サンデー一覧

ガッカリフラレ戦士祭り開催記念 サンデー14〜15号「メメシス」感想

メメシス

 サンデー14号から連載が始まった「メメシス」。
 既にヤマカムの山田さんが絶賛していらっしゃいますが、実際かなり面白いです。

 「メメシス」は、圧倒的な画力を以って過酷なファンタジー世界を構築し、そしてその圧倒的な画力を以って圧倒的に情けない理由で戦う主人公を描いた、色々な意味で圧倒的な作品だと思います。

 緻密かつ圧倒的な画力を持って純粋な中世ファンタジー的な世界の冒険譚を描く系統の作品としては、サンデーには既に「マリーグレイブ」が存在しています。
 「マリーグレイブ」とは、端的に言うと「最愛の妻を死から蘇らせるために冒険を続ける男が主人公のハートウォーミングな物語」であり、その画力を以って「凶暴なモンスターが跋扈して人間を蹂躙している死と隣り合わせな世界観」を構築した上で、「そんな世界の中でも大切な人への想いを忘れずに戦う主人公を始めとした人々の強さ」を表現している作品だと理解しています。面白いので読もう(宣伝)。

 一方の「メメシス」の場合は、画力を以って「凶暴なモンスターが跋扈して人間を蹂躙している死と隣り合わせな世界観」を構築しているところまでは一緒ですが、そんな過酷な世界で主人公が戦う理由が「『お色気に惑わされて自分達を不当に解雇した勇者に対し、自分達をフッたことを後悔させるため』だけであり、「フられたことによる怒りで強くなって戦い続ける主人公」を表現するためにその画力を全力投入しているところが、とても素晴らしいと思いました。
 生死と隣り合わせな過酷な世界の只中で、人々を救うためにでも、己の野望のためにでもなく、ただひたすら女々しい復讐心のためだけに動く。こういうキャラクターの立て方もあるんだなあと、「メメシス」を読んで感心させられた次第です。マンガってすごい(褒めてます)。

 主人公のアシューとキジラは「とにかく勇者レオンに自分たちを捨てたことを後悔させるためだけに戦っている」「自分達を振ったレオンのことを言われるとめちゃくちゃ強くなり、あらゆる魔物を一撃で撃破できる」という特性があることは第2話までで判ったので、今後はこの特性を如何に活かした面白い物語を作れるのかが、このマンガの見どころになるように思われます。
 第1話に出てきたリンダや、勇者レオンをたぶらかして仲間になった女子2人組など、出てくる女の子も胸がたいそう魅力的でした(無難な表現)ので、そういう方向でも期待できそう。

 あと、おそらくこのマンガを初見で読んだ方の半数くらいは、「主人公の1人であるアシューは女の子なのでは?」と誤解しているのではないかと推測しています。自分もそうでした。
 これは、アシューの格好が「太ももや二の腕が露出している鎖帷子」「ひらひらが付いたワンピースっぽい上着」「金髪ショートカット」と女子っぽさを連想させるものであること、座る時に股を閉じるなど仕草が女子っぽいこと、そしてアシューの一人称が「私」であるところが大きく、これは作者がミスリードを誘っていると解釈するべきでしょう。主人公キャラのデザイン的に、こういう試みは面白いなと思います。

 アシューが女の子だったら良かったのに! と思っている方も多いとは思うのですが、第一話冒頭で水中の魔物を倒すために全裸で剣を振るうアシューの肉体は華奢な体にしっかりした筋肉が付いたたいそうステキなものだったので、個人的には男の子でも全然構いません。今はもうそういう時代ですよ皆さん(感想?)。

週刊少年サンデー 2018年14号(2018年2月28日発売) [雑誌]

電子書籍化のおかげでバックナンバーが簡単に買える。いい時代になりましたねえ


桜庭モテ期到来記念 サンデー13号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 週刊少年サンデーに吹き荒れる恋の嵐!(挨拶)

 初手から主人公とヒロインが同棲して婚姻届を書くところから始まる「トニカクカワイイ」の連載開始に湧く最近のサンデーですが、今号では他にも

  • 指宿くんと江火野さんの二大ヒロインが揃ってタロウの自宅に押しかけ、まさに恋の正念場を迎えつつある「初恋ゾンビ
  • 古見さんからもらったバレンタインのお返しができずにヘタれる只野くんが見どころの「古見さんは、コミュ症です。
  • アニメ二期と共に猛プッシュを受けるはじめさんが何故かココノツと密室に閉じ込められ、「いいにおいがしました!」と褒められてるのか単にキモいことを言われたのか判断に困る「だがしかし
  • アクトとなりがクリスマスイブにホテルに一緒に宿泊! 熊の寝床の穴蔵だった前回とは違って、今度は熊はいないぞ! もうヤるしかない! な展開必至の「天使とアクト!
  • むっつりスケベなあくましゅうどうしが、姫への愛を切々と訴えた「魔王城でおやすみ
  • 一人暮らし状態のちひろの家に湯神がやって来て成り行きで二人で料理作った挙句、湯神がちひろの耳たぶをごく自然の中で触ってお互いに照れるという、往年の「BOYS BE…」を彷彿とさせるラブラブ展開を披露した「湯神くんには友達がいない
    (それはそうと今回のちひろ、いくら相手が湯神とは言え始終Tシャツと短パン姿というだらしない部屋着のままで過ごしたところが非常に良かったと思いませんか皆さん)
  • 大恋愛を経て結婚→初夜→出産→育児と人生最良の時期を描きつつも、その数年後には太平洋戦争が始まることを我々読者は知っているので今後クロ達がどのような運命を辿るのか非常にやきもきする「妖怪ギガ

