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やればできる最高神、てらす様。 サンデー10号 「だめてらすさま。」感想

だめてらすさま。

 藤木俊先生お得意のドタバタ学園コメディ展開の回。アマテラス様の学生服姿も可愛かったし、新聞部の天城のトラブルメーカーっぷりも冴えてたし、国津神の百足のおっさん臭いエロさや男子学生共のボンクラっぷりも楽しかったし、そして散々ドタバタしつつもラストはきっちりと爽やかな青春ドラマとして落としてたし、最初から最後までちょう面白かったです。
 藤木先生がサンデーに帰ってくるからには、やっぱりこういう話が読みたかったんだよ! って感覚が具体化したようなエピソードでした。先生ありがとう!

 今回の白眉は、一日だけの学園生活を満喫したアマテラスが「悪くなかったかな!」と笑顔で言うところです。彼女がこんな表情したの、この話が初めてだったんじゃないんでしょうか。彼女もやればできる最高神なんですね。
 やればできる神様なのに、結局は最後に引きこもりに戻って色々と台無しになってるところも含めて、さすがてらす様だと思いました。やっぱりこのマンガ面白いです。

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「だめてらすさま。」1巻は3月発売らしいですよ


魔王様=この世界のゲームマスター説 サンデー9号 「魔王城でおやすみ」感想

魔王城でおやすみ

 このマンガの魔王様は、典型的なRPGの「姫さまをさらった悪い奴らの親玉」というよりは、「人間の勇者がプレイしている『姫さまをさらった魔王を倒す』ゲームを遂行するため、魔王役をやりながらゲーム進行を管理している(TRPGで言うところの)ゲームマスター」の立場に近い描写がなされているように思えます。
 この世界そのものがゲームであり、魔王様がゲームの進行を司るマスターである以上、彼には自分が用意したシナリオの筋書きに沿ってゲームを進行させつつ、勇者であるプレイヤーを楽しませなければならない義務があります。

 彼が姫様をさらったのは、勿論勇者であるプレイヤーを冒険の旅に出させる目的を作るためだったと思うのですが、彼にとって災難だったのはその姫様がただのおとなしい姫様ではなく、よりによって傍若無人な(略)。彼がゲームマスターとして練り上げた崇高なシナリオは、そのシナリオの冒頭でさらって来た姫様の手により、完膚なきまでに破壊されてしまったのです。

 今回の冒頭で『十傑集であるサンドドラゴンが勇者にやられた』との報告を聞いた魔王様が「勇者め…やられるばかりではないということか…面白い!」と魔王らしいことを言いつつ嬉しそうな表情をしているように見えましたが、あれは多分「姫様に邪魔されてシナリオ進行が滞っていたけど、やっと彼らを前に進めることができた」という、運営側の立場からの安堵から来るものであったに違いありません。おつかれさまです

 今回はその「十傑集」メンバーが初登場した他、魔王様がゲームシナリオ進行の気苦労でぶっ倒れた時に「父上」と叫ぶなど、魔界の側の設定に深みを与える描写が見られました。この作品も、いよいよ本格的な長期連載を睨んだ布陣を敷きつつあると考えて差し支えないのではないのでしょうか。
 連載が長期化するということは、スヤリス姫の乱暴狼藉も長期化するということであり、魔王様の気苦労もまた長期化することを意味しています。はたして魔王様は、スヤリス姫という最大の不確定要素を抱えたまま無事ゲームマスターとしての使命を果たし、「魔王」としての大役を演じきることができるのか。魔王として勇者に倒されるのが先か、スヤリス姫が与えるストレスにやられて過労で倒れるのが先か。
 こんな大変そうな魔王が出てくるファンタジーマンガは、珍しいのではないかと思います。

 でも、スヤリス姫に「いいこいいこ」されて照れてしまう魔王様はちょう可愛かったです(感想)。
 魔王様は彼女をお妃様にすればいいんじゃないかな?

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2巻でも既に魔王様の純情な一面が見られます


桜庭よ、小宇宙を燃やせ! サンデー8号 「BE BLUES!」感想

やりたい事だけやってきた男だが…
 今、この時、何が残っているのか、彼に何が生まれるのか、何が、出せるのか、
 私はそれを見たい!

