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おじいちゃんから目を離すな! サンデー39~41号「シノビノ」感想

シノビノ

 『おじいちゃんカッコイイ系スニークアクションマンガ』という新境地を切り開きつつある「シノビノ」。

 この作品、基本的には「ペリー提督が、開国へ向けて交渉するよう依頼する大統領の親書を日本に渡すために来航。その際、沢村甚三郎という忍者が藩主の命を受けてペリー艦隊に忍び込んで探索を行った」という史実に基づいたマンガではあるのですが、でもマンガなので史実を割と大胆に解釈しており、このマンガのペリーは開国交渉どころかガチで日本を侵略する気マンマンですし、一方の甚三郎が受けた命令は「ペリー艦隊の探索」ではなく「日本を侵略しに来たペリーの暗殺」であるという、日米共に実に殺意に溢れたテーマになっているところが特徴です。
 主人公の甚三郎は、普段は割と飄々としているというか、ちょっと抜けているように見えるおじいちゃんなので油断しがちではありますが、彼はリアル忍者なので殺す時は「忍んで殺す」をきっちりと実行できる男であることを忘れてはなりません。

 サンデー39号で「如何にも残忍で強そう」という感じの重要キャラのように登場したジュロームが、その次のサンデー40号では僅かなスキを甚三郎に突かれてあっけなく殺されてしまう展開がありましたけど、これなんかはまさにこのマンガならではの展開だと思います。

 ジュロームは、艦内で誰も気付いていなかった甚三郎の存在に気付き、(甚三郎が艦内に侵入する時に使った)猫の匂いを辿って彼を発見、剣術で彼を圧倒して追いつめるという、極めて優秀かつ強力な剣士であることが伺える描写がなされていました。その一方で彼の立ち振舞いは極めて少年マンガ的でもあり、甚三郎を追い詰めた時にはわざわざ「降参している老人を殺すのは…耳や目鼻を削ぎ落とした後でも遅くないな」と呟くなど、「残酷な性格」という設定そのままなサディスティックな判りやすい言動をしてました。総じて、少年マンガならありがちな行動だと言えます。

 一方の甚三郎は、そんなジュロームの性格を見抜いていたに違いありません。追い詰められて刀を突きつけられているにも関わらず、すぐには殺されないと悟った甚三郎は降参のポーズをしつつ手から時計を出したり携帯食を出したりしてジュロームの注意を引き続け、そして予め酸っぱい携帯食を食べさせていた子牛が吠えて暴れだした時にジュロームがほんの一瞬油断して目を逸らせた時を見逃さず、これも予め用意していたであろう「握り鉄砲」でジュロームのコメカミを撃って一撃で射殺という、実にあっけない方法でジュロームを倒しました。

 これが普通の少年マンガだったら、せっかくジュロームのキャラを立てたんだからもうちょっ甚三郎との戦闘シーンを引っ張ろうとか、負けるにしても殺さずに再登場の機会を伺わせるとかするところだと思うんですけど、実際には甚三郎は真っ当にジュロームと戦うことなく勝利をもぎ取りました。つまりこのマンガが描いているのは「ペリー暗殺を目的に行動する一流の忍者の流儀」であり、忍者の流儀では少年マンガ的な必殺技が飛び交うような映える格闘シーンは必要ないということなのでしょう。

 そして勿論、そういった行動に説得力を持たせる甚三郎の「普段はちょっと抜けているけど、忍者としての気概は本物」であるキャラクター性も魅力的です。おじいちゃん超かわいいです。

 そういった意味においても、この「シノビノ」は、少年マンガ誌に載っている普通の忍者アクションマンガとは趣きが異なっているなと感じる次第です。ある意味、今のサンデーらしいと言えるのかも知れません。
 個人的には、ジュロームはここで散るのが惜しいキャラなので、甚三郎に撃ち抜かれた頭の代わりに切り落とした牛の頭を乗せたゾンビとして復活しないだろうかと思っているのですが、残念ながらそういうマンガではないので望みは薄そうですね…(残念なの?)。

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仙太郎ってちょっと気弱なアンディっぽくない? と思ったけど、あんまりそうじゃなかった