 など、かなりラブにひなった作品が多数掲載されており、かつて「ラブコメのサンデー」と呼ばれた栄光の1980年代を取り戻そうとしているのではないか? という勢いを感じます。
 現在のサンデーの人気作「天野めぐみはスキだらけ!」も「保安官エヴァンスの嘘」も、基本はラブコメですしね。「キングオブアイドル」も、今回の話はラブコメに発展しそうですしね。やっぱり少年誌の基本はラブコメだよなーと再認識させられます。

 そんな恋の嵐が吹き荒れるサンデーの中にあって、何故今回「BE BLUES!」を取り上げるのかと言えば、勿論「BE BLUES!」においてもついに桜庭さんにモテ期が到来したからに他なりません。

 これまでは自分のテクニックに絶対の自信を持ち、天上天下唯我独尊状態で周囲をクソ呼ばわりしていた桜庭さんが! ドリブル突破して華麗にゴールをキメたいばっかりに、パスもしなけりゃ守備もしない、「お前がオレ様のところまでボールを持って来い」と言わんばかりの態度を取る桜庭さんが! そんなアレな態度を取り続けた結果、周囲のギャラリーから「真面目にやれ!」「そんな怠慢許せるわけないでしょ!」「何様だ!」と罵声を浴び続けて来た桜庭さんが! ついに! チームのみんなからモテモテになる日がやって来たんですよ! なんという快挙!

 桜庭が己のサッカーの技術に限界を感じ、ミルコに「もっと上手くなりたい」と直談判した結果、ミルコはチーム全体を巻き込んで桜庭に「ゴールの前でディフェンダーをかわしてボールを受け取り、そのままシュートする」という、フォワードにおけるボールを持っていない時の動き(専門用語で言うところの「オフ・ザ・ボール」)の基本中の基本を叩き込む特訓を開始しました。

 ここで重要なのは、ミルコと一対一でではなく、龍やレノン、阿部といったトップチームのメンバーを巻き込む形で桜庭の特訓を行っているところであり、これによってチームのメンバー達は桜庭が本気でサッカーに向かい合っていることを身をもって知ることができる点だと思われます。

 もともと彼らは、この前の聖和台との決勝戦で、体力の限界にまで追い詰められて「オレ様のところまでボールを持って来い」とチームメイトを挑発するかのような態度を取り続けた桜庭に対して、「何様だよおまえは!」と言いながらも彼が要求するプレイを忠実に行った実績があります。つまり彼らは、勝利のためなら桜庭に協力するだけの度量の広さを持ち合わせていたのです。
 ただ、桜庭の態度があまりにアレでコミュニケーションを拒否されていた状態だったので、それ以上に彼らの好意が桜庭に向けられることはありませんでした。

 チームが元々そういう状態だったところに、ここに来て桜庭がサッカーに対して真面目に取り込み始めてコミュニケーションを取る姿勢を見せた訳ですから、そりゃーもうみんな歓迎するに決まってます。
 特に龍なんかはもう非常に嬉しそうで、教室でオフ・ザ・ボールの動きについて桜庭に一方的に話かけてニヤニヤしているところを見ると、ンもう君はどれだけ桜庭のことが好きだったの! みたいな気持ちにならざるを得ません。龍にとっては、やっと桜庭と(ライバルではなく)チームメイトとしてサッカーの話ができることが嬉しくてしょうがないんでしょうね。仕方ないですね。

 そしてレノンも桜庭相手にガチで体を張って一線級のディフェンスを叩き込んでましたが、レノンは面倒見が良いお母さんキャラであることが以前の遠征合宿編で明らかになっていますので、龍に続いて桜庭も彼の母性本能をくすぐる存在になったという解釈で良いのではないかと思います(決めつけ)。

 あと面白かったのが、矢沢が桜庭を廊下でオフ・ザ・ボールの動きでからかってるシーンでした。これもまた、矢沢なりの桜庭への愛情表現ですね(決めつけ)。彼はこういうことするのが本当に似合ってますね。

 何か妙に長くなりましたが、要するに武蒼のみんなは桜庭への好意を臆さずに表現するようになったのね! 良かったわね! ということが言いたかったのです。判っていただけたでしょうか。

BE BLUES!~青になれ~ 30 (少年サンデーコミックス)
田中 モトユキ
小学館 (2018-02-16)
売り上げランキング: 1,006

3年生とのお別れ巻は2/16に刊行


畑健二郎先生が主人公のリアリティーショーの開幕を告げるサンデー12号「トニカクカワイイ」感想

トニカクカワイイ

 「結婚」をテーマにした新連載を開始する直前に声優の浅野真澄さんと結婚したことをTwitterにて発表し、「自身の結婚を新連載の宣伝として使う」という全く新しいプロモーションをぶち込んできた畑先生は、芸人としてのスキルが本気でスゴいなと思いました(本稿の要約)。

 それでこの新連載、第一話は『主人公の少年と謎に包まれた美少女が、命の危機が迫る中で偶然の邂逅を果たす』というドラマチックな展開だったものの、作者の畑先生はバックステージで『このマンガは「かわいい妻との結婚生活」そのものをテーマとしたお話になる』という趣旨のことを仰っているので、おそらく今後は初回のようなドラマチックなことはそうそう起こらず、主人公が「とにかくかわいい妻」と生活する日常の様子を延々と描いていくという、言うなれば「ハヤテ」の日常パートだけで構成された系統のマンガになるのではないか? と個人的には予想しています。

