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最終章準備で休載記念 サンデー20号までの絶チル感想

絶対可憐チルドレン

 もう先々週くらいの話になってしまいますが、サンデー20号において「絶対可憐チルドレン」が『最終章準備のため』という名目で一旦連載が中断する形になりました。
 「絶チル」はここのところ事実上隔週連載の状態が続くなど、コンディション的に優れていない状態になっているような感じがあったので、一旦話に区切りを付けた上で休載期間を挟むのは良い選択だったんじゃないかと思います。

 その「話の区切り」なんですが、サンデー20号までの間に色々あった結果、薫がパンドラの「女王」の座に就任し、人類に対して「人種間の憎悪と戦い、共に暮らせる世界を目指す存在である」ことを宣言するに至りました。

 このマンガを最初から読んでいる読者の方なら御存知の通り、元々このマンガには『特務エスパー「ザ・チルドレン」は天使か悪魔か?』という命題があり、薫がパンドラの『破壊の女王』となるルートは即ち彼女が人類にとっての悪魔となってノーマルとエスパーの最終戦争を引き起こすバッドエンドを意味していました。
 しかし、サンデー20号においてパンドラの女王となった彼女は、バッドエンドルート一直線となる人類にとっての「悪魔」でもなく、また逆に人類を最終戦争の脅威から救って導く「天使」でもない、自らの意志を以ってエスパーとノーマルの共存のために戦う第三の道を選びました。薫は、連載の初期に提示されていた二者択一的な命題を覆し、自分の意志で自分たちの未来を切り開くことができる力を持った存在となったのです。
 これも連載初期の皆本のキメ台詞である「君たちはなんにでもなれるし、何処へでも行ける」を、薫は身をもって体現したとも言えるでしょう。

 そういう意味において、高校生編最終話はとても物語的に美しい締め方だったと思いました。

 連載再開は夏頃を予定しているとのことですけど、「最終章」で個人的に望んでいるというか、ぜひ見てみたいのは、薫と皆本の間の関係の決着ですね。

 薫と皆本といえば、これも連載初期に提示され、このマンガを象徴するシーンともなった「皆本が銃を持って薫と対峙する」未来の予言が思い起こされます。皆本達はこの未来を回避するためにこれまで戦って来て、そして現段階ではこの未来は回避されたということになってはいますが、再びノーマルとエスパーの間で緊張が高まり、形はどうあれ薫が「女王」となる未来が現実になった以上、再びこのシーンが再現される可能性がないとは言えなくなってきているのではないのでしょうか。
 というか、多分キますねこのシーン。物語の冒頭で提示されたテーマが物語の最後で再び形を変えて登場するだなんて、作劇的にはちょうカッコイイので、やらない訳がないと思います(決めつけ)。

 ただ、シーンそのものは一緒でも、そこで交わされる会話や状況は全く違ったものになっているとも思います。連載初期の二人はもはや交戦不可避の状況でしたけど、今では二人の意志は「人種間の憎悪と戦う」ことで共通していますし、仮にこの二人が対峙することがあったとしても、交戦ではなくもっと別のことをするはずです。チューとか。
 薫の皆本への想いはホンモノですし、皆本も薫と年の差が10歳あるとか歪んだ独占欲があるとかセカンド童貞の誓いとかそういうのは吹っ切ってチューくらいするよね? ね?

 連載初期に提示されたエスパーとノーマルが対立する未来を覆し、エスパーとノーマルが共に共存できる新しい未来を手に入れることができるのか否か。個人的には、そうなって欲しいと切に願っています。

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『特務エスパー「ザ・チルドレン」は天使か悪魔か?』が登場するのは2巻から。1巻の頃はまだ短期連載だったんですよ(豆知識)


船酔いをする少年は萌え対象 サンデー19〜20号「天翔のクアドラブル」感想

天翔のクアドラブル

 天正遣欧少年使節と聞くと思い出すのが、昔通っていた小学校の図書館に置いてあったどこかの出版社の歴史マンガの中で、使節団の少年が船酔いでゲロゲロ吐いてるシーンです(いきなり)。
 そのシーンが今もやたらと印象に残っていることを考えると、もしかしたらその頃から自分はマンガのキャラが嘔吐しているシーンを見るのが好きだったのではないか? と自分の性癖のルーツについて思いを馳せざるを得ません。

