回初登場した2組の霧ヶ峰ミサというキャラですが、『エナジードリンクをオーバードーズして目を血走らせながらガンギマってブルブル震えている』という、一般的なアイドルの定義から著しく逸脱している人物であることをわずか一コマで判らせる圧があるところがステキだと思いました。このマンガにおける「アイドル」の懐の広さを伺わせるに十分です。
 でも彼女、アイドルとして輝くよりも前に、人間としてだめになってしまいそうな予感がします。というか、もうダメになってますね。霧ヶ峰ミサ先生の次回作にご期待下さい。

初恋ゾンビ

 「なんと愚かだったか! こっちの方が全っ然最高じゃ~♡
 マンガ本編の方が全力で指宿と江火野のカップリングを推進して来ており、何というかこう「公式が病気」と言わざるを得ない状況になって来ました。

 文化祭の時は「江火野に自分は『江火野と同じ普通の女の子』であることを告白することで、自分も江火野と同じくタロウのことが好きだということを遠回しに宣言する」ことを匂わせる、百万乙女の恋のバイブル的な展開が始まるのかな? と予想していたのですが、まずはそこに至る前に「『普通の女の子』としては色々とおかしいところがある指宿に、(少なくとも指宿よりは普通の女の子である)江火野と仲良くさせることで、『女の子』とは如何なるものであるかを学ばせる」というステップを踏むことにしたのではないかと理解しました。

 というか指宿くん、今回の件で完全に江火野ラブになったっぽいので、学園内ではそろそろ指宿×江火野が公式カップリングとして認められる展開になったりするのではないかと思ってます。江火野さんなら指宿くんのことを安心して任せられます。お幸せに(おわり)。

ムシブギョー

 最終回はまさかの孕ませハーレムエンドに。
 自分、孕ませハーレムエンドで終わるマンガを読んだのは、多分「少女達の茶道ism」以来ですよ…(と言われても)。

 前回、常世の蟲から「奈阿を幸せにしておくれ」と言われた仁兵衛が「はい!お約束します!」と答えたので、仁兵衛はついに蟲奉行様と結婚する覚悟を決めたのかな? でも、仁兵衛が絶望しそうになった時に彼を救ったのはお春殿への想いだったよね? それに火鉢も仁兵衛にベタ惚れだったよね? その辺どうするのかな? と疑問だったのですが、それをたった一話で円満に解決するためにハーレムエンドに持ち込んだというところが、実にロックだと思いました(褒めてます)。
 このマンガの中で「妾」の概念が出てきたのはこれが多分初めてなので、その辺が強引さを感じさせなくもないのですが、でもまあ仁兵衛はこういう展開になっても「まあ仁兵衛がやることなら仕方がない」と思わせるだけの魅力を持ったキャラクターなので、それなりの説得力はあると思います。

 あと個人的には天間と壱与のカップリングも好みでした。メカ美少女と死ぬまで添い遂げてもらえるなんてうらやましいなあ。ハーレムエンドもいいけど、個人的には人間じゃないメカ美少女と結ばれるエンディングの方が好みですね(と言われても)。

シノビノ

 吉田松陰大暴れの回。吉田松陰は「正気には大業ならず。武士道はシグルイなり」な精神を体現した人物であることはどうやら史実な模様なので、黒船に乗り込んで乗っ取りを画策し、扇子で水兵の首をバッサリ斬り落とすくらいのことも「吉田松陰ならやりかねない」と納得できるようになりました。

 そしてついにそのベールを脱いだ藤堂平助ですが、彼のやんちゃ気質であるというパブリックイメージを最大限に活かした上で、「やんちゃな態度で人殺す」というシリアルキラーなキャラクターとして設定されているようです。
 彼自身が吉田松陰の攘夷的な思想に共感しているというよりは、単に「先生」の側にいれば楽しく暴れられるからという理由で松陰の側に付いているものと考えられます。

 何にしろ、松蔭が本格的に動き出したことで、このマンガはますます面白くなってきたことに変わりはありません。おそらくこの作品は、「保安官エヴァンスの嘘」と共にこれからのサンデーの顔の一つになり得るのではないかと、個人的には予想しています。これからが楽しみです。

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電子書籍版は9/29に発売


古見さんが通い妻に記念 サンデー42号『古見さんは、コミュ症です。』感想

古見さんは、コミュ症です。

 前にもここに書いたことがあるのですが、自分はこのマンガにおいて、基本的に無口で自分の欲をあまり表に出さない古見さんが、彼女が心を許している只野君に対してだけはその内に秘めていた欲望をさらけ出す様を見るのが大好きであり、そういったシーンを見た時は思わず「古見さんの性欲!古見さんの性欲が垣間見えたよ!」と大喜びしています(最低)。

 今回の「古見さん」は、風邪を引いて寝込んでいる只野君の家(=団地の一室)に古見さんが自ら看病のために出向き、寝込んで動けない只野君に食事を作り、最後には眠っている只野君の手をそっと握って赤面するという、風邪を引いて弱っている只野君相手に古見さんが積極的に甲斐甲斐しく看病する様子にほっこりと萌えることを狙ったお話だったと言えます。

 が、「古見さんが秘めていた欲望をさらけ出す」的な視点から観察した場合、今回のお話は「本当は常に只野君の側に居たい」という古見さんの欲望が丸出しになったエピソードであるとも言えます。
 特に、古見さんが只野家にやって来た時、突然の訪問にあわてて遠慮する只野君に対して無言で圧をかけて家の中に押し入ったシーンにおける彼女の押しの強さっぷりは、明らかに普段とは違う彼女の強引なまでの意志の強さを感じさせてくれました。これはつまり、只野君の前でだけは、彼女は「あなたと一緒にいたい」と願っている本当の自分を見せることができるという現れに他なりません。
 で、お互いに好意を持っている若い男女が一つ部屋の中に入ったら、その後やることは何ですか? そうですよね?
 ですので、このシーンの最後のパタンと扉が閉まったコマに漂うエロさは異常だと思います。あのコマの左隅に「このあと滅茶苦茶セックスした」って例のコラージュを入れたくなったくらいですよ(素直な感想)。