 謎の美少女との日常生活を描いたサンデーのマンガというと、最近では「柊様は自分を探している。」が連想されるとは思うのですが、「柊様」は最初から彼女の謎めいた素性そのものに読者の興味を惹かせる、一種のミステリードラマ的な構成になっていました。
 しかし今度の「トニカクカワイイ」の場合は、作者が「少年と少女が出逢い結婚するという、ただそれだけの話です。」「【恋愛】という過程はありません。これは夫婦の愛情についての話なので。」と明言してしまっている以上、謎の美少女である司の謎を解くとか、司の謎めいた思惑を解くべく主人公が挑むといったミステリー要素は一切なく、主人公と美少女がお互いに好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしらとときめいたりする恋愛要素もない、ただひたすら平和で穏やかな夫婦生活だけを描く作品になりそうな予感がひしひしとします。
 そういった意味でも、仮にも「王族の庭城」を巡る謎がストーリーの中核に存在していた「ハヤテのごとく!」とは方向性がかなり異る作品になるのではないかと思われます。

 また、先生ご自身が新婚ホヤホヤであることをわざわざ公言したことを加味すると、「マンガで描かれた内容は、畑先生ご自身が経験されたことそのものが元ネタなのでは?」というリアリティーショー的な側面を読者が期待するのもある意味当然であり、芸人である畑先生ならそういった期待も作品内にネタとして織り込んでくるに違いないと確信してます(勝手に)。

 何にしろ「トニカクカワイイ」は、畑先生にとって冒険的な作品になることは間違いないと思われます。現在は「結婚の発表と同時に結婚をテーマにした新連載を開始!」「直後に師匠の久米田康治先生にマンガでイジられた!」という話題性のみで語られがちなこのマンガですが、もしかしたら畑先生の人生そのものを我々に垣間見させてくれる一大リアリティー巨編となるやも知れません。ならないかも知れませんが。
 単なる新婚イチャラブコメディーとゆめゆめ侮ることなく、今後も注意深く読んで行きたいマンガだなと思いました。

新しい恥図

 そして久米田康治先生の突発読み切り「新しい恥図」については、「畑健二郎が『新婚』がテーマの新連載を開始という事態をネタに、畑先生の師匠である久米田康治先生が痛快なギャグマンガを描く」という構図そのものが面白いですし、何よりも「こういう場に久米田康治が呼ばれてマンガを作る」とは、どういうことなのか? どんなマンガを作ることが、この局面において望まれているのか? という自身の置かれた状況を把握した上で、その「望まれていること」を完璧な形で仕上げて来た久米田康治先生の底力が、何よりも素晴らしいと思いました。
 「新しい恥図」はホントに心底面白いマンガなので、まだ未読の方はネタが新鮮なうちに読んでいくことを強くオススメします。

 思えば久米田先生も、自分自身の苦境を自虐的にマンガのネタにすることを厭わないリアリティーショー気質の作家と言えますが、畑先生も自身の結婚をネタにしたマンガを初めたところからすると、そんな師匠の作風というか、漫画家としてのを引き継いでいるとも言えるのではないのでしょうか。
 師匠から弟子に受け継がれていく魂の絆! 美しいですね!(おわり)

週刊少年サンデー 2018年12号(2018年2月14日発売) [雑誌]

サンデー12号は掲載作品が軒並み面白いという奇跡の号(贔屓目)


只野くんは、凡人です。 サンデー11号「古見さんは、コミュ症です。」感想

古見さんは、コミュ症です。

 今回、加藤さんが古見さんと只野くんに出した詰将棋の問題、今回の話の中では何手詰めなのか語られていませんでしたが、あれはサンデー2017年52号に出て来て加藤さんが佐々木さんの正体がヨーヨー持った般若であることを問い詰めるシーンの理詰めのメタファーとして使われた、九手詰めのものだということが判明しました。

 全くの将棋の素人に九手詰めの問題(だいたい初段レベルの難易度)をカジュアルに勧めてくる加藤さんからは、将棋に対するガチっぷりというか、将棋が好き過ぎてつい難易度の高いものを勧めてしまう、オタクっぽい気質が伺えます。褒めてます

 古見さんが実はちゃんと祖母から将棋の仕込みを受けていた将棋の有識者で、最終的に正解を出してハッピーエンドに持っていける実力があったので救われた格好ですね。

 あと今回面白かったのが、只野くんが今回は極めて普通な凡人っぽいところを見せていた点です。

 最近の只野くんは、修学旅行にトラウマを持っていた古見さんをさり気なく元気付けたり、ガチムチな片井くんやナルシストな成瀬くんと馴染んで彼らが楽しく修学旅行を過ごせるようにしたりと、何かこう「もしかして只野くんって、孤独なクラスメートをさりげなく救えるコミュニケーション強者に成長したのでは?」と思わせる雰囲気を漂わせていたのですが、今回の只野くんは(本当は将棋有識者の)古見さん相手に、得意げに(ホントは間違ってる)解法を語って古見さんとの空気を悪くするという、如何にも「自分は相手よりも将棋が判っている」という勘違いをしている凡人がやりそうなことをキチンとやっており、非常に好感が持てました。褒めてます

