コミック一覧

漫画ナツ100に参加します日記

 「酔拳の王 だんげの方」のだんげろうずさんが毎年行っている「漫画ナツ100」に参加したいと思います。

 今回のレギュレーションは「漫画ならなんでもあり」というバーリ・トゥードなものなため、選択肢が多すぎて悩ましいところではあるのですが、とりあえず以前書いた引っ越し後の本棚リスト(=当時の自己ベストマンガ履歴)をベースに、当時はリストから除外していた連載中の作品、物理的な理由で引っ越し時に手放した作品、および18禁コミックを含めた最新ベスト版を作ることを目標にしました。
 選考の基準は、今回も『「このマンガの存在は、今の自分の人格を構成する要素になっているか?」と自分に問いかけ、「Yes」と応えられるもの』です。

※既にコミックス化されている作品は作品名+作者名のみ、コミックスに収録されているけどコミックスのタイトルが別なものについては更に出版社名+コミック名を記入してあります。

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エル・パラシオ補足

 「こいつは…見てはいけないものをみてしまった

 土曜日に書いた月刊少年サンデー感想記事の「エル・パラシオ」について、一つ大切なことを書き忘れていたので補足。

 今回話題になった「主人公に局部を見せながらドロップキック」を繰り出したキャラは、「B(バニー)・キサラギ」のリングネームで活躍中のマスクマンです。
 マスクマン故に彼女は普段からマスクを被って生活しており、そんなマスクを被る生活があまりに性に合っているためか、彼女は例え普段リングの上で被っているマスク以外のマスクを着用していても、ファンからは「あれはキサラギだ」と認識されてしまう始末。マスクを被っていても正体を隠せないことが、彼女にとっては少し悩みの種になっています。
 また、マスクマンの習性なのか元々の性格からなのかは不明ですが、彼女は素顔を晒すことを極度に恐れています。しかし、上記の「どんなマスクをしていても正体を知られてしまう」悩みを解決するためにはそれを克服しなければいけない(=マスクを被っていなければ自分がB・キサラギだとは気付かれない)のではないか? と葛藤しています。

 以上の情報は、創刊号のオマケに付いてくる別冊に収録されているマンガ(「キューティーB」)で語られていることです。そして、本編におけるキサラギの「主人公に局部を見せながらドロップキック」は、この文脈を理解した上で、初めてその真価を発揮するのです。

 彼女はドロップキックで主人公を蹴り倒す直前、素顔でシャワーを浴びて風呂場から出たところを、主人公にあますところなく観られています。なので、一般的な美少女わんさかコメディーのロジックからすれば「キサラギは裸を見られて怒り、我を忘れて蹴っ飛ばした」という解釈が成り立ちますし、蹴られた主人公もそう解釈します。
 しかし彼女は「素顔を晒すことを極度に恐れて」おり、かつ「それを克服しなければいけないのではないかと葛藤」している最中であるという(読者のみしか知らない)情報が追加されることで、キサラギにとっては不意に(裸ではなく)素顔を見られてしまったことが怒りの源となっていることが理解できる構成になっているのです。

 この誤解は今回のエピソードではまだ解かれておらず、今後主人公とキサラギのエピソードでは、この双方の解釈の違いによる誤解によるすれ違いが主眼となることは間違いないでしょう。また、このマンガは美少女わんさかコメディーなので、主人公がキサラギのマスクマンとしての悩みを克服する力となることが彼女を攻略するきっかけとなることも、暗に提示されていると言えます。
 更に言えば、今回このような形で「弱み」を見せたキャラは、彼女と(主人公を見るなりいきなり悲鳴を上げた、「ラブひな」で言うところの前原しのぶに相当しそうな)女学生キャラのみであり、その点でもキサラギはこのマンガの中でもかなり(ラブコメ要員としての)扱いが強くなることを予感させるキャラである――と言えるのではないのでしょうか。

 単に「主人公に局部を見せながらドロップキック」のコマだけ見ると『エロだけで売るマンガ』と解釈されてしまうかも知れませんが、このコマは以上の文脈の上に沿った形で提示されているものであり、実に深い意味を持っているコマなのです。判って頂けたでしょうか