「健全なお色気アクションコメディー」を目指す戦いが始まった サンデー39号「絶対可憐チルドレン」感想

絶対可憐チルドレン

 サンデー39号から連載が再開された「絶対可憐チルドレン」。

 「絶チル」は既に高校生編が最終章であることがアナウンスされているため、高校生編後編となる本編が、文字通りの絶チル最終章となります。「絶チル」が読み切りの短編として発表されたのが2003年でしたので、それから実に14年の時を経て、ついに物語が終局へと向かうことに。

 当時、サンデーでの前連載作品である「一番湯のカナタ」が終了してから「絶チル」の連載が始まるまでの間には本当に色々なことがあったので、当時のファン達は「こんどこそ連載が成功して欲しい!」と強く願っていたのですが、結果的に「絶チル」は大ヒットを記録。「少年マンガ誌の主人公が女の子でも全然イケる」ことを証明してそれ以後の作品に大きな影響を与え、文字通り少年マンガの一時代を築いたといっても過言ではないくらいの作品にまで成長しました。
 この14年間、「絶対可憐チルドレン」という作品には、本当に楽しませていただきました。ありがとうございました(まるで連載が終了したかのような口調)。

 それはそれとして今回の「絶チル」なのですが、状況としてはサンデー20号の高校生編前半終了時よりも更に悪化しているように見えます。
 冒頭の東野と千里への嫌がらせに象徴されるように、マイノリティであるエスパーに対する憎悪はもはや隠されることなく顕著になって来ており、ノーマルとエスパーの間の対立は更に深刻化。今のバベルは完全にノーマルと対立するエスパーを捕獲するための組織となってしまっており、高校生編前半最終回で薫が述べていた理想の未来であった「みんながひとつになんかなれなくても、わかりあえなくてもいい。ただ同じ世界で一緒に暮らしていける未来に行きたい」とは程遠い状況です。

 その一方、今回の冒頭に書かれたこのマンガのアオリには「この物語は、物理法則を超えた強大なパワーを持つ少女たち『ザ・チルドレン』と、彼女たちをとりまく人々の愛と成長を描いた、健全なお色気アクションコメディーである!」と、現在の深刻な状況からするとちょっとボケたことが書かれています。健全なお色気アクションコメディー。

 確かにこのマンガ、本来は「ザ・チルドレン」と呼ばれる三人の超能力少女と、彼女たちの指揮官にしてお目付け役でもある皆本が織りなす、ちょっとエッチなお色気アクションコメディーだったはずなのですが、少なくとも現状はその皆本は「黒い幽霊」の首領であるギリアムの元に囚われの身になっている関係上、そもそもちょっとエッチなことを皆本とできる状況ではありません(ギリアム×皆本というシチュエーションがちょっとエッチなのかも知れない可能性は認めますが、そういう話は今していないのでパス)。
 それより何より「健全なお色気アクションコメディー」を繰り広げるためには、作品世界が平和でなければなりません。人種間の対立が深まり、憎悪が支配する世界の中で繰り広げられるお色気アクションコメディーは、健全というよりはもはや退廃的な雰囲気になってしまうこと請け合いなのです(荒廃した世界における退廃的なエロスも素晴らしいことは認めますが、そういう話は今していないので略)。

 ですので、この作品が本当に自分自身を「健全なお色気アクションコメディマンガである!」と宣言するためには、斯様なまでに絶望的に暗い状況から「健全なお色気アクションコメディ」が可能な明るく楽しいマンガに、作品そのもののノリを戻す必要があります。
 つまり高校生編の後半とは、チルドレン達、特にパンドラの「女王」の座に就いた薫が、皆本相手にちょっとエッチで健全なお色気アクションが可能になる世界を取り戻すために戦うことがテーマである──と解釈するべきなのではないかと思いました。人種間憎悪と偏見にまみれたこの世界から、「健全なお色気」展開をすることが可能なノリを取り戻すことは果たしてできるのか。
 この長かった作品の最終章がどんな運命を辿ることになるのか、見届けていきたいと思う所存です。

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今の時代の雰囲気がアレなだけに、未来に希望を持たせる内容になるといいですね(マジで)


「龍のちんこがでかい」という設定の意味について考察する サンデー37+38号「BE BLUES!」感想

BE BLUES!