 そしてコミュニケーション強者と言えば、古見さんと只野くんの間の雰囲気が悪くなっていることを察したなじみが「いつの間にケンカするほど仲良くなったの?」と、からかうような口調ながらもちゃんと二人の空気を改善することをさり気なく言っているところに、真のコミュニケーション王者としての貫禄を感じました。

 最期にドヤ顔で只野くんに勝ち誇る古見さんがカワイイです(感想)。

古見さんは、コミュ症です。(7) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-12-29)
売り上げランキング: 1,061

8巻は3/16発売とのこと


「泣いてる指宿くんが可愛い」とかもう言っていられないのは判っているのですが サンデー10号「初恋ゾンビ」感想

初恋ゾンビ

サンデー10号における「初恋ゾンビ」の感想を一言で表現すると、「泣いている指宿くんが可愛い」になります(ひどい感想)。

 ですが、指宿くんがあそこであんな風に泣いたのにはそれ相応の理由というかこれまでの様々な積み重ねがあったからこそであり、そこら辺を把握して指宿くんの心情を理解していなければ、真にあそこで泣いている指宿くんを可愛がることはできないと思われます。
 このマンガはちょっと最近指宿・江火野・タロウ(そしてイヴ)を巡る状況が込み入って来ているので、個人的に彼らの状況を整理したいと思い、ここに至るまでの過程を列挙してみようというのが、本稿の趣旨です。

指宿くんについて
  • あそこで指宿くんが泣いてしまったのは、江火野が(自分が誘われていない)タロウの誕生日会に誘われたことを、江火野の口から直接聞いたため。
  • タロウの誕生日がクリスマスイブであることを指宿くんは既に知っており、内心では彼から誘われることを期待していた。それ故に失望も大きい。
  • 今回の涙は、タロウの誕生日がクリスマスイブだと知った時の嬉しさの描写(サンデー8号を参照)と対になっていると思われる。あの時はあんなに嬉しそうだったのにねえー
  • ただし、タロウが誕生日会に指宿くんを誘わなかったのは、指宿くんが「イブは家族と過ごす」という(偽りの)予定を周囲に吹聴して誘いにくい状態にしていたことが遠因になっていることも間違いなく、指宿くん自身もそれを自覚していると思われる。
  • 江火野が指宿に誕生日会に誘われたことを告げたのも、「タロウの誕生日を知らない」と嘘をついたことがきっかけであったのは間違いない。
  • 嘘で生きてるボクでも」という台詞に、今の自分が虚構であることへの自覚と、それに対する後悔の念が伺えるような気がする。
  • タロウは自分ではなく江火野を選んだのだという気持ち、およびそうなったのは自分がこれまで積み重ねてきた嘘のせいだという後悔が、彼をあそこで泣かせたのではないか。個人的にはそう思った。
  • でも泣いてる指宿くんはカワイイ(連呼)。

江火野について
  • 指宿くんが後悔の涙を流した直接の原因は、江火野の「あたしタロウに誕生日会に誘われたの」という台詞だが、何故彼女はあそこで指宿くんにそのような告白をしたのか。
  • 彼女は自分がタロウに恋していることを自覚しており、かつ指宿くんもタロウのことが好きなのではないかと感づいているように思える。
  • 指宿くんとの会話の中で「指宿くんはタロウの誕生日を知らず、タロウの誕生日会へ誘われてもいない」ことを知った(ホントは知ってるんだけど、指宿くんがとっさに嘘をついたため)。その一方で、自分はタロウから直接誕生日会に誘われている。
  • 現段階ではタロウに近いのは自分であると思った彼女は、「恋のライバルへの口撃」として指宿くんに誕生日会のことを話したのではないか? という疑念が起こる。
  • 江火野は、これまで自分の中にあったタロウへの恋心を否定していた過去を反省し、現在は「自分の気持ちに正直になろう」という行動指針で動いている。そのためなら、自分の気持ちを「演じる」ことも厭わなくなっている(サンデー5+6号参照)。
  • なので、あそこで江火野が指宿くんに誕生日会のことを話したのも、ある意味「タロウへの好意を隠さない」が故の正直な気持ちだったのかも知れない。
  • 「自分の気持ちに正直」な江火野と、「自分の気持に嘘をついている」指宿。二人の立場は実に対照的である。

タロウについて

  • タロウは基本的に「新しい恋はせず、今のイヴとの関係を維持したい」と思っている。つまりは現状維持。
  • 誕生日会に江火野を誘ったのも、イヴの存在を江火野に知られずに現状維持をするためだったが、結果的に裏目に出ている。
  • しかし、彼は自分が江火野に惹かれているのも自覚しており、指宿くんへの初恋が忘れられないのも自覚している。
  • 自分が江火野に惹かれるとイヴが眠りにつき、指宿に惹かれると(初恋ゾンビの特性故に)イヴが輝き出すという形で自分の感情が嫌でも可視化されてしまう。どちらも彼がイヴに望んでいる状態ではない。彼はイヴには側で笑っていて欲しいと願っているだけなのだ。
  • 更に悪いことに、タロウは指宿くんと江火野がお互いに好意を持っており、この二人が付き合うのでは? という(読者から見ると心底間抜けな)疑惑を抱いており、江火野と指宿くんが仲良くなると、指宿くんにフラれたという嫉妬からイヴが「失恋ソンビ」化してしまうという、厄介な状態に陥っている。