 まあ、単に今回のようにネットで話題になるために仕組んだだけという可能性もあるんですけどね(だいなし)。


ゲッサン読んだ日記

 今ブログに「エル・パラシオ」って書くと検索ヒット数が上がると聞いて(挨拶)。

 「ゲッサン」こと月刊少年サンデー創刊号を購入しました。「あずまんが大王補習編」の掲載が大きな売りになっている創刊号ではありますが、作家陣は週刊少年サンデーやサンデー超増刊で活躍していて目に馴染みのある方の比率が多かったこともあり、個人的にはいつもサンデー読んでる時と同じ気分で読むことができました。
 ただ、ながいけん先生のマンガだけは、「モテモテ王国」と同じマインドセットで読むとあまりに違うので面食らいますが。

 今回、個人的に好きだったマンガとして、以下を挙げておきたいと思います。

「アサギロ」(ヒラマツ・ミノル)

 才能溢れる怖い者知らずな少年剣士の沖田と、「武士」という理不尽でシグルイな職業の悲哀を感じさせる村上の対比が非常に印象的。
 次回への引きも完璧で、ぜひ続きが読みたい気分になりました。

「忍びの国」(和田竜/板ノ睦)

 「主人公以外はみんな色々な意味で頭がおかしい」狂気溢れる世界観を、説得力を持って描けていると思いました。
 そういう意味において、非常に漫画らしい漫画。

「まねこい」(モリタイシ)

 恋愛に悩むうじうじしたダメな少年を描かせたら、モリタイシ先生はホントに上手いな! と再認識。
 次回以降、あのまねき猫をどう動かすのかが楽しみです。

「マコトの王者」(福井あしび)

 気鋭のルーキー対盤石のチャンピオン、というよくある構図かと思わせておいての番狂わせな演出が意表を突かれた。
 でも話の筋は極めて明確で絵にも迫力があり、わかりやすくて面白い漫画という印象。

「リンドバーグ」(アントシンク)

 「空への憧れ」とか「人間と非人間の心の交流」とか「異世界冒険アドベンチャー」とか、自分の心の琴線に触れるキーワードがふんだんに盛り込まれているので夢中にならざるを得ません。

「信長狂奏曲」(石井あゆみ)

 この漫画に漂っている、どことなく(良い意味で)すっとぼけた雰囲気が好きです。

 あとは、あだち充先生をここまでネタに出来るのはこの人と高橋留美子先生しかいないんじゃないかと思った島本和彦先生の「アオイホノオ」、でも『いつものような話です!』と言われると「確かにそうかも」と納得せざるを得ないあだち充先生の「QあんどA」、絵柄の変化以上に大阪のボケっぷりが往年の頃と比べて進化しててビビった「あずまんが大王補習編」は、期待通りの鉄壁な面白さでした。
 そしてながいけん先生の問題作「第三世界の長井」は、ながいけん先生はファーザーみたいなキャラだけではなく、スタイリッシュなキャラも描けるんだよ! というアピールには成功したと思います。最後のページで全てが台無しになってますが。

 そしてエロい意味で話題になっている「ここが噂のエル・パラシオ」ですが、基本的にはスタンダードな美少女わんさかコメディーですね。唯一特異なのは舞台が女子プロレスのジムであるということであり、それ故今後もプロレスチックな様々なアクロバティックな体位でのパンチラとか、「ランブルローズ」のHムーブ的なお色気アクションも期待していいんじゃないんでしょうか。
 かつて「ふぁいとの暁」で我々サンデー読者を(ショタ方面)でメロメロにしたあおやぎ孝夫先生の作品なので、期待してます。


最近の椎名先生関連のネットの話題を今更拾うテスト

 ネットというか、「ゴルゴ31」さんで紹介されていた記事に対してなのですが。
 ゴルゴさん「ハヤテ」デビューおめでとうございます(遅い)。

椎名先生は本当に久米田先生が大好きだな – 明日はきっと。

 椎名先生がサンデーの目次で「漫画・映画・アニメの中で『これは格好いい!』と思った決めゼリフがあれば教えてください」という質問に対して、「絶望した!!」と答えたという件。
 個人的には、椎名先生と久米田先生の関係は、好きとか嫌いとかというより、むしろ盟友関係と言っても良いくらいの深い絆があるのではないかと思ってます。久米田先生の生前葬にも列席してましたしね。きっとプライベートでは、久米田先生は椎名先生のことをメープルピンピンと呼んで愛しんでいるのではないかと妄想してます。久米田絶望攻め(嫌)。

