サンデー一覧

武蒼高校敗退記念 サンデー28号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 もう先々週の話になってしまいましたが、全国大会に出場した武蒼高校があっけなく二回戦で敗退したのにはビックリしました。

 憎しみに囚われて鏡をパンチして痛い痛い言ってる桜庭とは対象的に、名実ともに武蒼のエースとして輝かしい活躍をした龍を散々マンガの中で持ち上げておいて、最後の最後で自分が最初に蹴ったPK戦で負けて敗退し失意のどん底に突き落とされるという、かなり意地が悪い構成だったのが印象的でした。

 しかし、そもそも「BE BLUES!」という作品は、天才サッカー少年だった龍に大怪我を追わせるところから全てが始まったことからも判るように、龍に対してあらゆる艱難辛苦を浴びせ、それを乗り越えて成長する様を描く大河ドラマであることを忘れてはなりません。
 今回の「全国大会での二回戦敗退」という結果は、龍に対する新たな艱難辛苦であり、彼に「チームのエース」としての更なる成長のきっかけを与える糧となることでしょう。

 この辺、「いつまでも龍を逆恨みしてないで、ちゃんと局面に応じてパスができるようになれよ!」という段階で悩んでいる桜庭とは悩みのレベルというか待遇が違うような気がしますけど、でも桜庭さんはそれでいいんですよ! それだからこそいいんですよ!(甘やかす)

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やっぱり武蒼がもっと上に行くには桜庭の覚醒が必要だと思うんですよ


古見さんの性欲が垣間見えた サンデー27号「古見さんは、コミュ症です。」感想

古見さんは、コミュ症です。

 もう先々週の話になってしまいましたが、サンデー27号の「古見さんは、コミュ症です。」で、古見さんが只野くんの首筋にこっそり触った話はすごく良かったと思いました。

 古見さんは、ハードなコミュ症っぷりがあまりにアレなために普段はあまり強調はされませんが、彼女もああ見えてお年頃の女の子なので、人恋しさから意中の男子に触れてその温もりを感じてみたいという欲求は、当然のことながら持ってるはずなんですよ。
 キレイな言葉で表現すれば「スキンシップ」ということになりますが、要するに「恋人とイチャイチャしたい」というアレです。

 勿論、このマンガは恋人とのイチャイチャを描画することを目的としたサラダデイズかつボーイズビーな作品ではないため、古見さんはそういうことをしたい素振りは基本的に全く見せません。この作品は、あくまでコミュ症な主人公が徐々に周囲の優しい人々と触れ合って心の世界を広げていく様を描いた、美しく尊い作品なのです。

 でもそれだけに、ごくまれに見せる古見さんの「只野くんに触りたい」というエロスな欲求を垣間見せるサンデー27号のようなエピソードは、とても貴重なのです。
 サンデー27号で古見さんがものすごくドキドキしながらもほんのちょっとだけ只野くんの首筋に後ろから触ったあのシーンからは、「あの古見さんが只野くんにイタズラを!」という意外性、イタズラをして触ってしまうくらい彼女が只野くんに対して心を許していること、そして好意を持っている男子に触って温もりを確かめてみたいという秘められた欲望といった、様々なことを感じ取ることができると思います。

 更に言えば、直接古見さんが只野くんに触っている描写そのものがないというところからは、実際に触っていた時間がごく短いという時間的な表現をしていることは勿論のこと、「只野くんに触れている時の古見さんの表情を想像する」という妄想を読者に掻き立てる効果も含まれており、何というかこう非常にソソるものを感じました。
 つまり我々は、この短いエピソードによって、「古見さんの性欲」という禁忌について妄想することを作品から許されたのです。なんと罪深く、そして魅惑的なのでしょう。そんなエロい事を思ったエピソードでした。

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コミックス3巻辺りからラブコメ要素が強くなって来た印象


キレる桜庭はとても愛おしい サンデー27号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 個人的に「BE BLUES!」の高校生編とは、桜庭さんが大活躍して「武蒼のメッシ」の異名で呼ばれるようになるまでの物語であると固く信じているのですが、そこに至るまでの道は極めて厳しいものになるであろうことも確かです。

