サンデー25号 新連載陣感想まとめ

隕石少女 ―メテオガール―

 「空から人間じゃない女の子が降って来る」という全人類男子憧れのシチュエーションを、「空から人間じゃない女の子がひっきりなしに降って来る。でも、その女の子に当たると死ぬ」という捻った形にアレンジした、終末感あふれる社会を舞台にした作品。

 当たると死ぬような物体(以下「MG」)が日常的に落ちてくる異常な世界が舞台なのにも関わらず、そこで暮らす人々はみんなそんな日常に慣れてしまって危機感が薄れ、逆にMG対策グッズを持ち歩いていることがダサいとみなされてしまっているところが、「まあでも、そういうもんだよなあ」という気持ちにさせられます。
 作品内に出てくるMG接近の警告を知らせるスマートフォンのアラーム音は、かつて東日本大震災の時に頻繁に携帯電話から鳴り響いていた緊急地震速報を連想させるに十分ですが、それに対して既に我々の感覚が鈍ってしまっている点も含め、この作品は現代日本に住む我々のメタファーとして描く社会派なマンガとなる素質は十分あると思いました。

 そういえばまだ頻繁に地震が起こっていた当時、うどん屋に入った直後に緊急地震速報が鳴り響いて震度3クラスの地震に襲われたにも関わらず、揺れが収まった後に普通にうどんを店員に注文し、店員も普通に応じてうどんがすぐに出てきたってことがありました。店にいた他の客も、特に騒ぐこともなく淡々としてましたよ。
 あの時は「非日常が日常になるってのはこういうことなのかなあー」とぼんやり思いながらうどん食ってましたね。それを思い起こさせる第一話でした(感想?)。

第九の波濤

 「ファンタジスタ」の草場先生の新連載。
 「東京生まれ東京育ちの都会っ子の男子が、長崎で出会った釣り好きの女子に一目惚れしてしまう」という、これまでの草場先生の作品とは明らかにノリが違う話だったのでどうなることが心配だったのですが、サンデー25号において主人公が長崎の大学の水産学部に進学した結果舞台が長崎になったことで、やっぱり草場先生のマンガは九州が舞台になるんだよな! と安心しました。
 主人公はまだ「東京生まれのシティボーイ」の状態ですが、いずれは「ファンタジスタ」の轍平みたいな立派な九州男児に変化していくこと請け合いですよ。楽しみですね(そういうマンガ?)。

 舞台が水産大学ということは、このマンガは「銀の匙」や「あおさくら」と同様の、『日常とはノリが違う異常な法則が支配する大学』が舞台の職業訓練モノということになると思われます。
 現実の日本の水産業は、資源の減少や漁業従事者の減少など色々と問題を抱えていると言われる業界なのですが、「第九の波濤」はそれに対する光明を示すことを究極の目標とした社会派のマンガとなれるのでしょうか(そういうマンガ?)。

妖怪ギガ

 みんな大好き日本妖怪を題材に、これまでのソレ系の話とはちょっと違う解釈を加えた小話集として連載が始まった「妖怪ギガ」。
 テーマが妖怪であることに加えて、絵柄がクラシカルというか(今っぽい「妖怪ウォッチ」とかと比べて)やや劇画チックな正統派の妖怪絵巻なので、内容的にはちょっと少年誌っぽくないというか、むしろビックコミック系に載っていても不思議じゃないように思えるのですが、今の懐の広さをアピールして行きたい少年サンデーならこういうマンガも許容範囲ですよ! ということなのでしょう。

 作品の雰囲気は、基本的に妖怪が人間のアレっぷりに困ってしまうようなユーモアな方向に振られていて楽しく読めるのですが、時々サンデー25号の「絡新婦(女郎蜘蛛)」のような、妖怪を通じて人間の本性をさらけ出すような怖い話を振って来るので、ゆめゆめ油断はできない作品だなと思ってます。やっぱり1番怖いのは人間ッスよねー

週刊少年サンデー 2017年25号(2017年5月17日発売) [雑誌]

個人的に今のサンデーの看板マンガは「舞妓さんちのまかないさん」なのではと思い始めている

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若木先生再登場記念 サンデー24号「キング・オブ・アイドル」感想