 あとこの記事と直接は関係ないのですが、今の小中学生くらいの若い久米田先生ファンになると、『昔久米田先生は週刊少年サンデーで連載をしていた』こと自体を知らない子がそろそろ出てきているんじゃないかと危惧してます。久米田先生は今ではもうすっかりマガジンの顔ですし。『絶望先生』の載ってないマガジンに絶望した! とかみんな絶対言ってますよね今週。

椎名高志『絶対可憐チルドレン』と『エスパー魔美』 – 藤子不二雄ファンはここにいる/koikesanの日記

 藤子不二雄ファンのkoikesanさんが、「絶チル」が如何に「エスパー魔美」をはじめとした藤子不二雄作品の影響を受けている作品であるのかを、とても丁寧に説明しているエントリ。コメントも含めてとても参考になります。
 椎名先生にとって藤子不二雄先生の作品はもはや「血肉」と言っても良いレベルにまでテイストが染み渡っており、椎名作品における藤子不二雄作品ネタを上げていくと、本気で暇(いとま)がなくなる程だと思ってます。また、「『絶対可憐チルドレン』は、そうした古典的とも言えるSF設定をベースにしながら、そのうえで21世紀を迎えた現在の少年マンガとして活きのよさや面白さを備えた作品です。」という記述には、とても共感させられました。

 なお、個人的に「椎名先生の藤子不二雄マンガの好きっぷり」の例で真っ先に浮かぶのは、リメイク版「のび太の恐竜」でタイムパトロールのリーム姐さんが出てこないと大人げない不満を漏らす、この椎名先生の姿です。
 「TPぼん」好きなオッサンはホントやっかいですね(他人事のように)。

2/18のGX編集者日記の有井氏のコメント

 サンデーで「絶対可憐チルドレン」の担当編集をされていた有井大志氏がサンデーGXに異動となり、その際にサンデーGXの編集者日記で以下のコメントを書かれていました:

GX日記

少年サンデーに異動した直後、『一番湯のカナタ』の連載を終えられた椎名先生の担当につき、短期集中、連載立ち上げ、アニメ化と色々な経験をさせていただきました。
短期連載を載せた直後、GXのK前編集長が「作品ごとGXに引き抜く」と仰られ、勧誘合戦になったのも今ではいい思い出です。
そして、異動を前にした最後の校了が表紙&巻頭カラー…… これ以上ない最高の形でサンデーとお別れできました。
椎名先生、ありがとうございます。

 「絶チル」の短期連載開始時、椎名先生は「少なくともワタシと担当はいい作品だと思ってます」と述べています。この「担当」が有井氏ですね。
 「絶チル」は(少なくとも当時の)少年マンガとしては異常な部類に入る作品だったのは間違いないところなのですが、それでもあえて「絶チル」を少年サンデー誌上で連載させるため、有井氏も当時は相当尽力なされたのではないかと想像します。それだけに、今の「絶チル」が連載作品として成功した姿に対して、深い感慨を抱いているのでしょう。
 これまでありがとうございました。新天地でのご活躍を期待します。

 そういえば「絶チル」の短期連載版が掲載されていた頃の2004年のサンデーって、

  • かってに改蔵」と「美鳥の日々」の二本柱が同時に連載終了
  • 改蔵」終了の際に、久米田先生が当時の編集長との確執を臭わせて話題に
  • その編集長が同じ年に現編集長と交代
  • この年に連載が始まった「東遊記」は、後に雷句先生の原稿紛失裁判での陳述書に「編集の過度の介入」の例として名前が挙がる運命に
  • 怪奇千万!十五郎

 とか、何かもう色々と大変だった記憶があります。
 そんな大変な年にサンデーで連載を始めた「ハヤテのごとく!」の畑先生とか超偉い。もっとがんばれ。超がんばれ。

 おわります。


2008年コミック個人的ベスト10

 あけましておめでとうございます!(挨拶)

 年が明けてから17日も経ったことが信じられない今日この頃ですが、何か唐突に「2008年に読んだマンガをまとめてみたい」という衝動に駆られたので、今更ながら昨年買ったコミックスの中でのお気に入りトップ10リストを作ってみました。順番は適当です。