 あとは、少年が熱帯地方で熱病にかかってウンウン苦しんでるシーンも印象的でした。美少年が病気で苦しんでいる様は萌え要素です(断言)。

 そんな少年使節団(そんな?)が題材の「天翔のクアドラブル」においても、早速第二話でジリアンが船酔いでゲロ吐いてるシーンが出てきたので、やっぱり少年使節団と船酔いは切っても切れない関係なんだよなと嬉しくなりました。

 ただ、このマンガが普通の歴史マンガとちょっと(というか大きく)違うのは、少年使節団の目的を「戦国時代の日本でキリスト教を布教するため」ではなく、「暗黒時代のヨーロッパを跋扈している魑魅魍魎を忍術で退治するため」としているところです。少年たちのキャラ設定も、キリシタンではなく、「志能便」という名の対魔忍になっています。
 つまりこのマンガは、一見するとヒストリカルな少年使節団を題材にしているように見えながら、実はファンタジーな日本のニンジャがファンタジーなヨーロッパのモンスターと戦うことを目的とした、極めて少年マンガっぽいファンタジー異能力バトルマンガであると言えましょう。
 ニンジャ対ファンタジーヨーロッパのモンスターを描く題材として、あえて少年使節団を選ぶセンスが個人的には素晴らしいと思いました。

 実際の少年使節団に参加した少年たちは、色々あって最終的にはみんなあまり報われない最期を遂げたと言われていますけど、こういう設定であればヒストリカルとは違った明るい結末を描くことも可能になるでしょう。こういう歴史のアレンジの仕方は面白いですね。

 そして作者の新井隆広先生は、「ダレン・シャン」を読めば判るように元気な少年と陰鬱なモンスターの描写に定評がありますので(自分の中で)、そういう意味でもこのマンガは新井先生の作風に合っているように思えます。今後の展開に期待です。
 新井先生のマンガなので、今後出てくるであろうヨーロッパの渋いオッサンキャラの登場にも期待。

LES MISERABLES 1 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
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新井先生がゲッサンで連載していた「レ・ミゼラブル」のコミカライズ版。たいへんに評判が良い


要約:西沢さんはすごい サンデー17〜18号「ハヤテのごとく!」感想

ハヤテのごとく!

この記事の要約:西沢さんはすごい

 まもなく本当の意味でのクライマックスを迎えてしまう「ハヤテのごとく!」。
 これまでのハヤテとの関係が誤解の上で成り立っていたことに気付いてしまい、「王族の庭城」に立て篭もり、「王玉」の奇跡の力で自分の理想の世界に自分を閉じ込めることで宇宙最強の引きこもりと化してしまったナギをハヤテが救い出すという、「ハヤテのごとく!」のメインストーリーラインの総決算とも言える展開に、毎回グッと来てます(頭の悪い感想)。

 サンデー18号では、ナギに対してハヤテが「例え誤解から始まった関係でも、自分が君を命をかけて守りたいと思ったことは本物だった。この日々に間違いなんてない」と説得するシーンが印象的でしたが、ハヤテがこの言葉をナギに伝えられる意志を持つことができたのは、その前の回のサンデー17号での西沢さんからの言葉があってこそだと思っています。

 西沢さんは、ナギとの誤解の上に成り立っていた「偽りの関係」の秘密を守れずにナギを傷つけてしまって後悔するハヤテに対し、こう語りかけました。

出会い方は間違ってたかもしれないけど、
それでもこの一年に、間違いなんかなかったよ。

思い出して、ハヤテ君。
たとえつらい結末でも、たとえ間違った出会い方でも、
全力で挑んだこの一年に、間違いなんてなかったでしょ?

