おじいちゃんから目を離すな! サンデー39~41号「シノビノ」感想

シノビノ

 『おじいちゃんカッコイイ系スニークアクションマンガ』という新境地を切り開きつつある「シノビノ」。

 この作品、基本的には「ペリー提督が、開国へ向けて交渉するよう依頼する大統領の親書を日本に渡すために来航。その際、沢村甚三郎という忍者が藩主の命を受けてペリー艦隊に忍び込んで探索を行った」という史実に基づいたマンガではあるのですが、でもマンガなので史実を割と大胆に解釈しており、このマンガのペリーは開国交渉どころかガチで日本を侵略する気マンマンですし、一方の甚三郎が受けた命令は「ペリー艦隊の探索」ではなく「日本を侵略しに来たペリーの暗殺」であるという、日米共に実に殺意に溢れたテーマになっているところが特徴です。
 主人公の甚三郎は、普段は割と飄々としているというか、ちょっと抜けているように見えるおじいちゃんなので油断しがちではありますが、彼はリアル忍者なので殺す時は「忍んで殺す」をきっちりと実行できる男であることを忘れてはなりません。

 サンデー39号で「如何にも残忍で強そう」という感じの重要キャラのように登場したジュロームが、その次のサンデー40号では僅かなスキを甚三郎に突かれてあっけなく殺されてしまう展開がありましたけど、これなんかはまさにこのマンガならではの展開だと思います。

 ジュロームは、艦内で誰も気付いていなかった甚三郎の存在に気付き、(甚三郎が艦内に侵入する時に使った)猫の匂いを辿って彼を発見、剣術で彼を圧倒して追いつめるという、極めて優秀かつ強力な剣士であることが伺える描写がなされていました。その一方で彼の立ち振舞いは極めて少年マンガ的でもあり、甚三郎を追い詰めた時にはわざわざ「降参している老人を殺すのは…耳や目鼻を削ぎ落とした後でも遅くないな」と呟くなど、「残酷な性格」という設定そのままなサディスティックな判りやすい言動をしてました。総じて、少年マンガならありがちな行動だと言えます。

 一方の甚三郎は、そんなジュロームの性格を見抜いていたに違いありません。追い詰められて刀を突きつけられているにも関わらず、すぐには殺されないと悟った甚三郎は降参のポーズをしつつ手から時計を出したり携帯食を出したりしてジュロームの注意を引き続け、そして予め酸っぱい携帯食を食べさせていた子牛が吠えて暴れだした時にジュロームがほんの一瞬油断して目を逸らせた時を見逃さず、これも予め用意していたであろう「握り鉄砲」でジュロームのコメカミを撃って一撃で射殺という、実にあっけない方法でジュロームを倒しました。

 これが普通の少年マンガだったら、せっかくジュロームのキャラを立てたんだからもうちょっ甚三郎との戦闘シーンを引っ張ろうとか、負けるにしても殺さずに再登場の機会を伺わせるとかするところだと思うんですけど、実際には甚三郎は真っ当にジュロームと戦うことなく勝利をもぎ取りました。つまりこのマンガが描いているのは「ペリー暗殺を目的に行動する一流の忍者の流儀」であり、忍者の流儀では少年マンガ的な必殺技が飛び交うような映える格闘シーンは必要ないということなのでしょう。

 そして勿論、そういった行動に説得力を持たせる甚三郎の「普段はちょっと抜けているけど、忍者としての気概は本物」であるキャラクター性も魅力的です。おじいちゃん超かわいいです。

 そういった意味においても、この「シノビノ」は、少年マンガ誌に載っている普通の忍者アクションマンガとは趣きが異なっているなと感じる次第です。ある意味、今のサンデーらしいと言えるのかも知れません。
 個人的には、ジュロームはここで散るのが惜しいキャラなので、甚三郎に撃ち抜かれた頭の代わりに切り落とした牛の頭を乗せたゾンビとして復活しないだろうかと思っているのですが、残念ながらそういうマンガではないので望みは薄そうですね…(残念なの?)。

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仙太郎ってちょっと気弱なアンディっぽくない? と思ったけど、あんまりそうじゃなかった

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「健全なお色気アクションコメディー」を目指す戦いが始まった サンデー39号「絶対可憐チルドレン」感想