 彼の行路が厳しくなるであろう最大の理由は、桜庭さんが極めてワガママでキレやすい尊大な性格の持ち主であることに起因しているのですが、しかしワガママでキレやすい尊大な性格だからこそ彼は唯我独尊のストライカーとして成功できているとも言える訳で、この二律背反をどう克服するかという点が、桜庭というキャラクターの物語を語る上での大きなポイントであることは間違いありません。

 という前提を踏まえた上でサンデー27号の「BE BLUES!」なのですが、選手権決勝でライバルである龍が決勝ゴールを決める大活躍したことで桜庭の鬱憤が積もって大爆発する様子を一話を通じて丹念に描いた、桜庭さんのキレ芸を堪能するための回だったという感想を持ちました。

 自分が抜けなかった聖和台の真鍋のディフェンスを龍が抜いたのは自分に対するあてつけに違いないと思い込み、自分よりも格下だと思っていた龍が試合で活躍する様子を間近で見て余計に苛立ち、トイレで鏡を殴って「調子に乗るんじゃねえぞ!」と怒りを爆発させる。勿論、試合中に龍にパスは絶対出さない。
 これらの行動は、全て「龍はいつの間にか自分よりも成長していた」という現実を受け入れることを桜庭が全力で拒否していることを表現しているのは明らかです。いいですね! このひねくれた姿こそが、みんなが大好きな桜庭さんなんですよね!(ひねくれた好意)

 実際にはミルコが桜庭に対して言った「人を認めても、君自身を否定することにはならんのだよ」という言葉の通り、龍の今の実力を素直に認めた上で、龍を活かしつつ自分がもっと活躍できる戦術を取れるようになるのがベストなのですが、しかしそれが簡単にできない性格だからこそ、桜庭というキャラクターにはドラマが生まれるのです。
 このマンガの舞台はこれから高校選手権の全国大会に移って行きますが、龍に先に行かれた桜庭がこれからどのような形で龍に追いつこうとするのかというのが、今後の大きな物語のテーマになるのではないか。そんなことを期待させる回だったと思いました。

 そして今回の結論としては、ラストで「認めて…たまるか」と呟きながら茹で卵を食べる桜庭はものすごく可愛かったです。

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選手権決勝序盤の桜庭の勇姿が拝める27巻


サンデー25号 新連載陣感想まとめ

隕石少女 ―メテオガール―

 「空から人間じゃない女の子が降って来る」という全人類男子憧れのシチュエーションを、「空から人間じゃない女の子がひっきりなしに降って来る。でも、その女の子に当たると死ぬ」という捻った形にアレンジした、終末感あふれる社会を舞台にした作品。

 当たると死ぬような物体(以下「MG」)が日常的に落ちてくる異常な世界が舞台なのにも関わらず、そこで暮らす人々はみんなそんな日常に慣れてしまって危機感が薄れ、逆にMG対策グッズを持ち歩いていることがダサいとみなされてしまっているところが、「まあでも、そういうもんだよなあ」という気持ちにさせられます。
 作品内に出てくるMG接近の警告を知らせるスマートフォンのアラーム音は、かつて東日本大震災の時に頻繁に携帯電話から鳴り響いていた緊急地震速報を連想させるに十分ですが、それに対して既に我々の感覚が鈍ってしまっている点も含め、この作品は現代日本に住む我々のメタファーとして描く社会派なマンガとなる素質は十分あると思いました。

 そういえばまだ頻繁に地震が起こっていた当時、うどん屋に入った直後に緊急地震速報が鳴り響いて震度3クラスの地震に襲われたにも関わらず、揺れが収まった後に普通にうどんを店員に注文し、店員も普通に応じてうどんがすぐに出てきたってことがありました。店にいた他の客も、特に騒ぐこともなく淡々としてましたよ。
 あの時は「非日常が日常になるってのはこういうことなのかなあー」とぼんやり思いながらうどん食ってましたね。それを思い起こさせる第一話でした(感想?)。