今はまだつらくてもここはまだ終わりじゃない。
ハヤテ君ならきっと未来を変えられる。

 ハヤテはこの直前に西沢さんに「好きだ」と告白しているのですが、それを振り切ってまでハヤテを絶望の淵から立ち直らせ、ナギの元へと送り出しました。偽りの世界に囚われたナギを救うことこそがハヤテの成すべきことであり、偽りの世界で自分を愛することではないと、彼女は理解していたからです。

 そして今回。ハヤテはナギに対して、こう訴えかけました。

僕達の出会い方は、間違っていたのかも知れません。結末も、酷いものだったのかもしれません。
だけど、嬉しかったことも悲しかったことも、楽しかったことも苦しかったことも、救われたと思った気持ちも、君の笑顔を命をかけて守りたいと思ったことも、全部本物。勘違いなんかじゃありません。


僕達のこの日々が、たとえ誤解と勘違いで始まったものでも、絆はあったと信じたいんです。
欲しいものがあるんじゃなくて、失いたくないものがあるんですよ。

 ハヤテのこの言葉は、彼が西沢さんから「出会い方は間違ってたかもしれないけど、それでもこの一年に、間違いなんかなかったよ」と言われたからこそ、彼の中に生まれた言葉だったと思うんですよね。
 きっかけは何であれ、ハヤテのこれまでの人生を西沢さんが肯定してくれたからこそ、ハヤテもまたナギとの誤解の上に生じたこの一年間を「間違いなんてない」と肯定し、そこにナギとの本物の絆を見出した上で、ナギを救うことで自分がどんな運命に見舞われようともそれを受け入れる覚悟を決めることができたのでしょう。

 ナギは、ハヤテのこの言葉自らが作り出した幻の世界から抜け出す決意を固めることができ、宇宙最強の引きこもりを脱することに成功した訳なのですが、彼女を救ったのは西沢さんの尽力があってこそだと思われます。
 西沢さんってキャラは、超人だらけのこのマンガにおいて(ハヤテのことが以前から好きだったという以外に)特にこれといった能力も特徴もない、元々はハヤテにフラれるために登場したような存在だったはずなのですが、最終的には今回のように物語の要所でものすごい輝きを放つ魅力的なキャラに成長しましたよね。

 つまり何が言いたいかというと、西沢さんはすごいと思います(おわり)。

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現在のクライマックスへ向かい始めたエピソードが掲載された50巻


高橋留美子先生単行本二億冊突破記念企画 サンデー17号「私の”るーみっくわーるど”」感想

私の”るーみっくわーるど”

 サンデー17号は高橋留美子先生単行本二億冊突破記念と称して、サンデー連載陣の先生方による高橋留美子作品のキャラクターイラストが掲載されていました。

 基本的にお祭り企画なので、我々読者としては素直に「わーすごーい」と思って眺めていればいいんですけど、どの先生もキャラクターの選択や描き方が極めて個性的であり、それぞれの作品に対する各先生方の思い入れの深さをイラストから窺い知ることができるという意味でも、とても興味深いものだったと思いました。
 荒川弘先生が「うる星やつら」の竜之介の親父を描いていたり、大高忍先生がおっぱいがすごい大きい「らんま1/2」の乱馬を描いていたり、田辺イエロウ先生や渡瀬悠宇先生が「人魚の森」を描いていたりするところなんか、こう実に「らしい」です。

 その中でも個人的に一番面白いなと思ったのは、「闇をかけるまなざし」「笑う標的」「忘れて眠れ」という、高橋留美子作品の中でも特にサイコホラー寄りな作品を選んだ藤田和日郎先生です。

 藤田先生が漫画家を志していた頃はこれらの作品に強い影響を受けたとのことで、イラストも「サンデー連載作家が描いた高橋留美子先生のキャラクター」というよりは、むしろ「ファンロード」や「OUT」といった往年のサブカル雑誌の読者投稿欄に掲載された、熱心なファンが描いたハガキといった雰囲気を醸し出していると思いました(四十代以上にしか判らない比喩)。
 藤田先生の漫画家としての原点がむき出しになっている、という意味でもとても素晴らしいイラストです。

 そして椎名先生はラムちゃん一択かと予想していましたが、連載作品の主役キャラが武器を持って勢揃いという構図のサービス精神あふれるイラストだったのは嬉しい誤算でした。
 イラストの中では「めぞん一刻」の響子さんがホウキを持って登場していますが、響子さんのホウキは彼女の怨念がこもったある種の武器であるのは間違いないので問題ないと思います。