 聖和台の眞鍋が、文字通り「桜庭絶対殺すマン」として徹底したマンマークをした結果、我らが桜庭さんはもはや聖和台の名無しの選手のブロックにすら耐えられずに転がってしまうくらい、ヘロヘロな状態になってしまいました。それが前回までのお話。

 通常であればスタミナ切れと判断されて即選手交代となるような局面なのですが、しかし桜庭の飼い主であるミルコがよりによって「桜庭の!ちょっといいとこ見てみたい!」と体育会系特有の無茶振りを発動、もうワンプレーだけ桜庭にやらせてみるという英断を下します。
 これは「限界を突破したその先にはきっと何かがあるはずだ」というミルコの桜庭に対する期待の表れであると言えますし、逆に「桜庭はまだこんなモンじゃねえ」とミルコが思っているからであるとも言えます。どっちにしろ、常識を超えた無茶を桜庭に強いていることは変わりありません。

 この状態を「聖闘士星矢」で例えるなら、ミルコは桜庭に「小宇宙(コスモ)を燃やせ!」と言っていることに等しいと思われます。ヘロヘロになっている桜庭に更に闘いをけしかける今のミルコは、「聖闘士星矢」のハーデス編においてズタボロになった星矢に対し、「あなたにはまだ生命が残っているではありませんか」と優しく語りかけたアテナと同じくらいの無茶なことをしているものと思われます。
 「聖闘士星矢」の世界は小宇宙を燃やせば大抵のことは何とかなったものなのですが、「BE BLUES!」の世界でも同じことが通用するのでしょうか。桜庭がこの局面でセブンセンシズに目覚めて神聖衣(ゴッドクロス)を纏い、このままこのマンガが冥王ハーデス編に移行してしまうことがあるのでしょうか?

 そして「小宇宙(コスモ)を燃やせ!」とミルコから命じられた当の桜庭ですが、もはやゴール前から動く様子は全く見せず、逆に「お前らがオレのところまでボールを持って来い」と言わんばかりに、「ドラゴンへの道」のブルース・リーばりに指をクイクイしてチームメイトを挑発するようなポーズを取り出します。

 これ、普通だったら「ふざけるな!」とチームメイトが怒り出すような態度だと思うんですけど(実際、ベンチにいる優希や窪塚は大激怒してます)、桜庭のことを知り尽くしている龍やコーメイは、桜庭の意図を汲んだ上で「何様だよおまえは!」と言いながらも実に楽しそうな表情を見せました。
 これは即ち、彼らは桜庭の挑発に乗った上で「貴様がそこまで言うならやってやる!」と、自ら桜庭の手足になってボールを彼まで運ぶ役を担う覚悟を決めたということです。つまり武蒼は今、まさに桜庭のためのチームとなったのです。

 桜庭のような卓越した技術を持つ独善的な性格のエースが活躍するためには、チームそのものがエースに点を取らせるために献身的に働く構成になる必要があるのですが、1点ビハインドで残り時間も少なく、エースの桜庭が小宇宙を燃やさないと戦えないような極限状態になったこのタイミングで、ついに武蒼のチームメイト達は勝利のチャンスを得るために、桜庭のためのチームとなることを決意したのです。
 この状況を「聖闘士星矢」に例えるなら、龍やコーメイの小宇宙が桜庭の小宇宙と共鳴して増幅、セブンセンシズを超えた領域「マクロコスモ」へと到達せんとしている感じなのですよ。小宇宙が燃える時、それはすなわち聖闘士達が己の闘志を爆発させるときなのだ!  なのですよ! 胸が熱くなりますね!

 ただし唯一の問題は、このマンガは残念ながら「聖闘士星矢」ではなく「BE BLUES!」なので、桜庭達がいくらコスモを燃やして根性見せたからと言って得点できるとは限らないところなのですが、まあこのマンガは「女子に応援されると男子は奮起する」みたいなオッサン臭い根性理論が存在している世界でもあるので、案外なんとかなるのかも知れません。
 ならないかも知れませんが(←冷静さを取り戻す)。

 あとマンガの表現的に面白いと思ったのは、桜庭が極限まで疲弊している(けどまだやる気はある)表現として、彼がひたすら「ハァハァ」「フゥフゥ」言って一生懸命息を整えようとしている姿を、何ページにも渡って延々と描写しているところです。実際どのくらい桜庭がハァハァしている姿を描いたページがあるのか数えてみたところ、全18ページ中10ページはハァハァしてました。徹底してます。
 全国高校サッカー選手権大会の埼玉県予選の決勝って実はテレ玉で放送されるんですけど、埼玉のお茶の間に桜庭さんがハァハァ言ってるシーンが延々と放映されているかと思うと、何かこうものすごい尊く思えて来ます。埼玉さいこう!(突然の埼玉賛美)

