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今回はこのマンガの一つの到達点だと思った サンデー2+3号感想「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 立彦✕龍のカップリングを中心として桜庭・三石・荻本といった面々の感情が絡みあう、レッズユース対武蒼高校の試合の名を借りた熱い愛憎劇が繰り広げられている最近の「BE BLUES!」ですが(挨拶)、サンデー2019年2+3号の展開は、立彦の龍への長年の想いが「かつての龍だったら可能だったであろうスーパーゴール」を立彦が決めるという一つの形となって実ったという意味で、このマンガの一つの到達点な回だったのではないかと思いました。

 立彦は今でも龍のことがホントに大好きなのは試合前からダダ漏れだったんですけど、彼の中で龍がどれだけ大きい存在であったのかを、立彦は「かつての龍だったら可能だったであろうスーパーゴール」を本当に決めることで表現しました。
 立彦の中の「理想の龍」は既に現実の龍を超えた超人の域に達しているんですが、彼はその超人と重なることをサッカーのモチベーションとしており、それが彼をここまで成長させたことは間違いありません。

 かつての立彦の姿を知っているミルコは彼を「努力だけで獲得できる領域を超えている。あれは怪物だ」と評していましたが、それは即ち立彦の龍への熱い思いが彼をただの人間ではいられなくしたということを意味します。深い愛情は人間を怪物に変えるのです。
 龍のことが大好きで妄想の中の龍と重なるために尋常ならざる努力を重ね、最終的に怪物に進化してしまった立彦。正統派サッカーマンガであるはずの「BE BLUES!」で、人知を超えた究極の愛の姿を見ることになるとは思いませんでした。ほんとこのマンガ深いですよ(ミスリーディングの可能性)。

 そんな立彦のプレーを見ていた優希も「あれはまるで怪我する前の龍そのままの姿だ」と察しましたが、優希はそれを口に出すことはできませんでした。
 「もし龍が怪我しなければ、今頃は…」という仮定はもう決して訪れない世界線の話であり、また怪我から復帰した龍が尋常ならざる努力の末に現在の地点まで到達したことをよく知っている彼女にとって、「もし龍が怪我をしなかったら」は口には出せない言葉であることは間違いありません。

 優人もおそらく優希と同じことを思ったに違いないのですが、実際に彼が龍に対してかけた言葉は「立彦…すごいね」だけでした。
 同じく「今の立彦は怪我する前の龍の姿だ」と思ったナベケンも、実際にそれを龍に言うことはないでしょう。大怪我をした龍が今の姿になるためにどれだけ努力してきたのかを知っているからこそ、その言葉は龍には決して言えないのです。

 しかしこのマンガには、そんなタブーを吹き飛ばせる男が一人だけいます。桜庭巧美です

 「てめえがポンコツになる以前ならやってそうなプレーだったな
 「くやしくねーのか、自分のプレーパクられて。よりによって久世立彦に!

 桜庭はハッキリと、今の立彦は「怪我する前の龍そのままの姿だ」と龍に言い放ちました。幼馴染の優希や優人やナベケンには言えなくても、「性格がひねくれている」というの桜庭さんなら、こんな言いにくいこともハッキリと言える! 桜庭さんマジかっこいい! と、本気で思いましたね。
 こういうことを龍に対して言えるのが桜庭というキャラの強みなんだよなあと、改めて感じた次第です。

 もちろんこの台詞は単なる嫌味ではなく、真意は龍に対する奮起を促すところにあることは明白であり、龍も「くやしいさ!」「だから力を合わせようぜ!勝つためにな!」と桜庭に感情をぶつけて応えます。サッカーのために常にクレバーであろうとする龍からこういった人間らしい感情を引き出せるのも、桜庭の役回りの一つだと言えるのではないのでしょうか。

 サンデー46号で相手に先制点を許した時も桜庭は龍に嫌味っぽい口調で叱責して龍の奮起を促し
ていましたし、桜庭が気落ちした龍を叱って励ますしかる桜庭(しかるねこっぽい発音で)というキャラ付けはますます強固になったと思われます。

 こんな感じで、龍と立彦を中心とした彼らの熱い愛憎劇はまだまだ終わりそうにありません。
 次回以降で起こるであろう、龍や桜庭の逆襲にも注目です。

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桜庭さンかっこいいなあ(表紙)


しかる桜庭「ビビるのはもうやめなさーい!」 サンデー46号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 「ビビってンのかてめえ
 「相手はレッズだぞ、想像力足りてねえんじゃねーか?