 今回の「BE BLUES!」は、いわゆる温泉回。より正確に言えばちんこ回
 端的に言えば、龍のちんこは実は大きかったというお話でした。

 今のサンデーで「ちんこ」と言えば、勿論主人公のちんこがどんどん大きくなるマンガである「キング・オブ・アイドル」に決まってますが、今回の「BE BLUES!」はそれに触発されたと解釈してよろしいのでしょうか。「ちんこの数なら負けねえ!」とか、そういうアレで。
 今、サンデーにちんこの嵐が吹き荒れようとしているのでしょうか?(多分しません)

 そしてちんこと言えば、龍の世界水準のちんこのデカさ以外にも、みんな大好きノアさんが無毛マニアだったことが判明しました。本人は「余計な毛がないのでパフォーマンスが上がる」と脱毛した理由を述べていますが、多分ノアさんが無毛な好きなあまり、自分も無毛にしてしまったのでは? と推測せざるを得ません(きめつけ)。
 彼はこれまでも、この手の合宿の風呂ではみんなの前で脱衣して無毛っぷりを披露することでウケを取っていたに違いないと思うと、流石ノアさんは違う! と言うしかありません。男だらけな体育会系ならではのコミュニケーションの取り方を弁えていらっしゃると思います。褒めてます。

 逆に今の龍には、その手の「仲間と上手くやる」センスや気遣いは全くない要素なので、龍との対比という意味においても、今回のノアさんはホント面白い存在だったと思いました。

 というか、今回の合宿編におけるテーマの一つは、間違いなく「サッカー以外のことには気が全く回らない、龍のボンクラっぷりを少しは何とかすること」であると思われます。
 今回の途中に挿入されたレノンの回想シーンの中で、優希・優人・ナベケンが三人揃ってレノンに「龍を介護して下さい!」(意訳)と頭を下げていたことからも判るように、ここのところの龍はサッカーやらせると凄いしサッカーを通じたコミュニケーションはできるんだけど、サッカーに全てを注ぎ込むあまり生身の人間としての味がない、言わば「魂のないサッカー人形」(神聖モテモテ王国的表現)的なキャラクターになりつつあったのは? というのが正直なところです。
 この前のバレンタインデーのエピソードでも藍子のことなど気にも留めていない感じでしたし、女子のことに興味がないのはともかく、あの年頃の男子だったら普通にあるはずの性欲の処理とかどうしてるんだろう? みたいな余計な心配をしたくなるレベルですよ。マジで。

 今回はさすがのレノンも龍の「周囲に気を利かせる」という概念がないクラスのボンクラっぷりには手を焼いていましたが、コミュニケーション強者であるノアさんが強引に龍のフォローに入ったことで、「龍とレノンとノアが脱衣所で一緒に脱ぐ」→「ノアの無毛っぷりに龍が驚く」→「龍のちんこのデカさにノアが驚く」→「前回のエピソードで龍を『つまらん奴』と一括してわだかまりを作った滋賀の遠藤も龍のちんこのデカさに驚く」という、ちんこを介したポジティブなフィードバックが発生しました。
 つまり、あまりのとっつきの悪さが災いして合宿メンバーから孤立してしまう可能性があった龍の危機を、ノアの機転が救ったのです。そう考えると、今回の真の立役者はノアさんで決まりでしょう。ノアさんいい人だなあ。実際に隣りにいたらウザそうだけど(褒めてます)。

 次回以降は、ノアの活躍によって他のメンバーと上手くやれるきっかけを得た龍が、「サッカーでのコミュニケーション能力だけは抜群に高い」特性を活かして(ちんこのでかさ以外で)一目置かれる存在になれるかどうかという点になります。
 今回登場した高校生選抜メンバーは、今後龍が本当に日本代表選手になった暁にはまかり間違いなく同じチームのメンバーになる面々であることを考えれば、ここで好印象を彼らに与えて「また一緒に戦いたい」と思わせておくことは、龍の人生計画において極めて重要でしょう。

 果たして龍は、無事人並みのコミュニケーション能力を獲得し、彼らと選手として上手くやることができるのでしょうか。それともコミュニケーションに失敗し、「ちんこがでかい奴」という印象だけを与えることになって今後「武蒼のちんこのでかい奴」呼ばわりされてしまうことになるのでしょうか。
 そう考えると、今回の話は単なる温泉回なのではなく、今後のターニングポイントとなり得る極めて重要な回だったのでは? と錯覚できるようになるのが不思議ですね。おわり。