 昨年は現在マンガに対する投資を極端に抑制していた(要するにマンガ買う金がなかった)ので、ちょっと前に話題になった「このマンガがすごい!2009」に載っているタイプの話題作は、結局「『ダ・ヴィンチ』で記事読んだからいいや」とかそういうレベルで止まってしまっており、ほとんど買ってません。男女ともにベスト10に入ったマンガで自分が買ったのは「よつばと!」だけとか、どんだけ俗世から隔絶されているんだろうか自分。いや別にいいんですが。

 なので、今年の抱負はもうちょっとマンガを積極的に読むことです。とりあえずこの前コンビニでジャンプの「バクマン」読んだよ! 面白いね!(←こんなので大丈夫なのか)

   
椎名大百貨店
椎名大百貨店
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椎名 高志
小学館

 「絶チル」がアニメ化されて個人的に一番ありがたかったのは、この「椎名大百貨店」が発売されたことです(やや過言)。「一番湯のカナタ」と「絶対可憐チルドレン」の間を繋ぐ作品群が納められた貴重な一冊。現在の椎名高志という漫画家を語る上では必読と言えます。
 人生に大切なことは、己が「空から降ってきた人間じゃない女の子、最ッ高!!」な性癖を持つ人間であることを自分自身に対して認め、それを肯定して生きる勇気を持つことなのです。多分。

絶対可憐チルドレン 13
絶対可憐チルドレン (13)
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椎名 高志
小学館

 2008年は「絶対可憐チルドレン」にとって素晴らしい年でした。
 作品の長期連載化がほぼ確定となり、「未来」へ向けてじっくりと腰を据えて進んでいく物語を安心して読むことができる幸せ。作者自身が打ち切り覚悟で連載開始に臨んでいたあの頃懐かしいです。

神のみぞ知るセカイ 1 (1) (少年サンデーコミックス)
神のみぞ知るセカイ 1
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若木 民喜
小学館

 みんな大好き「神のみぞ知るセカイ」。個人的に、今年のサンデーを代表する作品になるんじゃないかと思ってます。
 何より読んでて嬉しいのは、作者の若木先生が自分の持てる経験とセンスを活かして、活き活きとこのマンガを描いている(ように思える)点です。人気出て欲しいなあという期待を込めて。

サナギさん 6 (6) (少年チャンピオン・コミックス)
サナギさん 6
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施川 ユウキ
秋田書店

 昨年完結した「サナギさん」。ここではあまり取り上げるチャンスが無かったですが、個人的には大好きなマンガでした。作者の施川ユウキ先生独特の哲学的なセンスが冴え渡る、かわいくて知的でかつブラックユーモアに溢れたユニークな作品です。
 個人的には、毒舌なマフユちゃんがたまに垣間見せる「サナギさん大好き」っぷりが萌えです。

みつどもえ 5 (5) (少年チャンピオン・コミックス)
みつどもえ 5
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桜井 のりお
秋田書店

 「みつどもえ」は2008年でかなり評価を高めたのではないかと思ってます。今年はもっとこのマンガがキますよ!(どこかに)
 主人公の三つ子を中心に個性が溢れすぎて変態の領域に達しているキャラクター達の絡み合いが読んでてとても楽しいのですが、とても密度が濃いので一気に読むと疲れます

宙のまにまに 5 (5) (アフタヌーンKC)
宙のまにまに 5
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柏原 麻実
講談社

 これもここで取り上げる機会はなかったものの、ずっと楽しみに読んでるマンガです。何かこう、作品で描かれている天文部やそれを巡る人達の雰囲気を味わうために何度も最初から読み直してしまう、そんなタイプのマンガ。
 なお「宙のまにまに」1巻が発売されて一気に人気がわき上がっていた頃、内心では「お前達は『まにまに』で初めてカシマミ先生の存在を知ったんだろうけど、オレなんかずっと前からゲリスタで先生の同人誌買ってたんだからな!」と変な優越感に浸っていたのも、今となっては良い思い出です(バカ)。

キミキス-various heroines 4 (4) (ジェッツコミックス)
キミキス-various heroines 4
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エンターブレイン
白泉社

 これもここで取り上げる機会はなかったものの(略)。
 東雲太郎先生のエロティックなキスシーンと、読んでて悶えること必至の甘いラブコメシチュエーションの数々に、毎巻ドッキドキさせて頂いてます。

青い花 3巻 (Fx COMICS) (Fx COMICS)
青い花 3巻
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志村 貴子
太田出版