  自分のミスから先制点を奪われて意気消沈する龍を叱る桜庭が印象的だった、今回の「BE BLUES!」。

 矢沢から「古巣へのうっぷん晴らしてぇだけだろうが!」とツッコミを入れられた直後に「まだ、そんな目で見てんのかよ!」と言い返して龍に熱い眼差しを送っている桜庭の姿からは、この叱責がこれまでの彼のような単なる鬱憤晴らしではなく、以前の彼とは違う意識から発せられたものであることを伺わせます。桜庭は本当に変わりつつあるのです。


 もっとも、鬱憤晴らしな側面がないのかといえば、そんなこともないのではとも思います。

 今回の失点はカウンターを焦った龍のわずかなミスを見逃さなかったレッズの荻本がボールを奪取したことが原因ですが、桜庭もサンデー43号で荻本の迫力あるディフェンスの圧力に耐えかねた結果シュートとも龍へのパスとも呼べない中途半端なプレイするミスを犯してチャンスを逃してしまい、更に荻本から「ビビッてたもんね、タクミらしくもなく」と煽られる始末。
 桜庭の龍に対する「ビビってンのか」という叱咤は、同じく荻本からボールを奪われ、荻本に対して恐怖を感じてしまった自分自身への叱咤というか、鬱憤を爆発させたとも言えます。

 現在の桜庭は龍を高く評価しているのですが、その龍が荻本に競り負けてしまったことに対する失望、そしてお前は荻本に負けるなという励ましの意味もあるに違いありません。

 桜庭は基本的に「しかるねこ」と一緒で叱ることでしか愛情を表現できないキャラクターなので、「ビビってンのかてめえ」という叱咤の言葉には、龍に対する現段階の精一杯の激励が込められている。私はそう解釈しました。


 そして桜庭の叱咤で思い出されるのが、今を去ること(現実の時間で)1年前の高校選抜合宿編です。

 龍はあの時高校選抜合宿に招聘されたものの、周囲とプレイが噛み合わずにチームで孤立しかけていたのですが、そこで窮地から抜け出すために龍が行ったのは、かつてチーム内で孤立しても誇り高く己のプレイを貫き通した桜庭の姿を妄想し、(妄想の中の)桜庭から「ボケが!」と叱ってもらうことでした。
 その叱咤の声(妄想です)によって龍は迷いを振りきって独断で動く覚悟を完了させ、次のワンプレイで大活躍することに成功してチームメイトからの信頼を回復。見事窮地を脱したのです。

 あの時の龍は妄想の中の桜庭によって励まされたことで立ち直ったのですが、今度は妄想ではなくリアルな桜庭から叱責を受けたんですよ。これで効果がないはずがありません。龍の迷いも、これできっと振り切れるに違いありません。龍にとって桜庭とはそういう存在なのです。

 今思い返してみると、龍の妄想の中にいる桜庭ってちょっとカワイイですよね。ンベッって舌出してるところとか特に(どうでもいい)。

 という点を踏まえると、対レッズユース戦後半の最大の見どころは、荻本のハードなディフェンスを如何に二人が掻い潜って龍が桜庭にボールを通し、桜庭が得点を決めるのかという点になることは確実でしょう。
 荻本という二人にとって共通の敵を倒して龍から桜庭にボールが通った時、それは2人の間に揺るぎのない信頼感と確かな愛が生まれる時なのです。多分。

 どうでもいいことですが、「ビビってンのかてめえ」の「ン」がカタカナなのが小池一夫チックでいいと思います(おわり)。

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高校合宿編クライマックスが収録されている32巻。龍のちんこのデカさを見よ(まちがい)


その後の「クロノマギア 時の召喚者と白刃の花嫁」(サンデー26〜29号)感想まとめ

クロノマギア 時の召喚者と白刃の花嫁

 お久しぶりです(´・ω・`)

 以前このサイトで、サンデーで連載が始まった「クロノマギア 時の召喚者と白刃の花嫁」と、原作であるデジタルカードゲーム「クロノマギア」の違いについての記事を書きましたが、当時は

・実際のゲームではルール的に起こり得ないことが、マンガの中では起こっている(例:1ターンに18マナ使う)
・「攻撃を受けるとその分マナが溜まる」「クリーチャーのスタッツを上昇させる『レベルアップ』」「マギアスキル」といった、このゲームの特徴的なルールの明確な描写が出てきていない
・土星フジコ先生のかわいい絵柄と、「クロノマギア」のダークでホラーなクリーチャーが今ひとつマッチしていない感があるのでかわいい美少女クリーチャーを出して