イヴについて

  • イヴ本人は自覚していないようだが、彼女は席田が描いた(彼が自身の天草への片思いの)絵の中に席田の初恋ゾンビが入って「永遠に幸せ」な状態になっていることに、大きな憧れを持っているように思える。
  • これは、彼女が「タロウの側には永遠にはいられず、いずれ何らかの形で別れることになる。初恋ゾンビにとっての幸せの形は、常に思われ人の側にいることだけではない」と思っているからなのでは? という推測はできる。ただ本心がどうかは不明。

 現状としては、自分の気持に正直になって攻める江火野、偽りの自分の姿が捨てられず素直になれない自分に悩む指宿、自分が江火野と指宿に惹かれていることを自覚はしているがイヴのこともあって決着をつけられないタロウ、という感じになっているのではと思いました。

 タロウの誕生日会についてはどのように決着するのかはまだ不明ではありますが、このまま指宿くんがタロウ達に嘘を続けていると、タロウへのアプローチを厭わない本気の江火野さんには勝てないのではないかという線が個人的には濃厚であり、どうするの指宿くんという感じではあります。あとタロウもそろそろ何とかしろ。

 このややっこしい恋物語は、まだまだ余談を許しません。故にちょう面白いんですけど。

初恋ゾンビ(10) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2018-02-02)
売り上げランキング: 130

江火野×指宿って一般的な「百合」と呼べるんだろうか(と言われても)


桜庭さんが現実を受け入れた記念 サンデー8号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

やっぱり一条のが上手いのか?

 この回の「BE BLUES!」は、あの天上天下唯我独尊で傲慢でワガママで人の言うことを聞かなくて「俺様を尊敬しろ!」がモットーだった桜庭さんが、ついに龍が自分よりもサッカーが上手いことを認めた! という事実が、読者に大きな衝撃を与えました。

 桜庭というキャラクターは、テクニック面ではこのマンガの登場人物の中でも最強レベルの力を持ってはいるものの、性格面で極めて難があるためにフォア・ザ・チームな行動を全くすることができないことが彼のフットボーラーとしての活躍の足を引っ張っていることは、このマンガの読者の誰しもが判っていることだと思われます。
 ただ、そういう性格面の欠点を抱えているからこそ桜庭巧美というキャラが魅力的になっているのもまた事実であり、個人的にも「桜庭さんには、いつまでも『俺様を尊敬しろ!』なクソな桜庭さんのままでいて欲しい」と常日頃から願っている始末でした。

 そんな桜庭さんが、ついに龍や聖和台の真鍋といったライバル達の実力が自分を凌駕するものになりつつあることを認めたんですよ。そりゃーもう我々読者としては大事件です。ついにあの桜庭さんのねじ曲がった性根がまっすぐになってしまうのかと、期待と不安を抱かずにはいられませんでした。

 しかし我らが桜庭さんは、龍達の実力を認めたコマの直後、飼い主監督であるミルコにこう言い放ったのです。

 「もっとうまくなりゃいいんだよな!
  一条や真鍋のヤロウ、俺を止める奴らまとめてぶっちぎるために、
  どうすりゃいい? じーさん!

 この台詞からは、彼は龍たちの今の実力は認めたものの、自分が今以上のテクニックを身につけることさえできれば彼らを超えられるに違いないという自分の才能に対する執着が伺えると共に、彼の切羽詰まった表情からは、このままでは彼の自我の象徴であった絶対的なテクニックを失って「俺様を尊敬しろ!」と言い続けることができなくなることへの恐れをも伺うことができると思います。

 彼がミルコに「(龍や真鍋達が強くなっていることを)認めるよ」と言っているコマの前後に、以前の周囲が自分よりも強くなっていることを認められなかった頃のカットを挿入しているのは、彼の心境がこの頃から変化していることの描写でしょう。
 彼は、自分がこれからも「俺様を尊敬しろ!」と言い続けるためには、周囲が自分よりも強くなりつつあるという決して認めたくなったことを認め、その上で自分が彼らよりも更に強くなるための努力をせざるを得なくなったことを、あの頃から続けてきた葛藤の末に悟ったのです。

 己がまだまだ未熟であることを認め、それを克服するために新しい修行をすることを決意するという、少年マンガ的なロジックにおける「成長」のプロセスを忠実になぞることになった桜庭さん。まさかあのひねくれ者の桜庭さんが、「師匠の元で修行して強くなる」だなんて正統派の強化のされ方をするなんて! という驚きはあるんですが、でもその修行を受ける元の動機が「周囲を見下して『俺様を尊敬しろ!』と言い続けたい」ものである辺りは、やっぱり性根の部分は変わってないなと嬉しくなります。
 何にしろ、ミルコの特訓を経て桜庭が如何なる変化を遂げるのか、ワクワクしながら待ちたいと思います。次の試合では、前とは逆に真鍋を這いつくばらせて高笑いする、これまで以上にクソになった桜庭さんの姿が拝めるかと思うと楽しみです(褒めてます)。

 あと今回面白かったのが、桜庭から「やっぱり一条のが上手いのか?」と言われた後のミルコの態度ですね。多分ミルコは桜庭が大きな壁に突き当たって悩んでいることは把握していたとは思うのですが、実際に桜庭から悩みを打ち明けられた時に「信じられない」と(脳内で)言っているところからすると、今回の桜庭の行動は彼にとっても想定外に嬉しい出来事だった模様。
 桜庭からの告白を聞いた後、いきなり「初めて見た時から君は…とびきり輝く星のようであったよ」と桜庭を称えるポエムを語ってしまう辺りに、ミルコが今回の桜庭の告白を如何に祝福しているかが伺えるというものですよ(決めつけ)。