第九の波濤

 「ファンタジスタ」の草場先生の新連載。
 「東京生まれ東京育ちの都会っ子の男子が、長崎で出会った釣り好きの女子に一目惚れしてしまう」という、これまでの草場先生の作品とは明らかにノリが違う話だったのでどうなることが心配だったのですが、サンデー25号において主人公が長崎の大学の水産学部に進学した結果舞台が長崎になったことで、やっぱり草場先生のマンガは九州が舞台になるんだよな! と安心しました。
 主人公はまだ「東京生まれのシティボーイ」の状態ですが、いずれは「ファンタジスタ」の轍平みたいな立派な九州男児に変化していくこと請け合いですよ。楽しみですね(そういうマンガ?)。

 舞台が水産大学ということは、このマンガは「銀の匙」や「あおさくら」と同様の、『日常とはノリが違う異常な法則が支配する大学』が舞台の職業訓練モノということになると思われます。
 現実の日本の水産業は、資源の減少や漁業従事者の減少など色々と問題を抱えていると言われる業界なのですが、「第九の波濤」はそれに対する光明を示すことを究極の目標とした社会派のマンガとなれるのでしょうか(そういうマンガ?)。

妖怪ギガ

 みんな大好き日本妖怪を題材に、これまでのソレ系の話とはちょっと違う解釈を加えた小話集として連載が始まった「妖怪ギガ」。
 テーマが妖怪であることに加えて、絵柄がクラシカルというか(今っぽい「妖怪ウォッチ」とかと比べて)やや劇画チックな正統派の妖怪絵巻なので、内容的にはちょっと少年誌っぽくないというか、むしろビックコミック系に載っていても不思議じゃないように思えるのですが、今の懐の広さをアピールして行きたい少年サンデーならこういうマンガも許容範囲ですよ! ということなのでしょう。

 作品の雰囲気は、基本的に妖怪が人間のアレっぷりに困ってしまうようなユーモアな方向に振られていて楽しく読めるのですが、時々サンデー25号の「絡新婦(女郎蜘蛛)」のような、妖怪を通じて人間の本性をさらけ出すような怖い話を振って来るので、ゆめゆめ油断はできない作品だなと思ってます。やっぱり1番怖いのは人間ッスよねー

週刊少年サンデー 2017年25号(2017年5月17日発売) [雑誌]

個人的に今のサンデーの看板マンガは「舞妓さんちのまかないさん」なのではと思い始めている


若木先生再登場記念 サンデー24号「キング・オブ・アイドル」感想

これが若さというものですよ皆さん
キング・オブ・アイドル

 「キング・オブ」と来たら「ファイターズ」よりも先に「ドラゴンズ」を連想する人と友達になりたいです(挨拶)。

 「神のみぞ知るセカイ」「なのは洋菓子店のいい仕事」の若木民喜先生が、早くもサンデーに復帰。
 若木先生の新連載の第一話と言えば、前作「なのは洋菓子店のいい仕事」が「『若木先生の最新作』『洋菓子店が舞台の物語』から連想される、来店する美少女たちとパティシエが織りなすハートウォーミングなストーリー」のイメージを、「ケーキは暴力ですよ。バカな客の舌を打ち倒す力です」という決め台詞で徹底的に否定しにかかるという大変に暴力的なものであったため、今回の「キング・オブ・アイドル」も「普通の美少女アイドルものマンガと思わせておいて、最後の方でなんかものすごい暴力を振るわれるのでは?」と、ビクビクしながら読みました(弱い)。

 その感想ですが、若木先生が自ら「少年誌王道マンガ」と仰っている通り、アイドルが主人公の極めて判りやすいマンガという認識を持ちました。
 主人公のまほろは純粋にアイドルを目指すピュアなハートと「ものすごくよく通る声」という歌うことに特化した判りやすい必殺技を持った清々しいキャラクターですし、まほろと共にアイドルグループを組むことになるであろう仲間たちも皆「真面目なツンデレ」「内気な巨乳」「明るいスポーツ少女」「場数を踏んでるジュニアタレント」とひと目で特徴が判るメンツばかりと、とても判りやすいです。