 といった、カードゲームを題材にしたマンガとしての問題点がありました。
 しかし第5話以降、このマンガは徐々に「カードゲームを題材にしたマンガ」としての体裁を整え、上記の問題点を克服しつつあるのではないか? というのが、本稿の論旨です。

 という点を踏まえつつ、第5話〜第8話の感想を列挙してみます。



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「バレット×葵」妄想に公式から久しぶりに燃料が投入されそうな予感がする記念 サンデー32号までの絶チル感想

絶対可憐チルドレン

 「絶対可憐チルドレン」も随分長く続いたコンテンツなので、その歴史の中で様々なカップリング妄想が生まれて来た訳なのですが(いきなり)、その中でも「バレット×葵」の組み合わせは、おそらく比較的マイナーカップリングの部類に入るであろうと思われます。

 この組み合わせが公式で明確に推されたのは、自分の記憶が確かなら(現実世界で)今を去ること7年前の2011年に発売されたコミックス27巻に掲載の「スタンド・バイ・ミー」編が最初で最後であり、あとは伊号による未来予知の中で戦闘機に乗ったバレットが葵に核ミサイルが発射されようとしていたことを告げていたバージョンがあったとは思いますが、基本的にはあまり公式からカップリング妄想をするための燃料が投下されてこなかったカップリングであると言えます。

 そして時は流れて2018年。ギリアムの洗脳ネットワークに取り込まれたバレットを救出するため、ザ・チルドレンチームはPUBGっぽいFPSゲームの世界を舞台にバレットと紫穂が勝負をして「バレットにゲームを通じて敗北感を感じさせ、そのスキを突いてバレットを支配しているネットワークから切り離して奪い返す」計画を立案。
 そのアイディアにバレットを乗せるために選ばれた手段が、葵に「このゲームに負けたら、ウチはバレットのものになるから…」と色仕掛けをしかけるというもので、案の定バレットはこのちょろい取引に目の色を変えて乗ってきました。

 この勝負で紫穂が勝てば何の問題も起きなかったのですが、先週のサンデー31号において、紫穂がバレットにヘッドショットされ、まさかの敗退を喫するという展開となりました。紫穂が負けたということは、即ち葵はバレットのものになってしまったことを意味します。
 まあ、紫穂が不意を突かれたとはいえ素直に負けるとは思えないので、まだ実際試合がどうなるのかは判りませんが、ここで紫穂がバレットに本当に負けてしまってバレットが葵を文字通り手に入れるチャンスを得てバレット×葵のカップリングに新たな燃料を投下してもらった方が個人的には面白くなるので、ここは一つ紫穂には素直に負けて頂きたいと思う所存です(ひどい)。

 もし本当に葵がバレットのものになってしまった場合、いくらバレットがギリアムの洗脳によって悪の心に目覚めてしまっているとはいえ、彼が葵に対して「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」みたいなことを本当にしてしまうのかという問題があるのですが、まあそれは絶対にないでしょう。
 バレットは今でも勝負の前の段階で葵に対して「この戦いが終わったら俺──」と真摯な愛の告白の予告(というかむしろ死亡フラグ)をわざわざするくらいピュアな性格のままですし、彼は洗脳されていてもその辺の性格に変化はないようです。これならお父さんも安心です(誰)。

 コミックス27巻「スタンド・バイ・ミー」において、バレットと葵はギリアムの洗脳の影響を再び受けるようになったティムから攻撃されました。
 その際、葵はバレットに対して気丈に振る舞って適切な指示を送り、結果的に二人が協力してティムを抑え込むことに成功します。

 でもその時、バレットは葵が薫や紫穂に対しては自分には決して見せない「弱さ」を素直にさらけ出しているところを見て、自分の力がまだまだ至らないことを悟ります。彼女を守れるよう、そしてチルドレンと同じくらい葵から信頼されるよう、もっと強くならなければ──という決意を持つこととなるのです。
 葵の持つ強さに素直に感服し、彼女に「心の強さも超度7です」と臭いセリフを爽やかに言い切ったあの時のバレットは、間違いなく男の顔をしていました。

 バレット×葵のカップリングはもともとそういう出来事を由来としているので、バレットとしても今回のような「葵と直接ではない形で勝負に勝った結果として葵が手に入る」ような形は望んでいないはずです。バレットにとって葵とは、単に憧れの女の子という訳ではなく、彼女を守り彼女から信頼される存在になりたいと願う、彼の人生の目標そのものであると言っても過言ではありません。多分。
 それと葵にエロいことをしたいという欲望は別問題である可能性もありますが、そこら辺は彼も立派なオタク紳士なので、分別は付いているものと信じています。