 そしてもう一つ面白かったのが今回の桜庭に付き合わされた藍子の挙動で、龍のことをやたら見つめている桜庭を心配して声をかけたら「馬のシッポ」呼ばわりされて激怒、激怒しているところを龍に見られて赤面、その直後に桜庭から素直に謝られて困惑、そして桜庭の「やっぱり一条のが上手いのか?」を聞いて呆然と、今回だけで実に様々な表情を見せてくれました。
これは龍×藍子のメジャーカップリングでは決して拝めない、桜庭×藍子というカップリングだからこその展開だったと言えるのではないのでしょうか。

 桜庭×藍子の組み合わせは、現段階では優人×藍子以上のマイナーカップリングという認識なのですが、これを機会に盛り上がって欲しいですね(カップリング厨的視点)。

BE BLUES!~青になれ~(29) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-11-24)
売り上げランキング: 9,966

この巻で描かれた聖和台との試合の顛末が、今回に桜庭の決断に繋がっているんですよねー


連載継続決定記念 サンデー7号までの「シノビノ」感想

シノビノ

 前回はペリー提督がアメリカ国旗が胸に刺さった血まみれの状態で副官のメガネに発見されるというヒロイックな終わり方をしたため、「本当に殺っちまったんか甚三郎!」と思ってしまったりしたのですが、今回は「甚三郎がペリーを気絶させる→ペリーが何者かに殺されたように偽造し、副官のメガネを騙して江戸襲撃作戦を中止させる→今回の黒幕である老中にペリーを連れて行き、ペリーに江戸襲撃をさせる密約があったことを認めさせる」と甚三郎が見事な手腕を見せ、「ペリーによる江戸襲撃作戦を辞めさせた上、老中による倒幕の陰謀も防ぐ」ことに成功。
 本来の任務である「ペリー暗殺」以上のことを、甚三郎は結果的に成し遂げてしまいました。

 というか、甚三郎は最初から「ペリー暗殺」という任務そのものが老中が仕組んだ陰謀であることを見抜いており、日本とアメリカが戦争を起こすことなく秘密裏に事態を収拾するには、この手段を取るしかないことを理解していたのでしょう。
 あとついにで言えば、ペリーと拳を交えて戦った結果、おそらくペリーは甚三郎のことを武人として尊敬の念を抱くようになったに違いありません。もうペリーは甚三郎にメロメロですよきっと。後に日米和親条約が無事締結されたのも、ペリーが甚三郎にメロメロになったからに違いないですよきっと(決めつけ)。すごいなじいちゃん。

 そして、次回で「黒船編」が終了するとアナウンスされた「シノビノ」ですが、その後も幕末を舞台に物語が続くことが決まった模様です。
 実際このマンガはものすごい面白いので、今後も続いてくれることが素直に嬉しく思えます。

 このマンガで個人的に魅力的だと思っているところは、主人公の甚三郎がカッコよくてカワイイのは勿論なのですが、何より毎回インパクト重視な展開で「毎週読んでいる読者を驚かせて楽しませよう」とする作り手側のスタンスが垣間見えるところです。

 例えば、サスケハナ号の中に巨大な狼がいて突然甚三郎に襲い掛かってくるエピソード(サンデー47号)が象徴的で、ここでは「狼の習性を利用して狡猾に戦いつつも、突然変異した孤独な狼に『最期の忍者』である己を投影して憐れむ」甚三郎が印象的な回ではあったのですが、「いくら江戸を襲撃する計画があったとはいえ、アメリカから日本までこんな化物を連れてくるのは割に合わないのでは」とか、「狼にトドメを刺す前に藤堂平助が空から降ってきて彼とのバトルが始まってしまったが、結局あの狼はどうなったのか」とか、「藤堂平助とのバトルが始まった後は、同じ部屋にいるはずの狼の存在が無視されている」とか、細かいところを突っ込み始めると色々とアラが出て来る回でもあります。

 しかし実際に読んでいる最中は、甚三郎が狼を翻弄する姿や、ヤンチャな戦闘バカである平助とのバトル、そして更にはそこに乱入してくる謎の中国拳法使いの老人、そして刻一刻と迫りくるサスケハナ号が江戸に到着するタイムリミットと、毎回毎回矢継ぎ早に繰り出されるおもしろ要素があまりに魅力的で、細かい整合性などは全く気になりませんでした。自分の場合はむしろ「甚三郎おじいちゃん、こんな夜更かししてしまって眠くならないのかしら…」とか、そういう余計なことを心配してしまう始末です。

 毎回何かしらの想定外な出来事が起こり、かつそれに甚三郎は忍びらしく的確に立ち向かって対処していき、そしてまた新たな展開が巻き起こる──という話の作り方は、極めて真っ当な少年マンガと言えます。「シノビノ」は、主人公が齢58歳のおじいちゃんという特異性を売りにしてはいるものの、その内実は正統派の少年マンガになっていると、個人的には思っています。
 「シノビノ」は多分、世間的にも2018年に来るマンガの一つになるんじゃないかと期待してます。