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闇をかけるまなざし」「笑う標的」「忘れて眠れ」が掲載された「るーみっくわーるど」の保存版。藤田先生のイラストで興味を持たれましたら是非。
単行本二億冊を記念し、高橋留美子先生のコミックスの全てが電子書籍化されたというニュースも報じられています


「初恋ゾンビ」林間学校編の指宿くんへの一言感想

 サンデー16号において、「初恋ゾンビが見えなくなるようになるためには、初恋ゾンビそのものへの恋心を失わなければならない」という極めて重要な情報が提示された「初恋ゾンビ」。物語がまた一つ大きく動いたような感じがします。

 本当は、今回は「初恋ゾンビ」の夏休み編に入ってからのまとめ的な記事(江火野さんと指宿くんはどちらがアドバンテージを取っているのか。主にエロ方面で)を書くつもりでしたが、諸般の事情で記事を書く時間が取れなくなってしまったので、林間学校編が終わった段階での感想を一行で書きます。

 指宿くんは、自分の体が持つ女としての魅力について、もっと自身を持っていいと思います。
 指宿くんの肉体を間近にしたタロウが、どれだけ劣情を抱いたのか教えてあげたいくらいですよ!

 あと江火野さんについては、家庭環境的に「洒落っ気」という概念を育てる余地がなかったことが『恋愛には興味がない』という彼女の性格(というか、今やタロウへのアプローチを妨げる心理的な制約になってしまった)を形成してしまったのが大変にもったいなく思いましたが、でもそういう家庭環境がなければプール編でのピッチピチ水着も拝めなかった訳であり、大変に難しい問題だなあと思った次第です。

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江火野さんの水着をもう一度拝みたい方はこちら


日本刀を持った制服女子へのこだわりを感じる作品 サンデー14号「RYOKO」感想

今週のベストカット
RYOKO

 コミックス1巻が発売された際、「サンデー非科学研究所」において作者の三ツ橋先生に『食へのこだわり』というテーマのインタビュー記事が掲載されていましたが、先生から出てくる「食へのこだわり」への回答が「作業に集中すると食べるのを忘れてしまい、栄養失調寸前になったことがある」「気合を入れたい時にたくあん一本を丸ごと食べた事がある」などといった感じで、むしろ日常生活での食へのこだわりのなさっぷりが明らかになったところが面白かったです。
 「RYOKO」で描かれる幸せな食卓は、そういったリアルな自分の食事にはない憧れが反映されたものであるとのこと。

 でも、個人的に「RYOKO」に対しては、「食へのこだわり」以上に「日本刀を持った制服女子中学生へのこだわり」を激しく感じている次第なので、もしまた三ツ橋先生にインタビューする機会があったら、ぜひ「日本刀を持った制服女子中学生」へのフェティシズムについても掘り下げて欲しいなと思いました。
 三ツ橋先生、カタナを持って戦う制服女子に対する執拗なこだわりは絶対にあるはずですよ! 絶対!(決めつけ)

 そして本編の方は、銃を武器に戦う元死刑囚のお姉さん・冷々が登場しました。彼女にはどうも最愛の妹を失ったつらい過去があるらしく、常に前向きで自分の命をも救おうとする料子に対して妹の面影を見ているような描写も入れられているので、彼女が料子にメロメロになるのはもはや時間の問題であると言えましょう。

 もし一度メロメロになったら、何かものすごい勢いで料子を可愛がりそうな気がしますよあの人。大人のクールな女性が女子中学生を盛大に可愛がる絵柄とか最高だと思います。楽しみですね(決めつけ)。