 また、これまでの洗脳されたバベルの仲間達との対戦では、単に仲間をギリアムの洗脳から取り戻すだけではなく、彼らの今後の生き方を暗示するかのような描写もなされているので(ナオミと谷崎は今後も楽しいSM関係を続けていくんだろうなとか、初音と明は「身近な人の幸せを考えろ」という祖先の教えに従って素直にくっつくんだろうなとか、ティムが新たに「物語の創造」の能力に目覚めて将来有望そうとか)、バレットについても多分そういう道が提示されるのではないかと思われます。彼の往く道として、果たしてどんなものが提示されるのか。彼の往く道の先に、果たして葵は存在しているのか。
 バレット×葵のカップリングが「絶チル」の中でクローズアップされるのはおそらくこれが最期になるであろうと思われるので、コミックス27巻以降このカップリングに密かに注目していた私としても、次回以降で描かれるであろうバレットと葵の行く末には期待せざるを得ません。

 もちろん、現在の展開だと原作からバレット×葵要素が何も提示されない可能性も十分以上にあるので、そこら辺の覚悟も決めつつ次回の「絶チル」を待ちたいと思いました。カップリング妄想は楽しいなあ(結論)。

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27巻といえばアダムもカワイイんですよねー


マンガでわかるDCG「クロノマギア」ガイド

クロノマギア

 サンデー21号より、土星フジコ先生の「クロノマギア〜時の召喚者と白刃の花嫁〜」が始まりました。
 「クロノマギア」はガンホーがリリースした対戦型デジタルカードゲームであり、そのプロモーションを兼ねている作品です。

 サンデーでゲームが原作の作品というと、ポケットモンスターを題材にポケモンと人間が融合して戦うオリジナルな新機軸を生み出した「ポケットモンスター ReBURST」が良くも悪くも思い出されますが、今回の「クロノマギア」の場合は、純粋なカードゲームのマンガ化という訳ではなく「題材としてカードゲームを使っているけど、マンガの主眼はあくまでラブコメ」といった趣きが強い作品になっているのは、既に読んだことがある方ならご存知の通りでしょう。
 作者の土星フジコ先生は、サンデーでの前作「戦争劇場」がラブコメとして個人的に大変に面白かったので、作者のストロングポイントを活かすという意味ではラブコメ風味にするのは悪くない選択だと思います。

 ただ、それでも「クロノマギア」はカードゲームが原作なので、マンガの中でもカードゲーム要素の描写は比較的比重が高いです。ですので、マンガの中でカードゲームのキャラクターが登場している箇所を抽出し、ゲームの方の「クロノマギア」では実際にはどんなカードなのかを紹介してみたら面白いのでは? という趣旨の記事を書いてみました。

 なお自分の「クロノマギア」の対戦実績ですが、現在のBP(対戦すると増える実績みたいなもの。勝つと5ポイントもらえる)は56ポイントなので、その辺を考慮して頂けるとありがたいです。

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安室透はスキがない! サンデー24〜25号「ゼロの日常」感想

ゼロの日常

 映画を観た人々がもれなく「安室の女」を自称し始めたり、「降谷」姓の印鑑が突然売れ始めたり、作品の略称がいつの間にか「ゼロシコ」になったりと、劇場版「名探偵コナン・ゼロの執行人」の人気はもはや社会現象といっても過言ではないレベルに達していると思われますが、その人気を事前に見越していたとしか思えないタイミングで、サンデー24号より「ゼロの執行人」の最重要人物である安室透を主人公に据えた公式スピンオフ作品・「ゼロの日常」の連載が始まりました。

 実際「ゼロの日常」第一話が掲載されたサンデーは(付録の安室透ポストカード目当てとも言われてますが)あっという間に完売。その「お詫び」と称して小学館が「サンデーうぇぶり」上でサンデー24号を期間限定で無料公開する事態にまで発展しています。
 サンデーがここまで売れたのって、かつて「パズル&ドラゴンズ」の限定モンスターを入手できるシリアルコードが付属したことが原因で売り切れが続出した2016年1号以来なのではないかと思われます。パズドラの時は「ソシャゲ効果じゃん?」って言われていたような気がしますが、今度はちゃんと連載マンガの人気が原因の完売なので、堂々を胸を張って「完売です! 申し訳ない!」って言えますね!(にこやかに)