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対聖和台戦を読むと、龍は「拳で語り合う」的なノリで「サッカーで語り合う」のはとても上手いなと思います


「あなたと同じ女の子だよ」の深さに迫る サンデー36号「初恋ゾンビ」感想

初恋ゾンビ

 先週も「初恋ゾンビ」の感想(だけ)を書きましたが、引き続き今週も「初恋ゾンビ」のことを書きます。
 何故なら、今まさにこのマンガは大きなターニングポイントの真っ只中にあり、ものすごく面白くなって来ているからに他なりません。

 今回は、ついに指宿が本当は「指宿くん」ではなく「指宿ちゃん」であることが江火野にバレてしまう話でしたが、今回の一番のポイントは最後の方でなされた江火野と指宿のこのやり取りでしょう。

「じゃあ、あなたは正真正銘の女の子なんだね。あたしと同じ<」 「…うん。江火野さんと同じ、…女の子だよ」

 ここで言う「女の子」とは、ちんこの有無を表す生物学的な性差としての女であるのを指しているのは勿論なのですが、それ以外にも指宿はジェンダー的にも江火野と同じであり、男性を恋愛対象とする性的嗜好も江火野と同じであり、さらに言えば今好きな人そのものも江火野と同じであることを、指宿は「江火野さんと同じ女の子だよ」という台詞に込めていることは明らかです。

 つまりこのシーンは、江火野は指宿に対して「あなたもタロウのことが好きなんだね?」と問いかけ、指宿はそれに対して逃げることなく「ワタシもタロウのことが好き」と告げたに等しい意味を持ちます。自分の性別を江火野に知られた指宿は、ついに江火野に対してこれまで隠していた性別のことだけでなく、自分の秘めていたタロウへの気持ちも江火野に知らせたのです。

 より判りやすく言えば、恋のライバル宣言です! 恋のライバル宣言なんですよ奥さん! もしこのドラマが「ママレード・ボーイ」のアニメ版だったら、指宿が「江火野さんと同じ、女の子だよ」って言う台詞と同時に國府田マリ子が歌う「MOMENT」がオーバーラップすること必至なくらい、ここは重要なシーンなんですよ!(例えが古くて申し訳ない)

 前回までは、江火野がこれまでの「恋愛には興味がない」「タロウとは単なる幼馴染」だったこれまでの自分を、「ロミオとジュリエット」の演劇を通じてかなぐり捨ててタロウへの想いを強く自覚するに至る、言うなれば江火野覚醒の回だったと言えますが、今回は自分の秘密を知られたことをきっかけにこれまで誰にも言えなかったタロウへの想いを江火野に伝え、彼女と「恋敵」の関係となる覚悟を決めた指宿の心理的な変化を描いた回だったと言えるのではないのでしょうか。
 「指宿が自分の性別を偽っている」ことはこのマンガの根幹を支えていた設定の一つなのですが、それが(相手が江火野限定であるとは言え)崩れてしまった以上、このマンガはいよいよ新しい局面に入ってきたと思われます。この二人の恋の行方がどうなるのか、ますます目が離せなくなって来た感がありますね。いやもうホントにこのマンガ面白いです。

 あと今回個人的に面白かったのは、指宿くんを探すクラスメートの目を誤魔化すために指宿が江火野のスカートの中に隠れた後、江火野から「とにかく劇はちゃんとしよう」と叱られて「…わかった」としゅんとして言うシーンです。多分、指宿くんはこれから江火野に頭が上がらないんじゃないかなと思いました。江火野×指宿というカップリング妄想もアリなのでは。いやマジで。

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今の展開は、コミックスのこの辺の展開からの積み重ねの集大成的な感じがする


もう幼馴染のままではいられない サンデー34~35号「初恋ゾンビ」感想

初恋ゾンビ

 「初恋ゾンビ」の江比野さんに対しては、常々「もし彼女が覚悟を決めて自分の恋心に正直になってタロウにアプローチし始めたら、ンもう大変なことになるんじゃないか?」と個人的に思っていたのですが、ついにその懸念(懸念?)が現実のものとなって来たように思えます。