これが若さというものですよ皆さん
キング・オブ・アイドル

 「キング・オブ」と来たら「ファイターズ」よりも先に「ドラゴンズ」を連想する人と友達になりたいです(挨拶)。

 「神のみぞ知るセカイ」「なのは洋菓子店のいい仕事」の若木民喜先生が、早くもサンデーに復帰。
 若木先生の新連載の第一話と言えば、前作「なのは洋菓子店のいい仕事」が「『若木先生の最新作』『洋菓子店が舞台の物語』から連想される、来店する美少女たちとパティシエが織りなすハートウォーミングなストーリー」のイメージを、「ケーキは暴力ですよ。バカな客の舌を打ち倒す力です」という決め台詞で徹底的に否定しにかかるという大変に暴力的なものであったため、今回の「キング・オブ・アイドル」も「普通の美少女アイドルものマンガと思わせておいて、最後の方でなんかものすごい暴力を振るわれるのでは?」と、ビクビクしながら読みました(弱い)。

 その感想ですが、若木先生が自ら「少年誌王道マンガ」と仰っている通り、アイドルが主人公の極めて判りやすいマンガという認識を持ちました。
 主人公のまほろは純粋にアイドルを目指すピュアなハートと「ものすごくよく通る声」という歌うことに特化した判りやすい必殺技を持った清々しいキャラクターですし、まほろと共にアイドルグループを組むことになるであろう仲間たちも皆「真面目なツンデレ」「内気な巨乳」「明るいスポーツ少女」「場数を踏んでるジュニアタレント」とひと目で特徴が判るメンツばかりと、とても判りやすいです。

 更に言えば、今回の第一話は「アイドルになるための登竜門的なオーディション」という精神的に厳しそうな場所が舞台であるにも関わらず、出て来る芸能事務所の人はみな親切で優しく、オーディションの観客たるアイドルオタク達もアイドルを目指す女の子達を素直に暖かく応援し、まほろの歌声には素直に感動するなど、「アイドル」という職業から連想されるネガティブな要素が全くないことも、この話の特徴と言えるかも知れません。ジュニアアイドルの周りを支える大人達がみんな良い人達というのは、個人的にはアニメの「アイカツ」を思い起こしました。
 何にしろこのマンガには、「なの菓子」第一話のような暴力的要素は全くありませんでした。とりあえず、このマンガを読み始める前の懸念が全てとりこし苦労であったことは本当に良かったです。

 唯一王道じゃなさそうな点を上げるとすれば、「ガールズアイドルの頂点を目指す主人公のまほろが、実は男の子だった」ということですが、まあでも可愛くて歌や踊りが上手くてガールズアイドルとして魅力的であり、何より本人が「ガールズアイドル」として輝きたいと思っているのであれば、我々としては物理的なちんこの有無には関係なく応援するのは至極当然のことなので、個人的には全く問題ありません。ちんこの有無だなんて些細なことですよ。いやマジで。
 それに「ジェンダーの差を乗り越えて本当の夢を掴む」という物語は、現在のサンデーでも「天使とアクト!」や「初恋ゾンビ」が該当しますし、アイドルという題材においても過去に「アイドルマスター ディアリースターズ」や「AKB49」といった事例がありますので、「性別を偽ってアイドルを目指す」物語はもはや王道ストーリーの一つと言っても問題ないのかも知れません。

 何にしろ、若き先生が全力を尽くして本気で王道アイドルマンガを描いてやろうとする気概が十分に伝わって来る第一話でした。この「キング・オブ・アイドル」は今後まかり間違いなく面白くなるマンガだと思うので、素直に今後の展開に期待していきたいと思います。

 それでもし「キング・オブ・アイドル」がギャルゲーだったら、瀬川さんをまず最初に攻略したいですね(感想)。

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フィジカルで王道な「キング・オブ・アイドル」とは対局の、ロジカルシンキングを極めた作品。これを描いたからこそ今の若木民喜先生があるとも言える

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エヴァンスさんは、コミュ症です。サンデー22+23号「保安官エヴァンスの嘘」感想

 サンデー春の新連載陣第2弾として登場した「保安官エヴァンスの嘘 ~DEAD OR LOVE~」。

 父から様々なモテの教え(注:モテるとは言ってない)を叩き込まれた主人公・エヴァンスが、西部劇っぽい世界を舞台に街をならず者から守る保安官をしつつ、事件の度に巡り合う美女からさり気なくモテようと努力する(けど結局ダメになる)、ちょっとひねった形のラブコメディです。
 主人公が非現実的なモテを目指すコメディという意味では、かの「神聖モテモテ王国」の遠縁にあたる作品であるとも言えますね。