 更に言えば、今回の第一話は「アイドルになるための登竜門的なオーディション」という精神的に厳しそうな場所が舞台であるにも関わらず、出て来る芸能事務所の人はみな親切で優しく、オーディションの観客たるアイドルオタク達もアイドルを目指す女の子達を素直に暖かく応援し、まほろの歌声には素直に感動するなど、「アイドル」という職業から連想されるネガティブな要素が全くないことも、この話の特徴と言えるかも知れません。ジュニアアイドルの周りを支える大人達がみんな良い人達というのは、個人的にはアニメの「アイカツ」を思い起こしました。
 何にしろこのマンガには、「なの菓子」第一話のような暴力的要素は全くありませんでした。とりあえず、このマンガを読み始める前の懸念が全てとりこし苦労であったことは本当に良かったです。

 唯一王道じゃなさそうな点を上げるとすれば、「ガールズアイドルの頂点を目指す主人公のまほろが、実は男の子だった」ということですが、まあでも可愛くて歌や踊りが上手くてガールズアイドルとして魅力的であり、何より本人が「ガールズアイドル」として輝きたいと思っているのであれば、我々としては物理的なちんこの有無には関係なく応援するのは至極当然のことなので、個人的には全く問題ありません。ちんこの有無だなんて些細なことですよ。いやマジで。
 それに「ジェンダーの差を乗り越えて本当の夢を掴む」という物語は、現在のサンデーでも「天使とアクト!」や「初恋ゾンビ」が該当しますし、アイドルという題材においても過去に「アイドルマスター ディアリースターズ」や「AKB49」といった事例がありますので、「性別を偽ってアイドルを目指す」物語はもはや王道ストーリーの一つと言っても問題ないのかも知れません。

 何にしろ、若き先生が全力を尽くして本気で王道アイドルマンガを描いてやろうとする気概が十分に伝わって来る第一話でした。この「キング・オブ・アイドル」は今後まかり間違いなく面白くなるマンガだと思うので、素直に今後の展開に期待していきたいと思います。

 それでもし「キング・オブ・アイドル」がギャルゲーだったら、瀬川さんをまず最初に攻略したいですね(感想)。

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フィジカルで王道な「キング・オブ・アイドル」とは対局の、ロジカルシンキングを極めた作品。これを描いたからこそ今の若木民喜先生があるとも言える


エヴァンスさんは、コミュ症です。サンデー22+23号「保安官エヴァンスの嘘」感想

 サンデー春の新連載陣第2弾として登場した「保安官エヴァンスの嘘 ~DEAD OR LOVE~」。

 父から様々なモテの教え(注:モテるとは言ってない)を叩き込まれた主人公・エヴァンスが、西部劇っぽい世界を舞台に街をならず者から守る保安官をしつつ、事件の度に巡り合う美女からさり気なくモテようと努力する(けど結局ダメになる)、ちょっとひねった形のラブコメディです。
 主人公が非現実的なモテを目指すコメディという意味では、かの「神聖モテモテ王国」の遠縁にあたる作品であるとも言えますね。

 第一話と第二話は、「美女が登場→エヴァンスに気がありそうな素振りをする(というか実際気がある)→エヴァンスが父のモテ格言を元にカッコいい立ち振る舞いをしてモテようとする→その振る舞いが災いして美女と別れることになる」という構成のこのマンガの基本的なロジックを紹介するかのようなお話であり、これはこれでとても面白かったんですが、第三話で「エヴァンスの幼少期からのライバル」を自称する賞金稼ぎの女性・オークレイがサブレギュラーキャラ的な扱いで登場したことで、俄然このマンガがラブコメとして面白くなって来たように思えます。

 このオークレイというキャラ、客観的に見ればどう考えてもエヴァンスを男性として意識しているんですが、「これまでの人生が射撃一筋だったため、恋愛経験が皆無でどうやって異性とおつきあいすればいいのか判らない」上、エヴァンスは彼女にとって「昔から何かと張り合ってきたライバル」という位置付けなため、「相手から自分を意識していることを悟られてマウンティングされることを極度に恐れる」あまり、エヴァンスに対しては意地を張り合うような態度しか取れないという、いわゆるツンデレキャラです。金髪碧眼ショートカットのツンデレキャラですよ。いいですよね