 そして今回のラストでは、「眠っている只野君の手を古見さんがそっと手を重ねる」という、これまた古見さんの欲望が垣間見えてグッと来るシーンが登場しました。
 「只野君にそっと触れる古見さん」の描写はサンデー27号にもありましたが、あの時は只野君に気付かれないように、後ろからほんの一瞬彼の首筋を触っただけでした。しかし今回は只野君が眠っているということもあって、より積極的かつ大胆な「お互いの手を重ねる」という行動に出ました。本当はずっとこうやって重なり合っていたいんですよね古見さん。

 「古見さん」は基本的にはライトなラブコメディなので、オチではなじみがやって来て不意を疲れた古見さんがいつもの彼女に戻って慌てふためいて終わりというギャグで終わりましたが、もしここでなじみがやって来なかったら、古見さんは多分只野君の目が覚めるまでずっと赤面しながら彼の手を握り続けていたことでしょうし、あるいはもっと凄いことをしていた可能性もあります。妄想が膨らみますね!

 最後に、こういう妄想ベースの読み方はあまりに邪道というか古見さんに申し訳ないので、こんな形で妄想を残さない方が良いと思います。すみませんでした(謝罪)。

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コミックス6巻は10/18発売とのこと


おじいちゃんから目を離すな! サンデー39~41号「シノビノ」感想

シノビノ

 『おじいちゃんカッコイイ系スニークアクションマンガ』という新境地を切り開きつつある「シノビノ」。

 この作品、基本的には「ペリー提督が、開国へ向けて交渉するよう依頼する大統領の親書を日本に渡すために来航。その際、沢村甚三郎という忍者が藩主の命を受けてペリー艦隊に忍び込んで探索を行った」という史実に基づいたマンガではあるのですが、でもマンガなので史実を割と大胆に解釈しており、このマンガのペリーは開国交渉どころかガチで日本を侵略する気マンマンですし、一方の甚三郎が受けた命令は「ペリー艦隊の探索」ではなく「日本を侵略しに来たペリーの暗殺」であるという、日米共に実に殺意に溢れたテーマになっているところが特徴です。
 主人公の甚三郎は、普段は割と飄々としているというか、ちょっと抜けているように見えるおじいちゃんなので油断しがちではありますが、彼はリアル忍者なので殺す時は「忍んで殺す」をきっちりと実行できる男であることを忘れてはなりません。

 サンデー39号で「如何にも残忍で強そう」という感じの重要キャラのように登場したジュロームが、その次のサンデー40号では僅かなスキを甚三郎に突かれてあっけなく殺されてしまう展開がありましたけど、これなんかはまさにこのマンガならではの展開だと思います。

 ジュロームは、艦内で誰も気付いていなかった甚三郎の存在に気付き、(甚三郎が艦内に侵入する時に使った)猫の匂いを辿って彼を発見、剣術で彼を圧倒して追いつめるという、極めて優秀かつ強力な剣士であることが伺える描写がなされていました。その一方で彼の立ち振舞いは極めて少年マンガ的でもあり、甚三郎を追い詰めた時にはわざわざ「降参している老人を殺すのは…耳や目鼻を削ぎ落とした後でも遅くないな」と呟くなど、「残酷な性格」という設定そのままなサディスティックな判りやすい言動をしてました。総じて、少年マンガならありがちな行動だと言えます。

 一方の甚三郎は、そんなジュロームの性格を見抜いていたに違いありません。追い詰められて刀を突きつけられているにも関わらず、すぐには殺されないと悟った甚三郎は降参のポーズをしつつ手から時計を出したり携帯食を出したりしてジュロームの注意を引き続け、そして予め酸っぱい携帯食を食べさせていた子牛が吠えて暴れだした時にジュロームがほんの一瞬油断して目を逸らせた時を見逃さず、これも予め用意していたであろう「握り鉄砲」でジュロームのコメカミを撃って一撃で射殺という、実にあっけない方法でジュロームを倒しました。

 これが普通の少年マンガだったら、せっかくジュロームのキャラを立てたんだからもうちょっ甚三郎との戦闘シーンを引っ張ろうとか、負けるにしても殺さずに再登場の機会を伺わせるとかするところだと思うんですけど、実際には甚三郎は真っ当にジュロームと戦うことなく勝利をもぎ取りました。つまりこのマンガが描いているのは「ペリー暗殺を目的に行動する一流の忍者の流儀」であり、忍者の流儀では少年マンガ的な必殺技が飛び交うような映える格闘シーンは必要ないということなのでしょう。

 そして勿論、そういった行動に説得力を持たせる甚三郎の「普段はちょっと抜けているけど、忍者としての気概は本物」であるキャラクター性も魅力的です。おじいちゃん超かわいいです。

 そういった意味においても、この「シノビノ」は、少年マンガ誌に載っている普通の忍者アクションマンガとは趣きが異なっているなと感じる次第です。ある意味、今のサンデーらしいと言えるのかも知れません。
 個人的には、ジュロームはここで散るのが惜しいキャラなので、甚三郎に撃ち抜かれた頭の代わりに切り落とした牛の頭を乗せたゾンビとして復活しないだろうかと思っているのですが、残念ながらそういうマンガではないので望みは薄そうですね…(残念なの?)。

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仙太郎ってちょっと気弱なアンディっぽくない? と思ったけど、あんまりそうじゃなかった