 あと、椎名高志先生ファンサイト的な視点では、サンデー2018年2号で甚三郎がペリーの眼に勲章を突き刺した際に「NOOOO!」と叫んで血をブッシャアアアと大げさに吹き出す姿が、ちょっと椎名高志先生のマンガっぽいテイストを感じて嬉しかったです。判ってもらえるでしょうか

シノビノ(2) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-12-29)
売り上げランキング: 15,053

平助はこれからの幕末編で出てくること必至なので期待


サンデー2号くらいまでの「絶対可憐チルドレン」感想

絶対可憐チルドレン

 「けものフレンズ」のアニメ2期に関するお知らせについては、本当に残念でしたね…(挨拶)。

 もうかなり前のことになってしまいますが、サンデー2018年2号で「黒い幽霊」に操られた明・初音コンビとの戦いを描いた「けものパークへようこそ」編が終了しました。

 前の対ナオミ戦もそうでしたが、「黒い幽霊」に操られたかつてのバベルのメンバー達との戦いは、そのキャラが持つ根源的なテーマに再びスポットライトを当てることを主題にしているように思えます。
 ナオミの場合は彼女にとっての「運命の男」である谷崎主任とのSM関係の再構築がテーマでしたが、今回の明と初音の場合は動物に変身したり憑依したりする一族の能力故に社会から阻害されて来たという「一族の宿命」を如何に乗り越えるのかという点がテーマだったと言えましょう。

 結論としては「社会への怒りに身を任せるのではなく、まず隣人を愛して身近な幸福を手に入れなさい」という、まあ当たり前ではあるけど大切なことに二人が気付き、先々代の力もあって「黒い幽霊」の誘惑を撃退することに成功します。
 「まず隣人を愛せ」とか書くと極めて説教臭いというか宗教っぽくなってしまいがちなんですけど、こんなテーマをちゃんとコメディの範疇に収めて描くことができたのは、特に初音というキャラが持つバカっぽさ(良い意味で)に救われているところが大きいのではないのでしょうか。やっぱりいいキャラですよね彼女。良い意味でバカだけど(良い意味で)。

 あと、先々代の二人が初音と明に対して「家に帰ったら子作りでも始めろ!」と言ってましたけど、自分も以前親戚の戦前生まれで年代的にはあの先々代と同年代であろう叔父の一人から、「結婚したかったら、まず女の子を孕ませろ」とド直球なことを言われた経験があるので、あの年代の男性ならこういうことを本気で言いかねないのでは? と妙に納得してしまいました。
 多分「絶チル」の最終回では、この二人の子供がわんさか出てくるに違いないと思ってます。お幸せに。

絶対可憐チルドレン(50) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2017-12-22)
売り上げランキング: 1,653

絶チルが50巻に到達。連載開始の頃を思い出すと感慨深い


まさか優人がモテる姿を拝めるとは思っていなかった記念 サンデー1号〜3+4号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 お久しぶりです(´・ω・`)。
 書く暇がなくて溜まっていた、ここ最近の「BE BLUES!」の感想のまとめです。

2017年1号

 主に「龍のちんこがでかい」ことが明らかになった高校選抜合宿が終了。
 「試合中には色々あったけど、最期はみんなで風呂場で龍のちんこを見てほっこりして大団円」な展開にならなかったのが、返す返すも残念ですね(ちんこへのこだわり)。

 この回では、優希が「藍子の龍を見る目が完全に恋する乙女のソレである」ことについに気付いて動揺してしまうというラブコメ的なイベントが発生したのですが、当の龍はそんな女性陣の動きには全く気付かず、桜庭に対して「合宿でヤバいって思った時、お前の顔が浮かんでさ…助かった」と愛の告白に等しいことをサラッと言ってしまう始末。やはりこのマンガで最も龍に愛されているメインヒロインは、藍子でも優希でもなく桜庭であるということが、改めて証明されてしまったところが面白かったです。

 そして桜庭といえば、ラストの試合で龍にボールが渡ってカットイン→シュートという龍の必殺技が炸裂するシーンで、チームメイトがみんな「龍なら決めてくれる!」って表情しているところで、桜庭だけ唯一最期まで「オレにボールをよこせ!」ってアピールを必死にしているところも良かったです。
 桜庭は、今後いくら龍が周囲から尊敬を集めるスーパープレイヤーになろうとも、ずっと龍に対してこんな感じでガツガツ当たり続けることでしょう。いつまでも変わらない君が、そこにいてそうやってくれているだけで嬉しい。そんな心境です。

2017年2号

 武蒼新チーム始動の巻。ジョージとリンゴの代わりに入った阿部・南部コンビが守備の穴になっているということを仲間内で吹聴している矢沢が、「だったら本人たちに言ってみろよ!」と言われた途端に突然「そのうちな…」と弱腰になってるところを見ると、彼は今後こういう役回りになっていくんだろうなと予感させるに十分でした。彼のレギュラー入りは当分なさそうな予感。

 あと、その問題の阿部・南部コンビがビシッと立ってるコマがありましたが、彼らから漂う何と言うかこう「如何にも穴があって頼りなさげ」感が素晴らしいです。先代のジョージ・リンゴ組の「守りカタくて頼りがいがありそう」感とは大違いですよね。
 こういうキャラが描ける田中モトユキ先生すごいなあというのが、この回の主な感想です。