 次の桜庭のワンプレーは、ゴールするしないに関わらず間違いなく伝説となるに違いありません。我々は中継を見ている埼玉県民と共に、新たな埼玉の伝説が生まれる瞬間を目撃することになるのです。次の武蒼のワンプレーに注目です。

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桜庭のこのムカつく表情(褒め言葉)をまた見てみたい


ギリアム×兵部展開突入記念 サンデー5・6〜7号絶チル感想

絶対可憐チルドレン

 中学生編の最後で因縁をつけられた兵部に嫌がらせをするため、ギリアムが不二子を操って兵部の動揺を誘う展開。兵部を痛めつけるためなら文字通りどんな回りくどいことでも労力と時間を惜しまずに投入する、ギリアムの陰険っぷりが輝く話になっています。

 ギリアムは兵部に執着しているので、彼が出てくるとどうしても話の雰囲気がギリアム×兵部になってしまうのは致し方ないところではありますが、個人的には超常部隊編の頃から兵部×不二子のカップリングが大好きなので、ギリアムの性癖も判るけどもうちょっと兵部と不二子との絡みも楽しませて欲しかったなーというのが正直なところです。

 でも、不二子にわざわざ超常部隊時代の制服を着させて兵部の動揺を誘ったり、不二子が自害しようとして瀕死の重傷を負った時に兵部から「僕を置いて行く気かッ!」と不二子に対する本音の言葉を引き出させたのは、ギリアムちょっといい仕事したな! と評価して差し上げたい所存です(歪んだ感想)。

 そして、前回のサンデー7号では不二子が「今やっていることは全部自分の意志」と言いながら、「人間は異質なマイノリティを受け入れることができない愚かな存在だ! 人間はダメだ! なのでエスパーとノーマルの間に最終戦争を起こして世界を滅ぼし、エスパーが世界を征服する!」みたいなことを演説していましたけど、これって「ノーマルとエスパーの間の確執を解消する世界を実現する」ためにこれまで働いてきた不二子が、その影で日頃こぼしていた愚痴みたいなものなんじゃないのか? と思いました。
 我々一般人も、例えば仕事が上手く行かなくて気落ちしている時は「こんなクソ仕事もうやってられねえ! 会社爆発しろ!」とか「上司が無能で迷惑なので勝手に死んでくれないかな!」とか「もう働きたくない! 家の庭から石油が湧いて大金持ちになって仕事しないで済むようになりたい!」とか思いがちになりますが、つまりはそれと同じようなものです。多分。
 不二子の高説に対して、兵部や葉は勿論のこと賢木も「気持ちは判る」と言ってましたけど、この手の感情はマイノリティであるエスパーである彼らにとって、不二子の言葉は心の何処かに常に抱いていたものであることは間違いないでしょう。

 こういった負の感情も自分の中から生まれるものなので、これも「自分の意志」であると言えばそうなるのですが、勿論これらは心の疲労やストレスから生じた一時の気の迷いに過ぎないので、実際に会社を爆発させたり上司を殺しに行ったり庭を掘削したりは普通はしません。
 ギリアムの洗脳は、そういった負の感情を増幅し、愚痴に過ぎなかった気の迷いこそが「本当の自分の意志」だと思い込ませるものであると言えます。誰もが持っている心の弱みに付け込んで相手を支配し、意のままに操る。汚いさすがギリアム汚い。

 そんな感じで心が弱った時の対策としては、やっぱりよく食べてよく寝るのが一番と決まっていますので、「黒い幽霊」対策としては日頃から健康的な生活をして心と体の疲労を溜め込まないようにすることが大切ですよね! という結論に達しました。
 私も今日は早めに寝たいと思います。おやすみなさい(おわり)。