 現在の学園祭の「ロミオとジュリエット」編は、江比野が自分のタロウへの感情が何であるかを自覚し、自分の感情に素直になって行く過程を描いたものであると言えます。34号の「あたしは、タロウのロミオとこのシーンがしたかった」という彼女の台詞は、自分がタロウの事を好きで、タロウにもそれを判ってほしいと思っていることを表現した、今の彼女ができる精一杯の告白だったと思われます。
 江比野はこれまでの「恋愛には興味がない」と公言するキャラクターを脱し、タロウとの「ただの幼馴染」の関係から抜け出すべく、自ら一歩を踏み出したのです。

 それに続く35号は、それを受けたタロウが「ロミオとジュリエット」の劇でジュリエット江比野の相手役としてロミオとして登場し、劇中で恋を語り合う台詞の応酬を全うすることで、江比野の気持ちをキチンと受け止めるという意思表示をしました。タロウはこの行動がこれまでの「幼馴染」の関係を崩すことになることを承知の上で、江比野の前に立ったものと思われます。
 タロウは本来「恋愛はエネルギーの無駄」と公言する、自己保身を第一とする性格のボンクラなキャラクターだったのですが、江比野の気持ちを理解した上で、それを受け止められる甲斐性を発揮できる男に成長していたことを示す意味でも、今回は非常に重要なエピソードであったとも言えます。

 タロウはその童貞純潔を「初恋ゾンビ」であるイヴに捧げることを決めており、その決意は今も彼の中では揺るいでいないとは思うのですが、江比野と劇中で恋を語り合っている間はイヴが眠っていた=初恋のことを忘れていたことを考えると、タロウの気持ちも江比野に揺らぎつつあることは間違いないでしょう。

 35号の最後ではついに江比野が指宿くんが実は指宿ちゃんであることを知ってしまいましたが、これによって物語はこれから確実に大きく動き出すことになるでしょう。
 「幼馴染」というこれまでの自分への枷を外し、タロウへの想いに素直になることができた江比野さんに対し、未だにタロウに対してジェンダーを偽っている指宿くん。指宿くんも今のままではいられないことは確実の有様であり、いよいよ指宿くんがタロウの前で指宿ちゃんに戻れるかどうかが物語の焦点になる時がやってきたのかも知れません。これからの展開が本当に楽しみです。

 そして人吉君ですが、彼には着衣妄想フェチの達人として一目置いていただけに、今回のヘタレっぷりには心底ガッカリですよ(感想)。

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指宿の心理に大きな変化があった田舎編が収録されたコミックス8巻


「シノビノ」はおっさん萌えマンガ説 サンデー33~34号「シノビノ」感想

シノビノ

 幕末を舞台にした忍者アクションと言うと、アイレムの「最後の忍道」を思い浮かべる人?(おっさんゲーマー向け挨拶)

 サンデー33号より、「少年サンデーに史上最高齢主人公見参!」のキャッチコピーと共に連載が開始された「シノビノ」。作者は、かつて「THE UNLIMITED 兵部京介」のコミカライズ版を手掛けた大柿ロクロウ先生。

 作品としては、幕末の時代に実在し、ペリー艦隊に忍び込んで隠密活動を行ったことで知られる沢村甚三郎を主人公にした、硬派かつ破天荒な歴史アクションコミック──という体を取ってはいますが、その実態は、時にカッコ良かったり時に可愛かったりする主人公の甚三郎さん58歳の一挙手一投足に我々読者が萌えまくるという趣旨の、おっさん萌えマンガであると思われます。

 この沢村甚三郎というおっさん、「忍びにとっての華は、たとえどんな偉業を成し遂げようが名を残さず闇に消える…それこそが華なのさ」という台詞が象徴しているように、基本的にはハードボイルドな性格で、最期の忍者としての誇りを持っており、任務のために必要とあらば躊躇なく人をバッサバッサと殺していく冷徹さをも持ち合わせている真っ当な暗殺者なんですけど、その一方で任務が絡まない日常パートではヨダレを垂らして寝ていたり、キセルを加えてボケていたり、隠密に狙われていると感づいた時に身代わりとしてクマを布団に寝かせておくなどのお茶目な一面も持ち合わせているところがカワイイと思います。いやマジで。