2017年3+4号

 謎の新人美少女マネージャーが登場、優人が突然モテるの巻。

 前回でも1コマだけ登場してその可愛らしさをさりげなくアピールしていた新人女子マネ候補(名称不確定)の彼女でしたが、今回は1年チームとの練習試合において、ナベケンでも止められなかったボールをすんでのところでクリアするファインプレーを見せた優人に対して急接近し、「青梅先〜んぱい♥ 頑張ってください!」って如何にも媚び売ってます的な台詞を言うという、このマンガ的には極めて珍しい、いわゆる童貞を殺すムーブを放ってきました。
 もちろん優人は童貞なので、効果はてきめん。著しく動揺はしているものの、何かものすごい嬉しそうです。

 自分は以前から「一度でいいから優人がモテるところを見てみたい」と思ってはいたのですが、実際に彼がモテ始めてみると、「優人のくせに生意気だ!」とこの回の矢沢と同様の感想を抱いてしまいました。自分もまだまだ器が小さいッス…(自省)。

 もっとも、優人はラストで龍から「みんながおまえのような意識を持って戦えば、きっといいチームになれる」と褒められて照れまくっていたので、優人の最愛の人物はやっぱり龍なんですよねー。
女子マネや龍から褒められたのはいいけど、浮かれて調子に乗ってミスしなけりゃいいんですけどねー(ひどい感想)

BE BLUES!~青になれ~(22) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2016-03-18)
売り上げランキング: 18,396

この調子で優人がモテれば再び表紙に返り咲けるのではと思いましたが、むしろ新女子マネが単独で表紙を飾りそうな予感


探偵オペラの始まりだ! サンデー1〜2号 「探偵ゼノと7つの殺人密室」感想

探偵ゼノと7つの殺人密室

 先週のサンデーから始まった新連載。「ジーザス」の原作を書いていることで知られるベテラン作家の七月鏡一先生と、これが初連載作品となる杉山鉄兵先生のコンビという、ベテランとルーキーの組み合わせがマニア的には非常に興味深い作品です(やっかいな視点)。

 それでこの作品、ジャンル的にはいわゆる探偵モノに属しているのですが、この作品世界は非常に仰々しいというか、全ての物事が非常に大げさで、劇場的な殺人事件を起こすために世界の全てが作られていると言っても過言ではないと思われます。

 例えば、第一話の殺人事件は「過去にライバルに選手生命を絶たれ、恋人まで奪われた絶望から復讐に燃えた」元野球選手が犯人なのですが、その殺害方法は「ライバルがマウンドに立っている時に、スタジアムの天井から鉄筋を落として串刺しにする」という、極めて劇的なものでした。
 しかも、「そのスタジアムにはマウンド上に鉄筋を落とせる構造が最初から仕組まれており、それを使えば完全犯罪が行えるようになっていた」ことが明らかになり、更にはこの作品世界には「そのような完全犯罪のプランを作成し、それをばら撒いて犯罪が起こるのを眺めて楽しむ」という完全犯罪マニアとも言うべき人物が黒幕に存在しており、その黒幕は「あらかじめ殺人のための仕掛けを施した7つの建造物」を作っていることが次々と明らかになる辺りまで読み進めると、読者は誰もが「やべえ! このマンガはどこかおかしい!」と戦慄を覚えること請け合いです。

 つまりこの作品は、「密室で起こる完全犯罪を見てみたい!」という欲望のためだけに、わざわざ第一話の殺人スタジアムのような仰々しい人殺しギズモを満載した建造物を、7個も作っちゃうおかしい人がいる世界なんですよ。そして、それに立ち向かおうとする若き探偵が、我らが主人公の探偵ゼノなんですよ。探偵と完全犯罪者が最高に活躍できるためだけに作られた世界が、この作品の舞台なんですよ。個人的には、こんな仰々しい舞台設定があるだけで、ンもうゾクゾクして来ます。
 「あらかじめ殺人のための仕掛けを施した7つの建造物」! 個人的には、早くも2018年における声に出して読みたい日本語大賞の最有力候補です!

 そんな舞台設定が激しく魅力的なこのマンガですが、勿論登場する人物もその舞台に違わず魅力的です。
 特に主人公の探偵ゼノ君は「ぼくは記憶がない。だから人間というものがわからない! だから知りたい! 人はなぜ殺人なんて犯す?」と本気で訴える健気で儚げでいたいけな側面を持ちつつ、操作中には「人間がわからない」というところから来る明らかにコミュ症的な挙動の数々を繰り広げるコミカルな一面も持っており、非常に魅力的なキャラクターとなっています。
 そして第一話でゼノに「7つの殺人密室」のことを教えた直後に密室殺人の犠牲者となった曰く有りげな建築家の甲斐七楼、第二話に登場したミステリアスな甲斐の養子の三姉妹、「悪辣な公僕」を絵に描いたような人物である公安の姫宮警部など、出て来る人物がみんな一癖も二癖もあるヤバい人たちばかりであり、そういった意味でも「探偵と犯罪者が活躍するために作られた仰々しい作品世界」を彩るに十分な存在と言えるでしょう。

 なんにしろ、この「探偵ゼノと7つの殺人密室」は、探偵モノとは言えども「名探偵コナン」とは明らかに方向性が違った作品であることは間違いありません。これからの展開が楽しみです。

ジーザス(1) ジーザス JESUS (少年サンデーコミックス)
小学館 (2013-01-01)
売り上げランキング: 82,920

七月鏡一先生と言えばやはり「ジーザス」は外せないお年頃(=オッサン)