 また「ゼロの日常」は安室が主人公ということで話題になっていますが、長年のサンデー読者的には、この作品を手がけているのが「ダレン・シャン」や「ARAGO」、そしてついこの間まで「天翔のクアドラプル」を掲載していた新井隆広先生というのも、大きな注目点です。
 これらの作品を読んだことがある方なら御存知の通り、新井先生の作品の特徴の一つは老若を問わず男子を魅力的に描くことであり、そんな先生が全身全霊を込めて青山剛昌先生が生み出した最強クラスのイケメンキャラ・安室透を動かすというんですから、もはや一大事と言っても過言ではありません。サンデー春の新連載の中でも、文字通り最も注目される作品であることは間違いないでしょう。

 そんな「ゼロの日常」を第二話まで読んだ感想なのですが、このマンガは基本的に主人公・安室透を魅力的に描くことに全ての力点が置かれていると理解しました。

 安室透というキャラは探偵・組織・公安と全く異なる3つの世界に属し、それぞれの世界でいくつもの顔を使い分ける複雑な立ち位置のキャラクターなのですが、その辺の彼の複雑な事情はさておいて、この「ゼロの日常」というマンガは安室透という人間の「日常生活」を読者がマンガを通して覗き込み、「やっぱり安室って何をやらせてもステキだわー」とうっとりさせることを主な目的にしているのではないか? と思います。
 第一話での万事気配りが行き届いた安室透、真剣な表情で銃の手入れをする安室透、赤井秀一のことを思いながら袖捲りをして車を走らせる安室透。第二話で「組織」の一員としての顔を見せる安室透、キッチンでフランベをする安室透、うっかり朝ご飯を作りすぎてしまう安室透。いろいろな姿の安室透を提示しつつ、「安室透って、何をやっても様になるいい男だろう?」と読者に見せつけて彼の魅力を納得させることこそが、このマンガの唯一無二の目的であることは間違いありません。

 特定のキャラクターの魅力を余すことなく見せつけることだけを目的としたマンガとしては、現在サンデーで連載されている作品の中では「天野めぐみはスキだらけ!」が筆頭に挙げられます。
 「天野めぐみ」は、健康的で健全な肉体と精神、そしてスキだらけな性格を持つ女子高生・天野めぐみの、スキだらけでちょっとエロスな日常を読者が拝んで「ありがとうございます…」と毎回作者に感謝するマンガなんですけど(決めつけ)、そういった意味においては、「ゼロの日常」も基本的なジャンルとしては「天野めぐみ」と一緒なのではないのでしょうか。
 つまり、健康的で健全な肉体と精神、そして謎だらけな性格を持つ安室透の、スキが全くない完璧でモテモテな日常を読者が拝んで「ありがとうございます…」と毎回作者に感謝するマンガ。それが「ゼロの日常」という作品なのです。多分

 結論としては、「名探偵コナン」のキャラクターのスピンオフとしても、単に「マンガみたいにいい男」を観察する作品としても十分に面白そうなので、今後とも期待していきたいと想いました。

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ダレン・シャンのコミックってもう12年前なのね…


サッカー日本代表監督電撃解任が「BE BLUES!」に与える影響を考える サンデー22+23号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 最近のサッカーといえば(いきなり)、サッカー日本代表監督だったハリルホジッチ氏が突如として日本サッカー協会から解任されたという大きなニュースがありました。
 監督交代の是非や理由はともかくとして、ワールドカップ開催まであと2ヶ月というこのタイミングでの代表監督の解任は一般的には異常事態と言う他なく、チームへの影響は勿論のこと、サッカー日本代表チームに対するファンの信頼感や、チームの人気そのものへの悪影響も懸念されています。

 そして、もし今回の件がきっかけでサッカー日本代表チームの人気が低下するようなことがあったりすると、みんな大好き「BE BLUES!」にも影響を及ぼしてしまうのではないか? と個人的に危惧しています。

 そもそも「BE BLUES!」というマンガは、主人公である一条龍が「幼少の頃から本気で日本代表になることを夢みているサッカー少年」という設定であり、「日本人に生まれたら、サッカーをやっているなら…日本代表のユニフォームを手に入れたい!誰だってそうだろ!」という彼の気持ちが、彼と同じサッカー少年達のコモンセンスとして通用するからこそ成り立っている作品です。
 彼はこの夢を実現するために幼少期から綿密なライフプランを立てており、事故にあって再起不能レベルの大怪我をした時も、この夢があったからこそ諦めずにリハビリに励むことができたのです。
 つまり「サッカー日本代表」という存在に魅力がなければ、「サッカー日本代表になる」龍の夢に読者が共感することも、彼の夢が読者の中でリアリティを持つこともなくなってしまう訳であり、それだけに現実のサッカー日本代表には常に魅力的でいてもらわなければ困るのです。