絶対可憐チルドレン

 サンデー39号から連載が再開された「絶対可憐チルドレン」。

 「絶チル」は既に高校生編が最終章であることがアナウンスされているため、高校生編後編となる本編が、文字通りの絶チル最終章となります。「絶チル」が読み切りの短編として発表されたのが2003年でしたので、それから実に14年の時を経て、ついに物語が終局へと向かうことに。

 当時、サンデーでの前連載作品である「一番湯のカナタ」が終了してから「絶チル」の連載が始まるまでの間には本当に色々なことがあったので、当時のファン達は「こんどこそ連載が成功して欲しい!」と強く願っていたのですが、結果的に「絶チル」は大ヒットを記録。「少年マンガ誌の主人公が女の子でも全然イケる」ことを証明してそれ以後の作品に大きな影響を与え、文字通り少年マンガの一時代を築いたといっても過言ではないくらいの作品にまで成長しました。
 この14年間、「絶対可憐チルドレン」という作品には、本当に楽しませていただきました。ありがとうございました(まるで連載が終了したかのような口調)。

 それはそれとして今回の「絶チル」なのですが、状況としてはサンデー20号の高校生編前半終了時よりも更に悪化しているように見えます。
 冒頭の東野と千里への嫌がらせに象徴されるように、マイノリティであるエスパーに対する憎悪はもはや隠されることなく顕著になって来ており、ノーマルとエスパーの間の対立は更に深刻化。今のバベルは完全にノーマルと対立するエスパーを捕獲するための組織となってしまっており、高校生編前半最終回で薫が述べていた理想の未来であった「みんながひとつになんかなれなくても、わかりあえなくてもいい。ただ同じ世界で一緒に暮らしていける未来に行きたい」とは程遠い状況です。

 その一方、今回の冒頭に書かれたこのマンガのアオリには「この物語は、物理法則を超えた強大なパワーを持つ少女たち『ザ・チルドレン』と、彼女たちをとりまく人々の愛と成長を描いた、健全なお色気アクションコメディーである!」と、現在の深刻な状況からするとちょっとボケたことが書かれています。健全なお色気アクションコメディー。

 確かにこのマンガ、本来は「ザ・チルドレン」と呼ばれる三人の超能力少女と、彼女たちの指揮官にしてお目付け役でもある皆本が織りなす、ちょっとエッチなお色気アクションコメディーだったはずなのですが、少なくとも現状はその皆本は「黒い幽霊」の首領であるギリアムの元に囚われの身になっている関係上、そもそもちょっとエッチなことを皆本とできる状況ではありません(ギリアム×皆本というシチュエーションがちょっとエッチなのかも知れない可能性は認めますが、そういう話は今していないのでパス)。
 それより何より「健全なお色気アクションコメディー」を繰り広げるためには、作品世界が平和でなければなりません。人種間の対立が深まり、憎悪が支配する世界の中で繰り広げられるお色気アクションコメディーは、健全というよりはもはや退廃的な雰囲気になってしまうこと請け合いなのです(荒廃した世界における退廃的なエロスも素晴らしいことは認めますが、そういう話は今していないので略)。

 ですので、この作品が本当に自分自身を「健全なお色気アクションコメディマンガである!」と宣言するためには、斯様なまでに絶望的に暗い状況から「健全なお色気アクションコメディ」が可能な明るく楽しいマンガに、作品そのもののノリを戻す必要があります。
 つまり高校生編の後半とは、チルドレン達、特にパンドラの「女王」の座に就いた薫が、皆本相手にちょっとエッチで健全なお色気アクションが可能になる世界を取り戻すために戦うことがテーマである──と解釈するべきなのではないかと思いました。人種間憎悪と偏見にまみれたこの世界から、「健全なお色気」展開をすることが可能なノリを取り戻すことは果たしてできるのか。
 この長かった作品の最終章がどんな運命を辿ることになるのか、見届けていきたいと思う所存です。

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今の時代の雰囲気がアレなだけに、未来に希望を持たせる内容になるといいですね(マジで)

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「龍のちんこがでかい」という設定の意味について考察する サンデー37+38号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 今回の「BE BLUES!」は、いわゆる温泉回。より正確に言えばちんこ回
 端的に言えば、龍のちんこは実は大きかったというお話でした。