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47巻は真木と兵部の過去編がメイン


小山愛子先生サンデー帰還記念 サンデー5・6号「舞妓さんちのまかないさん」感想

舞妓さんちのまかないさん

 新連載。作者の小山愛子先生は、昔(といっても10年くらい前)は男の子が活躍する正統派な少年マンガらしいマンガを描く人というイメージがありましたが、カフェで働く一人の少女に焦点をあてて彼女の働く様を丁寧に描写した「ちろり」のゲッサンでの連載を経て、今度は舞妓さんの屋形でまかない飯を作る少女が主人公となった、普通の少年マンガとは少々ノリが異なる「舞妓さんちのまかないさん」で少年サンデーに再登場を果たすこととなりました。

 「舞妓さんちのまかないさん」は、いわゆる少年マンガらしくはない極めて雰囲気が静かな作品ですが、「少年マンガ」という枠に囚われずに多様なジャンルの作品を許容するというか、むしろ積極的に多様性を求めるようになった今のサンデーにおいては、こういった作品も普通に存在できるようになったんだなーと思います。個人的にはこういう系統のマンガは大好きなので、ンもう大喜びです。
 何と言っても、サンデーに掲載されている料理がテーマのマンガなのに、登場人物の舞妓さんが料理を食べても「なんやて!」と叫ばず、ダルシムに変身とかもしないんですよ? これってすごくないですか?(前例が異常という説が有力)

 あとこの物語は京都が舞台ということもあって(主人公のキヨさん以外は)登場人物がみんな京都弁を喋っているんですけど、他人のプリンを勝手に食べたり他人の化粧品を勝手に使ったりしつつも、みんな流暢な京都弁を喋りながら適当に責任逃れをしている腹黒いところが、何というかこう我々のイメージする「京都人」っぽくていいなと思いました。
 我々が観たかった京都がここにあるよ!(あるの?)

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自分が連想する小山愛子先生の作品というと、まずこれが思い浮かびます(古い)


コミックマーケット91 椎名高志作品関連サークル


※作品名が書かれていないサークルは、「絶対可憐チルドレン」「THE UNLIMITED -兵部京介-」の二次創作です。

12/30(金)
12/31(土)

武井からツンデレヒロインの気迫を感じたサンデー3・4号「あおざくら」感想

あおざくら

 武井の遅刻が原因で始まった、全校生徒を巻き込む厳しいヘルウィーク(ただし一週間では終わるとは言っていない)の真っ最中の展開。

 全学年に渡ってハードな指導が飛び交う中、原因となった武井だけは罰則の事故走り等をやらされないという、周囲のヘイトが武井に集まることで彼に反省の念を促して周囲に弁明を言わせる社会的な制裁システムの真っ只中に叩きこまれているにも関わらず、当の武井は未だに弁明を口にしないため、それが更に周囲のヘイトを高める結果になっています。

 これがもしサンデー掲載の「あおざくら」ではなく、ベトナム戦争モノの合衆国海兵隊新兵訓練基地が舞台の物語だったら、多分次回辺りに武井がトイレで同級生からリンチされた挙句殺害されるに違いないフルメタルジャケットな展開になることは必至でしょう。少年誌掲載の「あおざくら」の登場人物で良かったですね武井くん(そういう問題なのか)。

 当の武井は、己のプライドとかまだ明らかになっていない(けど多分客観的に見たらそんなに大した理由ではなさそうな感じの)理由とか何か色々あって未だに反省の弁を述べていないんですが、勿論今の最悪な状況を招いているのは自分が原因であることも判っている訳で、そのアンビバレンツな心理状態に相当心身ともにヤラれている様子です。
 こんな彼の心理状態をあえてラブコメに例えるなら、自分が彼のことが好きだということを自覚していながら、己のプライドや今までの彼に対する高慢な態度が仇になって自分の気持ちに素直になれないツンデレ美少女の心理と一緒であると言えるのではないのでしょうか。ツンデレキャラが素直になれずに思い悩んでいると思えば、武井のワガママも多少は可愛く見えてくること請け合いです。

 まあ、並のラブコメの登場人物はどんなに思い悩んでも胃が食べ物を受け付けなくなるくらいのストレスを感じたり、ましてや仲間にトイレで絡まれてリンチされたりはしないものなんですけど、それだけ今の彼が抱えるツンデレ的な葛藤はハードコアなものだと言える訳ですよ。
 果たして武井は最終的に無事デレることができるのか、それともこのままフルメタルジャケットな世界の狂気に陥って微笑みデブと化すのか。デレオアダイ! デレオアダイなのです!