 もしこのマンガが「保安官エヴァンスの嘘」ではなく「神のみぞ知るセカイ」だったら、ツンデレキャラは容易にフラグを立てられてあっけなく攻略されてしまうところなのですが、残念ながらこのマンガの主人公のエヴァンスは桂馬のように女性心理の分析に優れた冷静なギャルゲーマーではなく、オークレイと同様に「父からモテの教えを受けて知識ばかりは豊富だけど、恋愛経験は皆無なのでどうやって異性とおつきあいすればいいのか判らない」というボンクラな上に、オークレイは彼にとって「昔から何かと張り合ってきたライバル」という位置付けなため、彼女に対しては「相手から自分を意識していることを悟られてマウンティングされることを極度に恐れる」あまり、無理して冷静にカッコよく振る舞おうとして失敗し、自らフラグをへし折る始末です。

 要するにこの二人は、既にお互いのことを意識している相思相愛状態であるにも関わらず、「相手のことが気になる」ことを相手に悟られないようカッコつけてコミュニケーションを取ろうとしないがために、お互いの心理を知るチャンスを自ら失ってフラグをへし折っている、似た者同士であると言えます。
 よりわかりやすく言えば、この二人はコミュ症ですね。コミュ症。

 現在のサンデーでコミュ症と言えば勿論「古見さんは、コミュ症です。」になる訳ですが、古見さんの場合は彼女とコミュニケーションを取ろうと頑張る只野くんのおかげで今ではすっかりクラスの仲間達とも打ち解けることができ、古見さんがコミュ症だからこそ成立する一風変わってるけど楽しい学園生活を送ることに成功しています。
 「古見さん」という作品は既に連載初期の「コミュ症だけどコミュニケーションしたい」という段階を乗り越え、彼女なりの青春をより楽しく謳歌することを目指す段階に来ていると言えましょう。

 しかし「保安官エヴァンスの嘘」の場合、エヴァンスもオークレイもピカピカの高校一年生ではなく、既にいい歳をした大人なんですよ。二人とも古見さんと只野くんのように青春を謳歌するどころか、これまでそのモテに対する歪んだ認識が災いしてモテとかそういうところとは全く無縁な人生を歩んだ結果、このような残念な大人になってしまったんですよ。
 「モテたい」と強く思ってはいるけどモテとは無縁だった人生を歩んで来た結果、色々と歪んでコミュ症になってしまったこの二人は、果たして意地を張らずにちゃんとお互いにコミュニケーションをしてマトモなカップルになれるのか。それとも「DEAD OR LOVE」のタイトル通り、最終的には愛を得られずに銃で決着をつける殺伐とした関係で終わってしまうのか。

 つまり「保安官エヴァンスの嘘」とは、オトナのコミュ症同士の恋の顛末を描いた、西部劇風大河ドラマである。今のところの自分のこのマンガに対する認識は以上になります。

 あとこれは推測ですが、エヴァンスの父ちゃんって絶対に女にモテてなかったですよね。

週刊少年サンデー 2017年22・23合併号(2017年4月26日発売) [雑誌]

第一回に登場したリズも魅力的な女の子だったので、刑期が明けたら登場して欲しいッスね


突然の終尻騒動記念 サンデー22+23号「競女!!!!!!!!」感想

競女!!!!!!!!

 サンデー22+23号で突然の最終回を迎えてしまった「競女!!!!!!!!」。
 ストーリー上では競女界最強の五尻に挑むというクライマックスシリーズが佳境に入りつつも、ここのところ掲載順位が下がっていたこともあって「もしかして、そろそろ終わってしまうのでは?」と何となく思ってはいたのですが、本当に終わってしまいました。残念。

 最終回そのものは、終生のライバルであり最愛のカップルでもあるのぞみとさやかの二人の尻が交錯!→水着が破裂!→「エロすぎ!失格!」という、実に「競女!」らしいバカバカしいもので(勿論良い意味で)、かの「焼きたて!!ジャぱん」の最終回に比類する伝説を作ることに成功しつつ清々しく幕を閉じたこと自体はとても良かったです。
 が、しかし作者の空詠大智先生が「編集部のサポートが足りなかった」と自らのブログで告白し、それがネットで話題になってしまった件については、週刊少年サンデーという雑誌にとっては痛手だったのではと思います。