 また、シリアスな人殺しの真っ最中に腰が痛くなって息が上がってしまうところも、58歳という年齢を感じさせて実に良いです。忍者としての凛々しさと好々爺的な愛され要素のバランスが絶妙で、おっさん萌えキャラとしてのポテンシャルの高さを第二話にして早くも伺わせていると言えましょう。

 あとこのマンガ、第二話までの段階ではモブキャラ以外では一切女性キャラが登場しておらず(甚三郎の死別した妻の名前は出てきますが)、第一話の扉絵に描かれた今後登場するであろう主要キャラクターにも女性キャラがいないなど、サンデーでは異例とも言える女っ気が全然ない作品なんですが、主人公の甚三郎がおっさんなのにも関わらず十分にカワイイためか、全くそれが気になりませんでした。むしろ甚三郎がヒロインなのでは? と思えるくらいです。

 現在のサンデーには既に、天正遣欧少年使節団を題材にした歴史コミックと思わせておきながら、実際にはけなげ・いたいけ・はかなげな要素を持ち合わせた美少年達の振る舞いに読者が萌えることが主旨である(決めつけ)「天翔のクアドラブル」が連載されていますが、この「シノビノ」はそれに続く新たな歴史系萌えマンガとしてサンデーに投入されたに違いない! と、個人的に解釈しております。

 大柿ロクロウ先生は「THE UNLIMITED 兵部京介」でも超高齢な兵部京介をたいへんに魅力的に描いた実績がありますし、おっさんが主人公の作品を手がけることについては極めて信頼性が高い作家だと思っております。今後もまかり間違いなく面白くなるに違いない、この作品のこれからが楽しみです。

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今読んでも面白いので、「絶チル」ファンの方なら是非


すーちゃんの京言葉から垣間みえる人間性についての考察 サンデー32号「舞妓さんちのまかないさん」感想

舞妓さんちのまかないさん

 この号のサンデーの巻頭カラーページである「ホビーの楽園」において、「舞妓さんちのまかないさん」コラボで花街で働くリアルな舞妓さんに質問をぶつけるという趣旨の記事が掲載されていました。

 その記事の中で個人的に面白いなと思ったのは、『舞妓さんちのまかないさんの感想を聞かせて』という質問に対して、当の舞妓さんが『地元が訛りのある地方なので、すーちゃんたちも自分らと同じように言葉覚えるの大変やったろうなあって思いながら見てますねえ』と答えていたところ。
 京都の舞妓さんは、常に京言葉というか、現代ではあまり使われない花街独特の伝統的なコードを使うことを強いられる存在なので、舞妓となるからには言葉使いについても厳しく訓練されることは必至であると言えます。晴れて舞妓となったすーちゃんもまた、青森出身者が京言葉を喋るという地獄の試練を乗り越えて来たに違いありません(きめつけ)。

 そういった「訛り」の面から「舞妓さんちのまかないさん」を読み直してみると、「百はな」という名の舞妓になったすーちゃんはお座敷以外の場所でも常に京言葉を使っているのに対し、キヨは京言葉ではないごく普通の言葉で話していることが判ります。
 それは二人の郷里である青森に里帰りしている現在のお話でも例外ではなく、キヨの実家でキヨの祖母と話したり、二人の幼馴染である健太君と話している時でさえ、すーちゃんは終始京言葉を使っているという徹底っぷり。この辺は舞妓という職業の業というよりは、むしろストイックなまでに舞妓という存在に打ち込んでいるすーちゃんのキャラクターによるところも大きいのかも知れませんね。
 キャラクターの方言や言葉遣いという細かいところまで気を使っているのも、またこのマンガの魅力の一つなのではないかと思った次第です。

 お話の方は、キヨがすーちゃんや健太からたいへんに愛でられている様子が伺えて、とても良かったと思います。
 あと青森県における「イギリストースト」って、要するに静岡県における「のっぽパン」みたいなものなんだろうかと思いました(ローカルな話題に終始)。

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コミックス2巻は18日発売とのこと。
このマンガは本当に素晴らしいので、サンデーの枠を超えた人気作になって欲しいです(真顔で)