 これもここで取り上げる機会はなかっ(略)。
 ジャンルとしてはまごう事なき「百合マンガ」なのですが、この時期の少女特有の友情・愛情・無邪気・嫉妬・その他諸々の感情が絡み合った複雑な想いが、実に細やかに描かれている作品という印象。3巻は発売日が延期されたことも話題になりましたよね。4巻出るのはいつだろう。

シグルイ 10 (10) (チャンピオンREDコミックス)
シグルイ 10
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南條 範夫
秋田書店

 みんな大好き「シグルイ」は昨年も絶好調。死せる牛股が伊良子相手に最期の大暴れをする10巻、異形だらけな「シグルイ」界の中でも抜きんでて異形な非モテ剣士・屈木頑之助が大暴れする11巻と、どちらもこのマンガでなければ味わえない独特の面白さを堪能させて頂きました。

エマ 10巻 (BEAM COMIX)
エマ 10巻
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森 薫
エンターブレイン

 「エマ」が完結したのは去年の出来事だったんですよ奥様(誰?)。随分遠い出来事の様に思えます。森薫先生の新連載が既に始まっているからかしら。
 10巻は勿論最期のエピソード「新しい時代」のグランドフィナーレっぷりが素晴らしいのですが、執事スティーブンスの四コママンガとかアデーレとマリアのエピソードとかアーサーの寄宿舎エピソードとか個人的に好きすぎる話が多く、何度も読み返してます。


[crossreview]神のみぞ知るセカイ 1 (1) (少年サンデーコミックス)

ギャルゲーの方法論を以て現実の女性を「攻略」して行く、ゲームとリアルの関係を倒錯させた次世代型ラブコメマンガ。ゲームを知り尽くした作者ならではのセンスが光る、将来の名作になり得る可能性を秘めた作品 [10]
2008-07-13 23:21 | Permalink | Other Review

 なお、「神知る」1巻の表紙についてはヤマカムの山田さんが「何故表紙が女の子でなくて桂馬なのか」と疑問を呈していますが、これに対する回答は単純です。「このマンガで一番カワイイのは桂馬だから」です。
 何事に対してもロジカルに対応するクールな知性、リアルの圧力に決して屈服しない高貴な精神、一見すると全てを拒絶しているように見えて実は紳士的な優しさを秘めた物腰、そのようなキャラクター性に説得力を持たせるアイテムとしての眼鏡、そしてふとした時に見せる可愛い仕草。心の中に乙女回路を装備した者であるならば、斯様なキャラクターに萌えを感じないはずがありません。

 私などに至っては、『真にコアな「神知る」ファン達の間では、「オレも桂馬に攻略されてえ!」派と、「むしろオレが桂馬を攻略してえ!」派、更にそこから派生した「ゲームの美少女キャラになった上で桂馬に攻略されてえ!」派などが発生しつつあるに違いない!』と妄想している有様です。
 ちなみに自分は桂馬に攻略されたい派です。

 なお、これが「一見様に優しくない表紙」である点については、激しく同意します。
 何このうっかりBLと間違えられても仕方がないクオリティ。若木先生はやはり違う


絶対可憐チルドレン13巻買いました日記

 絶対可憐チルドレンのコミックス13巻を買いました。
 買ったのは発売日から2日経った金曜日だったんですが、運良く初回限定版が残っている店を見つけることができたので、限定版を入手。これがアニメ放送前に次世代ワールドホビーフェアで流れて話題になってたプロモーションビデオなのか! とか、皆本役の中村悠一さんカッコイイなあ! とか思いながら見ました。これで+200円ならお得感ありますね。

 コミックスに収録されている内容は、今後の展開に対して極めて重要なことを示唆しているにも関わらず読んだ後には「ウン○が食べたいしか記憶に残らない驚愕エピソード「蠅の王」、登場する度に動物度が高くなってる初音対ジブリアニメオタク女子という異種格闘エピソード「もののけ姫によろしく」、アニメ版第一話とネタは同じなれど全く異なった展開を見せるエピソード「そのエスパー、凶暴につき」の三編、および当時の作者の疲れ具合が伺える全部四コマ「増補版さぷりめんとスペシャル」が掲載されています。
 おまけのDVDで声優の中村さんが「これらは全て映画のタイトルが元ネタ」であることを指摘してましたが、自分は言われるまで気付きませんでした。中村悠一さんカッコイイなあ(リピート)。