 以前サンデーの編集長が交代した際に、編集部員を入れ替えたことを誌面を使ってまで大々的にアピールしたのは、かつての雷句先生や渡瀬先生とのトラブルが表面化したことでサンデーという雑誌が新人作家に敬遠されるようになったことへの対応であり、「サンデー編集部は変わったよ! サンデー編集部はもうこわくないよ!」と宣伝することが大きな目的でした。
 しかし、また再び編集部と作家の間のトラブルと思われても仕方がないことが起こってしまうと、「やっぱりサンデー編集部は変わっていない」という目で見られてしまうのは致し方ありません(参考:はてなブックマーク)。
 ここ最近のサンデーは掲載作品そのものを大きく刷新し、その成果も上がり始めたと思われていただけに、このタイミングでこういう話が出てしまうのは非常にもったいないなというのが正直な感想です。

 ただ、空詠先生も小学館や編集部に対しては愚痴を書いていますが、直接の編集担当者については個人でできる範囲でサポートしていたことに対して感謝の念を示しているので、その辺についてはまだしも以前のケースと比べると救いがあるようにも思えます。

 何にしろ、「競女!!!!!!!!」はマンガという表現媒体が持っている、絵の勢いだけで矛盾や理屈を軽やかに超越することが可能な破壊力というものをを再認識させてくれたという意味において、とても個人的に思い出深い作品でした。
 作者の空知先生初め関係者の皆様には、本当に心から感謝申し上げます。いやマジで。

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コミックス16~18巻では本編に入れられなかったエピソードも収録されると告知されてますね。期待


最終章準備で休載記念 サンデー20号までの絶チル感想

絶対可憐チルドレン

 もう先々週くらいの話になってしまいますが、サンデー20号において「絶対可憐チルドレン」が『最終章準備のため』という名目で一旦連載が中断する形になりました。
 「絶チル」はここのところ事実上隔週連載の状態が続くなど、コンディション的に優れていない状態になっているような感じがあったので、一旦話に区切りを付けた上で休載期間を挟むのは良い選択だったんじゃないかと思います。

 その「話の区切り」なんですが、サンデー20号までの間に色々あった結果、薫がパンドラの「女王」の座に就任し、人類に対して「人種間の憎悪と戦い、共に暮らせる世界を目指す存在である」ことを宣言するに至りました。

 このマンガを最初から読んでいる読者の方なら御存知の通り、元々このマンガには『特務エスパー「ザ・チルドレン」は天使か悪魔か?』という命題があり、薫がパンドラの『破壊の女王』となるルートは即ち彼女が人類にとっての悪魔となってノーマルとエスパーの最終戦争を引き起こすバッドエンドを意味していました。
 しかし、サンデー20号においてパンドラの女王となった彼女は、バッドエンドルート一直線となる人類にとっての「悪魔」でもなく、また逆に人類を最終戦争の脅威から救って導く「天使」でもない、自らの意志を以ってエスパーとノーマルの共存のために戦う第三の道を選びました。薫は、連載の初期に提示されていた二者択一的な命題を覆し、自分の意志で自分たちの未来を切り開くことができる力を持った存在となったのです。
 これも連載初期の皆本のキメ台詞である「君たちはなんにでもなれるし、何処へでも行ける」を、薫は身をもって体現したとも言えるでしょう。

 そういう意味において、高校生編最終話はとても物語的に美しい締め方だったと思いました。

 連載再開は夏頃を予定しているとのことですけど、「最終章」で個人的に望んでいるというか、ぜひ見てみたいのは、薫と皆本の間の関係の決着ですね。

 薫と皆本といえば、これも連載初期に提示され、このマンガを象徴するシーンともなった「皆本が銃を持って薫と対峙する」未来の予言が思い起こされます。皆本達はこの未来を回避するためにこれまで戦って来て、そして現段階ではこの未来は回避されたということになってはいますが、再びノーマルとエスパーの間で緊張が高まり、形はどうあれ薫が「女王」となる未来が現実になった以上、再びこのシーンが再現される可能性がないとは言えなくなってきているのではないのでしょうか。
 というか、多分キますねこのシーン。物語の冒頭で提示されたテーマが物語の最後で再び形を変えて登場するだなんて、作劇的にはちょうカッコイイので、やらない訳がないと思います(決めつけ)。