 あとは余談になりますが、個人的なこのマンガの楽しみの一つに、食材が出す鳴き声のバリエーションがあります。
 基本的にこのマンガに出て来る食材は、鳴き声が自己紹介的というか自分の名称をもじったものになっているのが特徴で、例えばお米は「ベイベイベイ」と効果音を響かせながら米粒を発射しますし、アサリは「リンリン」と鳴きながら空を飛び、サザエは「サアアアアン」と雄叫びを上げて腕を振り下ろし、アスパラガスは「パアアア」と叫びながら走り回ったりします。
 今回のボス食材はアワビなんですけど、アワビだけにその鳴き声は「あわわわわ」というドジっ子みたいな声に違いありません。あわわわ言いながら盛大にコケて料子を押し潰しにかかるとか、そういったドジっ子特有のアクションを交えた迷惑な攻撃方法に期待したいですね(ウソです)。

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今のところ、高得点を付けているレビュアーは将来への期待値込みという印象


時代が「絶チル」に追いついた!(嫌な形で) サンデー13号「絶対可憐チルドレン」感想

絶対可憐チルドレン

 アメリカ大統領にトランプ氏が就任してからというもの、世のすべての漫画家はトランプ氏の似顔絵を描く練習を始めたに違いないと思われますが、サンデー13号の「絶対可憐チルドレン」には早くもトランプっぽい人物が登場。大統領と銘打たれてはいませんが、首都の大統領府の前で大群衆の前で演説しているところからして、コメリカ合衆国の政治家であることは間違いなさそうです。

 何より素晴らしいと思ったのは、彼が演説しているエスパーを排除する排外的な演説の内容が、現実のトランプ大統領のキャラクターと完璧に一致しているところです。

 元々このマンガには自分がマジョリティーであることに価値を見出してマイノリティーを差別する系統の人々をカリカチュアした「普通の人々」という組織が設定面で用意されていたのですが、今や現実でも国籍や宗教に基づいたマイノリティー差別を行う言動は世界中で普遍的に見られる様になってしまっており、ついに時代が「絶チル」に追いついてしまった感が否めません。
 エスパーとノーマルの融和を訴える政治家が大統領候補として登場した「THE UNLIMITED 兵部京介」からたった4年で、全く逆の主張を行う人物が「絶チル」本編で合衆国大統領として登場することからしても、アニメをやってた頃とは時代の潮流が変わってしまったんだなと感じますね。

 そして本編の方ですが、色々あって兵部の体がダメになってしまった結果、ついに薫が「女王」としてパンドラの王座に座ることになる日が現実的に迫って来ていることが、個人的には「このマンガもついにここまで来たか」という感じでかなりグッと来てます。
 彼女がパンドラの女王となる目的が、連載初期の頃は「ノーマルとエスパーの最終戦争のため」だったのが、今では「ノーマルとエスパーの最終戦争を避けるため」と正反対になっているところも良いです。「薫がエスパー達の女王となる」という事実は一緒でも、そこに至るまでの経路が大きく変わった結果、その目的や結末も大きく異なることとなった──という、時間SFとしての「絶チル」の醍醐味が象徴されているように思えるからです。

 ただ、現時点では皆本が敵の手の内に囚われているのが気がかりではあります。薫にとって皆本の存在はもはや極めて大きなものになっているので、もしギリアムがそれに気が付いたら、まかり間違いなくそこを突いてくることでしょう。
 下手をしたら、一度は回避できたはずの「薫と皆本が対峙して殺し合いをする」あの展開を、再び繰り返すハメになる可能性もあるんじゃないかなと予想しています。というか、もしこのマンガがもうすぐクライマックスを迎えると仮定した場合、「コミックス1巻で提示された衝撃的なシーンを、最終巻でもう一度リフレインする」ってのはンもう盛り上がること間違いない訳であり、自分がギリアムだったら絶対そういう演出を施すと思いました(ひどい)。

 今回の感想としては、粉でできたショタ兵部はいいと思います。

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真木が再登場する局面にも期待


桜庭の中には何が生まれたのか? サンデー12号 「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 みんな桜庭さんが、文字通りの最期の勇姿を見せた回。
 ありがとう桜庭さん! 感動をありがとう!(死んでません)