 ここまで極限状況に追い詰められるツンデレキャラって、なかなか例を見ないのではないのでしょうか(まちがった感想)。

あおざくら 防衛大学校物語 2 (少年サンデーコミックス)
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コミックス2巻は16日発売。2巻は坂木部屋長の巻と言えます


ほたるさん突然再登場記念 サンデー3+4号 「だがしかし」感想

だがしかし

 マンガの持ち込みに行ったはいいけど酷評されて帰ってきて傷心なココノツの前に、突如としてほたるさんが再登場の回。
 ココノツが己の純潔の全てを捧げる勢いで崇拝しているほたるが! ココノツの心が傷ついているこの絶妙なタイミングで! 失踪する前と何も変わらぬ、あの時のままの姿で! 相変わらず立ってるだけでエロいほたるが! 今ココノツの前に! 立っているんですよ!(興奮)

 今のココノツは、「漫画家になる」という自分の将来の夢が揺らぎ、かつ「駄菓子屋の店長」という今の自分の現実に対しても疑問を持ち始めた、精神的に非常に不安定な状態にあることは間違いありません。今のココノツを「神聖モテモテ王国」風に言えば、がっかりフラレナオン祭り状態です。
 がっかりフラレナオンは確率変動中で大当たりの確率が高まって落としやすいって、ファーザーも言ってました。

 そんなタイミングでほたるに出会ってしまったココノツは、仮にほたるが以前と同じように駄菓子に対する偏愛っぷりを語りだしたとしても、冷静にツッコミを入れられるとはとても思えません。自分のマンガを酷評されてそのまま家に帰りたくない心境になっている今のココノツにとって、ほたるは今の悩みから逃れる場所を与えてくれた救いの女神のように見えるはずです。
 色々と心が揺らいでいる今のココノツに対し、もしほたるが「漫画家の夢を捨てて駄菓子屋を継げ」と言ったとしたら、がっかりフラレナオン祭り中で確率変動中のココノツが実際にそうしてしまう可能性は非常に高いのではないのでしょうか。

 もっとも、ほたるはまかり間違いなくそういうことを言うキャラではありません。彼女はあくまでココノツの駄菓子屋の店長としての高いセンスと志を買った上で、自分の意志で駄菓子屋への道を選んで欲しいと思っているはずです。
 ほたるが今の迷えるココノツにどんな言葉をかけて来るのか。次回はその点が非常に注目されます。


 あと今回の話で感心したのは、これまではちょっと(というか相当)頼りないボンクラなお姉さんと思われていたハジメさんが、ココノツがマンガの持ち込みに向けて原稿描いてる姿を見て「大丈夫です。完成させましょう。自分が手伝いまス!」と応援して目一杯手伝ったり、その一方で(ココノツがマンガ家になるかも知れないと浮かれるサヤに対して)「めっちゃ落ち込んで帰ってくると思うんで」と今のココノツのマンガ家としての力量を見抜いていたりと、ココノツの「夢」に対して極めて前向きかつ冷静なスタンスを取り続けていたことですね。

 ココノツのマンガ家になりたいという(駄菓子屋の店長という今の立場からすると荒唐無稽な)夢を簡単に否定せず、むしろ彼が最大限の力を発揮できる環境を作ってあげる一方、今の彼の実力ではそう簡単にマンガ家にはなれないことを判っていて周囲に浮かれないようにと優しく諭す。とても理知的な、大人な態度だと思います。

 このマンガ、基本的な構造が「周囲のおかしな人達にココノツが常識的な観点からツッコミを入れる」になっている関係上、ココノツの周囲には大人も含めておかしい人しかおらず、今回のハジメのようにココノツに対してフォローを入れられる歳上の人材は皆無でした。そういった意味で、今回はハジメに「ココノツの成長を見守ることができるお姉さんキャラ」という、新しい存在価値を与えた回でもあったと思います。

 何にしろ、「だがしかし」はココノツの漫画家へのチャレンジ、そしてほたるの再登場をきっかけに新しい局面に向かいつつあることは確かであり、これからますます目が離せなくなって来たと言えるのではないのでしょうか。

 そして駄菓子界は今、おやつカンパニーのベイちゃんが2016年を以って引退し、新たなイメージキャラとしてパリピ系男子がフィーチャーされるというニュースが流れて騒然となるなど、正に新しい激動の時期を迎えています。
 このタイミングで駄菓子界の守護者であるほたるが帰ってきたことということは、即ち来年は駄菓子の世界に更なる大きなうねりが起こることは必至であり、ほたるは駄菓子界の大変動に立ち向かい愛する駄菓子文化を守るべく、表舞台に戻ってきたのではないのか。そうは思えないでしょうか?(思えません)