 巻末のオマケは、谷崎主任が実はナオミのために影ながら尽力している有能な指揮官であることをアピールする内容になっていて、ウッカリ谷崎を見直しそうになってしまう(罠?)。
 でも彼はこの頃からナオミに対して「あとは収穫(ケッコン)あるのみ!」と考えていた訳で、その欲望こそが結果的に彼を有能な指揮官とする原動力となっていたことを考えると、やっぱり人間が何かを成し遂げるためには欲望を持つことが大切なんだよなあ、と思いました。
 最後のコマでナオミに痛めつけられてる谷崎主任は、心底幸せそうです。これこそ、何かを成し遂げて己の欲望を満たすことができた男の顔ですよ。谷崎主任カッコイイなあ(リピート)。


「カナタ」と「絶チル」を結ぶミッシングリンク「パンドラ」~『椎名大百貨店』感想

 「椎名大百貨店」を購入することに成功しました。

 この「椎名大百貨店」に収録されているエピソードですが、これらは全て「一番湯のカナタ」の連載が終了というか打ち切られてから「絶対可憐チルドレン」の連載が始まるまでの間に発表され、かつ既に発売されている「GSホームズ極楽大作戦!」や「絶対可憐チルドレンガイドブック」に掲載されていない作品が収録されているのが特徴です(→この時期に椎名先生が発表した作品のまとめ)。

 また、これらが描かれた時期はサンデー本誌以外の様々な雑誌に転々と発表していた時期でもあり、世間的な評価では「不遇を託っていた」印象をどうしても拭いきれないっていうか、むしろズブズブであったような気がしてなりません。
 どうやら椎名先生も、この時期には色々と思い悩むことがあったみたいです。

 当時、「漫画が一生の仕事ってどうよ」と迷ってました。もういい歳なのに生活の大部分が「超能力を持った少女が」とか妄想する毎日。まともな社会経験まったく積んでません。

「椎名大百貨店」のあとがきより

 しかし、その迷いの中から生まれた奇跡の作品があります。それが「パンドラ」です。
 「パンドラ」のどこが奇跡だったのかと言えば、それは椎名高志という作家が自分本来のキャラクターと作風を、作品を描いている中で再び見つけ出すことに成功したこと。それに尽きます。

 そしてそれは、この作品の第三話の以下の台詞に集約されています:

 「空から降ってきた人間じゃない女のコ、最高ッ!!

 大事なことなのでもう一度書きます。空から降ってきた人間じゃない女のコ最高。これです。こんな台詞を自分のマンガのキャラクターに正々堂々と喋らせる境地に作者が達したことこそが、「パンドラ」という作品の最大の価値なのです。

 この台詞は、自分が本来のホームグラウンドと自負していたであろうSFコメディ路線の「一番湯のカナタ」が打ち切られ、「自分はいつまでもマンガを描いてていいのか?」と漫画家としてのキャリアに疑問を持ち始めていた当時の椎名先生が、「それでも空から降ってきた人間じゃない女のコが好きだ! 大好きだ! そして、そういうマンガを描くことも大好きなのだ! ならそれを描くしかない!」と、己の本質を取り戻した象徴なのです。
 いやその別に本物の椎名先生がそういうこと言ったかどうかは判りませんが、でも真実はきっとそうに違いありません

 自己分析するに、この話は「低俗で幼稚で不毛な現実逃避なのはわかってるが、それでも俺は漫画が好き」というダメ人間の血の叫びなのではないかと(笑)。

「椎名大百貨店」のあとがきより

 「パンドラ」第三話を描くことで、空から降ってきた人間じゃない女のコとかそういうのが大好きな自分自身を取り戻した椎名先生は、その直後にサンデー超増刊で「絶対可憐チルドレン」(コミックス1巻の巻末に収録されている版)を発表。超能力を持った幼女三人組に大の男がメロメロにされるSFコメディーという直球ど真ん中な内容が大当たりし、サンデー本誌で再び連載を開始することとなります。
 その後の破竹の快進撃は、皆様ご存知の通りですね。

 現在の「絶チル」路線に繋がる原点とも言える「パンドラ」は、そういった意味で椎名ファンにとっても極めて重要な作品です。椎名先生のファンを自負しているまだ未読の方は、ぜひこの機会に読んでみることをオススメします。
 齢四十にしてついに「空から降ってきた人間じゃない女のコ最高」の境地に達した椎名先生の心意気を汲み取ってこその椎名ファンだと思いました。