ハーモニー (ハヤカワ文庫JA)
伊藤 計劃 (早川書房) / ¥ 756
最初のうちは、医療監視システム「WatchMe」を体に埋め込むことが普通となった世界を舞台にしたディストピアSFなのかな? と思って読んでいたが、物語が進むに連れて「高度に発達した社会で生きる人間には、『意識』は本当に必要なのか」という哲学的な問い掛けが物語の根幹となっていることに気付き、そのスケールの大きさとテーマの深遠さに驚かされました。読み終えた後も色々と考えさせられる、知的な興奮を味わえる作品だと思います。面白かった!
また、この小説はXML言語を模したタグを使って書かれていますが、最後まで読んだ時に初めて「何故XMLで書かれているのか」にきちんとした意味があることが判る点も、職業プログラマー的にはグッと来ました。このアイデアはすごい。
百合的には、主人公のトァンが、かつて自分の人生に大きな影響を与えた少女ミァハの足跡と思想を追い続けて再び対峙する、という筋書きから百合要素を見出すことが頑張れば可能かと思いました。ラストシーンで「百合展開キター!」と叫べればたぶんホンモノ(何の?)。
この物語に連なる次の作品が読めないことが、本当に残念です。