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6巻最期のココノツとほたるの別れのシーン、今読んでもちょうドキドキします


皆本と兵部が歴史的な共闘を成し遂げた記念 ここ最近の「絶チル」感想

絶対可憐チルドレン

 前回の銭湯を舞台にした皆本と兵部の全裸会談を経てバベルとパンドラが共闘、洗脳された不二子の奪還を目指してバベルに侵入を開始するという、いよいよ対不二子編のクライマックスが近いことを予感させる展開になって来ました。

 今回のバベルとパンドラの共闘劇は、不二子と真木というそれぞれの組織の最重要人物が共に黒い幽霊に洗脳されてしまったことをきっかけに実現した訳なんですが、よく考えてみたら皆本が兵部に対して「力を貸してくれ」と面と向かって頼み、それを兵部が(気まぐれとか、成り行きとかそういう理由ではなく)「女王のためだ」という理由を付ける形にしろ正式に承諾するという展開は、実はこのマンガ史上初めてのことなのでは、という気がします。

 皆本が目指すエスパーとノーマルが共存する世界を作るためには、皆本はいつか兵部のことを認めて共に戦わなければならないのではないか──と、自分は「絶チル」が小学生編だった頃からずっと思って来たんですけど、前回の銭湯のエピソードはこの物語がついにその地点にまで到達したことを示していたのかも知れません。
 皆本と兵部が銭湯の大浴場で漫才しながらイチャイチャしてするとか(やや語弊)、銭湯の番台に「一番湯のカナタ」のカナタが座ってるとか、その辺の突っ込みどころがあるサービスシーンなのかと思いきや、実は「絶チル」の歴史が大きく動いた会談だったんですよねアレ。侮れません

 そんな感じで皆本と兵部の関係についてはある程度の決着が付いたと思われるんですが、その銭湯の回の更にもう一つ前の回でやっていたはずの「隠れ家になってる安アパートで寝っ転がってる皆本のところに、薫が一人で世話を焼きに来る」という皆本と薫の関係については、何か途中で話が終わってしまって中途半端な印象を受けました。

 せっかく薫が「今夜は友達の家に泊まるって言って来たから!」と、何かラブコメマンガみたいなことをウッカリ言ってしまった訳ですし、この辺はもうちょっと掘り下げて欲しかったなというのが正直な気持ちです。
 薫も皆本もお互いのことを意識していることは確実なんですし、あの後二人で一緒に夕食を食べたからには、何かもうちょっとこう「初情事まであと1時間」的な微妙な雰囲気のトークが繰り広げられたのでは? とか思ってしまう訳ですよ。いやもうこいつら絶対そういう雰囲気になってたよね!(決めつけ)

 そういうちょっとエッチなラブコメ路線な話は、賢木が言うように今の事態が収拾してからじゃないとダメということなんでしょうか。さっさと不二子を倒してラブコメ展開に移行して欲しいッスね(まちがい)。

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アニメ版のBD-BOXは12/23発売。あれからもう8年も経つのかー


あけましておめでとうございます サンデー2017年1号感想

天野めぐみはスキだらけ!

 「サンデー非科学研究所」で前号からやってるねこぐち先生のインタビューは、先生が「ただひたすらムチムチな女子の尻を描きたい」という一念でここまでやって来たことがよく判る、素晴らしい記事でした。
 特に、ムチムチな女子を描きたいという自らの情熱と、「ヒロインは細い女の子の方が普通だ」という編集者からの一般的なアドバイスが相剋して葛藤する辺りが、何かこう理想と現実の間で苦しむ芸術家っぽくてグッと来ます。

 結果的にムチムチな女子を描き続けることでねこぐち先生は今やサンデー筆頭レベルの人気作家になれた訳で、やはり漫画家として成功するには斯様なレベルにまで気が狂った情熱が必須なんだよなと思った次第です。褒めてます(フォロー)。

 本編の方は、まーくんからカツサンドの差し入れをもらっためぐみがエラい可愛かったのがとても良かったです。勿論ストレッチのシーンも良かったです。本当にありがとうございます
 「天野めぐみ」を読んでいると感謝の心が自然と芽生えてくるので、男の子の情操教育にも良いと思います。