ライバル登場→即落ち記念 サンデー31号「保安官エヴァンスの嘘」感想

保安官エヴァンスの嘘

 「ハードボイルドな西部劇」と「いい歳した男女が織りなす思春期みたいなラブコメ」を組み合わせた全く新しい少年マンガである「保安官エヴァンスの嘘」ですが、連載開始三ヶ月弱にして早くもセンターカラー+2話連続掲載という待遇を受けるなど、早くも今年のサンデーを支える大人気マンガの風格を漂い始めている感があります。実際すごい面白いです。

 今週の「保安官エヴァンスの嘘」は、先週の予告で「エヴァンスにライバル出現!」 みたいなことが書いてあったので、果たしてどんな奴が出てくるのか? もしかしてフィービーにアプローチを仕掛けてくる恋のライバルなのか? 「ラブひな」以降の現代ラブコメマンガには恋のライバルキャラの存在は不要という結論が既に出ているのではないか? 大丈夫か? と一方的に不安がっていたのですが、実際に出てきた「エヴァンスのライバル」ことマシューというキャラは「エヴァンスの恋のライバル」ではなく、むしろ「エヴァンスを一方的にライバル視しているけど、これからエヴァンスのことがどんどん好きになっていく」系のサブヒロインの一人みたいな立ち位置のキャラだったので安心しました(褒めてます)。

 初登場時は「西部一のガンマン」として名が知られているエヴァンスに喧嘩を売ることで自分の実力を測りたかったっぽいのですが、エヴァンスとの決闘に負けても彼が自分を捕まえなかったのは彼が自分の心意気を汲んだからに違いないと勘違いし、彼を男の中の男だと認めたように思われます。
 再戦した時に拳で本気で殴られて「前回より本気で戦ってくれた」と嬉しそうだった感じからしても、既にマシューの中にはエヴァンスへのフラグが立っているんじゃないんでしょうか。そう解釈しました。

 逆にエヴァンスからすればマシューは「常に女を侍らせてモテてるいけ好かない男」としか見えていない上に、過去にフィービーと何かあったんじゃないかと疑念を抱かせる存在であるため、彼のやることなすこと全てがエヴァンスの癪に障るようになっているのも面白いところで、このマシューというキャラはフィービーの絡みも含めて今後このマンガをより面白くしてくれるのではないか? と期待しております。

 あと今回は、普段は「神聖モテモテ王国」のファーザーの妄想に出て来る歴史の偉人並のことしか言わない(=カッコイイけど役に立たない)エヴァンスの父ちゃんが、「モテる清廉潔白な男は鼻持ちならんから、敗北を教えてやれ!」「女の過去は問うな! 元カレとの話なんか聞きたくないしな!」と初めてタメになることを言ってたのも良かったと思います(そこか)。

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モテモテ王国、まだ旧コミックス6巻以降のエピソードが載ってるコミックス持ってないんですよね(私信)


Amazonで電子書籍版の配信が遅れた記念 サンデー30号感想

古見さんは、コミュ症です。

 サンデー27号において「古見さんの性欲」という新たな視点を手に入れた我々としては、今回のように古見さんが只野くんを男性としてモリモリ意識し出して赤面しまくる展開を見てしまうと、ンもう興奮を覚えざるを得ません(最低の感想)。

 個人的にグッと来たのは、前半の話で古見さんが消しゴムを忘れた只野くんを見かねて、自分の消しゴムを半分ちぎって床に落としたシーンです。自分から相手に意志を伝えることを大の苦手としていたあの古見さんが、只野くん相手にあんなに大胆な行動を取れるようになれるだなんて…! と胸が熱くなること請け合いでした。
 古見さんって、もし恋人と二人きりになれた時には、自分から積極的に(中略)なタイプなのかも知れない…と妄想するに十分なエピソードでしたね。只野くんがうらやましいなァ!(最低の感想)

天野めぐみはスキだらけ!

