もう幼馴染のままではいられない サンデー34~35号「初恋ゾンビ」感想

初恋ゾンビ

 「初恋ゾンビ」の江比野さんに対しては、常々「もし彼女が覚悟を決めて自分の恋心に正直になってタロウにアプローチし始めたら、ンもう大変なことになるんじゃないか?」と個人的に思っていたのですが、ついにその懸念(懸念?)が現実のものとなって来たように思えます。

 現在の学園祭の「ロミオとジュリエット」編は、江比野が自分のタロウへの感情が何であるかを自覚し、自分の感情に素直になって行く過程を描いたものであると言えます。34号の「あたしは、タロウのロミオとこのシーンがしたかった」という彼女の台詞は、自分がタロウの事を好きで、タロウにもそれを判ってほしいと思っていることを表現した、今の彼女ができる精一杯の告白だったと思われます。
 江比野はこれまでの「恋愛には興味がない」と公言するキャラクターを脱し、タロウとの「ただの幼馴染」の関係から抜け出すべく、自ら一歩を踏み出したのです。

 それに続く35号は、それを受けたタロウが「ロミオとジュリエット」の劇でジュリエット江比野の相手役としてロミオとして登場し、劇中で恋を語り合う台詞の応酬を全うすることで、江比野の気持ちをキチンと受け止めるという意思表示をしました。タロウはこの行動がこれまでの「幼馴染」の関係を崩すことになることを承知の上で、江比野の前に立ったものと思われます。
 タロウは本来「恋愛はエネルギーの無駄」と公言する、自己保身を第一とする性格のボンクラなキャラクターだったのですが、江比野の気持ちを理解した上で、それを受け止められる甲斐性を発揮できる男に成長していたことを示す意味でも、今回は非常に重要なエピソードであったとも言えます。

 タロウはその童貞純潔を「初恋ゾンビ」であるイヴに捧げることを決めており、その決意は今も彼の中では揺るいでいないとは思うのですが、江比野と劇中で恋を語り合っている間はイヴが眠っていた=初恋のことを忘れていたことを考えると、タロウの気持ちも江比野に揺らぎつつあることは間違いないでしょう。

 35号の最後ではついに江比野が指宿くんが実は指宿ちゃんであることを知ってしまいましたが、これによって物語はこれから確実に大きく動き出すことになるでしょう。
 「幼馴染」というこれまでの自分への枷を外し、タロウへの想いに素直になることができた江比野さんに対し、未だにタロウに対してジェンダーを偽っている指宿くん。指宿くんも今のままではいられないことは確実の有様であり、いよいよ指宿くんがタロウの前で指宿ちゃんに戻れるかどうかが物語の焦点になる時がやってきたのかも知れません。これからの展開が本当に楽しみです。

 そして人吉君ですが、彼には着衣妄想フェチの達人として一目置いていただけに、今回のヘタレっぷりには心底ガッカリですよ(感想)。

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