古見さんは、コミュ症です。

 「古見さん」の家族が出てくる話を読むたび、私は常々「古見さんのお父さんになりたい」という感想を抱くようになっているのですが、今回の話を読んだ結果、「古見さんのになっても良いのかも知れない」と思うようになりました。

 それにしても、弟の部屋に姉がTシャツ短パン姿で無断で侵入し、弟にちょっかい出しつつ勝手にマンガを持っていくという行動は、姉が弟に取る行動として一般的なんでしょうか。
 自分にも姉がいますが、姉は自分の部屋には入ろうとせず、逆に自分が勝手に姉の部屋にこっそり侵入して勝手にマンガ持っていく方だったのでよく判りません(ダメ)。

マギ

 物語がイモータルな神話レベルのスケールに突入した結果、もはや宗教ファンタジーとでも言うべきジャンルに変貌しつつある最近の「マギ」ですが、今回のような「現世の絶対神となったシンドバッドの意志に、世界中の人民がイッちゃった瞳をキラキラさせつつ大喜びで従う」様子を見ていると、意識と理想がむやみに高い人が神様になるのも考えものだよなあと思わざるを得ません。
 社長が高潔な理想を掲げていてそれを実現するために、社員を洗脳してブラックな労働環境で自己犠牲を強いるみたいなものですよねこれ(社会問題化)。

 シンドバッド様のような妙に思想が高くて意識も高い神様よりは、「だめてらすさま。」のテラス様のように、面倒くさいことが大嫌いで万事いい加減で現世に対して崇高な理想を抱かない適当な神様の方が、我々のような民草にとっては良い神様なのではないかと思いました。

初恋ゾンビ

 江火野さん水着回。「中学の時に買った水着を着させられているが故に、水着姿が大変なことになっている」というマニアックな設定の元に描かれた必要以上に露出が高い水着姿は勿論素晴らしいのですが、それ以上にタロウのことをいつも以上に意識してしまって頬を赤らめたり微笑んでいたりする表情が大変に良かったです。
 プールから出てタロウと別れた直後の表情からすると、彼女はもう自分が幼馴染のタロウのことが好きだと自覚していると気付いているのかも知れませんね。

 民宿バイト編では既に指宿くんがタロウにメロメロになっちゃってましたけど(やや語弊)、もし指宿くんが江火野さんがタロウに好意を持っていることを知ったら、どうするんでしょうか。指宿くんが「性別を偽っている」という秘密を守るかどうか葛藤できる時間的な余裕は、もうそんなにないのかも。

BE BLUES!

 武蒼のエースである「ドリブルの技術は最高だがソレ以外の全てが最低」な桜庭に卑劣な行為をされてセンターバックを潰された聖和台が、桜庭に対する復讐心に燃える眞鍋がその桜庭からボールを奪ってチャンスを作り、エースの小早川からゴールへの嗅覚に優れた光一に繋いでワンチャンスから貴重な先制点をゲット! という展開に。
 普通の少年マンガのフォーマットでは、桜庭のようなワガママな暴君がフォワード張ってるチームはまかり間違いなく悪役であり、「この試合に勝って小早川をプロリーグへ!」という気持ちでまとまっている聖和台こそが正統派の主人公チームであることは以前ここでも指摘しましたので、現在のこの展開には非常に説得力があります。
 勝負を決めるのは個人技に走ったテクニックではなく、一丸となったチームプレイなのだ! 正義は勝つ!(説得力)

 本編の主人公であった(過去形)龍は「こっからでしょ!」と強がったことを言ってますけど、龍はまだ小早川を止めることはできていないし、桜庭は既にヘバッてるし、優人は相手の攻撃を止められなかったことを悔いてこれから凹みそうだしと、実際問題としてここから逆転できる芽は今のところ全くなさそうに見えます。
 このまま武蒼が本当に負けてしまって、主人公チームが正統派の聖和台に変わってしまうのか否か。このまま聖和台が主人公チームになってしまったら、正ヒロインの座が江藤さんから小早川忍の姉の薫に変わってしまうんだけど、それはいいのか。いや何かそれはそれでという気もするのでいいかも(いいのか)。

 今後の展開をハラハラしながら待ちたいと思います。


天野めぐみはスキだらけ!(4) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2016-11-11)
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5巻は1/18に発売とのこと