エル・パラシオ補足
「こいつは…見てはいけないものをみてしまった
」
土曜日に書いた月刊少年サンデー感想記事の「エル・パラシオ」について、一つ大切なことを書き忘れていたので補足。
今回話題になった「主人公に局部を見せながらドロップキック
」を繰り出したキャラは、「B(バニー)・キサラギ」のリングネームで活躍中のマスクマンです。
マスクマン故に彼女は普段からマスクを被って生活しており、そんなマスクを被る生活があまりに性に合っているためか、彼女は例え普段リングの上で被っているマスク以外のマスクを着用していても、ファンからは「あれはキサラギだ」と認識されてしまう始末。マスクを被っていても正体を隠せないことが、彼女にとっては少し悩みの種になっています。
また、マスクマンの習性なのか元々の性格からなのかは不明ですが、彼女は素顔を晒すことを極度に恐れています。しかし、上記の「どんなマスクをしていても正体を知られてしまう」悩みを解決するためにはそれを克服しなければいけない(=マスクを被っていなければ自分がB・キサラギだとは気付かれない)のではないか? と葛藤しています。
以上の情報は、創刊号のオマケに付いてくる別冊に収録されているマンガ(「キューティーB」)で語られていることです。そして、本編におけるキサラギの「主人公に局部を見せながらドロップキック」は、この文脈を理解した上で、初めてその真価を発揮するのです。
彼女はドロップキックで主人公を蹴り倒す直前、素顔でシャワーを浴びて風呂場から出たところを、主人公にあますところなく観られています。なので、一般的な美少女わんさかコメディーのロジックからすれば「キサラギは裸を見られて怒り、我を忘れて蹴っ飛ばした
」という解釈が成り立ちますし、蹴られた主人公もそう解釈します。
しかし彼女は「素顔を晒すことを極度に恐れて」おり、かつ「それを克服しなければいけないのではないかと葛藤」している最中であるという(読者のみしか知らない)情報が追加されることで、キサラギにとっては不意に(裸ではなく)素顔を見られてしまったことが怒りの源となっていることが理解できる構成になっているのです。
この誤解は今回のエピソードではまだ解かれておらず、今後主人公とキサラギのエピソードでは、この双方の解釈の違いによる誤解によるすれ違いが主眼となることは間違いないでしょう。また、このマンガは美少女わんさかコメディーなので、主人公がキサラギのマスクマンとしての悩みを克服する力となることが彼女を攻略するきっかけとなることも、暗に提示されていると言えます。
更に言えば、今回このような形で「弱み」を見せたキャラは、彼女と(主人公を見るなりいきなり悲鳴を上げた、「ラブひな」で言うところの前原しのぶに相当しそうな)女学生キャラのみであり、その点でもキサラギはこのマンガの中でもかなり(ラブコメ要員としての)扱いが強くなることを予感させるキャラである――と言えるのではないのでしょうか。
単に「主人公に局部を見せながらドロップキック」のコマだけ見ると『エロだけで売るマンガ』と解釈されてしまうかも知れませんが、このコマは以上の文脈の上に沿った形で提示されているものであり、実に深い意味を持っているコマなのです。判って頂けたでしょうか。
まあ、単に今回のようにネットで話題になるために仕組んだだけという可能性もあるんですけどね(だいなし)。