 「BE BLUES!」はまだ高校生編の途中ではありますが、主人公の龍がユースチームの日本代表選抜合宿に招聘されるエピソードも登場し、将来龍と共に日本代表として戦うことになるであろうキャラクター達が作品内に顔を出し始めているところを考えると、徐々に龍の夢である「サッカー日本代表入り」も作品構想の視野に入りつつあることを感じさせます。
 「BE BLUES!」のためにも、現実のサッカー日本代表には、サッカー少年達にとってキラキラした憧れであり、そして具体的な将来の目標でもあるという素敵な存在で居続けてもらいたいものです。そのために頑張ってほしいなと思います。

 そして本題であるサンデー22+23号の「BE BLUES!」の感想ですが、今回のテーマの一つである「オフ・ザ・ボール」の動きでレノンと龍が相手ディフェンダーのマークを逃れて空いたスペースに入り込んで縦に早いパスを繋いでサイドから突破、ゴール前で待ち構える桜庭にまでボールを繋いだ! という、マンマークディフェンスの崩し方のお手本のような展開だったと言えます。
 前の桜庭へ「楔のパス」を出すことに成功した時の回もそうだったんですが、このマンガってサッカーの現実的な戦術をきっちりと描いているんだよなと改めて思いました。

 普通のサッカーマンガだったら、ここまでお膳立てされたら主役であるエースストライカーがきっちりとゴールを決めて読者のハートを鷲掴み! きゃーステキー! となること請け合いなんですけど、でも今回の試合のエースストライカー役はあの桜庭さんなので、まだまだ油断はできません。
 龍からの愛がこもったボールを、桜庭は受け取ることができるのか否か。続きはゴールデンウィークの後で! 5月病に負けずに5/9まで生き延びようぜみんな! がんばれサッカー日本代表!(フォロー)

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現代ファンタジー作品論マンガ爆誕記念 サンデー13〜20号「絶チル」感想

絶対可憐チルドレン

 原画展開催決定おめでとうございます!(ファンサイト要素)

 サンデー13号辺りから始まった、ティムが作ったなろう系異世界転生ファンタジーっぽい物語の世界に薫が放り込まれる「やかましき玩具」編が決着しました。

 このエピソードの見所は、ティムの能力が大幅にアップグレードし、自分が作った世界を統べるゲームマスターとしての能力を手に入れたことでしょう。
 元々は玩具をキーワードして周囲の人間を催眠で操る能力者だったティムが、(黒い幽霊による洗脳によって)「人間を玩具にして支配する」という方向に自分の能力を伸ばすことに気付いた結果、バーチャルリアリティ的な世界を創造し、催眠によってその世界の中に人間の意識を放り込むことができるようになったという、ティムの能力のグレードアップのアイデアそのものがこのエピソードの根幹を成しているのは間違いありません。

 その能力でティムはゲーム的なファンタジー世界を創造し、そこに異世界転生ファンタジーの導入のお約束的な手法を使って薫を放り込み、(ティムが創造した)「皆本」と冒険の旅をさせ、最終的にはかつての滅びの予言と同じく「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」バッドエンドを再現することで薫を精神的に殺す筋書きを作りました。つまりティムは、自らが作ったゲーム世界のストーリーをプレイヤーである薫に体験させるという、テーブルトークRPGのゲームマスター的なことをやろうとしていたのです。
 「玩具」を操るティムの能力をそういった方向に拡張させるという発想は自分には全くなかったので、この点においてだけでも今回のエピソードは発想が素晴らしいなと素直に感心致しました。

 ティムがゲームマスターを努めた今回のシナリオは、彼が構想していたバッドエンド直前までは上手く行っていたように思われますが、しかし最後の最後でティムは「皆本の銃によって撃たれて薫が死ぬ」シナリオを実行することに失敗し、彼は敗北を喫してしまいます。
 その理由は、「ティムの作った『皆本』というキャラクターにそぐわない行動をティム自身が行ってしまった結果、作品としてのリアリティを保てなくなって催眠能力が低下し、これまで催眠で抑え込んでいた悠理が催眠を破ってティムの世界を破壊したため」というもの。

 ティムの作った異世界ファンタジー世界は、きわめて陳腐というか考証が欠けているというかツッコミどころに事欠かないアレな感じな世界で、隣の松風君から「ファンタジー世界の住人がメガネをかけているのはおかしい」「地名に英語が混ざっているのはおかしい」「ファンタジー世界の宿屋にシャワーがあるのはおかしい」等の無粋なツッコミを受けてきたのですが、それに対してティムは「この世界では僕が神だ!考証の矛盾など僕はまったく気にしない!考証厨は滅びろ!」と(怒りを込めながらも)言い切って来ました。
 その言い切りと妄想世界への思い込みの強さが、そのまま彼の作った世界の強さに繋がっていたのです。