 第一話と第二話は、「美女が登場→エヴァンスに気がありそうな素振りをする(というか実際気がある)→エヴァンスが父のモテ格言を元にカッコいい立ち振る舞いをしてモテようとする→その振る舞いが災いして美女と別れることになる」という構成のこのマンガの基本的なロジックを紹介するかのようなお話であり、これはこれでとても面白かったんですが、第三話で「エヴァンスの幼少期からのライバル」を自称する賞金稼ぎの女性・オークレイがサブレギュラーキャラ的な扱いで登場したことで、俄然このマンガがラブコメとして面白くなって来たように思えます。

 このオークレイというキャラ、客観的に見ればどう考えてもエヴァンスを男性として意識しているんですが、「これまでの人生が射撃一筋だったため、恋愛経験が皆無でどうやって異性とおつきあいすればいいのか判らない」上、エヴァンスは彼女にとって「昔から何かと張り合ってきたライバル」という位置付けなため、「相手から自分を意識していることを悟られてマウンティングされることを極度に恐れる」あまり、エヴァンスに対しては意地を張り合うような態度しか取れないという、いわゆるツンデレキャラです。金髪碧眼ショートカットのツンデレキャラですよ。いいですよね

 もしこのマンガが「保安官エヴァンスの嘘」ではなく「神のみぞ知るセカイ」だったら、ツンデレキャラは容易にフラグを立てられてあっけなく攻略されてしまうところなのですが、残念ながらこのマンガの主人公のエヴァンスは桂馬のように女性心理の分析に優れた冷静なギャルゲーマーではなく、オークレイと同様に「父からモテの教えを受けて知識ばかりは豊富だけど、恋愛経験は皆無なのでどうやって異性とおつきあいすればいいのか判らない」というボンクラな上に、オークレイは彼にとって「昔から何かと張り合ってきたライバル」という位置付けなため、彼女に対しては「相手から自分を意識していることを悟られてマウンティングされることを極度に恐れる」あまり、無理して冷静にカッコよく振る舞おうとして失敗し、自らフラグをへし折る始末です。

 要するにこの二人は、既にお互いのことを意識している相思相愛状態であるにも関わらず、「相手のことが気になる」ことを相手に悟られないようカッコつけてコミュニケーションを取ろうとしないがために、お互いの心理を知るチャンスを自ら失ってフラグをへし折っている、似た者同士であると言えます。
 よりわかりやすく言えば、この二人はコミュ症ですね。コミュ症。

 現在のサンデーでコミュ症と言えば勿論「古見さんは、コミュ症です。」になる訳ですが、古見さんの場合は彼女とコミュニケーションを取ろうと頑張る只野くんのおかげで今ではすっかりクラスの仲間達とも打ち解けることができ、古見さんがコミュ症だからこそ成立する一風変わってるけど楽しい学園生活を送ることに成功しています。
 「古見さん」という作品は既に連載初期の「コミュ症だけどコミュニケーションしたい」という段階を乗り越え、彼女なりの青春をより楽しく謳歌することを目指す段階に来ていると言えましょう。

 しかし「保安官エヴァンスの嘘」の場合、エヴァンスもオークレイもピカピカの高校一年生ではなく、既にいい歳をした大人なんですよ。二人とも古見さんと只野くんのように青春を謳歌するどころか、これまでそのモテに対する歪んだ認識が災いしてモテとかそういうところとは全く無縁な人生を歩んだ結果、このような残念な大人になってしまったんですよ。
 「モテたい」と強く思ってはいるけどモテとは無縁だった人生を歩んで来た結果、色々と歪んでコミュ症になってしまったこの二人は、果たして意地を張らずにちゃんとお互いにコミュニケーションをしてマトモなカップルになれるのか。それとも「DEAD OR LOVE」のタイトル通り、最終的には愛を得られずに銃で決着をつける殺伐とした関係で終わってしまうのか。

 つまり「保安官エヴァンスの嘘」とは、オトナのコミュ症同士の恋の顛末を描いた、西部劇風大河ドラマである。今のところの自分のこのマンガに対する認識は以上になります。

 あとこれは推測ですが、エヴァンスの父ちゃんって絶対に女にモテてなかったですよね。

週刊少年サンデー 2017年22・23合併号(2017年4月26日発売) [雑誌]

第一回に登場したリズも魅力的な女の子だったので、刑期が明けたら登場して欲しいッスね

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