 いやもう私なんか、桜庭がボールを持った時、思わず脳裏でキャプテン翼の主題歌「燃えてヒーロー」が流れ始めましたね。ちょっとアレ見なエースが通るのアレです。
 実際、桜庭がボールを持ってディフェンダーをぶち抜いた瞬間、これまで散々桜庭のことを「真面目にやれ!」「そんな怠慢許せるわけないでしょ!」「何様だ!」と散々なじってきた優希達が、一斉にものすごい歓声を上げ始めたのが象徴的です。これぞ文字通りのスグレモノぞと街中騒ぐ状態であり、あいつの噂でチャンバも走る状態ですよ。

 桜庭はこの瞬間、ボールを持っただけで観客を湧かすことができる、本当の意味でのヒーローになりました。
 尊大な態度を取り続けた結果、周囲からクソクソなじられ続けたあの桜庭が! みんなの期待を一心に集めるスーパーヒーローに! いや実際桜庭さんは今もクソなんですけどね!(フォロー)

 しかし桜庭は既にこの段階で極限まで疲労していたため、ディフェンダーをかわして稲妻シュートを決めようとした瞬間、膝が折れて地面にへたり込んでしまいます。ここでスーパーヒーロータイムは終了。周囲から「ボール出せ!」と言われながらも、「俺様のボールだぞ!」と意地でボールをキープして自分で何とかしようともがく、いつもの桜庭に戻ってしまいました。
 これまでのこのマンガだったら桜庭がこのままKOされて終わりだったんでしょうけど、しかし今回の彼は違いました。肉体的にも精神的にも極限まで追い詰められた桜庭は、その心理状態が「俺様のボールだぞ!」から「やられてたまるか!」に変化。桜庭からのボールを期待してペナルティーエリアに走り込んできた龍に、クソクソ言いながらも自らパスを出すという行動を取ったのです。あの桜庭が、龍に自分からパスを出したのです。

 本来であれば、パスを出すならもっと早く判断するべきだったのかも知れませんが、桜庭がギリギリまでボールをキープしてディフェンダーの注意を引きつけ続けた結果、龍がペナルティーエリアに走り込む時間を稼いた上で絶妙なタイミングでボールを出すことで決定的なチャンスを作ることに成功した訳であり、客観的に見れば「桜庭の粘りが功を奏した」と評価できる形になったのではないのでしょうか。桜庭はそういう褒められ方は絶対に納得しないでしょうけど、自分の中にはそんな泥臭いプレイをすることができる選択肢があることには気付けたかも知れません。
 桜庭はこれまで、ミルコから命令されてパスを出したことはあっても、自分でボールをキープできないと判断して、ボールを奪われる前に他のプレイヤーにパスを出したことは、これまで滅多になかったと思われます。どんな形であれ桜庭が自分からボールを出したことは、彼にとっては極めて大きな変化なのです。

 ミルコは極限状態でボロボロになった桜庭を見て「やりたい事だけやってきた男だが…今、この時、何が残っているのか、彼に何が生まれるのか、何が、出せるのか、私はそれを見たい!」と言ってましたけど、現時点での結論としては「やりたい事ができなくなった時、己の意地を捨ててチームの勝利のためにチームメイトにボールを渡す」選択肢を持つことができたということになりそうです。
 これは本来なら当たり前のことなんですけど、桜庭がそういうことができるようになったというのは凄いことなんですよ。いやマジで。

 そして彼には、本当なら「勝利のためなら自分を活かすために献身的に動くことを厭わない、信頼できるチームメイトを得ることができた」ことにも気付いて欲しいところなんですが、もし桜庭がそれを自覚したとしても、どれを表には決して出さないで『俺様を尊敬しろ!』と言い続けるでしょうね。それでこそみんなが大好きな桜庭さんです。

 そんな桜庭からボールを受けた龍がシュートを放ったところで今回のお話は終わったのですが、もしこれが普通の少年マンガだったら、まず間違いなくゴールインするでしょう。しかしこのマンガは普通の少年マンガではなく、主人公の龍に(女子からモテモテになる以外は)艱難辛苦を与え続けることで有名な「BE BLUES!」ですので、まだまだ油断はできません。龍がボールを蹴った足が、直前のプレイで小早川に蹴られた右足であるというところも懸案事項です。
 「龍にボールを渡す」という桜庭の伝説のプレイは、果たして実を結べるのかどうか。ボールの行方が気になります。