 しかし、ティムの作った「皆本」が薫を銃で撃つ段階になった時点で、ティムは自分が想像した「皆本」というキャラクターが、(たとえ撃たなければ世界が滅びてしまうような状況でも)薫を簡単に撃てるような人物ではないことに、自分で気がついてしまいました。
 彼の作った「皆本」は勿論現実の皆本のコピーなんですけど、それだからこそ皆本はそういうことが平気でできる人物ではないことを、シナリオの最終局面で理解してしまったのです。

 結局ティムはキャラクターではなくシナリオの都合を優先して、適当な理由付けで「皆本」が薫を銃で撃つ展開を選びました。自分が作ったキャラクターの内面を無視する行動を取ってしまったことで彼の世界のリアリティは崩壊、そこを突いた悠理に世界を一撃で破壊されてしまいます。
 この時の悠理の台詞である「この世界を壊したのは、あなた自身よ、ティム。あなたは自分の心に、自分が信じている幻想に、もっと誠実に敬意を払うべきだった」が、本編におけるメインテーマであると、個人的に思います。

 ただ、最後の最後でティムはゲームマスターとして失敗してシナリオを崩壊させてしまったものの、プレイヤーである薫は彼が作った「皆本」にリアリティを感じ、「とっても楽しかった! あんたの作る世界、あたしもっと見たい!」と賞賛の言葉を送りました。プレイヤーからこんなことを言われたら、ゲームマスター冥利に尽きるというものですよね。良かったねえティム。

 たとえ自分の妄想した世界がツッコミどころだらけのファンタジー世界であろうとも、その世界を作った自分自身こそが、その世界を矛盾を含めて愛し続けることが何よりも大切であることを訴えた今回のエピソード。これはある意味、なろう系異世界転生ファンタジーに対する作品論として読み解くことが可能なのではないのでしょうか。いやそれがテーマに違いないです(きめつけ)。

 椎名高志先生のマンガでここまで判りやすい現代作品論をテーマとしたエピソードを読めるのは、「GS美神 極楽大作戦! !」旧コミックス28巻の『紙の砦!!』以来なのかも知れません。
 『紙の砦!!』の時は出たのが1997年なので少女向けライトノベルが題材だったのが、今回はなろう系ファンタジーが題材になっているところが今っぽいなあと思いました。

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コミックス28巻には、一瞬だけ新レギュラーキャラになりそうだった鈴女も登場。アシュタロス編が始まらなかった別の歴史では彼女にも出番はあったのかも


連載完結記念 サンデー19~20号「だがしかし」感想

だがしかし

 最終回。アニメ第二期が終了するのとほぼ同じタイミングで終了したということは、予めここで終了することが決まっていたという感じでしょうか。
 連載作品として大成功した上に連載が無事円満に終了したことはとても嬉しいんですが、本当に終わってしまうのを見るのは寂しくもあります。文字通り、ここ何年か低迷していたサンデーの舞台骨を支えてきたマンガの一つでしたからね。ホント寂しくなりますね…。

 話としては今回で最終回でしたが、物語としてのクライマックスに相当したのは、そのもう一話前のサンデー19号でしょう。前の夏祭りの時のように急にいなくなろうとするほたるに対して、ココノツが「自分は漫画家を目指す」とほたるに告げ、「自分達にとってほたるが如何に大切な存在となったのか」を切々と訴え、そしてその上で夏からずっと「ほたるに会える口実」という形で引きずっていたホームランバーの当たりくじをちゃんと交換することで、これまでのほたるとの関係に決着を着けた回です。

 ココノツがほたるのホームランバーの当たりくじを引き換えるという行為は、つまりもうココノツはほたると会えなくなっても大丈夫だということをほたるに告げることを意味しており、即ち「駄菓子屋を継がずに漫画家を志す」という彼の決意をほたるに伝えたことを意味しています。
 ホームランバーを交換しながらほたるに対して「僕もマンガ頑張るんで、ほたるさんも会社がんばって下さい」と笑顔で言ったココノツからは、自分はほたると一緒に駄菓子の世界に行くことができないけど、自分もほたるのように自分が決めた志への道を歩くという覚悟を感じました。

 それを受けたほたるが、最後に「ココノツくん、私と結婚する?」って言ったのは、ほたるがココノツのことを「自分で自分の行く道を決めることができる大人になった」と認めた証だったんじゃないかな、とも思いました。彼女の言うことなのでどこまで本気なのかは判りませんが、多分これは本気なんじゃないんでしょうか。