 今のサンデーで「ちんこ」と言えば、勿論主人公のちんこがどんどん大きくなるマンガである「キング・オブ・アイドル」に決まってますが、今回の「BE BLUES!」はそれに触発されたと解釈してよろしいのでしょうか。「ちんこの数なら負けねえ!」とか、そういうアレで。
 今、サンデーにちんこの嵐が吹き荒れようとしているのでしょうか?(多分しません)

 そしてちんこと言えば、龍の世界水準のちんこのデカさ以外にも、みんな大好きノアさんが無毛マニアだったことが判明しました。本人は「余計な毛がないのでパフォーマンスが上がる」と脱毛した理由を述べていますが、多分ノアさんが無毛な好きなあまり、自分も無毛にしてしまったのでは? と推測せざるを得ません(きめつけ)。
 彼はこれまでも、この手の合宿の風呂ではみんなの前で脱衣して無毛っぷりを披露することでウケを取っていたに違いないと思うと、流石ノアさんは違う! と言うしかありません。男だらけな体育会系ならではのコミュニケーションの取り方を弁えていらっしゃると思います。褒めてます。

 逆に今の龍には、その手の「仲間と上手くやる」センスや気遣いは全くない要素なので、龍との対比という意味においても、今回のノアさんはホント面白い存在だったと思いました。

 というか、今回の合宿編におけるテーマの一つは、間違いなく「サッカー以外のことには気が全く回らない、龍のボンクラっぷりを少しは何とかすること」であると思われます。
 今回の途中に挿入されたレノンの回想シーンの中で、優希・優人・ナベケンが三人揃ってレノンに「龍を介護して下さい!」(意訳)と頭を下げていたことからも判るように、ここのところの龍はサッカーやらせると凄いしサッカーを通じたコミュニケーションはできるんだけど、サッカーに全てを注ぎ込むあまり生身の人間としての味がない、言わば「魂のないサッカー人形」(神聖モテモテ王国的表現)的なキャラクターになりつつあったのは? というのが正直なところです。
 この前のバレンタインデーのエピソードでも藍子のことなど気にも留めていない感じでしたし、女子のことに興味がないのはともかく、あの年頃の男子だったら普通にあるはずの性欲の処理とかどうしてるんだろう? みたいな余計な心配をしたくなるレベルですよ。マジで。

 今回はさすがのレノンも龍の「周囲に気を利かせる」という概念がないクラスのボンクラっぷりには手を焼いていましたが、コミュニケーション強者であるノアさんが強引に龍のフォローに入ったことで、「龍とレノンとノアが脱衣所で一緒に脱ぐ」→「ノアの無毛っぷりに龍が驚く」→「龍のちんこのデカさにノアが驚く」→「前回のエピソードで龍を『つまらん奴』と一括してわだかまりを作った滋賀の遠藤も龍のちんこのデカさに驚く」という、ちんこを介したポジティブなフィードバックが発生しました。
 つまり、あまりのとっつきの悪さが災いして合宿メンバーから孤立してしまう可能性があった龍の危機を、ノアの機転が救ったのです。そう考えると、今回の真の立役者はノアさんで決まりでしょう。ノアさんいい人だなあ。実際に隣りにいたらウザそうだけど(褒めてます)。

 次回以降は、ノアの活躍によって他のメンバーと上手くやれるきっかけを得た龍が、「サッカーでのコミュニケーション能力だけは抜群に高い」特性を活かして(ちんこのでかさ以外で)一目置かれる存在になれるかどうかという点になります。
 今回登場した高校生選抜メンバーは、今後龍が本当に日本代表選手になった暁にはまかり間違いなく同じチームのメンバーになる面々であることを考えれば、ここで好印象を彼らに与えて「また一緒に戦いたい」と思わせておくことは、龍の人生計画において極めて重要でしょう。

 果たして龍は、無事人並みのコミュニケーション能力を獲得し、彼らと選手として上手くやることができるのでしょうか。それともコミュニケーションに失敗し、「ちんこがでかい奴」という印象だけを与えることになって今後「武蒼のちんこのでかい奴」呼ばわりされてしまうことになるのでしょうか。
 そう考えると、今回の話は単なる温泉回なのではなく、今後のターニングポイントとなり得る極めて重要な回だったのでは? と錯覚できるようになるのが不思議ですね。おわり。

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対聖和台戦を読むと、龍は「拳で語り合う」的なノリで「サッカーで語り合う」のはとても上手いなと思います

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