燃えてヒーロー
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おっさんホイホイとして非常に有効な曲」 はい


古見さんには尾根峰さんが友達として必要でした サンデー11号「古見さんは、コミュ症です。」感想

古見さんは、コミュ症です。

 お姉さん属性持ちの尾根峰さん登場回。

 このマンガに出てくる只野くんの同級生共は、基本的に一つの属性を極限まで高めたエクストリームな個性の持ち主ばかりであり、この学園を出たら一般的な市民生活を営むことが可能かどうかすら怪しい人がたくさんいるんですけど、その中にあってこの尾根峰さんは「ちょっとお節介だけど基本的には親切で、他人の恋愛感情を察することもできる、頼りがいがある同級生」という、このマンガでは極めて貴重なマトモな人材だと思われます。
 こんな普通にいい人が、本当にこのマンガに出てきてしまって大丈夫なの? と思ってしまうレベルで普通にいい人です。

 特に、「古見さんが密かに只野くんのことを想っている」ことを察した上で、その恋を応援してくれる同性の人物が登場したことは、古見さんにとっては大きな助けになるのではないのでしょうか。
 古見さんと接触のある他の同級生女子は、なじみはともかくとして後はヤンデレ属性とか下僕属性とか中二病属性とかそんなのばっかりであり、しかもみんな古見さんを「友達」というよりは「信仰の対象」として崇拝している始末なので、もし古見さんが只野くんとの関係について何か悩みを抱えていて相談しようと思ったとしても、彼女たちは相談相手として何の役にも立たないことは必至の有様です。
 そういう意味においても、普通に「同性の頼れる友達」として色々と色恋沙汰を相談できそうな相手を得られたのは、古見さんにとって非常に良いことだと思います。良かったですねえ古見さん。

 それはそうと最近のこのマンガ、ここ最近は特に「只野くんの周りに自然と女の子達が集まってドタバタ劇が繰り広げられる美少女わんさかコメディー」の体をなしつつあるような気がしてならないのですが、その辺はどうなんでしょうか。
 現在の只野くんは、古見さんとは既に事実上の相思相愛状態ですし、その上(色々な意味でおかしい人達ばかりであるということは置いておいて)女の子が常に周囲に寄って来るだなんて、実はものすごい羨ましい立場にいるんじゃないんでしょうか。

 何かちょっと彼が恨めしくなってきたので終わり。

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古見さん2巻は顧客満足度(カスタマーレビュー)の高さにも注目


そばにいられればそれでよかった サンデー10号「舞妓さんちのまかないさん」感想

舞妓さんちのまかないさん

 主人公のキヨが何故舞妓の屋形でまかないさんとして働いているのかという過去を描いた話でした。端的に言えば、彼女は「舞妓に憧れてはいたけど、舞妓になりたかった訳ではなく、舞妓の側にいられればただそれで良かった自分に気が付いた」ということになるんでしょうか。

 今のキヨは舞妓さんの側でまかないさん役に徹しているだけで幸せそうなのでそれでいいとは思いますが、いつまでも彼女がこの場所で料理を作り続けることができるのか、そしてこの場所に留まり続けることが彼女にとってベストなのかどうかは、多分まだ判りません。

 これが並の少年マンガや少女マンガだったら、ここから彼女の運命が大きく変わって再び舞妓への道を歩むとか、本格的に料理人への道を志すようになる的なドラマが起こること必至なんですけど、でも多分これはそういうマンガではないので、しばらくはこのまま特に大きなドラマもなく、彼女は彼女が自分で決めた居場所で、大好きな舞妓さん達のために穏やかに働き続けることになるんじゃないんでしょうか。

 劇的なことが起こらず、ただ日常だけが続いていくマンガが少年誌に載ってるというのは、ホントにすごいことだと思います。「舞妓さんちのまかないさん」は、サンデーが大きく変わったことを象徴するような作品になるのかも知れませんね。

ちろり(8) (ゲッサン少年サンデーコミックス)
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「ちろり」も一度ちゃんと通して読んでみたいです