 前から思ってはいたのですが、まー君って勉強するのは好きな子だけど、すば抜けて成績が良いわけではなく、高望みし過ぎて自滅するタイプっぽいんですよね。勉学もそうだし、女子についてもそんな感じ。

 「美川さん」と「東大」は、今のまー君にとってはどちらもあまりに高嶺の花なのは明らかですし、仮にまー君が東大に受かって再会したとしても、その後のことは全く考えていなさそう(というか再会さえできれば自動的に美川さんと相思相愛の恋人になれると思い込んでそう)なことからしても、まー君にはどこかで自分の能力と将来、そして美川さんとの関係について考え直すチャンスを与えた方がいいんじゃないかという気がします。今のままでは、東大や美川さんどころか、身近にいる彼にとっての「青い鳥」であるはずの天野めぐみの魅力に気付けないまま、灰色の青春を送ってしまいかねません。
 何より、女目当てだけで大学に進学してもろくな事にならないのは「第九の波濤」が早くも証明してますので、まー君も勉強ばかりではなく自分の掲載誌の作品も読んだ方が良いのでは(感想?)。

 あと天野めぐみは、中学生の頃からムチムチな体型していてすごいと思いました。

キングオブアイドル

 作者の若木先生が「まほろ砲」と表現している、歌を全力で歌うと現れるまほろの巨大なちんこが再び火を吹きました。今度のまほろのちんこの相手は、名前からして鬼教官キャラである「鬼ヶ島」こと佳島先生。
 ルームメイトの瀬川はまほろのちんこの魅力で何とか説得することに成功しましたが、果たしてまほろのちんこは大人の女である鬼教官に通じるのか。ちんこの魅力で教官を落とさなければ、まほろのアイドルとしてのキャリアは、早くも死あるのみの状態に! 大人の女をメロメロにするオアダイ! という異常な展開に。異常なのは自分の解釈の方な気もしますが気にしない。

 今回の話を読んで思ったのですが、まほろのちんこは確かにこのマンガが普通の女装アイドルマンガではなく「キングオブアイドル」という独自のマンガであることを象徴する大きな差別化要因ではあるのですが、あまりに多用すると「またちんこが出たの?」と読者から思われてしまって飽きられてしまいかねない、諸刃の剣なのかも知れません。
 「女装男子の勃起したちんこに驚く女の子」という絵柄は強烈な魅力がありますが、だからこそちんこの露出を多用せず、ここぞという時に効果的に露出させる必要があるものなのではないのでしょうか。

 まほろの勃起したちんこは、「身も心も男の子だけど、母の面影を追うため、自分の正体を隠してアイドルの世界に足を踏み入れた」まほろが周囲に秘めるべきアイデンティティの象徴そのものであり、だからこそ滅多矢鱈に露出していいものではないのです。まほろのちんこをどのように露出させて行くのかは、まほろというキャラの命運、そしてこの作品の行く末をも握る、重要なポイントとなり得るものなのです。
 この辺が、ちんこという武器で戦うことを選んだこの作品のポイントなのかも知れないと、個人的には本気で思い始めています。

 それにしても、ホントこのマンガの感想は合法的に「ちんこちんこ」書けるので、まほろが勃起した回は感想を書くのが本当に楽しいです。みんなもマンガ感想ブログを始めて、ちんこちんことか書いてみよう!(最低)

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サンデー29号「キングオブアイドル」短め感想

キングオブアイドル

 今回は「仲間を勇気付けて一緒に試練を乗り越える」という極めて真っ当なアイドル育成モノっぽい話でしたが、このマンガはそういった正統派の物語と「主人公が実は男の子で、しかも歌うと否応なくちんこが勃起する。しかもちんこがでかい」という異常な物語を並行して進められるところが本当にマンガとして強いなと、つくづく感じている今日この頃です。
 次回はその異常性を垣間見させてくれる系統の話になりそうなので楽しみ。

 そういえば、今回まほろが歌ったにも関わらず勃起しなかったということは、まだあれは本気出していないってことなんでしょうか。本気出していない状態でもアイコスを起動させることができるくらいのアイドル力(ぢから)を発揮できるとなると、彼のアイドルとしての実力はまだまだ底知れないものがありそうです。勃起した時のちんこの実力は既に証明済みですけどねガハハハ(セクハラオヤジっぽく)。

神のみぞ知るセカイ(19) (少年サンデーコミックス)
小学館 (2013-10-25)
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「K.O.I」は「神のみ」を描いていた頃からは想像できないマンガだと思います