「エロすぎ!」問題を考える サンデー15号「競女!」感想

競女!!!!!!!!

 「エロすぎ!」ジャッジが読者を震撼させたことが記憶に新しい、今回の「競女!」。

 「競女!」を読み慣れている歴戦のサンデー読者の方々は、このマンガで起こる大抵のとんでもないことは「まあ、『競女!』がやることだから」とスルーできるようになっていると思われますが、今回の「エロすぎ!」発言は、そんな歴戦の強者達をもビビらせるに十分なインパクトを持っていたと思われます。

 「エロすぎ!」が何故そんなに読者に衝撃を与えたのかといえば、これまで散々「ブラを外して乳ビンタをする『パイ・パイル・パイパー』」、「おっぱいを高速で震わせることでおっぱいを透明化して相手の視覚を狂わせる『インビジブル・バスト』」、「一つの水着に二人の体を密着させてねじ込む『ヒップップ・トレイン』」など、通常の概念であればエロすぎと判断されて当然な技がごく普通に行われて来たのにもかかわらず、今回はジャッジがあえて「エロすぎ!」と警告を発した点にあります。
 もし競女というスポーツに相撲における「不浄負け」の概念があったらとっくに退場に値するような技がこれまで散々行われて来たのに、何故今回に限って「エロすぎ!」という警告が出てしまったのでしょうか。

 これは私個人の感想なのですが、これは実は「エロス」というものの本質に迫る問題なのではないかという気がしてなりません。

 もともと「競女!」という作品は、『女性同士が水着で尻相撲をする』というエロに直結しそうな競技をテーマにしているにも関わらず、女尻相撲というタームから連想されるお色気要素が全く含まれていません。サンデー編集部自らが「ヒロインが毎週裸同然でお色気をふりまいているのにファンからは特にそこを喜ばれるわけでもない」と広告で言ってしまっている(サンデー13号参照)ことからも、製作者側があえてエロを全面に売りとして出す形にしていないことが伺えます。

 実際、上記の例として上げた『パイ・パイル・パイパー』『インビジブル・バスト』『ヒップップ・トレイン』は、どれもみんな乳をほっぽり出したりしている技にも関わらず、絵面からは全くエロスを感じません。感じるのはエロスではなく、「何だかよく判らないけど何かすごい技だ!」という、視覚による圧倒的な暴力のみです。
 このマンガの本質は、プロの競女ファイター達が己の特異な肉体を駆使して戦いを繰り広げて勝利を目指す超能力バトルであり、彼女たちの乳や尻は皆すべてエクストリームな暴力によって勝利を得るための武器なのです。ここには、もはや「女尻相撲」という単語が本来発するべきファンタジーは存在しません。このマンガにおける乳や尻は、全て暴力です。
 乳も尻も暴力である以上、単におっぱいやお尻を露出してぶつかり合うだけでは、そこにエロスには発生し得ないのです。お分かりいただけるでしょうか

 しかし、今回ののぞみと宮田のバトルは、単なる暴力を超えた領域にまで到達しつつあるのではないか? と個人的には思っています。

 この二人は長年に渡る戦友であり、そしてライバルでもある訳なのですが、そのあまりの仲の良さから「この二人、実はデキてるのでは?」と周囲から疑われています(サンデー11号参照)。
 勿論本人たちはそれを口では否定するんですけど、今回のバトルにおいては宮田がのぞみに対して「あなたが一番だった!」「あなたにとって一番でいたいから!」と愛の告白にも等しい想いをのぞみにぶつけ、のぞみもまた「全力でぶつかろうや、相棒!」とその気持ちを真正面から受け止めている覚悟を示しているところからして、この二人はもう相思相愛の仲であることは疑いようがありません。

 相思相愛の二人が、乳首を立たせて体をぶつけ、尻を振動させて相手の身体を心地よくさせ、相手の名前を呼び合い見つめ合いながら、激しく下半身をぶつけあう。これって、もはやセックス以外の何物でもないですよね。万人が観戦する中で公然とセックスが行われれば、ジャッジが「エロすぎ!」と警告を発するのも致し方ありません。

 単におっぱいやお尻が露出してぶつかり合うだけではエロスにならないことは先程述べましたが、そこに「相手を愛し、思いやる感情」が加わることで、初めてエロスが生まれるのです。実際、今回の二人の対戦を「相思相愛であることが初めて判ったカップルが、自分の愛情を相手に激しくぶつけあっている」というメタな視点を加えた上で鑑賞してみると、何かこうとてつもなくエロく感じるものがあるのではないのでしょうか。
 競女における能力バトルに相思相愛のカップルが睦み合うエロの文脈が持ち込まれた結果、この勝負は著しくエロいものになってしまった。私はそう思うのです。

 今回のバトルがセックスの暗喩であると仮定すれば、ラストでお互いの水着が弾け飛ぶシーンってつまりお互いが同時に絶頂に達し(略)。

 以上、何故今回の戦いでジャッジがあえて「エロすぎ!」と警告を発したのか、その理由を私なりに考えてみました。如何でしょうか(目をグルグルさせながら)。

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