 ただ、シーンそのものは一緒でも、そこで交わされる会話や状況は全く違ったものになっているとも思います。連載初期の二人はもはや交戦不可避の状況でしたけど、今では二人の意志は「人種間の憎悪と戦う」ことで共通していますし、仮にこの二人が対峙することがあったとしても、交戦ではなくもっと別のことをするはずです。チューとか。
 薫の皆本への想いはホンモノですし、皆本も薫と年の差が10歳あるとか歪んだ独占欲があるとかセカンド童貞の誓いとかそういうのは吹っ切ってチューくらいするよね? ね?

 連載初期に提示されたエスパーとノーマルが対立する未来を覆し、エスパーとノーマルが共に共存できる新しい未来を手に入れることができるのか否か。個人的には、そうなって欲しいと切に願っています。

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『特務エスパー「ザ・チルドレン」は天使か悪魔か?』が登場するのは2巻から。1巻の頃はまだ短期連載だったんですよ(豆知識)


船酔いをする少年は萌え対象 サンデー19〜20号「天翔のクアドラブル」感想

天翔のクアドラブル

 天正遣欧少年使節と聞くと思い出すのが、昔通っていた小学校の図書館に置いてあったどこかの出版社の歴史マンガの中で、使節団の少年が船酔いでゲロゲロ吐いてるシーンです(いきなり)。
 そのシーンが今もやたらと印象に残っていることを考えると、もしかしたらその頃から自分はマンガのキャラが嘔吐しているシーンを見るのが好きだったのではないか? と自分の性癖のルーツについて思いを馳せざるを得ません。

 あとは、少年が熱帯地方で熱病にかかってウンウン苦しんでるシーンも印象的でした。美少年が病気で苦しんでいる様は萌え要素です(断言)。

 そんな少年使節団(そんな?)が題材の「天翔のクアドラブル」においても、早速第二話でジリアンが船酔いでゲロ吐いてるシーンが出てきたので、やっぱり少年使節団と船酔いは切っても切れない関係なんだよなと嬉しくなりました。

 ただ、このマンガが普通の歴史マンガとちょっと(というか大きく)違うのは、少年使節団の目的を「戦国時代の日本でキリスト教を布教するため」ではなく、「暗黒時代のヨーロッパを跋扈している魑魅魍魎を忍術で退治するため」としているところです。少年たちのキャラ設定も、キリシタンではなく、「志能便」という名の対魔忍になっています。
 つまりこのマンガは、一見するとヒストリカルな少年使節団を題材にしているように見えながら、実はファンタジーな日本のニンジャがファンタジーなヨーロッパのモンスターと戦うことを目的とした、極めて少年マンガっぽいファンタジー異能力バトルマンガであると言えましょう。
 ニンジャ対ファンタジーヨーロッパのモンスターを描く題材として、あえて少年使節団を選ぶセンスが個人的には素晴らしいと思いました。

 実際の少年使節団に参加した少年たちは、色々あって最終的にはみんなあまり報われない最期を遂げたと言われていますけど、こういう設定であればヒストリカルとは違った明るい結末を描くことも可能になるでしょう。こういう歴史のアレンジの仕方は面白いですね。

 そして作者の新井隆広先生は、「ダレン・シャン」を読めば判るように元気な少年と陰鬱なモンスターの描写に定評がありますので(自分の中で)、そういう意味でもこのマンガは新井先生の作風に合っているように思えます。今後の展開に期待です。
 新井先生のマンガなので、今後出てくるであろうヨーロッパの渋いオッサンキャラの登場にも期待。

LES MISERABLES 1 (ゲッサン少年サンデーコミックススペシャル)
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新井先生がゲッサンで連載していた「レ・ミゼラブル」のコミカライズ版。たいへんに評判が良い


要約:西沢さんはすごい サンデー17〜18号「ハヤテのごとく!」感想

ハヤテのごとく!

