今年もよろしくお願いします。サンデー2016年4+5号感想
ふれるときこえる
メインヒロインのさとりのメガネ+マスク姿を見て、藤子・F・不二雄先生の「耳太郎」に出てきたテレパスのおじいさんを思い出した勢の人?(挨拶)
「ノゾ×キミ」の本名ワコウ先生の新連載が開始。「ノゾ×キミ」は「覗く」という視覚的な要素をテーマに男女の心理の探りあいを描いていた作品でしたが、今回の「ふれるときこえる」は文字通り「相手に触れると相手が何を考えているのかが判ってしまう」超能力を持ってしまった高校生の男子が主人公ということで、今度は触覚をテーマにしていることが伺えます。触覚と書いておさわりと読むアレです。
並の高校生男子だったら、こんな能力を持った暁には周囲の女子に触って触って触りまくってゲスい欲望を満たそうとすること必至であると思うのですが(その後女子の思考の闇の深さに怯えて絶望するオチ)、残念ながら今作の主人公の噪君は意中の同級生女子に触って誰が好きなのかを確認しようとすることすら躊躇してしまう紳士な好青年なので、あんまりゲスい展開にはならなさそうなのが残念です(そもそもそういうマンガじゃない)。
「さわるときこえる」能力を彼に与えたさとりの能力の発動条件は「相手の男子を好きになること」なので、彼女に惚れられてしまった噪君としては彼女が自分を嫌ってくれるような行動をするしかないんでしょうけど、初対面のさとりに傘を差し出すイケメンっぷりからして、そういう態度を他人に取れるような人物ではないことは明白。さとりから意図しない能力を与えられ、しかも自分が親友との間で三角関係の渦中にあることを知ってしまった噪君は、果たしてこれからどう生きて行くのか。
これまでの本名ワコウ先生の作品とはちょっとテイストが違った物語が読めそうで、今後の展開が楽しみです。
あと、さとりが自分の脳力を噪君に明かすときにメガネとマスクを外したシーンは、「メガネを取ったら実は美少女」な演出って今でも有効なんだなと感心しました(そこか)。
天野めぐみはスキだらけ!
サンデーSから移籍の新連載。基本的な話の構成が、ムチムチな身体に育ってしまったけど、そのことについてあまり自覚がないという、良い意味で純朴な女子高生の天野めぐみさんの日常を、幼なじみの学くんの(主に性的な)視点から観察して愛でるという形になっているのが特徴で、何というかこう「素晴らしい」としか言えない点が素晴らしいマンガだなと思いました。素晴らしい。
また、ただ単に天野めぐみさんを(主に性的な)視点から観察して愛でるだけの話ではなく、第一話でめぐみが学と手を繋ぐ時に剣道でできた手のマメが少ない右手を差し出すところや、第二話で「天野がいないと平和だ」と言ってる学がさりげなくめぐみの帰りをバス停で待ってるところなど、双方がそれとなく相手を意識している幼なじみ同士の初な恋愛描写がさり気なく盛り込まれているところも良いと思います。
総じて言えば、週刊少年サンデーに来てくれて本当にありがとうございます!という感想です。
あと、「天野めぐみ」って我々の世代の人間だと知る人ぞ知る名作「菜々子さん的な日常」を思い起こさせる内容だなと思って久しぶりに読んでみたところ、「奈々子さん」ってこんなエロかったっけ? と思うくらいエロかったのでビビりました。「奈々子さん」と比べれば「天野めぐみ」は健全極まりないですよ。
さすが「奈々子さん」は往年の「ホットミルク」に掲載されていただけのことはありますよねーとか変なところで感心した次第です(日記)。
初恋ゾンビ
2015年後期のサンデーの大きな特徴として、「初恋ゾンビ」、「天野めぐみはスキだらけ!」、「ふれるときこえる」と、矢継ぎ早にラブコメ系のマンガを新連載として投入してきたことが上げられると思います。最近のサンデーで短い期間に連続してラブコメマンガが始まるのは、ちょっと珍しいのではという気がします。
今から30年以上前、「うる星やつら」「タッチ」「さよなら三角」「ただいま授業中!」などのラブコメ作品を擁してジャンプに発行部数で肉薄した伝説を作って以来(参照)、「ラブコメのサンデー」はサンデーのパブリックイメージとしていまだに残っているものと思われます。サンデーの復活を目している現サンデー編集部としては、「サンデーのアイデンティティとしてのラブコメ」の復活、そしてあの頃の明るく楽しくライトな雑誌というイメージの復活も、また外せない要素なのかも知れません。
そのラブコメ新連載陣の中でも、この「初恋ゾンビ」は、基本的には突然空から降ってきた人間じゃない女の子がパンツを無駄に見せて来る系の伝統的な明るく楽しくライトなエロコメっぽいマンガでありながら、イヴの存在の謎がこの作品の根幹となるミステリーとして成立している点、本来ならメインヒロインになり得る存在である指宿が複雑な事情で男装している点など、単なるエロコメで済ませるにはもったいない読み応えのある内容になっているのが、本当によくできていると思います。「ラブコメのサンデー」のイメージに沿っている作品という感じ。
2016年にブレイクして欲しい作品の一つですね。
本編の方は、「ギャルに恋心を抱いてしまったオタク男子の葛藤」を、『初恋ゾンビ』というこの作品特有のギミックを使って表現しつつ、このマンガの根幹となっているイブの存在の謎をより深めるエピソードも盛り込んであって良かったです。
あと、「ギャルが清楚な格好をするとカワイイ」って演出も、「メガネを取ったら実は美少女」な演出と同様に古典的ながらも極めて有効なんだなと感心しました(そこか)。
小学館 (2015-06-18)
売り上げランキング: 36,776
「ノゾ×キミ」は、終盤のノゾミが本心を明らかにするまでの流れがステキだった記憶