 つまり「だがしかし」とは、駄菓子屋の倅という立場にありながら漫画家になりたいとボンヤリ思っていたココノツが、ほたるという不思議な少女との出会いを経て成長、自分の意志で自分の未来を作るために歩き出し、その結果少女と結ばれるまでを描いた、一大ジュヴナイル駄菓子フィクションだったのですよ! 「だがしかし」すごいな!(多分)

 そして、この話がサンデーに掲載される前の週に、アニメ第二期の最終回が放送されました。アニメ第二期の最終回は、ココノツがマンガを持ち込んでキツいダメ出しをされて落ち込んでいる時に、ほたると雪の降る駅で再開する──というエピソードで、この話ではココノツの漫画家になりたいというボンヤリとした夢に対して厳しい現実を突きつけられて落ち込むココノツに対し、ほたるがいつもの調子で駄菓子トークを繰り広げながらも、ココノツが心の中ではまだ漫画家への夢を諦めきれていないことを察し、彼に対して自分の道を自分で見つけ出すことを優しく諭すという趣向でした。

 そんなアニメの最終回を見た後で、サンデー19号でほたるに対して自分が漫画家を志すことをはっきりと明言したココノツの姿を読んだ訳ですから、そりゃもう「あの時はあんなに悩んでいたココノツ君も、今ではすっかり立派になって…」と思わずにはいられませんでした。アニメ→マンガと続けて見ることに意味がある構成になっていたのは、素直に感心させられましたね。作者が狙ってやったのかどうかはともかくとして。

 何にしろ、「だがしかし」は駄菓子を題材にした優れたコメディーであったと同時に、ほたるという魅力的かつ蠱惑的なキャラクターを軸にしたステキな少年マンガであったことは間違いないでしょう。ほたるがきっかけでゴスロリ服や黒ストッキングの魅力に目覚めてしまったお子様や大きいお子様も多いのではないのでしょうか。はい(自答)。

 コトヤマ先生の次回作にも期待しております。

だがしかし 11 フィギュア付き特別版
コトヤマ
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最終巻はフィギュア付きと来たか


新生桜庭お披露目会開催記念 サンデー16号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 聖和台を相手に、オフ・ザ・ボールの動きを覚えた桜庭さんのお披露目会が開催中の「BE BLUES! 」。
 この回の何が面白いって、聖和台の選手達が桜庭に対して

な、何?
あの桜庭が…マークをふりほどこうとしてる!?
あの桜庭巧美が、オフ・ザ・ボールの動きをしたァ!?
あのクズが! まともにサッカーの動きをしやがった!

 と、いちいち大げさに驚いているところです。
 ボールを持っていない時に、マンツーマンディフェンスをしている相手のマークを外して良い状態でボールをもらおうとするという極めて基本的な動きをしただけなのに、これだけ大げさに対戦相手が驚いてくれることそのものが、なんというかもうものすごく面白かったです。
 面白かったというよりは、痛快だったと表現するべきかもしれません。

 桜庭が「まともなサッカーの動き」をしてディフェンダーをかわして前を向いてボールを持っただけでこれだけ面白くなるということは、つまり桜庭が今までは頑なに「まともなサッカーの動き」を拒否して来たことの裏返しでもあります。
 ここまで桜庭をマトモじゃない状態で引っ張ってきたからこそ、この回がこれだけ面白くなったと言えます。これまで桜庭がしてきた毒舌も乱暴狼藉も頑なな態度も、全てこの回を盛り上げるための伏線だった! と言っても過言ではないのではないのでしょうか。いや過言かも(撤回)。

 でも、もし桜庭がこのままマトモにサッカーをやるようになっちゃったら、これまでのワガママだった彼のプレーの魅力が薄れてしまうのでは? と心配する向きもあるかも知れませんが、そもそも彼がまともなサッカーを身につけようと決意した理由が「俺様を尊敬しろ!」と言い続けたいという心底どうしようもない点(←褒めてます)にあることからすれば、仮に彼が龍と共にマトモなサッカーをしたとしても、彼の尊大な魅力が薄まることは決してないでしょう。これからの桜庭さんの快進撃に期待です。

 以下は私信ですが、最近は体調がイマイチというか、主に体力的な問題で夜遅くまで文章を書くことができなくなって来ているので、今後マンガの感想を書くペースが遅くなるかもしれません。
 でも、とにかくサンデー16号における桜庭さんはちょう面白かった! ということは書いておくべきだと思ったので、この記事を書きました。

 以上、よろしくお願いします。

BE BLUES!~青になれ~(30) (少年サンデーコミックス)
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