この記事の要約:西沢さんはすごい

 まもなく本当の意味でのクライマックスを迎えてしまう「ハヤテのごとく!」。
 これまでのハヤテとの関係が誤解の上で成り立っていたことに気付いてしまい、「王族の庭城」に立て篭もり、「王玉」の奇跡の力で自分の理想の世界に自分を閉じ込めることで宇宙最強の引きこもりと化してしまったナギをハヤテが救い出すという、「ハヤテのごとく!」のメインストーリーラインの総決算とも言える展開に、毎回グッと来てます(頭の悪い感想)。

 サンデー18号では、ナギに対してハヤテが「例え誤解から始まった関係でも、自分が君を命をかけて守りたいと思ったことは本物だった。この日々に間違いなんてない」と説得するシーンが印象的でしたが、ハヤテがこの言葉をナギに伝えられる意志を持つことができたのは、その前の回のサンデー17号での西沢さんからの言葉があってこそだと思っています。

 西沢さんは、ナギとの誤解の上に成り立っていた「偽りの関係」の秘密を守れずにナギを傷つけてしまって後悔するハヤテに対し、こう語りかけました。

出会い方は間違ってたかもしれないけど、
それでもこの一年に、間違いなんかなかったよ。

思い出して、ハヤテ君。
たとえつらい結末でも、たとえ間違った出会い方でも、
全力で挑んだこの一年に、間違いなんてなかったでしょ?

今はまだつらくてもここはまだ終わりじゃない。
ハヤテ君ならきっと未来を変えられる。

 ハヤテはこの直前に西沢さんに「好きだ」と告白しているのですが、それを振り切ってまでハヤテを絶望の淵から立ち直らせ、ナギの元へと送り出しました。偽りの世界に囚われたナギを救うことこそがハヤテの成すべきことであり、偽りの世界で自分を愛することではないと、彼女は理解していたからです。

 そして今回。ハヤテはナギに対して、こう訴えかけました。

僕達の出会い方は、間違っていたのかも知れません。結末も、酷いものだったのかもしれません。
だけど、嬉しかったことも悲しかったことも、楽しかったことも苦しかったことも、救われたと思った気持ちも、君の笑顔を命をかけて守りたいと思ったことも、全部本物。勘違いなんかじゃありません。


僕達のこの日々が、たとえ誤解と勘違いで始まったものでも、絆はあったと信じたいんです。
欲しいものがあるんじゃなくて、失いたくないものがあるんですよ。

 ハヤテのこの言葉は、彼が西沢さんから「出会い方は間違ってたかもしれないけど、それでもこの一年に、間違いなんかなかったよ」と言われたからこそ、彼の中に生まれた言葉だったと思うんですよね。
 きっかけは何であれ、ハヤテのこれまでの人生を西沢さんが肯定してくれたからこそ、ハヤテもまたナギとの誤解の上に生じたこの一年間を「間違いなんてない」と肯定し、そこにナギとの本物の絆を見出した上で、ナギを救うことで自分がどんな運命に見舞われようともそれを受け入れる覚悟を決めることができたのでしょう。

 ナギは、ハヤテのこの言葉自らが作り出した幻の世界から抜け出す決意を固めることができ、宇宙最強の引きこもりを脱することに成功した訳なのですが、彼女を救ったのは西沢さんの尽力があってこそだと思われます。
 西沢さんってキャラは、超人だらけのこのマンガにおいて(ハヤテのことが以前から好きだったという以外に)特にこれといった能力も特徴もない、元々はハヤテにフラれるために登場したような存在だったはずなのですが、最終的には今回のように物語の要所でものすごい輝きを放つ魅力的なキャラに成長しましたよね。

 つまり何が言いたいかというと、西沢さんはすごいと思います(おわり)。

ハヤテのごとく!(50) (少年サンデーコミックス)
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現在のクライマックスへ向かい始めたエピソードが掲載された50巻